二次元の中の二次元~最初の二次元は三次元に変わりました~ 作:祭永遠
ご注意ください。
二〇二三年の二月、デスゲームが開始してから約五ヶ月がたっていた。
今の最前線は十六層となっており、日夜攻略のためにレベルを上げていく日々が続いていた。
ゼロの騎士団のメンバーは結成当初から一人増えて五人となっている。
そう、キリトを説得してメンバーに入れたのだ。
非常時の際に、きちんと駆けつけてくれれば他は自由にしていいのと、アルゴの情報がいち早く入るという事が決め手になったらしく加入するに至った。
ホームは十二層の主街区の一角を四人でコルを出し合って購入。
けっこう穴場的なところであったので満場一致で即決となった。
現在はシリカがリズのレベリングを協力しており、俺はホームでお留守番、アルゴはいつも通りに情報収集を行っている。
レベルの方も少数ギルドではかなり高く、平均値で三十を越えたあたりである。
内約としては俺が34、シリカが32、アルゴが31、リズが27となって、ギルメン非常時には、ここにキリトの34が加わることになる。
ちょうど昼時なのでそろそろみんな帰ってくる頃だ。
すると予想通りレベリングに行っていた二人が帰ってきた、ただし意外なものを連れてだったが。
「クゥさん!!クゥさん!!見てください!!フェザーリドラをテイムしちゃいました!!」
この五ヶ月の間でシリカもかなり打ち解けてきて呼び方が変わった。
俺の方もリズとアルゴ、二人の歳上への敬語が外せるようになった。
二人はギルドの団長なんだからそれでいい、というかゲームで敬語を使っていると気持ち悪いと言われてしまった。
結果、ギルメンには敬語は使わなくなり自然体でいるようになった。
「この子ったら凄いのよ、寄ってきたフェザーリドラにレベリング行く前に買ったナッツをあげたら、テイムしちゃうんだもの」
「いやいやいや、二人はどこにレベリング行ってたのさ」
「十三層ね」
確か十三層にフェザーリドラはMobとして出ないはずである。
それを言うと話はこれからだという風にやれやれといった表情で続けた。
「で、問題はそのあとよ。私の武器の素材を集めに六層へ降りたわけ。そこが一番POPするからね。そんで森を少し入ったらこのフェザーリドラがいたわけよ。そっからはさっき言った通りね」
そんな偶然があるのだろうか。
もしくは原作の強制力というやつなのか。
例えシリカは攻略組にいようとフェザーリドラのピナを、テイムすることは決まっていたのだろうか。
そうなってくると、俺が考えている月夜の黒猫団の救済方法は確実に使えないことになる。
そうなった場合は少々やっかいだ。
だが手がないわけではないので今は置いておく。
「あの、このフェザーリドラ飼っちゃダメですか?」
いきなり何を言い出すのか、テイムしたのはシリカなのだから好きにすればいい。と言いかけたところで、ハッとなり、思いついた言葉を並べる。
「いいや、ダメだ。うちはフェザーリドラは禁止です」
「ええー!!ちゃんと御飯もあげるし毎日お散歩にも連れてくから!!飼っていいですよね?」
「どうせすぐに俺任せになって面倒も見なくなるんだから、もといたところに戻してきなさい」
「あんたらはペットの事で揉める親子か」
リズから突っ込みが入り、俺とシリカは言い合いを止める。
実際、テイムしたのはシリカなのでわざわざ俺の許可を取る必要はないのだが、どうやらシリカもこのやり取りがしたかったらしく、満足そうな表情をしていた。
名前はすでに決まっているようでピナと呼んでいた。
家で飼っていた猫の名前をつけたそうで本人は大変喜んでいるが、フェザーリドラ…いわゆる竜種に猫の名前をつけるのはどうなのだろうと思ったのは俺だけではないと信じたい。
しばらくするとアルゴも情報収集から帰ってきた。
アルゴはいつも通りこの情報はいくらで売れるか考え込んでいたが、それはストップさせていただいた。
これがバレたら(いずれはバレる。早いか遅いかの違い)ここにはしばらく帰ってこれなくなる。
恐らくだがテイム方法を聞きに来るプレーヤーが溢れてしまうだろう。
なので俺はもう少し上の層に行って、仮のギルドホームを買ってからにしようと提案した。
ここは全員が気に入ってるところなので反対意見は出なかった。
別のギルドホームを買うまでは、アルゴも黙っていてくれることを約束してくれたのでそこは安心している。
アルゴの意外な点は身内にはけっこう融通が効くところである。
これにはけっこう助けられていて、いまだ俺たちギルメンの情報は売っていないそうだ。
証拠(?)に今まで他のプレーヤーにとやかく言われたりしないで前線でやってこれているので本当だと思っている。
ちなみにここを買ってからは、ギルメンは全員ここに住んでいる。
そのおかげか、ハーレムっぽいことになってはいるが、そんなことはない。
アルゴはキリトにお熱のようだし、リズ、シリカ共にそれらしい挙動を見せないのでそれはないと言える。
前にその話題になったときにアルゴは堂々と宣言していたし、リズに至ってはそんなことを気にする余裕もないらしい。
俺たちのレベルに追いすがるので精一杯だそうだ。
シリカには聞くまでもなく、小学生のうちから恋愛なんて個人的には難しいと思っている。
なぜかそう言ったらシリカが拗ねたような顔をしていたが、多分見栄を張っているようなものだと解釈した。
すると、アルゴがいつもの報告を開始する。
「今の攻略ペースだと、上手くいけばあと五日程でボスの部屋にたどり着けるナ。迷宮区もすでに半分以上マッピングされていル、まあほとんどキー坊の働きのおかげだがナ」
「確かに今回は俺もシリカもあまり籠らなかったからな。今から合流して少しでも役に立ちに行くか?」
「ちょっと待った!!そしたら私のレベリングはどうなるわけさ?」
「だってもうリズも27だろ?だったらマージンは十分だしトドメは譲るから経験値もリズに入る。何の問題もない」
「そういう事が言いたいんじゃなくて、心構えが出来てないっての!!今から最前線の迷宮区に行くぞって言われてはい、そうですか。とはいかないの!!」
リズは聞き分けのない子供に言い聞かせるようにして、どうにか自分は迷宮区に行かなくて済むようにしたいようだった。
無理矢理連れて行っても、うちのギルドの初期からの決まりを破ることになるので、今回は引くことにした。
簡単に引くとリズは納得出来ないような表情をするが、これもご愛敬というやつである。
ということで、今回もシリカと二人で迷宮区の残りをマッピングするために行動を開始する。
今まで通りコンビネーションを軸に、次々とMobを片付けていく。
特に問題はなく奥に進んで行くと、見知った顔に出会った。
「あれ?そこにいるのはアスナさん?」
「え?ってシリカちゃんにクゥド君じゃない!!久しぶりね、この層の迷宮区じゃ初めて会うわね」
「そうですね、あまり日にちは経ってないのに久しぶりに感じます。今回もソロで活動ですか?」
俺の意味深な発言に少し呆れた表情をする。
「クゥド君、あなた私とキリト君をセットで考えてない?」
「そんなことありませんよ?」
すみません、セットで考えています。
「まあ、別にそれは良いのだけど…シリカちゃんの肩に停まってるの、それフェザーリドラよね?どうしたの?」
話しますか?というような視線をこちらに向けてきたので、アスナなら不用意に口外しないだろうと俺は判断しオーケーサインを出す。
するとシリカは興奮したように、今日の出来事を話した。
「実は今日、六層でテイムしたんです!!」
アスナの表情が驚きに染まった。
それはそうだろう。竜種をテイムしたとなれば、確実に心強い。
テイム方法がわかっていれば教えるのも吝かではないが、いかんせん不透明なことが多すぎるので、ということを正直に話すと納得してくれた。
レベル30オーバー(ちなみにアスナは30フラットらしい)が三人もいれば、話しながらでもこの層のMobは問題なく対処できたためそのまま会話を続ける。
しばらくそうしていると、上に続く階段を発見しそれを登る。
どうやらマップを見る限り俺たちが最初らしく、キリトは別のところをうろついているようだった。
今回はこの階のマッピングが全て終了したところでアスナと別れギルドホームへと帰る。
夕食時にアルゴへデータを渡し、そのあとはそれぞれの目的のために動く。
アルゴはいつも通り情報収集なのだが、シリカとリズは違った。
俺に話しかけ今日全く出番のなかったピナの力を試したいとのことで、急遽今より下層の十層まで降りた。
リズはそれのついでに、自分のレベリングもするとのことで着いてきた。
一言で言うならピナは非常に優秀であった。
逐一シリカの言葉がなくても思った通りに動いてくれ、ブレスや回復などもこなした。
どうやらテイムモンスターもレベルが上がるらしく、しばらくはピナとリズのレベリングを手伝った。
夜も遅くなりそこそこ効率的に狩れ、満足したところでホームに帰るとすでにアルゴは本日最後の情報収集終えてい就寝準備をしていた。
他のメンバーも汗を流し、就寝準備を終える。
ちなみにキリトみたいに補正はないので、ラッキースケベなど起こらなかったのは言うまでもない。
アルゴの予想通り、その日の五日後にボス部屋が発見された。
ゼロの騎士団からは俺とシリカのみの参加となる。
全員レベルは問題ないがアルゴは情報屋の本分があり、リズは参加したいらしいが気持ちに踏ん切りがつかないそうだ。
迷宮区を上がり、すでにほぼ同じ面子となりつつある攻略組を見渡す。
その中には当然キリトとアスナもおり、それぞれ緊張の面持ちでレイドリーダーの話を聞いている。
キリトはいつも通り冷静にボスに対応していた。
攻撃がくる瞬間を見極め、隊のメンバーに指示を出す。
同じ隊のプレーヤーはそれを忠実に聞き、言葉通り実行する。
この層でも犠牲者を出さないでボスを倒し、キリトはいち早く、しかし無理はせずに次の層へ登っていった。
後で本人から聞いたのだが、この層のLAボーナスもキリトがゲットしたらしい。
それがなんだったのかは結局教えてはくれなかった。
お分かりでしょうか?
今回の独自解釈とは、シリカがピナをテイムした場所となっております。
原作シリカのホームが八層で、なんとなく降り立った層でテイムした、とありました。
もし、八層でテイムしたのならこういう言い方はしないんじゃないかと思ったのです。
そしてなぜ六層にしたかと言いますと、原作シリカはピナをテイムするまで頼れる人もおらず、ずっと一人で怯えていたとありました。
そうするとなんとなく、なんて理由で自分がホームにしている層より上に行くのかな?と思い、こうした次第でございます。
納得いかない方もいらっしゃると思いますがご了承ください。