まさか此処までいくとは思いませんでした。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
「だ、弾!? それに蘭も!?」
いきなり現れた二人に驚いてしまった。
真耶さんはいきなりのことに反応が遅れてしまい、顔を真っ赤にしたままで、はい、あーんのポーズのまま固まっていた。
時間にして約二秒、真耶さんの時間が動き出す。
「は、はわわわわ、私はその、あの!?」
真っ赤になりながらどうしてよいか分からずにその場で慌てふためく真耶さん。
その様子で俺は何とか冷静に戻ることが出来た。
ここまで慌てる真耶さんを見たら、此方としては慌てることが出来なくなってしまった。それくらいの慌てっぷりだった。
俺はすぐさま真耶さんの両肩に手を置く。
「真耶さん、落ち着いて下さい。はい、深呼吸」
「ひゃ、ひゃい!? スーハー、スーハー」
深呼吸を繰り返すこと約一分。
何とか落ち着いてきたらしく、真耶さんは正常に戻っていった。
「す、すみません、一夏君。私、取り乱してしまって・・・・・・」
「いいですよ。真耶さんがあんなに取り乱してくれなかったら自分がああなっていたと思いますから」
そう真耶さんを励ますと、真耶さんは顔を赤らめながら潤んだ瞳で俺を見つめる。
「一夏君・・・・・・」
「真耶さん・・・・・・」
絡み合う二つの視線。お互いの鼓動が高まっていく・・・・・・
「て、そこ!! 見つめ合ってんじゃねぇ!」
「「はっ!?」」
弾の突っ込みで視線を外し離れる俺と真耶さん。
いつもなら一回でも突っ込まれれば離れると言うのに今日に限っては出来なかった。
どうやらまた祭りの雰囲気に飲み込まれていたらしい。
いつもと違う環境で少しハメを外しやすいようだ・・・・・・自重しなくては。
俺は何とか真耶さんから離れると弾達に向き合う。
「奇遇だな、弾。お前達も祭りに遊びにきたのか」
「ああ、そういうこと。で、俺が言いたいことは大体わかってるよなぁ」
はぐらかそうとしたがやはり駄目だったか。
仕方なく観念して真耶さんを紹介する。
「こちらが、その、俺の恋人の山田 真耶さん」
「や、山田 真耶です。その、よろしくお願いします」
真っ赤になりながらもじもじと自分を紹介する真耶さん。
可愛過ぎてつい抱きしめようと肩に手が伸びかける。
危ない、危ない。
さっき自重すると言った手前でこれでは始末に負えんな。
こうして他の人に自分の恋人を正式に紹介するのは初めてのことだけに、照れくさい。
今度は俺が真耶さんに二人のことを紹介する。
「真耶さん、こっちの男が五反田 弾。俺の中学からの友人です。それでそっちが弾の妹の蘭です」
「「よろしくお願いします」」
弾達は同時に真耶さんに頭を下げる。
しかし考えていることは二人でまったく違っていた。
(これが一夏の彼女かぁ・・・・・・写真で見たけど、生だとやっぱり全然違うな。滅茶苦茶美人でしかも可愛い! 何、この小動物的でありながら包容力がありそうな人。これが一夏の彼女かぁ・・・・・・やっべ、殺意しか湧かねぇ! リア充は爆発しろぉおおおおおおおお!)
(こ、これがお兄が言ってた一夏さんの恋人・・・・・・見た感じ一夏さんと同い年くらいに見えるけど、何あの胸! 浴衣を着ていてもはっきり分かるくらい大きい! やっぱり一夏さんも大きい方がいいのかなぁ・・・・・・だから私、振られちゃったのかな・・・)
何だか弾からは妙な殺意が出ているし、蘭からは悲しみめいたものを感じるが、どうかしたんだろうか?
せっかく合ったのにすぐに別れるのも忍びない。
「せっかくだし、一緒に廻らないか」
「いいのか? 彼女さんと二人っきりの方がいいだろ」
「いえ、私は大丈夫ですよ」
「それじゃぁあ一緒させて貰います」
弾はそう言って蘭を押さえていた。
何だか蘭は気まずい感じだが、それを聞くのはややこしいことになりそうな気がしたので止めた。
そして俺達は四人で屋台を回り始めた。
焼きそばやたこ焼きなどをいろいろ買い、それを食べながら色々と話す。
話す内容は主に、中学時代の俺と今現在での学園での俺の話ばかりだ。
気恥ずかしくて仕方ない。
「しっかし本当に一夏は変わりましたよ。昔はこんな感じじゃなかったですから」
「中学生の時の一夏君、てどんな感じだったんですか? 私はIS学園に来るちょっと前しか知らないから気になります」
昔の俺のことを興味深く聞く真耶さん。
恥ずかしくて仕方ないのだが、恋人が昔はどんな感じだったのかというのは俺だって気になってしまう話。仕方なく我慢する。
「昔はこんなに硬ッ苦しい奴じゃなかったですよ。真面目な奴でしたけど、もっとフランクな感じでしたし、口調も砕けてましたよ」
「そうなんですか~」
恋人の昔を聞けたのか嬉しそうに笑う真耶さん。
無邪気そうに笑うものだから弾も見惚れていた。
つい面白くなくて弾の首を片手で絞め上げる。
「な、何で・・・・・・ぐぇ」
「すまん、何となくだ」
ある程度絞めた後に解放すると、弾はやけにイヤらしい顔で「何、嫉妬? 嫉妬か?」と俺を茶化してくるものだから、更に掌打で顎を撃ち抜く。
「ふっ・・・・・・」
してやったり、といった顔で崩れ落ちる弾。
なんだか釈然としない。
「やっぱり男の子同士てこういうふうな感じなんですね~。ちょっと羨ましいです」
真耶さんはそんな俺と弾の様子を見てそう呟く。
少し羨ましそうな感じだが、そんなことは無いと思う。
「IS学園でこいつ、どうでした? やっぱりモテまくってませんでした、こいつは中学の時もモテモテでしたから・・・・・・本人はまったく気付いてませんでしたけど」
「そうですね~、一夏君はIS学園でもすっごくモテてたんで気が気じゃ無かったですよ。特に可愛らしい五人が一夏君の周りにいつも居て大変でした」
「いや、そんなことは「一夏は黙ってろい!」ぐぅっ」
復活した弾は、今度はIS学園での俺のことを真耶さんに聞き始めた。
その度に『コイツはモテまくり』などと言われて心外だと反論しようとしたが、何故か妙な迫力で黙らせられてしまった。
「そうですね~、一夏君の周りはいつも素敵な女性ばかりで。私は教師だから中々一夏君には近づけなかったんで苦労しましたね~」
昔の俺の話を聞いたお礼も兼ねているのだろう。
真耶さんは自分の苦労話も交えて俺が如何にモテていたのかを言う。
そんなことはまったくないと思うのだが・・・・・・しかしそう言いつつも俺の腕に掴まり身体をぴったりと密着させる真耶さんは何だか嬉しそうで、その顔を見ると俺も嬉しくなってくる。
なので気付けなかった。
真耶さんが言った爆弾発言を・・・・・・
「へっ、教師!? 先輩じゃなくて大人!? 何、一夏先生と付き合ってんの!?」
弾が驚愕に固まる。
しまった・・・・・・気付くのが遅れた。
「そ、そんな・・・一夏さんが先生と付き合ってるなんて・・・そんなの不純です、うわぁああぁあああぁあああああああああんんんん!!」
蘭が泣きながらどこかへ飛び出してしまった。
「この、エロゲ主人公野郎!! どうしたらそんなにモテるんだよ、こんちくしょう! 悪いけど俺は蘭を追っかけるから、それじゃぁな。お二人でごゆっくり。ああそう、一夏。この件はあとでじっくり聞くからな! 覚悟しておけよ! んじゃ」
蘭を追いかけるために弾もそう俺達に言い残し飛び出していった。
俺と真耶さんは何だか気不味く感じたが、取り敢えず祭りを楽しむことにした。
蘭のことは弾に任せた方がいい気がしたからだ。俺が口を出して良いことでは無いような気もした。
「そ、それじゃいきましょうか、真耶さん」
「そうですね。行きましょう、一夏君」
俺は真耶さんに手を引っ張られながら、また屋台巡りを再開した。