装甲正義!織斑 一夏   作:nasigorenn

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今回もそこまで甘くはないようです。


一年一組の出し物は

更識 楯無は考える。

強いとは聞いていたが、まさかこうも簡単にあしらわれるとは思わなかった。

真打劔冑の再生力のことは調べて知っていたが、だからといって自分の体をああも無体に扱うとは思わなかった。そんなことは幾ら治ると分かっていたとしても楯無には無理だ。

だからだろうか・・・・・・負けたような気がして悔しい気がした。

織斑 一夏ともう一度戦っても勝てる気があまりしない。

しかしだからこそ・・・・・・度肝を抜きたくなった。このまま引き下がっては負けっ放しな気がして腹の虫が治まらないのだ。

だが具体的にどうするかは考えてはおらず、どうすれば良いのか悩んでいた。

だからこそ、気付けなかった・・・・・・生徒会室に人が入ってきたのを。それが生徒会の人間では無いことを。

 

「おやおや、随分お悩みの様子だね~」

「っ!?」

 

急な来訪者に驚き警戒を楯無はする。

 

(いくら考え事をしていたからって何で声をかけられるまで気が付かなかったの!?)

 

楯無が内心驚愕している中、その来訪者は口元をニヤリと笑いながら楯無に近づく。

 

「そんな警戒しなさんな。そんな悩んで居いる君に『あて』から良い話しがあったりするんだよな~。どう、聞いてみないかい?」

 

楯無はそう笑いながら言う来訪者の話を聞いてみることにした。

 

 

 

朝になり全校生徒が講堂に集められた。

何でも生徒会からの重要な話があるらしいのだが、あの会長のことだ。

あまりにも嫌な予感しかしない。

そんなことを考えながら講堂で待っていると、早速生徒会長が壇上に上がってきた。

 

「一年生には初めましてかな。私はこの学園の生徒会長、更識 楯無よ。よろしくね」

 

いかにも人受けしそうな笑顔で挨拶を始める。

ぱっと見美少女なので絵になるような光景だが、昨日のこともあって周りは見惚れても俺はまったく気にならない。

昨日の試合でこの人の本質は大体わかった。

この人は負けず嫌いだ。

だからだろうか・・・さっきから嫌な予感がして仕方ない。

会長はそのまま話を続けていく。どうやら学園祭についての話のようだ。

 

「今月の一大イベントの学園祭だけど、今回に限り特別ルールを導入するわ。で、その内容なんだけど」

 

一瞬の間を作ると扇子を前に出して開く。

すると背後にあるスクリーンに文字が表示された。

 

『各部対抗織斑 一夏争奪戦!』

 

「はぁ?」

 

いきなり何を言い出したのだろうこの人は。

いきなり名指しされたことに唖然としてしまう。

そして周りが出されたことを理解した瞬間・・・・・・・・・

 

講堂に絶叫が響き渡った。

 

皆歓喜の声を上げていた。あまりの絶叫の大きさに耳が一時的に聞こえなくなりそうになる。

 

「は~い静かに。学園祭では毎年各部活動ごとの催し物を出し、それに対して投票を行って上位組は部費に特別助成金が出る仕組みでした。しかし今回はそれではつまらないと思い、織斑 一夏君を一位の部に強制入部させましょう! 彼は丁度部活に入ってませんから、丁度いいでしょう」

 

そう皆に言って笑顔を此方に向ける会長。

しかしそれはどう見たって意地の悪い笑みだ。

皆その話題で盛り上がる中、俺はげんなりしていた。

 

(嫌な予感がしていたが、まさかこうくるとは・・・・・・しかも本人の了承も得ずに勝手に発表して。これでは逃げられない!)

 

俺はショックに肩を落としながら講堂を去った。

 

 

 

朝っぱらからあんな話をされてしまいげっそりしていたが、それでも学校生活というのは進む物。

朝から話されていた通り、そろそろ学園祭があるのだ。

つまりクラスの出し物も決めなくてはならない。クラス代表として俺は教壇の前に立ち、皆の意見をまとめていくのだが・・・・・・・・・

 

俺は呆れ返って物も言えなくなっていた。

 

クラスの出し物なのだから皆からの意見を聞くのは当然なのだが、出てきた案はどれもこれも碌な物が無い。

 

『織斑 一夏とポッキーゲーム』や『織斑 一夏のホスト接待』など。

 

露骨なまでの俺押しに若干引く。どうやらこのクラスだけの特色を出そうとした結果、そうなったらしい。

 

「駄目です! ぜっっったいに駄目ですよ! 一夏君にそんなことはさせません!」

 

真耶さんが顔を真っ赤にして皆に怒る。

 

「えぇ~、いいじゃん。山ちゃんも織斑君にそうされたら嬉しいでしょ」

「そ、それはそうですけど・・・・・・」

 

クラスメイトにそう言われ、顔をさっきとは違う意味で真っ赤にしながらもじもじする真耶さん。

 

(はぁ、照れる姿も可愛いなぁ~)

 

朝のこともあって心が沈んでいる俺にとって、真耶さんは心の癒やしだ。

顔がにやけそうになるのを何とか堪える。

 

「山ちゃん可愛い~」

「あ、あぅ~。で、でも駄目なものは駄目ですからね!」

 

そう真っ赤になりながら満更じゃない顔をしている。それが丸わかりだからこそ、皆からからかわれるのだが。

ともかくこれでは話が進まない。

 

「はいはい、騒いでいては話が進まない。取り敢えず今までの案は却下とさせて頂く」

「「「「「えぇ~~~~~!」」」」」

 

クラス中から不満の声が上がる。

 

「学生らしく、もっと健全な出し物にして下さい」

 

そう真面目に皆に言う。

学生の内からこのようなことは、はっきり言って有害だ。もっと健全な物にすべきだと俺は思う。

皆からは『織斑君のいけず~』や『織斑君は硬すぎるよ~』など、多くの不満の声が上がってきたが、構っていては埒が開かないので無視しよう。

しかしそうは言っても良い案が中々出てこない。

俺も学園祭というのを体験したことが無いから中々に案が出せずにいた。

取り敢えず方向性を決めるようにし、飲食店にする話になっていった。

 

「飲食店ですか。まぁ、妥当な線ですね。となると具体的には何を売るのかと言うことになりますね。料理の場合はそれなりの設備が必要になりますからここでちゃんと決めておかないと」

 

具体的な方向性が見えてきたのでそれを軸に話し合う。

 

「やっぱりお祭りらしくたこ焼きやお好み焼きとかがいいんじゃない?」

「でもでも、それじゃありきたりでつまらなくない?」

「そこは格好を変えるとかさぁ、他にもやり用はいくらでもあるわよ」

「喫茶店とかもいいんじゃない」

 

などなど、色々意見が飛び交う。

中々の活気に俺も少しは気分が晴れた。

 

「そうなると材料費とかも計算しないとな。えぇっと、今上がってる案の料理だと・・・・・・築地に行けば魚介類は手に入りそうかな? 多少は高いかも知れないけど作るからには本気で作りたいし。野菜は福寿荘の契約農家さんから融通出来れば御の字か? コストはこれで少しは押さえられるはず・・・・・・道具も俺のやつを持ってくればそこまで用意する必要はないと思うし・・・・・・」

 

そう考えてることを独り言で呟いてしまい、それを皆に聞かれてしまう。

そして皆考えてしまったことは一緒だった。

 

(織斑君、本気で営業しようとしてる!?)

 

「い、一夏君!? そこまで深く考えなくても大丈夫ですよ」

「え、そうですか?」

 

真耶さんにそう言われ考えを中断する。

 

「というか一夏君は飲食業でも調理禁止です」

「えぇ、何でですか!?」

 

そう言われショックを受ける俺。きっと背後にはガーン、などとエフェクトが出ているかもしれない。

 

「一夏君が調理したら本格的になっちゃうじゃないですか。学生のお祭りなんですから、もっと気楽に。一夏君がしたら学園祭の域を出ちゃいますよ」

「いや、そんなことは」

「一夏君は知らないかも知れませんが、一夏君が働いていたお店の話、もう有名ですよ。プロの料理人が学生のお遊びに本気になったら大人げないですよ」

「そ、そうなんですか。たしかにそう言われればそうかも・・・・・・」

 

そう言われ反省。

たしかに遊びに本気を出しては大人げない。

 

「だから皆さん。もっと簡単な物にしましょう」

 

そう言われて話は進み、喫茶店をやることになった。これなら軽食だけで済むので誰でも簡単に(セシリアは除く)作れるので問題がない。

そうなると今度は内装やコンセプトなどになっていく。

 

「メイド喫茶とかよくない」

「いやいや、今はもうメイドは古いわよ。時代は執事よ執事」

「巫女服とか可愛くない」

 

とクラスメイトから衣装の話が出てくる。

度の過ぎた衣装は問題だから注意しようと思ったが、真耶さんに止められる。

曰く、学生なのだからこういうときはハメを外してもいい、だそうだ。

真耶さんにそう言われては俺は無いも言えない。

皆の意見をすべて納得出来るようまとめた結果・・・・・・

 

「では一年一組の出し物は『コスプレ喫茶』ということでよろしいでしょうか?」

「「「「「異議無し!」」」」」

 

ということになった。

少しいかがわしい気がするのは俺だけだろうか?

 

「織斑君だって色々な格好した山ちゃん見たくない?」

「えっ、私ですか!?」

 

真耶さんがその言葉に反応してびっくりする。

俺はそんな真耶さんを見て色々な格好をした真耶さんを想像してしまう。

 

(・・・・・・・・・・・・・・・いい!)

 

内心でガッツポーズをしてしまい、気が付けば顔が熱くなっていた。

 

「あぁ~、織斑君赤くなってる~。山ちゃんも一緒だ~!」

 

またそうしてクラスメイトからからかわれてしまった。真耶さんを見ると目が合ってしまい、気恥ずかしさからさらに真っ赤になってしまう。

 

「「「ぐふっ・・・・・・」」」

 

後ろで三人が吐血していた。

ともかく、一年一組の出し物は『コスプレ喫茶』に決定した。

そのことを千冬姉に報告しにいったら、千冬姉は盛大な溜息をついた。

朝から問題だらけで疲れたのだろう。

俺もその場で溜息をついてしまい、職員室には俺達二人の盛大な溜息が響いた。

 

 

 




次回・・・・・・
また砂糖の津波が押し寄せる・・・・・・かも

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