二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
41!!
前回あんな雰囲気を出しておきながら、今俺たちは七人揃って年越しそばを食べている。毎年なぜか家は早いのだ。確か正式な年越しそばって除夜の鐘を聞きながら食べるんじゃなかったっけ?
しかしそんなもんはどうでもいいとばかりに十一時を少し回った時点で母親が部屋に乱入、年越しそばを食べる事となった。
これじゃあ年越しそばと言うよりただの夜食だよね、美味しいから問題ないんだけど。
俺ら男性側は麺類故に食べ終わるのが早い。十分もした頃には食べ終わり、のんびりと三人で話している。
そこからさらに十分ほどして女性陣も食べ終わり、食器を片付けてからようやく本題に入る。
「今回新たに手に入ったソフトは……二つだ。俺が最初から持っていた物を含めると全部で三つ、つまりALOにログインするのは俺・シリカ・リズの三人になる」
「あーあ、やっぱそんな集まるわきゃねーよなー。仕方ねーけどこっちで情報係として頑張っとくわ」
テツオの残念そうな声にリズが悪いわねと言いながら、自らアスナを助けに行ける事を喜んでるように見える。
これから最終確認としてログインをしたあとの行動を反復する。
「まずキャラ設定だがそこまで変える必要はないだろ。スタート地点は決まってるがお互いに一目見てわかるようなアバターにしとこう。確認取るのがめんどい」
「それって確実に最後のが本音よね」
アルゴから冷静な指摘が飛ぶが図星なので放置する。
「種族については好きに決めていい。どちらにせよステータスはSAOと同等になるんだからどれにしても簡単には負けないだろ。ちなみに俺はサラマンダーにする」
「私は特徴からして当然ながらレプラコーンよねっ」
「それなら私はケットシーです」
わざわざ言う必要もないが俺が言ったからか、リズもシリカも自分が選択する種族を言った。
そうなるとここで一つの問題が発生する。
「しかし上手く三角形に分かれたな」
「あ……確かスタート地点ってその種族のホームタウンなんでしたっけ?」
「あちゃー……どうする?」
「別にやることは変わらない。まずはそこで種族の一番偉いのをなんとか説得して十日までに三種の合同会談をしてもらう。無理だったら各自……そうだな、それはまた後で決めよう。ログインしないうちからあれこれ考えても仕方ない」
ちなみにここまでのALOの話はログイン組の三人で進めている。非ログイン組はアルゴを中心にまた別のことを話している。主に情報収集の基本だとか選別の仕方などを話し合っているようだ。
「……そろそろか。いっちょアスナさんを取り戻してきますか」
「もちろんよ、何よりも何度死んでも死なないってのは気が楽でいいわね」
「あはは……」
シリカの渇いた笑いが響く中、各自ナーヴギアを取り出しALOのログイン準備を始める。その様子を見てアルゴたちもこちらに激励の言葉を発する。
まあなにも囚われる訳じゃないのでいつでも聞けるのだが、やっぱり最初のスタートだからだろう、やる気がみなぎってくる。
「よっしゃ、二人とも準備は出来たか?」
「問題ないです」
「こっちもオーケーよ!!」
二人の準備も万全ということで、本来ならば何回も言葉に出来るはずだったのだが、三人揃って今までで一度しか発したことのない台詞を声に出す。
「「「リンク・スタート」」」
二年以上見ていなかったフルダイブ空間へ接続するための項目に次々とOKの文字が入力されていく。
五分ほどしたところで全ての準備が整い、ALOの初期設定選択へと移る。
まずはプレイヤーネーム。少し考えてからクゥドではなくクードと入力する。特に意味はないがわざわざ「ゥ」の文字を打つのがめんどくさくなっただけだ。
次は性別の選択、もちろん男を選ぶ。容姿はどうやら旧SAOプレイヤーならば引き継ぎが出来るようなので、迷わず引き継ぎを選択した。
そうすることでステータスも旧SAO時代の物に出来ると勝手な予測を立てる。
そして最後に種族の選択、先ほどシリカたちにも宣言した通りサラマンダーを選び、全ての項目の入力が完了した。
最後にこのゲームの簡単な説明や注意事項がアナウンスで流れ、恐らくあれがサラマンダー領のスタート地点なのだろう、赤く光る壮大な城が徐々に近づいてきた。
しかしそこで予想外の出来事が起こる。
なんとそこで全てがフリーズしてしまったのだ。景色が流れ、次々とどこだかわからない場所が撮し出される。
気がつけば俺は盛大に夜空へと放り出されていた。
クゥさんとリズさんと一緒に私もALOへログインすることとなった。
そうなったのは未だに目を覚まさないアスナさんを助けるため。
私は私たちを苦しめたナーヴギアを再び被りALOへとログインした。
全ての項目に入力が終わるとケットシーを選んだプレイヤーが最初に降り立つ場所が見えた。
するとなぜか周りが全てフリーズし、ポリゴンとなって消えていった。
残された私は気がつけば夜空を舞っていた。
「なんでですかあああああ!?」
ついそう叫んだ私は悪くないと思う。
どうしてアスナは目を覚まさないのか……その答えをクゥは持ってきてくれた。本当は怖いけど、何から何まで任せっぱなしなのは性に合わないから、勇気を振り絞って私もALOに参加することを決めた。
久しぶりの電脳空間へダイブする感覚。当時はまさかあんなことになるなんて思ってもみなかった。それでもこうやってアスナやキリト、黒の騎士団の皆と仲良くなれたのは良かったと思ってる。
だから私はSAOであったその数少ない良かったことを、現実にも持って帰りたかった。
私はALOで使用するキャラの必須項目を入力し、アナウンスを軽く頭に入れてレプラコーンのスタート地点へ降り立つ。
ものだと思っていた。
だけど私がスタートした位置はなぜか地上ではなく空中。
思考がフリーズした。
直後に出てきたのは誰に発した訳でもない罵声だった。
「ばばばば……バカじゃないのおおおおおお!?」
ALOの新米プレイヤーがそう簡単に羽を出して翔べる訳もなく、私は重力に従い落ちていくのであった。
あー……やっぱ二人も空中に放り出されてる。
そこそこ近い位置から二人の悲鳴が聞こえてきた。
理由はなんとなく想像がついている。恐らくだがSAOデータをコンバートしたおかげで、俺らの最終セーブ地点……つまりアインクラッドの七十五層からゲームが再開されたのだろう。
しかしここにはアインクラッドはなく、そこまで高い場所には出れない。なので適当な空中に放り出されたのではないかと推測する。
まあ、これで三人が合流するという目的は早くも達成された、ポジティブにいこうじゃないか。
ガサガサガサガサッ……ドンッドンッ……ドンッ
ちょうど森がクッションになってくれたようでそれほど怪我もなく地上に墜ちられた。
「おーい……二人とも生きてるかー?」
「な……なんとか……」
「最初っからこれなんて……随分な歓迎ねっ」
シリカとリズも無事なようで各々立ち上がり服に付いた汚れなどを払っていた。
「とりあえずはログアウトの項目があるか確認しよう」
俺の言葉を聞いて慎重にシリカが確認を始めた。
「……はあ、大丈夫です。ちゃんとありました」
口から安堵の溜め息をこぼす。俺もリズもきちんと自分のメニューにもログアウトの項目があることを確認してから本題に入る。
「あの……本題に入るのはいいんですけど……ここ、どこですか?」
もちろん誰もわかる者はいない。なぜなら三人とも全員がALO初プレイだからだ。
「まずは持ち物や装備を確認して、それから人里を目指そう」
こうして俺らのALOは右も左も上も下もわからない、八方塞がりな状態からスタートした。