一夏 「え、そうなのか。この作品も随分長く続いたな」
真耶 「そうですね~。ここの作者がいつ放棄するかとひやひやしてましたけど、何とか続きましたね」
作者 「まぁ、そういうわけだから新年の挨拶をしようと思う。そのためにわざわざ山田先生には振り袖を着てもらったんだし。どうよ、一夏君、感想は」
一夏 「滅茶苦茶似合ってます! 綺麗で可愛くて、ちらっと見えるうなじが色っぽくて・・・・・・」
真耶 「い、一夏君・・・・・・恥ずかしいです・・・・・・」
(お互いに真っ赤になってジー、と見つめ合う二人)
作者 「おい、そこ、勝手に固有結界張らない! そういうのは挨拶が終わってから好きなだけしなさい。どうせ終わったらすぐに、キャッキャウフフ、てするんだろ、このリア充共め!」
(作者は血涙を流しながら言う)
一夏・真耶 「「そ、そんなことは・・・・・・」」
作者 「ええい、そんな真っ赤になりながらお互いにちらちら視線を向けながら言われても説得力なんてないわ、ボケェ! さっさと挨拶するぞ」
「「「では、あけましておめでとうございます。今年もこの作品をどうか、よろしくお願いいたします」」」
さて、獅子吼様の仕事を手伝ってから早三日。
朝の朝食を終えて俺は宿題に励んでいた。
すると携帯が鳴り出しだし取り出してみると、画面には『湊斗 景明』の文字が出ていた。
(一体今度は何をやらかしたんだろう?)
前回で酷い目にあったことも遭ってつい警戒してしまう。
しかし出ないわけにもいかないので取りあえず出ることに。
「どうしたんですか、師匠。また何か問題でも?」
『すまん、その通りだ』
どうやらまたやっかい事らしい。
「それで今度は何でしょうか? また獅子吼様の手伝いでしょうか。それとも別のなにかでしょうか」
『いや、今回はそういったものではない。実はお前に受け取ってもらいたいものがある』
受け取ってもらいたいもの?
師匠から物をもらうことは度々あった。
祝い事やら記念やら。しかしそれと問題事というのがどう関わってくるのか。
『実はな、今日の朝に新聞屋からとあるチケットをもらってな。それをお前に渡そうと思う。この前の礼もまだなのでな、これでお礼になるとは思わんが』
「いえ、そんなことは。しかし何故それが問題になるのですか? 師匠からもらえるのは嬉しく思いますが、それが問題になるようなことですか?」
そう、チケットを譲るだけでそんな問題と言えるようなことにはならない。
しかし、師匠の声からは精神的に疲れた感じを受ける。
つまり既に問題が起こっているということなのだろう。
『それなのだがな・・・・・・』
師匠が問題を言おうとしたところでガラスが割れるような音が携帯から聞こえてきた。
そして・・・・・・
『御堂と一緒にプールに行くのは私よ! あなた達じゃないわ』
『何ほざいてやがる! お兄さんとプールに行くのはあてだけだ! 他は引っ込んでろ、このクズ鉄にのっぽ、それにおこちゃまがぁ!』
『何だってぇ! そっちこそ私と胸のサイズはそこまで変わらないだろうが! 湊斗さんは私と一緒に行くんだよ』
『まったく、皆さんは何を言っているのかしらねぇ。景明様とプールをご一緒するのはこのわたくしだけですわ。ねぇ、ばぁや』
『周りを見下しつつもあざとく胸を寄せて見せつけようよするとは、さすがお嬢様です』
そんな聞き覚えのある声が五つ。
そして聞こえてくる破砕音。この音は湊斗家の何かが壊れた音だろう。
「成程・・・・・・大体わかりました。また、『あの五人』が暴れているんですね。それで元凶を此方に渡すことで解決しようと」
『すまん、その通りだ。プールのチケットをもらったのだが、それがあの五人に知れてな。それでこの有様というわけだ』
これは早めに決断しないと湊斗家の被害が大変なことになりそうだ。
「分かりました。是非ともお受けします。ですので師匠は早くあの五人を止めに行って下さい」
『すまん、助かる』
そして電話が切れた。
たぶん師匠はこれから必死にあの五人を止めることだろう。また湊斗家の財政が圧迫されると思うと同情を禁じ得なかった。
そしてすぐに携帯にプールのチケットが送られてきた。
送られてきたのは最近出来たばかりのレジャーランド、そのプールのチケットだった。
チケットは二人分、二名様まで。
だからこそあそこまで騒ぎになっていたんだろう。
もらったチケットをどうするか・・・・・・・・・もちろん決まっている。
真耶さんを誘おう。
さっそく俺は真耶さんに連絡を取る。
そうと決まればさっそく心が高揚していくのを感じた。
携帯をかけてわずか1コールで電話は繋がった。
『も、もしもし、一夏君ですか』
電話越しだというのに、慌ててあわあわしながら出た様子が思い浮かぶ。
そう思うと俺の頬は緩む。
「はい、織斑 一夏です。おはようございます」
『お、おはようございます』
まずは挨拶をする。
学校でも二人で会うときもいつもすることだが、電話で言うのは初めてかも知れない。
しかしそれもまた、感慨深いものがある。
「急にすみませんでした。それで、予定が空いている日はありませんか?」
『予定ですか?』
「はい、実はプールのチケットをもらったので、一緒に行きませんか」
そう伝えると、一拍の間の後、
『はい、すぐに行きましょう! 今日は何もないのですぐに行けます』
とやや興奮気味に答えが返ってきた。
そこまで喜んで暮れるとは、誘った側としても嬉しくなってしまう。
「それじでは一時間後に駅前で待ち合わせにしましょうか」
『はい!』
そして電話を切り、俺はさっそく行く準備をし始めるのだった。
そして一時間より少し前に俺は駅前へと向かっていた。
自分から誘って遅れていては話にならない。何よりも楽しみでしかたなく速く、行動したかったからだ。
駅前に着いてさっそく真耶さんを探す。
そして見つかった・・・・・・思わぬ形で。
「や、やめてください!」
「別にちょっとお茶しようっていってるだけだぜ」
「いいじゃんかよ、別によぉ」
真摩さんの前で男が二人立っていた。
いかにもな遊び人風な感じで見目良くない。
それが真耶さんの前に立ちはだかり、行く手を遮りながら口説こうとしている。
「私は先約があるんです! だから諦めて下さい!」
「そうつれないこと言うなよ~」
「そうそう、面白いところ連れてってあげるからさ~」
嫌がる真耶さんの手を無理矢理引っ張り、どこかに連れて行こうとする二人組。
それが目に入った瞬間には他のことを考えている余裕は無い。
俺は即座に膝の力を抜き、抜くように移動し距離を一瞬にして詰める。
吉野御流合戦礼法の極意の一つ、縮地法だ。
俺はそのまま真耶さんの腕を掴んでいる男の腕を掴み握りしめる。
「ぎゃぁあぁあああぁあああああああああああああ!!」
突然の激痛に男から悲鳴が上がる。
一応手加減はしたが、骨にヒビの一つや二つ、出来たかもしれない。本当なら青江のと同じように引き千切ってやりたかったが。
「だ、だれだ、手前ぇ!?」
もう一人の男が此方に気がつき声を荒立てる。
「その女性の恋人だ。これ以上ちょっかいをかけるようなら容赦はしない」
相手を圧倒する迫力を持って威圧的に答える。
男は俺の迫力に押され少し後ずさる。もう一人はやっとダメージから回復してきたようだ。
「人の恋人うんぬんの前に嫌がる女性に無理矢理詰め寄るのはいかんことだ。そんな基本的なことも出来ていない貴様等は目障りだ。はやくここから去れ!」
「ふっざけんじゃねぇ! おい、やっちまうぞ」
「おう!」
二人組は激昂して此方に襲いかかってきた。
「一夏君っ!?」
真耶さんから悲鳴が上がる。
俺は殴りかかってきた男の拳を横に避けると男に背を向け、そのまま一本背負いで地面に叩き付ける。
「がはぁっ・・・」
叩き付けられ肺から空気を吐き出す男の喉仏に足を乗せ、すぐにでも踏みつぶせるようにする。
「く、くそがぁあああああああ!!」
もう一人の男も殴りかかってきたが、拳を見切りその腕を掴んで引き寄せると男の顎に向かって勢いを加算した掌底を打ち込み、返す拳で鳩尾を思いっきり突く。
「げぼぉお!?」
脳を揺さぶられ、急所を突かれた男はその場で崩れ落ちた。
普通に立ち上がるのも難しいだろう。
俺は倒した男には目も向けずに足蹴にしている男を見下しながら睨み付ける。
「本当ならばすぐさま血祭りにでも上げたいところだが、今日は恋人とのデートだ。貴様等にかける時間など、一秒とてかけたくは無い。これ以上害意を向けるようなら、今すぐにでも貴様の喉を踏みつぶす。わかったか」
俺が半ば脅迫気味に足に力を加えながらそう聞くと、男は何とかうなずいた。
足を退かした瞬間には、男は怯えた悲鳴を上げながらもう一人の男を担ぎつつ逃げていった。
俺はそれを見送ると真耶さんの方に急いで駆け寄る。
「大丈夫でしたか、真耶さん! 酷いことされませんでしたか」
「は、はい、何とか!」
真耶さんは顔を赤くしながら力強くうなずく。どうやら怪我とかはしてないみたいだ。
よかったぁ~、と安心する。もし怪我でも負わせていようものなら、さっきの奴らは斬馬刀で三枚下ろしにしていただろう。
「よかったです、間に合って」
「ありがとうございます、一夏君」
「いえ、恋人として当然ですよ。真耶さんに何かあったらと思うといても立ってもいられませんからね。寧ろあのような者共のせいで怖い思いをさせてしまったことに後悔の念が絶えません。本当にすみませんでした」
「一夏君・・・・・・」
俺が真剣にそう言うと、真耶さんは真っ赤になって潤んだ瞳で俺を見つめる。
不安にさせてしまったのだろうかと思い、俺は往来も気にせず真耶さんを抱きしめた。
「本当に無事で良かったです。もう大丈夫ですから、安心して下さい」
真耶さんは最初こそ戸惑い恥ずかしがっていたが、すぐに俺の胸の中で目をつむり大人しくなる。
そして少しの間抱き合ったあと、俺は真耶さんを体から離し、手を差し出す。
「それじゃ行きましょうか、プールに」
「はい!」
俺の差し出した手を掴み、真耶さんは笑顔で返す。
そして俺達は電車に乗るために駅へと入っていった。
おせちの栗きんとんや煮豆のかわりにいかがでしょうか。