装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回は久々の撃甘です。砂糖注意報発令! 皆様、壁の用意をして下さい。何枚破れるのか記録してみましょう。


一夏は参加しないタッグマッチ その後(5)

「今日はお疲れ様でした!」

 

 明るく甘い、柔らかな声が俺の耳に入る。

真耶さんがとろけそうな笑顔を俺に向けてそう言って来た。その様子に俺も嬉しさから頬が緩む。

 現在俺はというと、寮の自室でくつろいでいた。

今日一日は大変で目を回すかと思った。

タッグマッチと一緒に行われた真田さんとの試合(死合い)では、人前だというのにお互い本気で殺しにかかった。御蔭で未だに手が痺れている感じがする。それくらいあの人も腕を上げていた。

束さんが来たときはそこまで大変ではなかったのだが・・・・・・・・・

その後の後始末が大変だった。

IS学園や来客の皆様方に三人で土下座して廻ったのは、肉体と精神両方が疲労した。

真田さんはあまり馴れていないので、結構抵抗も激しかった。説得するのにかなり苦労した。

俺と師匠はもう土下座に謝罪と、相手に謝ることには馴れきってしまっていた。これも偏に二年前の苦行があったからこそだろう。

 そして世界に向けてのコメント配信。

これには本当に骨が折れた。普段から目立つのは好きではないのに、半ば無理矢理やらされたのだ。

御蔭でいらない注目を浴びることに。

疲れる事ばかりが終わったあとには、もうクタクタである。

 そんな俺を労おうと真耶さんが俺の部屋に来てくれたのだ。

俺はその気持ちが嬉しくて仕方ない。恋人にここまで想ってもらえるというのは、恋人冥利に尽きる。

真耶さんは部屋に入ると、さっそくお茶を入れようと台所に向かった。それを俺は急いで止めようとしたのだが、やんわりと断られてしまった。恋人とはお客人にそんなことをさせるわけには行かないのだが、

 

「今日はお疲れなんですから休んでて下さい。それに、そこまで遠慮しないで下さいよ。こ、恋人なんですから・・・ね」

 

 そう恥じらい真っ赤になりながら言われては止められなかった。

そして現在、俺達はベットに腰掛けながらお茶を啜っていた。

俺の体に寄りかかる真耶さんの体の重みが心地よく感じる。

 

「はぁ~・・・・・・」

 

 そんなため息を吐いてしまう。それくらい疲れたのだ。

 

「大丈夫ですか、一夏君」

 

 心配そうに真耶さんが俺の顔を覗き込む。その可愛らしい顔に俺は毎回ドキドキしてしまう。

 

「ええ、大丈夫ですよ・・・ただ・・・」

「ただ?」

「こうして真耶さんと居られて、やっと落ち着くなぁ~と思いまして」

 

 そうしみじみ思いながら答えると、真耶さんの顔がさらに真っ赤になった。

 

「もう・・・・・・」

 

 そう仕方ないなぁ~、と言いながらもその顔は嬉しさに満ちていた。

そんな顔も可愛くて、俺はついつい目が離せなくなってしまうのだ。

 そうして二人っきりで静かにお茶を飲みながらゆっくりとしていた。別に何かをするわけではないのだが、それでも真耶さんがいるだけで俺は幸せを感じていた。

真耶さんも同じ気持ちなのか、俺に寄り添ったまま静かに目を瞑っていた。その無防備な姿に胸が高鳴る。そうしてドキドキしながらも、心地よい感覚に身を任せながらしばらくそうしていた。

 そうして十分間くらい経った後に、真耶さんは俺に少し真面目そうな顔で話しかけてきた。

 

「でもこれで世界は大変になっちゃいますね。どうなっちゃうのか少し不安ですよ」

 

 俺は不安そうな真耶さんの安心させようと肩を抱きしめる。

真耶さんは俺の行動に少し驚いたが、そのまま身を任せた。

 

「たぶん・・・・・・そこまで変わらないと思いますよ。束さんがこれからどうなるかは束さんが決めることですし、ISより劔胄の方が戦闘力が高いからってISほど便利でもないですしね。仮に劔胄が普及したところで簡単に女尊男卑が無くなるとも思えません。男尊女卑になろうものなら、今度は俺がそれを叩き潰しますから」

 

 俺の答えに満足したのか、真耶さんは気持ちよさそうに俺の肩に頭を乗せる。それが信頼されていることを実感して嬉しくなっていく。

 

「でも・・・・・・少し怖かったですよ。試合中の一夏君」

 

 そう真耶さんは俺を見つめて言う。

 

「いつもと同じだと思うんですが・・・」

「違いましたよ。いつもは格好良くて優しくて、それでいて笑顔が可愛い一夏君なのに、まるで別人みたいに見えて・・・・・・」

 

 そう不安そうな顔で俺を見つめる真耶さん。

たぶん死合いの時の殺気立った俺を見てそう感じたんだろう。死合いの時は普段と違い、戦闘態勢に移行しているから、普段と雰囲気も違うのかも知れない。そのことに不安がらせてしまったことに申し訳無く感じた。

 だから安心させようと俺は真耶さんを抱きしめて、柔らかい唇にキスをした。

 

「んぅ・・・・・・・・・」

 

 いきなりされたことに驚きつつも、真耶さんは俺の唇を受け入れてくれた。

少し永めにすると、唇を離した。真耶さんは顔が赤くなっていたが、なんだか嬉しそうだ。

 

「大丈夫ですよ。俺は戦っていようが料理をしていようが、俺です。あなたの恋人の織斑 一夏ですよ。だから安心して下さい。どんなことがあっても俺は変わりませんから」

 

 自分も真っ赤になっていることを自覚しながらそう答えると、真耶さんはとびっきりの笑顔になった。

 

「そうですか・・・・・・ふふふ・・・・・・」

 

 俺の返答に満足して真耶さんが抱きついてきた。

俺はそれをやんわりと受け止める。真耶さんの柔らかい体の感触が体に伝わって、恥ずかしいけど嬉しくなる。そのまましばらく真耶さんを抱きしめていた。

 

「でも・・・・・・これで一夏君のことがもっと世界に知れ渡っちゃいましたね。ウカウカしてられません」

 

 決意を顕わにする真耶さんに、俺は何故そう意気揚々なのか聞いてみた。

 

「何でそこまで意気揚々なんですか?」

 

 そう聞くと、真耶さんは少しふくれた。何でふくれるんだ?

 

「一夏君はわかってないです! こんなに格好いい一夏君が世界に更に知れ渡っちゃったんですよ。一夏君を狙う他の女の子が一杯来ちゃうじゃないですか! 一夏君は私の恋人なんですから、負けるわけにはいきません!」

 

 俺を叱りながら真耶さんはそう説明した。

 

「そんなことないと思うんですが・・・・・・」

 

 恋人から格好いいと言われて嬉しいのと、恥ずかしさから真っ赤になってしまう俺。

しかし、そう意気込んでいる真耶さんの評価は過大評価しすぎではないだろうか?

 

「一夏君は自覚がなさ過ぎるんですよ! 学園で一夏君を見て頬を赤くする生徒がどれだけいたのかを。それを見る度に私は不安だったんですからね。それなのに、今回の活躍でより有名になっちゃって・・・・・・篠ノ之博士に言ったあの言葉、凄く格好良かったんですから。あんな言葉を言われたら、一夏君に恋しちゃう女の子が増えちゃいますよ・・・・・・」

 

 そう顔を真っ赤にしながら言う真耶さんは、何だか・・・・・・焼き餅を焼いているようにも見えた。

そのことですら嬉しくて、俺は真耶さんを思いっきり抱きしめる。

 

「安心して下さい。いくら女の子が来ようが、俺が好きなのは真耶さんだけです。これは絶対で、生涯変わることはないですよ。でも・・・そんな焼き餅を焼いてくれて、ちょっと嬉しいです」

「はうっ!? ぁぅぁぅ~~・・・・・・・・・・・・」

 

 答えた瞬間に真耶さんポスト以上に真っ赤になってしまった。

その姿がまた可愛いものだから、俺は笑ってしまった。

 

「もう~、笑うなんて酷いですよ~」

「すみません、真耶さんが可愛かったものっですから」

「もう~!」

 

 そう怒る真耶さんだが、それでもやはり可愛かった。

そうして楽しく話をしていたら、真耶さんは急に静かになった。

そのことに不安になると・・・・・・

 

思いっきり真っ正面から抱きしめられた。

 

 さっきもよく抱きしめていたが、それまでとは比較にならないくらい力が強い。そんな気は無いが、振り解けそうにない。

途端に近くなる真耶さんの顔。

お互いの息が鼻に掛かるくらいの超至近距離。目の前には綺麗で可愛い真耶さんの顔が真っ赤になりながら俺の目を見つめていた。

 そのことにドキドキとなり、目が離せなくなる。

 

「今日のことでも一夏君がどこかに行っちゃいそうな気がして怖かったですし、一夏君を狙ってくる女の子も増えると思います。だから、一夏君をつなぎ止め、私の恋人だって証拠を付けようよ思います」

 

 そう真剣に言うと、目を瞑って唇を俺に突き付けると・・・・・・

 

「んぅ・・・ふぅ・・・・・・ちゅ・・・んん・・・・・・」

「ッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 キスされた。それも深い方のをだ。

途端に頭の中が真っ白になっていく。絶えず真耶さんの舌が俺の舌を絡め取り、口の中をかき回されていく。あまりの感触に意識が飛びかける。

 少しして息苦しく感じ始めたが、そのことすら気持ちよく感じてしまう。

そして唇を離す真耶さん。その顔は酸欠以外の理由もあって今までで一番真っ赤になっていた。

 

「一夏君に私のことを刻んじゃいます。言ってたじゃないですか、篠ノ之博士に『心に刻んで下さい』って。だ・か・ら、私のことを一夏君に刻んじゃいます。一夏君は私の恋人なんですからね。その証です」

 

 そうかなり恥ずかしがりながらも自信満々に言う真耶さん。少し言葉が違った気もするが、頭が正常に働かないので気にならなかった。

 そしてもう一回深いキスをされてしまう。

 

(あぁ・・・・・・本当に可愛くて仕方ない人だ。俺こそ逆ですよ。真耶さんは俺の恋人なんですから、一生離しませんよ)

 

 そう思いながら、俺もそのキスに応じた。

結局・・・・・・再確認できたのは、俺が真耶さんにデレデレということだけであり、そんな人間が変わるわけが無いということだけだった。




次回は何をしようか悩みどころですね~。
修学旅行にしようか、山田先生の実家への挨拶にしようか。

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