たまには痛い目に遭ってもらいましょう!
その後も俺達は学園祭をまわった。
お化け屋敷に行っては・・・・・・
「きゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
脅かされた真耶さんは大層怖がり、そのたびに悲鳴を上げながら俺に抱きついた。
思いっきり抱きつくものだから、胸やら何やらがぎゅうぎゅうと押しつけられて俺は怖さとは別の意味でドキドキとしっぱなしだった。
いつも抱きしめるのとは違って、恐怖から加減が出来ておらず真耶さんは必死になって俺にしがみつく。そのため密着度がいつもの比では無い。
(あぁあああああああっ、む、胸がぁあああああああああっ!? や、柔らかい・・・・・・じゃなくて! このままじゃ別の意味で不味い!!)
俺はこのためドキドキしすぎて別の意味で生きた心地がしなかった。
しかし内心ながらには、抱きついてくる真耶さんが可愛くて愛おしく思ってしまったのは内緒だ。
お化け屋敷をでた瞬間に真耶さんは腰を抜かしてしまい動けなくなってしまった。
なのでその場で背負い動けるようになるようになるまで背負って移動した。
その時顔を真っ赤にしながら恥ずかしがっている真耶さんもまた、可愛かったなぁ。
そんなことを思い内心で顔を緩ませてしまっていたことは見逃してもらいたい。
その後もいくつかの出し物を一緒に見に行き、そのたびに真耶さんは楽しそうだった。俺もその笑顔が見れて嬉しかった。何だか本当に真耶さんと一緒に学園に通っているような気がして楽しい。
そして時間はあっという間に過ぎ、休憩時間ももう終わりそうになっていた。
「もう休憩時間も終わりですか・・・・・・あっという間でしたね」
「そうですね。もうちょっと一緒にまわりたかったです」
そう残念そうに言う真耶さんが少しすねた感じがして可愛かった。
「後で後夜祭もするそうですから、その時また一緒に」
「はい!」
そう誘ったら、また花が咲いたかのような笑顔を此方に向けてくれた。恰好のせいかいつもより可憐に見えて、また俺の胸はときめいてしまった。
二人で1-1に戻ろうとしたところでいきなり放送が鳴り響いた。
『一年一組の織斑 一夏君、教員の山田 真耶先生、至急第三アリーナに来て下さい。繰り返します・・・・・・』
どうも放送委員が頼まれていれたものらしい。
しかし少し腑に落ちない。何故、第三アリーナに呼ばれたのか? 何か催し物があったとしても俺と真耶さんを呼び出す理由にはならない。
凄く嫌な予感がする。
しかしここで逃げてはいけない。本当に用があった場合は先方が困ってしまうかもしれない。それはいけないだろう。
「一体何でしょうね?」
「そうですね・・・・・・」
俺と真耶さんはその場で頭を傾げてしまっていた。
そして俺と真耶さんは第三アリーナへと向かった。
すると外からは見えなくなるようになっていた。中に入ると周りが窺える程度にしか明るくない。
映画館のような感じだ。既に多くの人がいるらしく、ざわざわとざわめきが聞こえてくる。
この状況に戸惑っている俺と真耶さんに声がかけられた。その声は俺にとってあまり良い物ではなかったが。
「山田先生、織斑君、こっちこっち」
俺達に声をかけてきたのは更識生徒会長だった。此方の方に手を振っている。
その姿を見て、俺達を呼び出したのはこの人だとわかった。
何故俺達を呼び出したのか訊こうとしたところでまた声がかけられた。
しかしその声は予想だにしないものだった。
「やっほ~、いっちーおひさ~」
「これは久しいでござるな、織斑殿」
声がした方を向くと、茶々丸さんと童心様が笑っていた。
茶々丸さんはいつもと同じ動きやすい外出着で、童心様はまんまお坊さんの恰好をしていた。
本来ならちゃんと挨拶しなければならないのだろうが、この二人が現れたことによるショックで俺は固まってしまっていた。
真耶さんは童心様のことを知らないために俺に訊いてきたが、俺は答えられない。
童心様は真耶さんの前に来て柔和で親しみの持てそうな雰囲気で少しお茶目に自己紹介をし、その正体を知ったら驚いていた。その様子に愉快そうに笑う童心様。
「お、織斑さん・・・・・・」
そう声をかけてきたのは邦氏様だった。
どうも彼もこの二人がここに来たことは知らなかったらしい。
その声は凄く不安そうだった。
その気持ちはよく分かる。
邦氏様は茶々丸さんのことを慕ってはいるが、その人格に関してはやはり少し引け気味だ。
そして童心様がいる。
この『ろくでもない』二人がそろえば、その場は絶対におかしなことになるのが目に見えている。
現に俺も邦氏様同様、もの凄く嫌な予感しかしない。
俺と邦氏様はお互いに視線を合わせていた。お互い不安で仕方が無い。
邦氏様の隣にいた桜子さんは、あはははは、と苦笑を浮かべていた。どうやらあの二人については知っているらしい。
「それで・・・・・・どうしてあなた方お二人がこのようなところに?」
訊かずにはおられず、俺は渋々と言った感じに訊く。
「いやさ~、時王のデートっていうだろ。やっぱり姉としては気になってさ~」
「其れがしは『一応』仕事でござる。茶々丸殿も仕事で来ておるのよ」
そう二人は答えるが、その妙にニヤニヤとした笑いを俺に向けていた。
絶対に狙いがあり、それは俺に関わっていることは明白のようだ。
背筋に悪寒が走った。
「実は生徒会の出し物に協力してもらったのよ~」
生徒会長がそう笑いながら言う。
内心ではなんてことをしてくれたんだ! と怒りたかった。
招かざる客というものにおいて、この二人ほど不味いものはいないと俺は思っている。それをよんだのだ、正気を疑う。
しかしいつまでも立ち話をしている訳にもいかないので促されるままに席についた。
「一体何が始まるんでしょう。楽しみですね~」
これから始まることにわくわくしている真耶さんの顔が唯一俺の心を癒してくれた。
残念ながら俺と邦氏様はあまりの不安に青ざめていたが。
そして待つこと数分。
ついに生徒会の出し物が始まった。
真っ暗なアリーナの中央から巨大なホロウィンドウが展開され、そしてアナウンスが流れ始める。
どうやら映像を流すらしい。映画だろうか?
そして題名が出た。
『現代の若武者恋物語』
そしてナレーションが話し始める。
「この物語はノンフィクションです。制作協力は六波羅からしていただきました。事実だからと言ってそのことを使って冷やかさないようお願いします」
そのことと題名に顔から血の気が引いていくのがわかった。ま、まさか・・・・・・
「この物語は彼、『織斑 一夏』がこの春から経験した恋物語・・・」
(やっぱりかぁ!?)
上映されているのは俺のことだった。
春、IS学園に来てからの俺がその画面には映っていた。
どこからどう見ても盗撮だろ、と突っ込みたい。
しかし上映中は静かにという常識が俺を縛り付けた。
映像は盗撮だとばれないよう手が加えてあり、ぱっと見ではそのまま本人に許可を得て取ったようにしか見えない。しかもちゃんと映画として編集されていた。
うまく編集してあり、俺と真耶さんがよく映っていた。
まさに俺の学校生活を総集したような感じだ。
最初のうちはクラス代表を決める試合やクラス代表戦、タッグマッチなどが出ており、映像の俺はカメラに向かってキリッとした顔で古風な言い回しなどの台詞をハキハキと言っていた。
見てて顔から火が出るくらい恥ずかしい。
真耶さんを見ると顔を赤くしながらポー、として映像に夢中になっていた。そして「一夏君・・・格好いい・・・」と洩らして感嘆のつぶやきを漏らしていた。それがまたさらに羞恥を掻き立てた。
そして臨海学校。
さすがに風呂のシーンは入っていないらしい。もし入っていたら俺は羞恥のあまり気絶していたかも知れない。少しだけ安心した。
真田さんとの戦いには観客のみんなが息を呑んでいた。
そして・・・・・・真耶さんの告白。
まさか再び自分の告白を聞くとは思っていなかったのだろう、真耶さんは真っ赤になってうつむいてしまった。
その後は一気に飛んで夏休みに突入し福寿荘の場面もすっ飛ばしていた。
どこかに出かけていたように映る俺は携帯を出ると、鬼気迫る顔でその場で装甲、騎航。
その後青江との戦いに入り今度は俺からの告白。
今更ながらに見ると、あまりの恥ずかしい台詞に悶死しそうになる。
上映中だと言うのにお客様からは黄色い声が上がりまくっていた。
真耶さんを見ると真耶さんも此方の方に熱い視線を向けていたらしく、視線が交わる。
恥ずかしさのあまりお互いに何も言えなくなってしまう。
その後はデートに行ったり真耶さんが家に来たりなど、どうやって撮ったのか気になるくらい見事な盗撮をされていた。
映像では俺と真耶さんが『かなり』イチャイチャしていた。
そう、かなりだ。
御蔭で黄色い声が絶えない。
そのたび頭が恥ずかしさで沸騰するかと思った。
そして夏祭り。
今までで一番イチャついたあげく、花火をくっつきながら見ていた。
そして囁くように台詞を喋る。
『真耶さん・・・・・・大好きです、愛してます』
『私もです、一夏君・・・・・・愛してます』
そして画面一杯のふたりのキス。
その瞬間アリーナが壊れるんじゃないかと思うくらいの音量の喜声が轟いた。
その場面を見た瞬間に俺の頭はショート寸前まで追い詰められ、真耶さんは恥ずかしさのあまり真っ赤になって気絶した。
そしてその後も二人は幸せに過ごしました、といった感じの終わりになり、上映は終わった。
そしてざわつきまくるアリーナのお客さん。
「織斑君ってあんなに大胆だったんだ!」
「私もあんなこと言われた~い」
「ドラマよりドラマしてたよね~」
「「「「「いいなぁ~、恋人!」」」」」
そんな声が四方から聞こえてくる。
「そ、その・・・頑張って下さい! ぼ、ぼくも、織斑さんのように頑張ります!」
邦氏様は俺を見てなぐさめようとして下さったのかそう声をかけて下さった。顔を真っ赤にして・・・
隣の桜子さんも顔が真っ赤になってた。どうやらここまで凄いとは思っていなかったらしい。
「どう、織斑君。楽しんでくれた?」
「いっちーなかなかやるね~。あても負けてられないな、こりゃ」
「う~む、実に、実に青臭い! いや失敬。実に青春でござったなぁ」
そう声を俺にかけてくる三人。
その顔は大層ニヤついていた。
(や、やられたぁ・・・・・・・・・・・・・・・)
俺は恥ずかしさのあまり、その場で崩れ落ちた。