コーヒー用意しといて下さいよ~。
俺達が三人と戦っている時、千冬姉達もそれなりに大変だったようだ。
何でも、移動中のモノレールに爆弾が仕掛けられていたらしい。それを解除するのに手間取ってしまい、連絡が遅れたらしい。俺が連絡を入れた時にはすっかり終わっていたようだが。
その後千冬姉に来てもらい、気絶させた三人を引き渡した。
この後三人は叱るべき政府組織に引き渡され、事情聴取を行うだろう。
ここから先は俺のするべき事では無い。なので細かくは聞かなかった。ただ、織斑 マドカのことだけは伝えた。千冬姉は動揺したが、それでも伝えるべきだと思ったのだ。織斑 マドカのためにも。
そして修学旅行はというと・・・・・・
未だに続行していた。普通は危険なことがあった時点で中止すべきだと思うのだが、皆あまりにも今まで問題事に見舞われ続けたため、妙な免疫が付いてしまったようだ。そのため、爆弾騒ぎがあっても皆平常運転であった。
俺はその後芹澤さんと一緒に真耶さんと合流し、観光を再開することにした。
装甲した芹澤さんの豹変ぶりを本人に聞いてみたら、本人曰く、
「装甲しているとあんな感じになっちゃうんですよ。すみません、あんな口を聞いてしまって」
と謝罪された。
どうやら芹澤さんは装甲すると性格が変わるらしい。
まるで二重人格みたいだと驚いてしまった。今は装甲前の温和な芹澤さんに戻っている。
真耶さんと合流すると・・・・・・
「一夏君っ!!」
駆け寄ってきたと思ったら一気に抱きつかれてしまった。
そのまま真耶さんは力の限り俺を抱きしめる。
急なことと芹澤さんの前ということもあって真っ赤になってしまう。
「ど、どうしたんですか、真耶さん!? 急にこんな・・・」
「大丈夫でしたか! どこか痛いところとかありませんか! 怪我は? 心配したんですから!!」
真耶さんは人前だというのも気にせずに俺を抱きしめながら捲し立てるように聞いてくる。
それだけ心配させてしまったんだなぁ、と思い罪悪感が胸を締め付けた。
俺はそんな真耶さんを愛おしく思い、安心させようと抱きしめ返した。
「心配させてしまってすみませんでした。でも、この通り無事ですから安心して下さい。俺は何ともないですよ。それよりも真耶さんはどうでしたか? お怪我はなさってませんか」
「はい、私は平気です。怪我も何もないですよ。一夏君が無事で本当に安心しました」
そして俺も真耶さんを包み込むように抱きしめた。
そのまましばらく抱き合い、それは真耶さんが安心して笑顔を俺に向けるまで続けられた。
その際、芹澤さんが気まずそうな顔をしていたことに、申し訳無さを感じた。
観光もそこそこに旅館に帰ると、何故か千冬姉からお説教を受けた。
勝手に戦うなと言われたが、それは向こうが勝手に仕掛けてきただけに無理だろう。
そのままクラスに合流すると、やはりと言うべきか皆から冷やかされた。
真耶さんはそのたびに真っ赤になっていたが、これはこれで可愛いので眺めていたい気分になった。
夕飯で出された料理に舌鼓を打ち、そして夜も更けていった。
俺は一人、露天風呂に入っていた。
日本人たるもの、やはり風呂は好きなもので実に嬉しい。
今日の事もあって疲れが溶け出していくようだった。時間は既に深夜間近であり、辺りは鎮まっている。そのことがさらに心を落ち着け、リラックスさせていた。そのため気が緩む。
だから気づけなかった。
ひたひたと、誰かが歩く音が聞こえた。この時間から風呂に来る客もいるのだろう。だからあまり気にせずにふやけていたのだが・・・・・・・・・
「お、お邪魔します、一夏君・・・・・・・・・」
その心に染み渡る甘い声に意識が一瞬にして呼び戻される。
「えっ!?」
驚きと共にそっちに振り向いてしまった。
俺の目の前には、タオルで大切な部分をかろうじて隠しながら真っ赤になりつつ俺の方向かってくる真耶さんがいた。
「きゃっ!? あ、あまりこっちを見ないで、一夏君」
そう恥じらい真っ赤になりながらタオルで体を押さえる真耶さん。
しかしながら、まったくカバーしきれていない。今にも胸が溢れそうになっており、それを見た俺も鼻血が溢れそうになるのを堪えた。
そのまま真耶さんは俺の側まで来ると、俺の背中にぴったりとくっついた。
背中から感じる生の巨大な二つの感触に、意識が飛びかける。
「ま、真耶さん!? どうしてここに!? ここは男湯ですよ!!」
あまりの混乱に挙動不審になる俺。心臓がバクンバクンと跳ね上がって仕方ない。
「い、一夏君、落ち着いて下さいね。その・・・・・・この露天は混浴ですよ・・・」
そう真っ赤になりながら言う真耶さんから目が離せない。
「そ、そうなんですか!? てことは、自分達以外の客も来ちゃうんじゃ・・・」
「えっと・・・そう思って、男女両方とも清掃中の札をかけちゃいました」
そう恥ずかしがりながら真耶さんがはにかむ。俺はそのあまりの可愛さに言葉を失ってしまう。
「勝手にそんなことしていいんですか?」
何とか言葉を出せるようになったらこんな事しか聞けなかった。
「本当はいけないんですけど、別に私がやったって証拠があるわけじゃ無いですから。『たまたま、私達が入っていたらそうなっていただけです』よ。だから、内緒でお願いしますね」
まるでイタズラが成功したときの喜んだような顔でそう言う真耶さん。そんな真耶さんも可愛くて、さっきからクラクラとしっぱなしであった。
「もう・・・悪い人ですね」
少し呆れ返りつつ、そう真耶さんに言う。とても出会ったときからは想像も付かないくらいに変わった気がする。
「うふふ、一夏君の御蔭ですよ。私は一夏君が好きだから、一夏君と一緒にいるためにはこういう悪い事だってしちゃうんです。私をそんな風に変えたのは一夏君なんですから、責任、取って下さいね」
そう言って更に抱きついてきた。
柔らかい感触が俺の体を襲い、あの甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。
俺も段々と精神が高揚していき、無意識ながらに人がいないことを良いことに真耶さんを抱きしめ返した。
「それじゃあ、責任を取らないといけませんね・・・・・・一生をかけて、ね」
そう言いながら真耶さんの可愛らしく、美味しそうな唇にキスをする。
「んぅ・・・ふぅ・・・んん・・・・・・・・・」
真耶さんも俺に応じて目を瞑り、唇を合わせてくれた。
そのまま息が続く限り合わせる。
息が尽きたのか、真耶さんが唇をゆっくりと離した。
その目は濡れており、顔は真っ赤にとろけていた。
俺も自分の顔が真っ赤になっていることを自覚する。
「真耶さん、大好きです。だから・・・俺の側に一生いてくれませんか」
そう自然と口に出していた。
真耶さんは俺の言葉を聞くと、泣きそうなほど嬉しそうに笑い、さらに顔を真っ赤にしながら俺に言う。
「はい、一夏君。私も愛しています。だから・・・私のこと、一生大事にしてくださいね・・・・・・私の旦那様」
そう言って目を瞑り、俺にキスをせがむ。
その姿に愛おしさが爆発して、俺はそのキスに好きという気持ちを込めに込めて応じ、また俺達は唇を合わせた。
そのまましばらく、二人でくっつきながら混浴を楽しんだ。
幸せすぎて死ぬかと思った。
劇中の一夏は幸せで死にそうですが、作者は砂糖で埋もれて圧死しそうです。