真耶さんと衣装を買いに行ってからあっという間に学園祭当日まで時間が経った。
今日から学園祭である。
うちのクラスの出し物はコスプレ喫茶であり、開始からすぐに盛況になった。
「いらっしゃいませ!」
そう威勢よく、それでいて上品な感じで俺は来たお客様に声をかけていく。
「「「「きゃああああああああああああああああ!!」」」」
声をかける度にお客様から歓喜の声が上がる。
そのたびに思うのだが、何故お客様が女性しか来ないんだろうか?
この学園祭は外からの人も来るため、当然男性も来るのだ。
そしてこのようなイロモノの店なら当然来るとでも思っていたのだが・・・・・・
全然来ない。
その分なのか知らないが、女性客が異常に来る。
そして接客する度にこう声を上げられるのだ。
「随分と凄いですね、一夏の人気は」
ラウラが俺に向かって苦笑を浮かべていた。
「あはははは・・・・・・」
そう言われて苦笑しか浮かべられない俺。
テレビなどで取り上げられていると弾から聞いていたが、まさかこれほどとは・・・・・・
「でもそう言うラウラも結構受けてるじゃないか」
ラウラも結構お客様の受けがいい。
ラウラの恰好はと言うと、紫色のドレスだ。
所々にあしらわれたきらびやかな布がその目を引く。
肩に甲冑のようなものが付けられており、騎士っぽさがある。その証拠に幅広な大剣の模造刀もオプションで付いてきた。
「この衣装を着ているとき、男性客には『シドー』と呼ばなくてはいけないのは何ででしょうかね?」
そうラウラは不思議そうに言うが、俺に聞いても分からない。
たぶん何かのアニメのキャラクターなんだろう。
他にも衣装はあり、箒は明るい色のブレザーを着ていた。
学校の制服なのだろうが、黄色にオレンジとかなり目立つ。
そして珍しくリボンをしていない。
よくお客さんから『桜才学園生徒会会則がひと~つ、て言って下さい』と言われていた。
何かの台詞なんだろうか?
セシリアはカーキ色をしたスーツを着ていた。
肩に階級章がついており、大佐の階級だった。
一部の人から『相良さ~ん、ていってみて』とお願いされていた。
シャルもどこかの学校の制服でセーラー服のようだが、箒と違って此方は普通な感じだ。
ただお客様にはそれが何か特別な衣装らしく、『撫子だよ~、暦お兄ちゃん』とよく台詞をねだられていた。
これもアニメのものなのだろうが、見ない俺にはさっぱりわからん。
そして俺はと言うと、これだけは俺も知っていた。
俺だけアニメの服ではない。
水色と白のだんだら模様をし、額に当てている額当てには『誠』の一字。
腰に刀を差したその姿はまさに・・・・・・
『新撰組』そのもの。
何故俺だけアニメの服じゃないのかと言えば、『やっぱり織斑君は武者だから』だそうだ。
そういうものなんだろうか?
そのせいかは知らないが、女性客から良く刀を構えてくれという要望が絶えない。
そしてうちのクラスは大盛況になり、俺達はてんわやんわと働いていた。
朝から真耶さんの姿が見えないことに若干の寂しさを覚えながら・・・・・・
気がつけばお昼が過ぎ、一時頃。
お客さんも開店当初に比べては減ってきており、やっと休憩時間がもらえた。
休憩は一時間。
その間は衣装を脱ぐことになっているので脱ぐことに。
せっかくの文化祭、俺は真耶さんと廻ろうと思い携帯に連絡を入れようとしたが、呼び止められた。
「ちょっと待って、織斑君」
携帯から目を外しそちらを向くと、クラスメイトの布仏さん達三人組が俺の目の前に立っていた。
「連絡を入れる必要ないよ。もう来てるから」
「楽しみにしててよ~織斑君」
「うんうん、めちゃくちゃかわいい~」
そして三人は後ろが見えるように一斉に動いた。
「「「じゃーん!!」」」
三人が動いた先には・・・・・・
IS学園の生徒が立っていた。
緑色の柔らかそうな髪をした、可愛らしい女性徒。
そして・・・・・・俺はその姿に見覚えがあった。
「ま、まさか・・・・・・・・・真耶さん!?」
「は、はい、そうです・・・・・・似合ってますか」
そう、目の前にいる生徒は真耶さんだった。
眼鏡をかけていないとはいえすぐに分かった。
真耶さんは真っ赤になりながらもじもじと此方を上目遣いで伺っていた。
(か、可愛い・・・・・・・・・・・・)
それ以外の感情が湧かない。
「どう、織斑君? 可愛いでしょ」
そう胸を張るクラスメイト。
「ああ、かなり似合ってる。可愛いですよ、真耶さん」
「そ、そうですか!」
さらに真っ赤になる真耶さん。
本当に可愛過ぎて抱きしめたくなったが、皆がいる前なので自重。
「というわけだかから、織斑君。休憩、楽しんできてね」
そういうクラスメイトに俺は・・・・・・
心から感謝した。