そしてもう一つの作品にも感想書いて貰ったりしたら嬉しいですので、気が向いたらよろしくお願いします。
授業も一通り終わり放課後になった。
そして俺はと言うと、今食堂内にあるカフェに向かっていた。
俺の決意は初日から崩れ去り、真耶さん共々クラスの皆からからかわれる始末。
その度に真耶さんが真っ赤になりながら照れるものだからクラス中がヒートアップ。
そしてその度に千冬姉による鉄拳制裁がクラスメイトに振るわれていった。
当然俺と真耶さんにもお説教の雨が降る。
その度に千冬姉から溜息が漏れているのを見ては申し訳ない気持ちで一杯になった。
そうして放課後。
俺は真耶さんとお茶をしようと思い連絡を入れていた。
部活に所属していない俺は放課後は自由であり、それなら真耶さんと一緒にいても問題は無いだろう。
決して開き直ったりしているわけでは無い。
べ、別に・・・真耶さんと少しでも一緒にいたいとか、そういうわけではない(どう聞いたって言い訳にしか聞こえない)
携帯には直ぐに返事が返ってきた。
見た瞬間に顔に笑みが浮かんでしまうのは仕方ない話だろう。
なので直ぐにカフェに向かっているわけだ。
と言っても早足であり、走ったりはしていない。
その足取りには明らかなまでに浮かれている感じが出ていた。
しかし次の瞬間には俺のこの浮かれた気分は一瞬にして冷めた。
「はぁ~い、おひさ~」
俺の目の前に『また』生徒会長が現れた。
一瞬にして浮かれた気分も冷めると言うものだ。
「それで・・・・・・今度は何でしょうか? 今急いでいるんですが」
「そう連れないこと言わないでちょうだい」
そう明るい声で言われるが、俺はその前の浮かれた気分もあって不機嫌になる。
「実はね~、おねえさん、君に用があって来たのよ。君、部活に入ってないでしょう?」
「そうですが」
「この学園では生徒は必ず部活に入らなければならないの。ただ今まで女の子しかいなかったから織斑君が入れるような部活が中々ないのよ」
その話は聞いてはいたが、今まで放置していた。
今まで女子しかいなかったために男子が入れるような部活がろくに無いのだ。
運動部では大会に出たりなんて出来ないし、文化部くらいしか入れそうなものがない。
しかし俺は武者なのだ。
放課後の殆どは鍛錬に時間をつぎ込んでいるので部活をしている余裕なんて無い。
そこで、なら真耶さんと一緒にいる時間は? などという野暮は言わないで頂きたい。
教員から特に何か言われたわけでは無いので今まで気にしていなかった。
「ですが教員からは何も言われてませんよ」
「まぁ、そうなんだけどね。でも君だけ特別にすると他の生徒に示しがつかないのよ。それは分かるよねぇ」
「ええ、まぁ」
「だから・・・・・・『勝負』しましょう」
「は?」
いきなりのことにポカンとしてしまう。
「何故いきなり勝負なんですか?」
「勝負で私に勝ったら今まででもいいよ。た・だ・し、負けたら生徒会に入って貰います」
「またいきなりですね」
「ま~ね~」
成程、また随分なことだ。
事実状の当て付けだろうな。
午前中にあった件をまだ根に持っているのだろうか。
それらを含めて此方に探りを入れに来た、そんなところなのだろう。
言っていることも事実なのでここで否定するわけにもいかない。
それに・・・・・・
あの日本の対暗部用暗部、更識家の現党首と戦えるというのは、それはそれで興味がある。
「わかりました。では直ぐにアリーナに向かいます」
「いや、ISでは戦わないわ。それも興味あるけど、壊されたら溜まったものじゃないもの」
「ぐぅ!?」
前に千冬姉に言われたことが今更ながらに突き刺さる。
俺と戦ったISは皆損傷を被っているのは事実なのだ。
「だから今から武道場に来なさい、武術で戦うわよ。それとも、劔冑が無ければ何も出来ない?」
「ふふ、笑止。いいでしょう、すぐに向かいます・・・・・・ただ少しだけ待って貰えませんか」
そう会長に言って俺は携帯をかける。当然かける相手は一人しかいない。
「もしもし、真耶さん」
『はい、どうしたんですか一夏君』
「すみません、ちょっと用事が入ってしまい少し遅れます。『二十分』で終わらせますのでもう少し待ってて貰えませんか」
『そうなんですか~。分かりました、待ってます。でも・・・早めに来て下さいね』
「はい、出来る限り早めに終わらせます。それでは」
そして電話を切る。
「いやぁ~、なかなかにお熱いわね」
「ほっといて下さい」
「それにしても・・・・・・『二十分』とは、随分甘く見られたものね」
「いえ、これでも多く見積もったつもりですよ」
そしてお互い不気味に笑い合う。さっきの当て付けの仕返しだ。
と言ってもそう言ったのは本意だが。
そして俺と会長は武道場に行った。
武道場につき、更衣室を借りて胴着を借りる。
俺の胴着は新品のものを開封した。
黒袴と本格的な代物だ。これなら思いっ切り動いても大丈夫だろう。
更衣室を出て武道場に入ると、既に会長が反対側の方で立っていた。
「準備出来たみたいね・・・・・・それじゃやりましょうか」
「ええ」
そして同時に構え出す。
会長の構えは左手を前に出し、右手を控えめに出す構えを取っていた。柔道に近いが、その足使いからそれだけではないことが窺える。
対して此方は左腕を掌の形にとり前にかざし、右腕を脇に構える。武者式組打術の構え。
そしてどちらも・・・・・・仕掛けない。じりじりと間合いを詰めていく。
そしてどちらもともかく、同時に仕掛けた。
更識 楯無は目の前にいる織斑 一夏に精神を削られていた。
さっきの話では本当はただ部活に入るよう言うだけだった。
しかしそこで魔が差した。
仮にも自分はIS学園生徒会長。それはIS学園において最強の者のことを指す。
その最強といわれる自分の前に、それ以上かもしれない生徒がいるのだ。
戦ってみたいと思ってしまうのは仕方ないことではないだろうか。
だから言ってしまった・・・勝負しようと。
戦ってみたかった、そこまで言われるほどの武者と言う存在と。
そして目の前に対峙してみて分かった。
(こ、これはきついわね・・・・・・)
対峙してわかるこの迫力、この殺意。
無意識に呼吸が荒くなっていくのが楯無にはわかった。
ISでの勝負とは全く違う、気を抜いた瞬間には『殺される』、そう思わせるほどに空気の密度が違った。今まで暗部としての訓練を積んでは来たが、ここまでの殺気と気迫は感じたことが無かった。
まったく隙が見えてこない。
しかしこのままでは埒が空かないと判断して楯無は仕掛けた。
「やぁああああああああああああああ!」
会長からの当て身を全て捌いていく。
その構えと足運びから武術をしているとは思っていたが、いやはや成程。中々に強い。
その細腕から繰り出されるとは思えないほどに威力、速さともに凄い。
しかしながら・・・・・・俺は『それ以上』を肌で知っている。
「はぁっ!」
此方も掌底で迎撃を放つ。
「っ!?」
会長は急いで防御するが、後ろに数歩引く。
「痛ぁ~、女の子なんだから手加減してくれてもいいんじゃない」
「勝負する以上男も女も関係ないものと考えております」
「ぶぅ~、いけず~」
そう文句を膨れっ面で会長は垂れるが、気にしない。
その後も数撃に渡ってこの応酬は続いていく。
そして俺は会長の隙を突いて右腕を掴むと背負い投げで会長を床に投げる。
「ちぃ!?」
会長は倒れ込む前に左腕を頭の前に出して体を受け止めると、そこから足を使って俺に蹴りを出した。
「何っ!?」
咄嗟の反撃に右腕を離して防御する。
「まさかカポエラもやってるとは思いませんでした」
「ふふ、いい女は色々とやっているものよ」
「そうですか」
そしてまたお互いに仕掛ける。
そして気が付けばそろそろ二十分が経とうとしていた。
(不味いな、そろそろ二十分が経ってしまう)
そう時計を見て思ってしまい、隙が出来てしまった。
「隙有り!」
会長は俺の隙を見抜いて小外刈りで倒すと、すぐさま十字固めをかける。
右腕からギチギチと悲鳴が上がっていた。
「これで私の勝ちね。外せないでしょ、降参したら」
会長が勝ち誇った顔を此方に向ける。
(これ以上は時間をかけられんな・・・・・・はぁ、しかたないか)
そう思いながら俺は四肢に力を込め・・・・・・・・・
「ぐぅぅううううううううううううううううううううううう!!」
会長に技をかけられた状態で立ち上がった。
「え、嘘!?」
まさか起き上がるとは思っていなかったのだろう。会長から驚愕の声が上がる。
俺はそのまま会長を持ち上げると、床に『手加減して』叩き付けた。
「きゃあっ!?」
さすがの衝撃で会長も技を解いてしまう。
そして俺は倒れている会長の首に向かって手刀を落とす。
「これで俺の勝ちですね。何かありますか?」
手刀は寸止めされており、会長の喉仏で止まっている。
この状態から反撃は難しく、どこからどう見ても勝敗ははっきりしていた。
「いえ、無いわ・・・・・・私の負けよ」
会長がそう答えると同時に手刀をどかす。
「では、そういうわけで俺は帰りますから。では」
そう言って俺は急いで更衣室へと向かっていった。
楯無は全身の疲労に汗だくになりながら武道場の床に横になっていた。
まさかあそこからああも巻き返されるとは思わなかった。
十字固めが決まったときにもう勝敗は決したと思った。
ところが織斑 一夏は楯無ごと強引に持ち上げたのだ。
そのとき楯無の腕からは、一夏の筋や健がブチブチと切れる感触が伝わってきた。
普通なら激痛でそんなことは出来ない。
しかもそのまま持ち上げた上に床に叩き付けられたのだ。
そのときにゴキッ、と腕の骨が折れる音がした。
そのまま一夏は折れた腕を一切気にせず此方に手刀をかまし、勝敗を決した。
そんな真似、楯無にはどうあがいたって出来ない。
そんな真似が出来るような人物など、楯無の知る限り一人もいなかった。
これが武者なのか・・・・・・そう思わされた。
(これが武者かぁ~・・・・・・強いわね、本当に。かなわないな~)
そう思いながら楯無は火照った体を冷ましていた。
会長との勝負が終わり次第、俺は急いで着替えると携帯をかける。
「もしもし、真耶さん!」
『どうしたんですか、一夏君!? 声を大きくして』
「すみません、今カフェに向かってるので後五分ほど待っててもらえませんか」
『そうなんですか。分かりました、もうちょっと待ってます。でもちょっと許せないですね~』
「本当にすみません! この埋め合わせは必ずしますから」
『そうですか・・・・・・なら』
そう言う真耶さんの声から妙に嬉しそうな感じを受ける。
『カフェでケーキをはい、あーんしてくれたら許してあげます』
照れた声でそう言ってきた。きっと電話の前で真っ赤になっているだろう。
「はは、させて頂きます・・・・・・」
『本当ですよ』
「本当です」
そう言って俺は電話を切りながら早足でカフェへと向かっていく。
折れた腕を折り直しながら。