装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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はぁ・・・・・・早く甘い話しが書きた・・・あっといけない。禁断症状が出そうになってしまいました。
今回も真面目? な話ですよ~。


臨時講師 その3

 講義の三時間目、つまり訓練の時間となった。

俺達三人は部隊の人全員を連れて野外の訓練場に向かった。

 皆さっそく九○式竜騎兵甲を装甲していた。

俺達も装甲することに。

 

「いくぞ、正宗! 訓練とは言え手は抜かん!!」

『諒解!』

 

 俺の呼びかけに応じて目の前に正宗が飛び降りてきた。

真田さんの方も似たように目の前に降り、伊達さんの方は此方に向かって突進してきた。

 そして三人同時に装甲の構えを取り、誓約の口上を述べる。

 

『世に鬼あれば鬼を断つ 世に悪あれば悪を断つ ツルギの理ここに在り』

『不惜身命 但惜身命』

『悪羅 悪羅 悪羅』

 

 その場に現れる真打劔冑の武者が三人。

その光景は圧巻で、周りから息を呑む雰囲気が伝わってきた。

 

『んじゃ、さっそく・・・・・・織斑は三十本組み手な。お前等、胸借りるつもりで本気でぶつかっていけ!』

 

 伊達さんのいきなりのこの発言に劔冑越しとは言え噴きそうになった。

 

『なっ!? いきなり何言ってるんですか、伊達さん! 俺は今日、指導としてここに来たんであって・・・・・・』

『まぁ、そう固いこと言わないでくれ織斑君。皆君の剣を見てみたいと思っているはずだからね。君も少しは気になるでしょ、どれくらい彼等がやれるのかを』

『それはそうですけど・・・・・・』

 

 その上真田さんに窘められてしまった。

まぁ、確かにどれくらい出来るのかも気にはなったが、まさか急にこんな事を言われるとは思わないだろう、普通は。

 伊達さんの声に、皆やる気を見せているようだ。劔冑越しでも、そのやる気がよく分かる。

俺は仕方ないと諦め、さっそく訓練場の真ん中に行き、斬馬刀を構える。

すると部隊の皆は俺と向かい合うように移動し、列を成していた。

真田さんと伊達さんは審判役らしく、俺と部隊の列を挟んで両端に構えていた。

 さっそく先頭の一人が前に出て、刀を構える。

 

『一番、金田 祐輔二等陸士、行きます!!』

 

 金打声を聞く限り、あの若い隊員のようだ。

俺が構えると彼も構えた。しかし、構えを見て内心少し呆れてしまった。

 上段の構えである。

上段は防御がおろそかになりがちだが、その代わり力の籠もった斬撃を放てる構え。武者同士の死合いでも結構使う構えなので普通のものなのだが・・・・・・

 

(果たしてそれを使いこなせるのか?)

 

 そう思ってしまう。

上段は言わば上級者の構えであり、使うのが結構難しい。

しかも彼を見た限り、腰が少し引けている。つまり馴れてない。

 俺はその疑問を考えながらも正眼に構える。

そして真田さんの『始めっ!!』の合図と共に組み手が始まった。

 

『いぃやぁあああああああああああああああああああああああ!!』

 

 若い隊員、金田二等陸士が気迫を込めて此方に刀を振るう。

俺はそれを下からの斬り上げで迎え討った。

いつもより少し緩い激突音が鳴った。

 

『うぉおおおおお! ・・・・・・あれ?』

 

 金田二等陸士が次の攻撃に移ろうと気迫を込めて叫ぶが、自分の右手に違和感を感じてそちらを見る。するとそこには・・・・・・持っていたはずの刀が無くなっていた。

そのことに気づき、間の抜けた声を上げる金田二等陸士。

俺は斬り上げで刀をはじき飛ばしたのだ。刀は金田二等陸士の後方に飛んでおり、地面に突き刺さっていた。

 

『握りが甘い! 腰が引けている! カァッ!!』

 

 そのまま空いている胴に峰打ちで一撃。

 

『っっっっっっっっっっっっっ!?』

 

 金田二等陸士は体ごと横へと吹っ飛んだ。

倒れた先で盛大に土煙が上がり、咳き込む声が聞こえた。

 

『次の人、お願いします。それとふざけているとああなりますから、気を付けて下さい』

 

 俺は刀で金田二等陸士を指しながらそう皆に言う。

後で知ったが、別に金田二等陸士はふざけていたわけではないらしい。何でも伊達さんに憧れてああいう構えにしているのだとか。しかし、俺はまず基本が出来ていなければ駄目だと思う。

基本が出来てから、そう言うことには挑戦してもらいたい。

 

『二番、佐藤 かなえ二尉、行きます!』

 

 次に来たのは佐藤二尉だ。

彼女は俺の前に出ると、正眼に構える。

うん、よく構えられている。重心もどっしりと落ち着けており、見本のような正眼の構えだ。

俺は先程と同じ、正眼に構えた。

 そして開始の合図。

 

『えぇえええええええええええええいいいい!!』

 

 開始と同時に胴に向かって横凪に一閃してきた。

虚を突いた良い攻撃だとは思うが・・・・・・

 俺はその横凪に同様の横一線を振るい迎撃する。

 

『ふんっ!!』

『きゃぁ!』

 

 ほぼ同じ攻撃がぶつかり合った場合、勝敗を分けるのは力である。

俺の一閃に彼女の刀は弾かれた。

そのまま二の太刀で上段からの一撃を放つ。

 

『ハァッ!!』

 

 上からの一撃を受け、彼女は踏鞴を踏みながら後ろへと下がる。

 

『虚を突こうとしたのは良いですが、性急に進めすぎです。二の太刀も用意しておかなければいけません』

 

 そう彼女に言うと、彼女は、あはは、と笑っているようだ。

 

『ありがとうございます。でも、女性相手でも手加減はしないんですね』

『訓練ですから』

『それはそうですけど、彼女さんには優しくしてあげたほうがいいですよ』

 

 意趣返しと言わんばかりにそんなこと言われてしまった。

 

『そ、それはわかってますから!』

『そうですか。ならいいんですけど』

 

 そう言って彼女は列から離れていく。

列からちょっとした苦笑が漏れているのが聞こえ、恥ずかしさから顔が熱くなっていくのを感じた。

 恥ずかしさを紛らわせるためにも、より訓練に熱を入れることにした。

 

 こうして、部隊の皆の地獄の扉が開かれた。

 

 

 

『ぎゃぁああああああああああああああああああああああああああ!!』

『ぐふぉお!?』

『げはぁああああああああああああああああああああああああああ!!』

『のぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 次々と悲鳴が上がっていき、訓練場の端には気絶して装甲を解かれた隊員が積まれていた。

熱を入れて組み手に取り組んだ結果、先程よりも剣筋が鋭くなり手加減が少し弛まった。

なので峰打ちとは言え刀を打ち込まれた隊員達は皆一様に振られた方向へと吹っ飛び、気絶させられていた。

 そうして山を築いている内に気がつけば、隊員も残り僅かとなっていた。

 

『では次、斉藤 京史郎二尉、参ります』

 

 そう言って刀を構える九○式竜騎兵甲。

相手はどうやらあの真面目な隊員のようだ。

彼は俺と相対すると、刀をさっそく構える。

構えは上段だが、金田二等陸士のものとは違い貫禄があり明らかに剣道の上級者である。

真面目な人だから、きっとこれも本気なのだろう。

俺は彼の誠意に応えるために、此方も上段に構えた。

ジリジリと気迫が伝わってくる。中々に良い気迫だ。

そして真田さんの合図と共に同時に動いた。

 

『やぁあああああああああああああああああああああああああ!!』

『きぃぇええええええええええええええええええええええええ!!』

 

 激突音は聞こえない。

俺は彼に対し、切り落としを持って攻撃に出た。

相手の攻撃に同じ攻撃を持って当たり、先に相手を斬る、そういう技だ。

 俺の刀は見事に彼の頭を先に捕らえた。

 

『お、御見事・・・・・・』

 

 彼はそう言うと、その場で膝を折りながら崩れ落ちた。どうやら気絶したらしい。復活した金田二等陸士に運ばれていった。

 そして次の相手を見よう目を向けたが、そこには誰もいない。

 

(あれ? まだあと三人くらい居たはずなんだけど・・・・・・)

 

 そう考え、他の方にも目を巡らせようとしたら上空から金打声が俺に叩き付けられた。

 

『次は俺だぜぇ、織斑!! 『初音ッ!!』』

 

 声の方に目を向けると、伊達さんが陰義を使った技を放ちながら突っ込んできた。

音速の剣撃に咄嗟に刀を鞘から抜き放つ。

 

『吉野御流合戦礼法、迅雷ッ!!』

 

 俺の放った居合いに伊達さんの斬撃がぶつかり、さっきまでの組み手とは比較にならないくらい大きな激突音が訓練場に響いた。

 伊達さんは後ろに吹っ飛びつつも体勢を整えていた。

 

『いきなり何をするんですか、伊達さん!』

『いやよぉ、あまりにも暇だったんでついな。手前との組み手もいいかと思ってよぉ』

 

 俺の抗議の声に、伊達さんはまったく反省せずに、イタズラが成功したかのような笑い声を上げる。

 

『何をやっているんだ、伊達!!』

 

 当然真田さんからも叱責の声が・・・・・・

 

『俺も混ぜろ!!』

 

 まったく駄目な大人達であった。

 

『ふざけんな! 手前は大人しく審判してろよ』

『断る! 貴様は最近死合ったばかりだろ! こちらはしばらくしていないのだから、此方に譲れ!!』

 

 そして喧嘩を始める二人。

 

『蜘蛛手十文字ッ!!』

『白菊ッ!!』

『吉野御流合戦礼法、雪崩ッ!!』

 

巻き込まれて俺も戦うことに・・・・・・

 

 結果組み手はそこで終了し、そこからは武者同士による乱戦へと発展。

訓練場が見るも無惨な状態へと変わっていった。

隊員の人達は俺達の戦いを見て感嘆の声を上げるが、訓練はいいのだろうか? 俺は訓練を気にしている余裕が無くなっていた。

 そしてこの戦いが収まったころには・・・・・・

基地のお偉いさん方の前で三人とも正座で怒られていた。

 その時に伊達さんが陰口で、「うるせぇ、この禿げ」と言っていたが、禿頭の人間が言っていい台詞だとは思えなかった。

 こうして、俺の自衛隊への臨時講師は終わりになった。

 

 

 この後すぐにでも真耶さんに会いたかったが、真田さんと伊達さんに捕まって強制的に飲みに行かされた。

 

(はぁ・・・・・・早く復りたいよ、真耶さん・・・・・・)

 

 そう思いながら、俺は二人に引きずられて行った。

 

 

 

 

 




次回からはまた学園でのお話です。
簪ちゃんもでるかも?

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