俺はブザーが鳴ると同時に反転し、墜ちてくるオルコットを受け止めた。
「これは一体なんのつもりですかっ!?」
ISがあるとは言え、中破状態なので危ないと思い受け止めたのに、何故か噛み付かれた。
どうやらオルコットには見下されてるように見えたらしい。
「危ないと思ったから助けた。それに何か疑問でもあるのか?」
「私たちは敵同士です。あなたなんかに助けられたくありませんっ!!」
敵意丸出しだな~。でも・・・・・・
「俺はそうは思っていない」
「それは勝ったからですか! 私では相手にもならないとっ!?」
そうオルコットは言うと、目に涙が浮かび始めた。
あ~あ~、泣き出しちゃった。やり過ぎたのか。
「違う、そうじゃない。確かに戦っているときはお互い敵同士かもしれない。でも戦う以前に俺達はクラスメイトだ。クラスメイトとは仲良くしないとな」
「そ、そんな理由でっ!?」
それ以外にもあるんだけどな。
「それになぁ~」
「何ですのっ!?」
「いくら敵同士だからと言っても、その前に君は女の子だろ。女の子に手を上げてしまった、てのは男としては自己嫌悪するもんなんだよ。いくら試合とは言え、ケガさせてしまったら俺は自分の未熟が許せなくなる。試合という言葉を理由にケガをさせてもいい、なんてことを肯定してしまっては、それはただの言い訳、悪になってしまう。俺はそれが許せない」
「ISには絶対防御があるから、ケガなんてするはずありませんわ」
そうは言うが、絶対防御とて確実ではない。
すさまじいほどの攻撃を受ければ、貫通してしまうことだってある。
正宗にだってそれほど威力のある技だってあるのだ。
師匠の陰義を使った技や、師範代の技なら、絶対防御など紙同然になってしまうだろうよ。
劔冑の性能は侮れない。それ故に心配になってしまう。
「たしかにそれの御蔭で無事だろうけど、そうだからと言って心配してはいけない、てことはないだろ。人を心配するのは当たり前のことだ」
俺がそう言うと、何故かオルコットは顔を赤らめていた。
もしかしたら先ほどの試合で疲れが出て熱を出してるのかもしれない。
「取りあえず保健室に運ぶから、しっかり捕まっておけ」
「え、?・・・・・・きゃあ!?」
俺は受け止めたオルコットを運びやすいように抱き変える。
人それを・・・・・・お姫様だっこと言う。
恥ずかしくはないのかだって?
効率優先だし、俺はまだ装甲したままだ。なんら恥ずかしいことなど無い。
一方抱きかかえたオルコットは俺のことを考慮してか、ISを解除してくれていた。
「それじゃ歩いて行くから、何かあったら言ってくれ」
「・・・・・・はい・・・・・・」
顔を真っ赤にしたまま小さい声でオルコットが応える。
熱が酷くなってきたのかもしれない。急がないとな。
オルコットをお姫様だっこで持ち上げながら俺は自分が出た方のピットに歩き始める。
観客からは何やら拍手などが鳴り響いていた。
そのことに少し安心。
もしオルコットを罵倒しようとする人がいようものなら、今度はその人を討ちにいかなければいけないからな。戦いもしないものが、負けたものを罵倒する権利などない。罵倒しようものなら、そのものは悪だ。
「何故、私にここまでしてくれるのですか?」
歩いてる最中にオルコットが聞いてきた。
「何故、て言われても・・・さっき言ったとおりなんだけどな。ああ、それともう一つ」
「それはなんなんですの?」
「君はさっきから怒ってばかりな顔をしていただろ。こんなにきれいな顔をしているんだ、笑顔のほうがきっとよく似合うと思う。だからかな・・・・・・たぶんそれが見てみたくなったんだろ。それが理由だ。あと追加で熱を出し始めてるようだからな、安静第一だ。俺のせいで熱で寝込まれたら、君に合わせる顔がない」
「な、な、な、な、なな、な、なっ!?」
おや、オルコットの顔がさらに真っ赤になっている。
熱がさらに酷くなってきたのかもしれない、早く急がないとな。薬とか置いてあるのか、解熱剤?
俺はピットに戻り次第に装甲解除。直ちにオルコットを保健室に運びに行く。
ピットにいた三人はなにやら言いたそうだが、ここは病人優先、後で聞く。
俺は背中に、山田先生のうらやましそうな視線と、箒の、ぐぬぬ、といった悔しそうな(何故?)視線、それと千冬姉の何とも言えない視線を受けながら、ピットを後のした。