これからも一杯感想よろしくお願いします。
結構この感想を活かせる作品作りをしていきたいので、応援よろしくお願いします。
更識 楯無は後悔し始めていた。
織斑 一夏を生徒会に入れてから三日が経ち、その間に楯無の日常は大きく変わってしまった。
具体的に言うと・・・・・・
「それじゃ織斑君、あとよろしく~」
一夏が入った翌日、さっそく生徒会のメンバー紹介をして仕事に取りかかることになったのだが、楯無はそう言い生徒会長としての仕事をサボろうとしていた。
これは今回に始まったことではなく、毎度のことであった。そのため生徒会会計である布仏 虚は毎回頭を抱えていた。曰く、そのせいで仕事が全然進まないと・・・・・・
しかし、虚はこのどうしようもない自分の主を止める術を持たないため、毎回逃げられてしまっていた。
今回も言うに及ばず、虚は止められない。もう駆け出した楯無を止めることは出来ないと半ば諦めていた。しかし・・・・・・
「正宗、止めろ」
『諒解』
一夏がそう静かに言うと、出入り口の前に一夏の劔冑である正宗が天井から落下し、出入り口に立ちはだかった。
「生徒会長、ちゃんと仕事はしましょう。それこそが生徒会長としての責務ですよ」
『生徒の長として規範となる誠意を見せよ! 仕事を怠けること、それすなわち悪なり』
この逃亡は一夏と正宗によって止められた。
それから楯無のサボりは不可能となった。逃げようものなら即座に正宗を差し向けられ、仮にそれを躱せたところで今度は一夏が向かってくる。いくら生徒会長=学園最強と言っても、武者として鍛えられた一夏の足の速さにはかなわない。すぐに捕まってしまい、また仕事机へと戻されてしまうのだ。
御蔭で生徒会の仕事は今まで以上に滞りなく進み、虚は感動に涙を流していた。
逆に楯無はげっそりとしていたが・・・
そうして生徒会を主導権を握られて三日が経ち、楯無のおでこには未だに絆創膏が貼られたままであった。
別にこのことにそこまで後悔を感じてはいなかった。
楯無とて生徒会の仕事がスムーズに進むのならそれにこしたことはないと思っていたし、寧ろ一夏を入れた事によるプラス面を鑑みれば個人の不満など無きに等しい。
では何故後悔しはじめているのか? それは一夏の有能性が原因だった。
「ではこの書類の裁可の判子をお願いします、会長」
そう一夏は書類の束を楯無の机にどっしりと置く。
その顔は真面目一辺倒な表情をしていた。
「『サボらず』にお願いします。次にはこの書類をお願いしますね」
そう真面目に言う一夏は、眼鏡のレンズを光らせていた。それが尚冷酷に見えて楯無は内心怯んでしまう。
一夏が生徒会に入ってからデスクワークをするときは必ずといっていいくらいに眼鏡をかけていた。別に視力が悪いらしいわけだはなく、この方が集中出来るからだそうだ。眼鏡も伊達であることもあって、本当のことらしい。(夏休みに内緒で買った伊達眼鏡である)
そして三十分後には・・・
「では今日の自分の仕事は終えたので、お先に失礼します。布仏先輩、会長がサボらないよう、きっちりと見張っておいて下さい。何でしたら今日も正宗を置いておきますから」
そう虚に一夏は言うと、さっさと帰ってしまう。
普通ならば待てと言うべきなのだろうが、一夏は与えられた以上の仕事を短時間ですべてこなしてしまうため、誰も文句が言えなくなってしまう。実際に無理矢理生徒会に入れたのだから文句も言わずに働いてくれるだけでも有り難いのだ。それ以上は言えた義理ではない。
しかも一夏のこなした仕事の量は楯無の軽く三倍、それもそれを経った三十分で済ますというのは生徒会全員が驚愕した。ちなみに同じ量の仕事を楯無がこなした場合は三時間以上掛かる。
そこまでやられてしまっては文句など言えようもない。
楯無はこのことを後悔し始めた。何か自分は不味いものを入れてしまったのではないだろうかと・・・・・・
俺は今日も生徒会の仕事をこなすと食堂のカフェへと向かっていた。
最近はこれがいつもであり、俺はそのために仕事を少しでも速く終わらせていた。幸いな話、生徒会の仕事はそこまで難しいものじゃなかったので苦労はしなかった。生徒会の仕事なんて、獅子吼様のところの仕事に比べれば天国のようなものだ。
あの経験がとても良く活きていることに俺は獅子吼様に感謝した。御蔭で今では書類仕事も難なくこなせる。その御蔭で仕事を速く終わらせられる。
俺は早足でカフェに着くと、さっそく声をかけられた。
「一夏く~ん、こっちこっち」
その甘い声に顔が綻んだ。
声の方を向くと真耶さんが嬉しそうに手を振っていた。
真耶さんの方へと向かい、対面の席へと座る。
「生徒会のお仕事、お疲れ様でした」
「お言葉、ありがとうございます」
労ってくれるのが嬉しい。自然と俺の顔も笑顔になっていく。
真耶さんは俺にコーヒーを出してくれた。
最近ではこれが定番であり、俺のためにコーヒーを用意してくれている。しかも連絡を入れていないのに俺が来るタイミングを読んで暖かい状態で出してくれるのだ。その心遣いが嬉しくて仕方ない。
渡されたコーヒーをさっそく啜ると、やはり暖かい。
その心遣いが有り難いコーヒーを啜りながら俺は真耶さんと楽しく話をしていく。今日あった出来事や生徒会での出来事など、色々と。
初日のときは眼鏡をかけたまま来てしまい、それを見た真耶さんは、
「あ、その眼鏡・・・買ったんですね~。やっぱり似合ってます」
と顔を赤らめながら喜んでくれた。その顔がまた可愛くて仕方なかった。
やはり恋人に似合うと褒められるのは嬉しいものだ。
その後も話は続いていき・・・・・・
「そう言えば一夏君の誕生日っていつなんですか?」
と真耶さんに聞かれたのだが、俺はしばらく考え込んでしまった。
(ええ~と、誕生日、誕生日・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、)
「確か九月二十七日だったと思いますよ」
何とか思い出した。約二分ほど思い出そうとした後に。
「何で自分の誕生日を思い出すのにそこまでかかったんですか・・・・・・」
真耶さんは少しだけ呆れたようだ。そう言われても困る。確かに普通なら自分の誕生日くらいすぐに思い出せるのかも知れないが、俺は二年前から修行に明け暮れていたせいでそんなことも忘れていたのだ。
「ま、まぁ、修行でそれどころじゃありませんでしたから・・・・・・」
少し恥ずかしくなって後頭部を軽く掻いて苦笑する。
「それじゃ祝ってもらったのは」
「二年前くらいじゃないですかね。それ以降はそんなことも忘れていましたし。今聞かれて思い出したくらいですよ」
「そうなんですか! だったら一緒に祝いましょう。ね、一夏君」
そう笑顔でお願いする真耶さん。
俺はと言うと、恋人と初めて過ごす誕生日というのを自覚して真っ赤になってしまった。
「そ、そうですね。それじゃあ・・・・・・誕生日は一緒にいましょうか」
「はい!」
真耶さんは生き生きした笑顔で喜びながらそう言うと、何かを意気込んでいた。
俺はそれ以上に真耶さんと過ごす誕生日に思いを馳せていた。