しかし甘さだけが上がっていく、そんな話です。
さっそく京都に着いた俺達。
皆いつも見ている街とは違う、京都の古い町並みにテンションが上がりっぱなしだ。
俺もこの古来から続く町並みを感慨深く感じる。
旅館について、さっそく千冬姉から皆に注意事項が伝えられる。
「おまえら、旅行だからと言ってあまりハメを外し過ぎないように。IS学園の生徒として恥ずかしくない行動を心がけるように」
「「「「「「「はーーーーーーーーーーーい」」」」」」」
そう元気よく皆返事を返す。その様子に旅館の人達はにこやかに笑っていた。
「また、基本はグループ行動だ。個人で勝手に行動するなよ。それと織斑、お前はクラス代表として、皆の写真を撮るように。お前だけ別行動だ」
そう千冬姉は言うと、解散を宣言した。
それによって班に分かれて散っていく皆。俺はカメラを持ってさっそく出かけることにした。
「そう言えば、織斑先生はどうするんですか?」
そう千冬姉に聞くと、
「私は私で勝手にやらせてもらうさ。それに・・・・・・『お前達』は二人で行くのだろう? 邪魔をしては野暮というものだ」
そうニヤリと笑みを浮かべながら言われてしまった。
達? と思った瞬間に左腕の制服の裾が引かれた。そちらを振り向くと、千冬姉に言われたことで恥ずかしそうに顔を真っ赤にした真耶さんがいた。
「はぅ~~~」
そう恥ずかしがる真耶さんも可愛く見える。
「何だ、今更恥ずかしがることも無いだろう。いつも周りが呆れるくらいイチャついているのだから今更恥ずかしがったところで無駄だと思うぞ?」
そう言いながら千冬姉は旅館から出て行った。
その場で俺達は立ち尽くしてしまい、少し気まずくなってしまう。
しかし、
「「・・・・・・あははは」」
その様子がおかしく見えて、お互い笑ってしまった。
「それじゃ行きましょうか、一夏君!」
「はい、行きましょう」
そう笑顔で言う真耶さんに、俺も笑顔で返して手を繋ごうとしたのだが、させてもらえなかった。
「あれ?」
「もうちょっと待ってくれませんか。すぐ終わりますので」
そう少しイタズラっ子のような笑みで真耶さんは返すと、俺の隣に着いて一緒に歩いて行く。
どうやら目的地があるらしく、俺はそれに従って歩いて行った。
「あ、ここです。じゃあ一夏君、楽しみにしていて下さいね!」
そう俺に言うと、呉服店らしき店に入っていった。
何だか入ってはいけない気がしたので、俺は店内には入らない。店前で少し待たせて貰うことにして、その場でじっとする。その間に京都の町並みを写真に納めていく。
そして・・・・・・周りに聞こえないように正宗に話しかける。
「正宗、首尾はどうだ」
『うむ、未だ問題は無い』
修学旅行は楽しみたいが、俺が武者であることも忘れてはならない。
IS学園で何かをすると、毎回何かしらアクシデントに見舞われる。そのことを鑑みれば、常に備えていた方が良い。正宗が俺と一緒に移動するのは当たり前のこと、警戒に当たって貰うことにした。
皆に何かあれば、皆を守るのは俺の使命だ。そうならないことを祈りたいのだがな。
「そうか・・・引き続き頼む。何も無ければ良いのだがな」
『そうだな。せっかくの御堂の旅行、あまり無粋なことは起きて貰いたくないものよ』
「ああ、ありがとう」
『では我は引き続き警戒に当たる。御堂もここ最近は色々と大変であったからな。久々に羽を伸ばすといい』
そう正宗と金打声で話していると・・・・・・
「お待たせしました、一夏君!!」
そう甘い声大きな声で呼ばれた。
『どうやら御堂を呼んでいるようだ。では我はこれにて・・・・・・』
正宗はそう言って金打声での通信を切った。
俺はその声の方を向くと、声を失った。
「どうですか、これ。似合ってます?」
そう満面の笑顔を浮かべている真耶さん。真耶さんは着物を着ていた。
紅葉をモチーフにした着物で、白と赤の色合いが美しい。それを着た真耶さんがあまりにも綺麗なものだから、言葉を失ってしまったのだ。
真耶さんはそんな俺の様子を見て、少し不安そうな顔になる。
「えっと・・・似合ってないですか・・・」
俺は急いで声を出した。
「いえ、凄く似合ってます!! あまりにも似合い過ぎるものですから、言葉を失ってしまって・・・・・・とても綺麗です」
「そ、そんなに褒めてくれるなんて・・・・・・嬉しいです! ありがとうございます!!」
周りも気にせず大きな声で言ってしまい、周りが何事か? と視線を向けてくる。その視線に真耶さんは恥ずかしさから真っ赤になったが、実に嬉しそうだ。
その首には俺があげたアクセサリーが下がっており、それがさらに嬉しく思う。
「そのアクセサリー、使ってくれてるんですね」
「はい! だって一夏君が作ってくれたものですから!」
そう真耶さんは笑顔を俺に向けてくれた。
さっきからずっとドキドキと胸が高鳴って仕方ない。俺は真耶さんから目が離せなくなっていた。
今日はいつも以上に可憐で綺麗に見える。美しさから感嘆の声が漏れてしまった。
「それじゃ一夏君行きましょうか!」
俺に笑顔を向けながら真耶さんは手を差し出してきた。
それがまた嬉しくて、真耶さんの手を取り繋ぐ。
「うふふふふ~」
繋いだ手が柔らかくて、俺の頬が緩む。
真耶さんも顔を赤らめながら俺に繋いだ手を絡め、その体を俺に預けるようにしなだれかかる。
その柔らかさと真耶さんの甘い香りに、また俺の胸はドキドキする。
「いいんですか、『山田先生』」
前も似たようなことがあったとき、悲しそうな笑顔をした真耶さんとは思えない反応に、俺は少しイジワルそうに聞く。答えは既にわかっているのだから我ながらどうかと思うのだが、聞かずにはいられなかった。
「いいんですよ! だって今の私の恰好はどう見たって着物を着た人というだけですからね。一夏君と一緒にいたって先生には見えませんよ・・・・・・ですよね、一夏君」
そう笑顔で俺に抱きつく真耶さん。
それは前に俺が真耶さんに言ったことだ。それを真耶さんは覚えてくれていた、そのことがまた俺を嬉しくさせてくれた。
「ちょっと納得がいかないですけど、それで一夏君とこうして一緒にいられるのなら、それははそれでうれしいですから」
とろけそうな笑顔で俺に笑いかける真耶さんが可愛くて、愛おしくて仕方なく、少し我慢が出来なかった。
「え・・・キャッ!?」
絡めた腕をいさらに優しく巻き込み、その場で真耶さんを抱きしめる。
いきなりのことに真耶さんは驚きながらも紅くなっていた。
そのまま少し強引にその化粧をして美しい光を放つ唇を奪う。
「んっ!? んぅ~~・・・・・・・・・・・・・・・」
最初こそ驚いたようだが、少しするとうっとりとして目を瞑りされるがままになった。
そして俺は満足するまで唇を離さなかった。
満足して唇を離すと、真耶さんは顔を真っ赤にしながら目を潤ませていた。何とも艶っぽい顔をしている。
「もう・・・いきなりするんですから。でも、その・・・強引な一夏君も、格好いいですよ」
「すみません、真耶さんがあまりにも綺麗で可愛かったものですから、我慢ができなくて・・・・・・」
「もう・・・一夏君ったら・・・・・・」
そう真っ赤になり恥ずかしがりながらも言う真耶さんが可愛くて仕方なかった。
「それじゃ今度は私がお返ししますね」
真耶さんはそう答えると、俺の唇にお返しのキスを返した。
その甘く柔らかい唇の感触に脳がふやけそうになる。
そして唇を離すと、やっぱり恥ずかしそうにしていた。しかし、それ以上に幸せそうな笑顔をしている。
「それじゃ一夏君、今度こそちゃんと行きましょう」
「はい」
真耶さんは俺の体に抱きつくようにくっつきながら歩き始め、俺も真耶さんの絡めた腕により力を込めて抱きしめながら歩いて行く。
こうして、俺の初めての恋人との修学旅行が始まった。