初めまして。私はセシリア・オルコットと申します。
イギリスの名門貴族、オルコット家の当主をしております。
この若さで当主というのは、すごいですって?
私は少なくとも嬉しいとは思えませんわ。何せ本意で継承したわけではないのですから。
三年ほど前に両親が列車事故で他界してしまい、私は家を守るため、両親の遺産を汚い大人達から守るため、オルコット家の当主を引き継ぎました。
そのためには多くのことを学ぶために勉強しなければならないことだらけで、同い年の子供がやっているようなことは、あまりできなかったです。
IS適正テストでA+を出した私に、政府は国籍保持のためにいくつもの好条件を提示しました。
それは遺産を守るために役立つもので、私はイギリスの代表候補生として選ばれました。
そして第三世代型IS ブルーティアーズの実働データを取るため、ISの操縦技術向上のために、私はIS学園にきました。
私は小さいころから、男の人が嫌いでした。
それはきっと・・・父親のせいでしょう。
婿養子としてオルコット家にきた父は立場の弱さから母親に対し卑屈になり、いつもオドオドしていました。
『将来は情けない男とは結婚しない』
小さかった私ですら、そう思わせるほどに父は情けなかった。
その情けない姿に憤りを覚えました。
ISが発表されてから両親の仲の悪さは拍車がかかり、親子三人で過ごす時間は皆無と言っていいほどに無くなりました。
そんな、仲が冷め切った両親が、何故あの日に一緒にいたのか?
それは未だに分かりません。
ISの発表に伴い、世界の男の立場は逆転しました。
その結果、男はオドオドした情けないものだらけになり、私の男嫌いも悪化していきました。
一応言っときますけど、私は・・・その・・・そっちのけがあるわけではありませんからっ!
私ははっきり言って、男に失望していたのです。
このクラス代表決定戦を迎える日までは・・・・・・
私はこの試合に負けました。
それも善戦したとかでもなく、圧倒的な差をもって完膚なきまでに叩き潰されました。
最初に劔冑とやらをテレビで見たとき、私は
「ああ、また男どもが無駄な抵抗をしている」
と思いました。どこの国にでも、ISを否定する人たちはいくらでもいます。
そういった人たちがISを倒すために独自で開発したものはいくらでもあり、それを発表しては試験評価でISに負かされ、潰されていくのが今の世の中というもの。当然私の目にはそう映りました。
全身を覆う無骨な全身装甲。PICなど持たないらしく、ずっしりとした出で立ち。
はっきり言って愚か者にしか見えませんでした。映像は細工されたものだろう、と。ISに勝てるわけが無い。私は毎度の愚かさにさらに男に失望していきました。
そんな風に高を括っていたですが、文句のつけようが無いほどに負けました。
悔しくって悔しくて、どうしようもありませんでした。
ほぼ中破したブルーティアーズが相手の攻撃で落下したときに突然受け止められ、私は訳が分かりませんでした。
今まで見下してきた男に何を言われるのか、何をされるのか、私は怖くて仕方なかった。
でも・・・・・・そんな私に彼がかけた言葉は、罵倒でも侮辱でもなく、私への心配でした。
私が何故、と聞くと彼は
「人が人を心配することは当たり前だ」
とさも当然に言ってきました。
私はそんな、人としてのごく普通のことさえ忘れてることに気付かされました。
何故そんな当たり前のことを忘れていたのでしょうか。思い返せば、恥ずかしくて、穴があったら入りたくなるくらいです。そんな物心付くか定で無い子供ですら、わかっていることですのに。
今私は保健室のベットで・・・悶えていました。
彼が最後に言った言葉を思い出しては顔が熱くなって、どうしようもない気持ちがあふれて仕方ないのです。
自分が何故こんなことになっているのか。
考えてみれば当然のように分かってきます。
私が男嫌いになったのは、父のせい。ならその父とは真逆の男性が現れたら?
今まで考えたこともなかったことでしたが、結果はこの通り。
確固たる信念を持って悪を許さぬという姿勢、それでいて女尊男卑抜きにして女性に優しくあるべきという紳士のような思考、礼節を尊ぶそのあり方。
まさに父とは真逆の私の理想そのもの。
これが恋に落ちるという事なのかと、ベットで私は嫌というほど理解させられます。
今すぐにでも会いたい、在って声が聞きたい、彼が言った笑顔で彼に話しかけたい、そして彼の笑顔が見たい。
私はそう想っては顔を真っ赤にして、ベットで暴れてしまい、シーツがぐしゃぐしゃになってしまいます。
ああ、早く明日になって彼と会いたいですわぁ・・・・・・