二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
にしても戦闘描写がどうしようもなく書けない…
いつまでたっても扉が開かない。
不思議に思い動き出そうとしたところで、扉の開く音がした。
不安そうにしていた黒猫団のメンバーも、思わず笑顔になり回復をするのも忘れ、我先にと扉の方へ駆け出す。
それをキリトとサチが苦笑し
ながら見ていると、突然横からリズが叫んだ。
「あっ……そこはダメ!!」
何かと思い叫んだリズを見ると、何かが物凄いスピードで飛んできた。
その後に遅れてザザーと何かが滑るような音と、ドンッという壁にぶつかる音が聞こえた。
そちらの方向へ視線をやると、先程駆け出した三人のうちの一人、シーフの格好をした男が倒れていた。
みるみるHPゲージが減っていき、それがやがてレッドゾーンへ突入、ついにはゼロになりその体を青いガラスへと変えて散っていった。
その場にいる全員が、扉の方へ向き直る。
扉から慌てたように残った二人が飛び出してきた……と思ったが槍を使っていた男が後ろから攻撃を受けた。
その男は徐々にHPバーを減らしていき、最終的にはそれをなくした。
扉の奥からは、背丈がおよそ三メートル程度のモンスターが出てきた。
斧を片手に一本ずつ持っており、その姿は人間の体に獅子の頭というもの。さながらソロモン72柱の一角、プルソンのような見た目であった。
違うところと言えば、手に持っているものだろうか?
しかしそれでも全体から醸し出す威圧感は半端なものではない。
この迷宮区の隠しボスといったところなのだろう。
クリアには支障はなく、しかし倒せば相応の経験値が入り、特別なアイテムもドロップする。
だが、こういう隠しボスは大抵の場合バグレベルで強い。
この層をクリアできる程度のレベルのプレーヤーが六人では、歯が立たない可能性がある。
しかもそのうちの二人は先の攻撃で怯んでおり、なおかつHPも危険域に近いイエローゾーンとなっており、正直戦力としては数えられない。
それでも、負ける気はない。
こちらも最前線で気張っているプレーヤーが、四人もいるのだ。
ここは二十七層で、最前線から三層しか変わらないが、四人全員がその最前線をソロで攻略出来るレベルにある。
そしてキリトが夜中にレベリングが出来ない間も、俺たちは最前線でモンスターと戦い続けてきた。
この二ヶ月黒猫団に合わせていたキリトとは、確実にレベルも二つか三つの差がついているはずである。
それにしてもこのモンスター、攻撃をしてこない。
意外と紳士なのだろうか。もしくはこちらから攻撃を仕掛けない限り、攻撃はしてこないとか。
どちらにしろこいつを倒さないと出口は開かないみたいなので、結局は戦闘になるのだが、とりあえず、これ幸いと作戦会議を敵の前で行う。
あくまで他人の振りを貫くキリトを含む、黒猫団三人を呼ぶ。
敵にちょいタイムな、と声をかけておく。
言葉がわかるとは思っていないが、僅かに頷くような仕草をしたような気がした。
「さて、敵さんもなぜか待っててくれているようなので、作戦会議を始めます。俺が考えた方針としては、壁役として俺とキリで勤めて、攻撃役はリズとシリカでいこうと思います。それで何か意見のある方は挙手をお願いします。ちなみに暫定として、パーティのリーダーは俺が適任なので俺がやらせていただきます」
こうなってしまえば、俺たちがキリトと知り合いということを隠し切ることは難しいので、いつもの呼び名に戻す。
「ええっと……俺たちはどうすればいいのかな…?」
それを気にしながらも、挙手をしながら発言をしたのは、メイスを使う男性プレーヤーだった。
それに冷静な声で、ゲームのプレーヤーとしては受け入れたくないだろう答えを返す。
「お二人は正直戦力に数えられないので、なるべく攻撃が届かないところで待機しつつ、Mobが出てきたらそれの対処を。さすがに敵さんも回復はさせてくれないでしょうしね」
若干だがそのメイサー、テツオが悔しそうな顔をしたが、この面子の中では弱いと感じているのだろう、そのまま何も言わずに引き下がる。
次に挙手をしたのは、キリトであった。その発言に耳を貸す。
「俺は壁役なんかほとんど経験ないんだが……」
「それは俺も一緒だ。それでも技量的にはこれが適任だろ?シリカにはピナもいるから後方支援も出来るし、リズに至ってはまだまだ危なっかしいからな」
そうか、と一言だけ吐く。
リズは、別に危なっかしくないわよ!!、と抗議をするが華麗なるスルースキルを発動。
すると次におずおずといった感じで挙手したのは、サチであった。
「……どうしてキリトがあなたたちと一緒に行くのかな?それにあなたの……キリトの呼び名……凄く親しい感じがする。それはどうして?」
キリトが焦る。
俺はキリトの肩に、もういいよな、という意味で手を置く。
キリトは何も言わない。それを了承とし、俺たちの関係を話す。
「俺たち三人はギルド、ゼロの騎士団のメンバーです。メンバーは全員で五人という少数精鋭の最前線ギルドでした。ですが約二ヶ月前、一人がギルドから抜けました。そして別のギルドへ加入したんです」
ここまで言えば、なんとなく黒猫団の二人も想像できたのだろう、驚愕の表情でキリトを見る。
「そいつが加入したギルドの名前は……月夜の黒猫団、つまりキリトは元々攻略組の人間だったんです。でも勘違いしないでほしいのは、黒猫団のみなさんを騙すとかそういうのじゃなかったんです。収まらないものもあるでしょうが、今は流してくれませんか?ここを生き残るために」
恐らくサチは知っていたのだろう、驚きは少ないようであった。
しかしメイサーのテツオはさらに驚愕し、いろいろ言いたい事があったようだが、そんな場合じゃない、と思い直したのか素直に頷く。
「では、手筈通りに。スイッチのタイミングは俺が出す。キリは二人との連係なんてやったことなかっただろ?」
素直に頷くキリト。
ここまで俺主体で挑むのは始めてだが、そんなことも言ってられない。
「それでは各々HPには気をつけていきましょう。さて、大変お待たせ致しました」
そう言って敵の方に向き直る。
こちらが武器を構えると、ボスの方も斧を構える。
キリトと二人、並んで飛び出す。
それに合わせボスが斧を降り下ろすが、それを左右へかわし側面へ。
パワータイプの武器を持っているので、動きは遅いと踏んでいたがそれは外れる。
すぐに斧を持ち上げると、片方ずつ俺とキリトへ両腕を広げるように降り下ろした。
「くううう…っ……いけっ!!」
俺の言葉を聞く前に、二人は敵へそれぞれのスキルを叩き込む。
さらに敵が怯み、斧で押さえつける力が弱くなったところで、それをかち上げ、横からキリトとタイミングを合わせ、スキルを発動させる。
それが上手く決まり、敵はたたらを踏む。
そこで追撃をかけようとしたところで、ボスはたたらを踏んだ最後の一歩を軸にし、斧を持った両腕を広げ、回転。
俺たちは一気に壁際まで吹き飛ばされる。
横目でHPを確認。全員思ったよりも減っていない。
全方位攻撃だったので、威力が弱いと判断した。
敵が大きく口を開き、そこから炎のブレスを吐いてくる。
こちらはピナのブレスで相殺……はできず、しかし勢いは殺せたので悠々とかわす。
避けた勢いで攻撃を出す。
左、右、下、上、と休むことなく続ける。
その横からキリトがスキルでアタックしたのを合図とし、リズとスイッチ。
キリトに意識を割いたボスにリズのスキルが当たる。
すぐさまリズと場所を替わり俺は後衛二人の壁となる。
こちらが一方的に攻撃をしてるように見えるが、壁となっている俺とキリトのHPは、すでにイエローゾーンへ入っており、油断をしたら一発で持っていかれる。
斧を使いこなす相手は、一撃でこちらのHPをかなりの量で削るので、上手く立ち回り続けても限界はくる。
ボスの攻撃を剣で受け、後ろへ飛ばされたタイミングで俺のHPバーがイエローを割りそうになった。
「すまん、リズ。スイッチ!!」
「オーケー!!任せて!!」
「シリカもキリトとスイッチだ!!」
「はい!!行きます!!」
二人へ指示を出し、俺とキリトは一時後方へ下がる。
回復を待ちながら、チャンスがあれば飛び込めるように神経を尖らせておく。
リズもシリカも攻略組であるので、攻撃が当たらないように上手く立ち回っている。
しかし時おり回避が間に合わず、ガードで防ごうとする場面もあり、その場合ガードの上からダメージをくらっていた。
このまま押しきれそうだったが、ボスのHPが残り一段のイエローゾーンに入ったとき、この場に変化が訪れた。
先程まで閉まっていた扉が開き、そこからMobが五体出てきた。
そいつらは扉の近くにいたサチらの方へ向かい、攻撃へと移る。
さすがにあの二人では、五体ものMobを相手取るのは厳しいと判断。
キリトにそちらへ援護に行くように言う。
「だが、こいつは三人で平気か?」
「俺らをナメんな。さっさと助けてこい」
「…………っ…すまん」
そう言ってキリトは黒猫団の二人の元へと助太刀に向かう。
今、前で踏ん張ってくれている二人のおかげでそろそろ終わりそうであった。
後ろからはMobが倒れる音が続けざまに聞こえる。
ボスのHPもレッドゾーンへ突入、しかし二人のHPもイエローを割りそうだった。
「リズ!!シリカ!!スイッチ!!」
俺の言葉とともに二人は一瞬で後方へ下がる。
それと同時に前に出てスキルを発動。
ボスの動きが一瞬止まる。
止めを指すのには充分であった。
その一瞬を逃さず、リズは重攻撃のスキル、シリカは刺攻撃のスキルを敵に当てる。
スキル後の硬直から開放された俺は、おまけとばかりにスキルを発動させた。
コンビネーション主体の攻撃を食らった相手は、残りのHPを無くし散っていった。
久々に4000文字割った。
これからは更新が多少遅くなるやも。