ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第92話『スクールカーニバル・ウォーです!(女子学園サイド・パート2)』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第92話『スクールカーニバル・ウォーです!(女子学園サイド・パート2)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学園祭中の大洗女子学園の某所………

 

「なあ、沙織。取り敢えず何処へ行くんだ?」

 

別れたメンバーの中で、沙織と一緒になっていた地市が、沙織にそう尋ねる。

 

「う~ん、そうだね~………取り敢えず、戦車チームの皆の様子見に行ってみようか? 此処からだと、自動車部の皆が居る所が近いね」

 

沙織は学園祭のしおりを見ながらそう答える。

 

「自動車部って、何を出し物にしてるんだ?」

 

「確かぁ………自動車部が持ってる車で、学園長の車とレースするとか言ってたよ」

 

「学園長のって………あのF40か? アレ確か、蝶野教官が10式で踏み潰してなかったっけ?」

 

亜美がやって来た日に10式によって踏み潰されたF40の事を思い出しながらそう言う地市。

 

「何でも保険が降りたから、同じヤツを新しく買ったって聞いてるけど………」

 

「それでまたF40を買ったかよ。自分の学校が廃校になるかも知れないってのに、何やってんだか………」

 

「まあまあ、兎に角行こう行こう」

 

廃校の危機が迫っていると言うのに新車を買っている大洗女子学園の学園長に呆れている地市の手を引き、沙織は自動車部が居る場所へ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自動車部が居る特設レース会場にて………

 

「あ! あそこだね!」

 

「? 何か騒いでねえか?」

 

漸く自動車部が居るエリアに到着した沙織と地市だが、何やら簡易ピットコーナーに置かれている自動車部の車………『マツダ・コスモスポーツ』の周りに、自動車部と手伝いをしていた整備部のメンバーが集まり、何やら騒いでいる。

 

「大丈夫、ホシノ?」

 

「へーき、へーき、これぐらい………! アイタタタタ!」

 

ホシノを気遣うナカジマ。

 

そのホシノは、素足を出している右足に、包帯を巻いている。

 

「無理はするな、骨に異常は無いが、かなりの怪我だぞ」

 

「こりゃ、運転は無理っすねぇ………」

 

そのホシノに向かって、敏郎と藤兵衛がそう言う。

 

「でも、如何しよう………ホシノに合わせてカスタマイズしちゃってるから、今からセッティングを直すと時間掛かるよ」

 

「お客さんはもう入ってるのに………」

 

スズキとツチヤが、不安げな顔を見合わせる。

 

「皆ー!」

 

と、その様子が気になったのか、沙織と地市が自動車部と整備部のメンバーの中に入って来る。

 

「あ、武部さん」

 

「石上くんか」

 

「如何かしたのか?」

 

ナカジマと敏郎がそう声を挙げると、地市がそう尋ねる。

 

「いや、それが………」

 

「今日のレースでレーサーを務める筈だったホシノくんが、トラブルで負傷してしまってな………」

 

「ええっ!? だ、大丈夫なんですか!?」

 

負傷と言う単語を聞いて、沙織が心配する。

 

「大丈夫っす。そんな大怪我って程のモンじゃないっすから」

 

「でも、流石にレーサーをやるのは無理だね………」

 

藤兵衛が心配要らないと返すが。スズキがそう呟く。

 

「大丈夫だって………! アダダダッ!」

 

「ホラ、無理しちゃ駄目だよ」

 

ホシノが強がって立ち上がろうとしたが、足の痛みに耐え切れず、尻餅を着いてしまう。

 

「やはり中止するしかないか………」

 

「お客さん達をガッカリさせちまうのは忍びないっすけどねぇ………」

 

中止の方向へと動き出す敏郎と藤兵衛。

 

「ねえ地市くん。車の運転なら良くしてるし、何とかならない?」

 

とそこで、沙織が地市にそう問い掛ける。

 

「無茶言うなよ。歩兵道用の車両なら兎も角、レース仕様の車なんてそう簡単に運転出来るものじゃねえって」

 

しかし、地市からはそう言う返事が返って来る。

 

「駄目かぁ………」

 

「お困りですか?」

 

するとそこで、そう言う声が聞こえて来た。

 

「えっ?」

 

「「「「「「??」」」」」

 

沙織達がその声がした方を振り返ると、そこには1人の男子の姿が在った。

 

「誰?」

 

「大洗国際男子校の2年………『玖珂 速人(くが はやと)』です。以後お見知りおきを」

 

少々芝居が掛かっている様に見えるが、礼儀正しい態度でそう自己紹介する男子………『玖珂 速人(くが はやと)』

 

「ハア………」

 

「それで? 一体何の用かね?」

 

ナカジマが首を傾げていると、敏郎がそう問い質す。

 

「失礼ですが、先程からの話を立ち聞きさせていただきましてね。宜しければ、その車………私に運転させて頂けないでしょうか?」

 

「何?………」

 

速人がコスモスポーツを見ながらそう言うと、敏郎は僅かに目を見開く。

 

「待ってよ! 素人をいきなり乗せるワケには行かないよ」

 

「それにこの車、今日はホシノに合わせてセッティングしてあるんだよ」

 

スズキとツチヤがそう反論する。

 

「御心配無く。私、運転には少々自信が有りまして………セッティングはコチラが合わせれば良いだけの事です」

 

「無茶苦茶だな、オイ」

 

自分の方をセッティングに合わせると言う無茶も良い所な速人の言葉に、藤兵衛が呆れる様な様子を見せる。

 

「このまま中止しては、観客の皆さんに申し訳が立たないのでは?」

 

「それは………」

 

「うむ………」

 

そう言われて言葉に詰まるナカジマと敏郎。

 

すると………

 

「分かった。頼むよ」

 

他ならぬホシノが、速人に向かってそう言った。

 

「! ホシノ!?」

 

「ホシノくん………」

 

ナカジマと敏郎が驚いた様子を見せる中、速人は不敵に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

特設レース会場のスタートラインには、学園長のF40………

 

そして、自動車部のコスモスポーツが、エンジンを吹かしながら並んでいる。

 

コスモスポーツ側の運転席には速人。

 

そして助手席には、ナビゲーターとして乗り込んだホシノの姿が在った。

 

「大丈夫かな?………」

 

「ホシノの奴、如何してあんな奴に………」

 

「まあ、ココは信じて見守ろうじゃないの」

 

ピット近くのスタッフ観覧席に居るスズキとツチヤがそう言うが、ナカジマが宥める。

 

「ホシノさーん! 頑張れー!!」

 

「アイツ一体何者なんだ?」

 

その中に混ざっていた沙織はホシノに声援を送り、地市は速人の正体を訝しむ。

 

「ココまで来て何ですが………何故任せてくれたのですか?」

 

と、間も無くスタートの合図が掛けられると言う瞬間に、速人は助手席のホシノに向かってそう尋ねる。

 

「只の感さ。アンタは………そう、とても速い。そんな気がしたからさ」

 

ホシノは笑みを浮かべてそう返す。

 

「フフフ、成程。シンプルかつ良い理由です。そこまで期待されているのなら、ご覧に入れましょう………私の速さをっ!!」

 

「それではーっ!! 位置に付いてぇっ!! よ~い!………」

 

速人がそう言い放つと、藤兵衛がそう言い、スターターピストルを上に向けて構える。

 

一瞬の間の後、スターターピストルから破裂音が鳴り響く。

 

その瞬間!!

 

「ラディカルッ! グッドスピイイイイイイィィィィィィィーーーーーーーードッ!!」

 

速人がそう叫び、サイドブレーキ解除とギアチェンジ等を一気に行い、一瞬で学園長のF40を置いてけぼりにした!

 

「!? なっ!?」

 

「はやっ!?」

 

「嘘っ!?」

 

「コレは………」

 

「す、凄い………」

 

「…………」

 

その様を見たナカジマ、スズキ、ツチヤ、敏郎、沙織が驚愕を露わにし、地市に至っては言葉を失っている。

 

「コ、コレは!?………」

 

「この世の理はすなわち速さだと思わないか! 物事を速くなしとげればその分、時間が有効に使える! 遅い事なら誰でも出来る! 20年かければバカでも傑作小説が書ける! 有能なのは月刊漫画家より週刊漫画家、週刊よりも日刊です! つまり速さこそ有能なのが、文化の基本法則! そして俺の持論でさあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

助手席のホシノも驚愕している中、速人はとても長い台詞を数秒足らずで言い切ると言う凄まじい早口で捲し立てる様にそう言う。

 

その直後に、置いてった筈の学園長のF40が何故か正面に現れ、追い抜く。

 

「えっ!? 何で置いてった学園長の車が………!? まさか周回遅れっ!?」

 

一瞬で学園長のF40を周回遅れにした事に、ホシノが信じられないと言う顔をする。

 

「ハハハハハッ! 足りない! 足りないぞぉっ!! お前に足りないもの! それはぁっ!! 情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ! そしてぇなによりもおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!! 速さが足りないっ!!」

 

速人が再び早口でそう捲し立てた瞬間、またも学園長のF40を周回遅れにした!!

 

「凄い………凄いよ! 玖珂くんっ!!」

 

「速人とお呼び下さいっ! ホシミさん!!」

 

「ホシノだよ」

 

「ハハハハハハッ! そうでしたっけぇっ!?」

 

馬鹿笑いをしている間にも、速人はまたも学園長のF40を周回遅れにする。

 

「はええよ! 学園長のF40がまるで止まってるみたいだぜ!」

 

「私もう、何が何だか分かんないよ………」

 

外からその様子を見ている地市と沙織には、学園長のF40が止まって見える。

 

「ありゃ~、これはもう学園長の方が可愛そうだね………」

 

「って言うか、アレってもう腕がどうこうってレベルじゃないよ」

 

「まあまあ良いじゃん。お客さん、盛り上がってるし」

 

余りの超人的なスピードと抜群のドラテクを見せる速人に、観客達も激しくエキサイティングしている。

 

「俺はこう思うんですよ! 運転するなら助手席に女性を乗せるべきだと! 密閉された空間、物理的に近づく距離、美しく流れるBGM! 体だけでなく2人の心の距離まで縮まっていくナイスなドライブ! 早く目的地に行きたい! でもずっとこうしていたい! この甘美なる矛盾! 簡単には答えは出てしょうが、しかしそれに埋もれていたいと思う自分がいるのもまた事実!」

 

「わっ!?」

 

と、またもや速人が早口でそう捲し立てた瞬間、車内に走った振動で、ホシノが速人に寄り掛かる様な形となる。

 

「! フォオオオオオオオォォォォォォォォーーーーーーーーーッ! ファンタスティーーーーーーックッ!!」

 

「ゴールッ!!」

 

そして速人がそう絶叫にも似た声を挙げた瞬間、コスモスポーツはチェッカーフラッグを切った。

 

「す、スッゲェタイムだ!」

 

「うむ………」

 

計測していたタイムを見て、藤兵衛が驚きの声を挙げ、敏郎も唸り声を漏らす。

 

「ああ、また世界を縮めてしまった………」

 

「いや~、最高だったよ!」

 

感動に浸っている様子の速人と、満面の笑みを浮かべているホシノが、コスモスポーツから降りて、そう言うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数10分後………

 

「ありがとう、速人くん! お蔭でお客さんは大盛り上がりだったよ!」

 

「いえいえ、文化人として、女性が困っているのを見過ごせなかっただけですよ、ナガシマさん」

 

「ナカジマだよ~」

 

「ああ、失礼。人の名前を覚えるのは苦手でして」

 

速人のお蔭でレースは大盛況に終わり、ナカジマが速人にお礼を言う。

 

「整備部長! コレはまたとない逸材っすよ!」

 

「ああ、分かっている………」

 

「なあ、オイ、お前!」

 

と、藤兵衛と敏郎がそう言い合っていた瞬間、地市が速人に声を掛けた。

 

「何ですかな?」

 

「俺は大洗機甲部隊の歩兵隊員、石上 地市だ。玖珂 速人! 歩兵道をやる気は無いか?」

 

速人に向かってそう言う地市。

 

彼の超絶ドライビングテクニックを目撃した身としては、何としても彼を歩兵部隊へと引き入れたいと思った様である。

 

「ほう、歩兵道ですか………」

 

歩兵道と聞いて、速人は意味有り気な表情を見せる。

 

「駄目か?………」

 

それを見て不安を露わにする地市だったが………

 

「フッ………歩兵道の世界を縮めると言うのも悪くない」

 

速人は不敵に笑い、そう言った。

 

「ホントか!?」

 

「悩んでいる時間は無駄以外の何ものでもない! 即決即納即効即急即時即座即答! それが残りの時間を有意義に使う手段だ!」

 

地市が驚いた様に言うと、速人はお得意に早口でそう捲し立てる。

 

「お、おう………ま、まあ、兎も角! コレからよろしく頼むぜ、速人!」

 

「こちらこそ! 石岡さん!」

 

「石上だ!」

 

そして例によって名前を間違える速人であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

飲食系の模擬店が並んでいるエリアでは………

 

「う~ん、美味しいです」

 

両手いっぱいに焼きそば、タコ焼き、お好み焼き、林檎飴、チョコバナナ、フランクフルト等々を抱えている華が、チュロス(特大)を頬張りながらそう言う。

 

「よ、良かったですね………」

 

そんな華の姿に苦笑いを零す飛彗。

 

「飛彗さん、全然食べてませんけど、大丈夫ですか?」

 

「え、ええ、お気になさらず………(華さんの食べっぷり見てたらそれだけでお腹いっぱいになるからなぁ)」

 

全然買い食いをしていない飛彗の事を見て、華は心配する様にそう言うが、飛彗は既に華の食べっぷりを見ているだけで、腹が膨らんでいた。

 

と、そこへ………

 

「あ! 五十鈴殿! 宮藤殿!」

 

1人で居た優花里と出くわす華と飛彗。

 

「あら、秋山さん?」

 

「白狼と一緒だったんじゃ?………」

 

「それが………神狩殿が、騒がしくなって来たから帰ると言って居なくなってしまって………」

 

華が首を傾げ、飛彗がそう尋ねると、優花里は困った様な顔をしてそう返す。

 

「ああ、そうですか。白狼は元々こういう騒ぎとかは好きじゃありませんからね。今日は僕達が無理矢理引き出して来た様なものでしたから」

 

「神狩さんって、何処か人を寄せ付けない雰囲気がありますよね………」

 

飛彗がそう言っていると、華がそんな事を言う。

 

「すみません、悪い人ではないんですけど、ちょっと気難しいと言うか、1人で居たがる様なところがあって………」

 

「いえ、そんな。宮藤殿が謝る事じゃありませんよ」

 

白狼に代わる様に謝罪する飛彗だったが、優花里は飛彗が謝る事ではないと言う。

 

「では、秋山さん。ご一緒なさいますか? まだまだ美味しそうなお店がいっぱいありますし」

 

(まだ食べる気なんだ………)

 

そこで華は、そう言って優花里を誘い、飛彗はまだ食欲旺盛な様子の華に内心で冷や汗を流す。

 

「い、いえ! 御2人の邪魔をするワケには行きません! 秋山 優花里! コレで失礼させて頂きます!」

 

だが、優花里はそう言って敬礼したかと思うと、踵を返して華と飛彗から離れて行く。

 

「あ! 秋山さん!」

 

手を伸ばして呼び掛ける華だったが、既に優花里の姿は雑踏の中へと消えていた。

 

「気を遣わせてしまったみたいですね………」

 

「悪い事をしてしまったでしょうか?」

 

「いえ、折角の気遣いなんです。厚意に甘えましょう」

 

「………そうですね。では、参りましょうか」

 

2人はそう言い合うと、再び歩き出す。

 

「う~ん、美味しい………」

 

それと同時に、今度はチョコバナナを食べ出す華。

 

「…………」

 

と、飛彗はそんな華の姿に注目する。

 

「? 如何しました? やっぱりどれか食べたいんですか?」

 

「いえ、ただ………美味しそうに食べる華さんの姿が可愛いなって………」

 

「えっ?………」

 

飛彗がそう言った瞬間、華の顔が赤くなる。

 

「や、やだ、飛彗さんったら………」

 

「ああ、ゴメンナサイ。でも………本当の事ですから」

 

「~~~………」

 

そう言われて益々赤くなる華だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

弘樹とみほはと言うと………

 

1学年の校舎の中を散策していた。

 

「あ! 西住総隊長! 舩坂先輩!」

 

「ん?………」

 

「えっ?………」

 

と、不意に声を掛けられて振り返ると、そこにはウサギさんチームの面々の姿が在ったが………

 

「御2人で仲良く学園祭デートですか?」

 

「良いな~、羨ましいなぁ~」

 

「ちょっと、失礼だって」

 

「御2人共楽しんでますか~!」

 

「…………」

 

あやは海賊、優季は赤ずきん、あゆみは桃太郎、桂利奈は特撮の防衛チームの制服、そして紗希はHTBのマスコットキャラの着ぐるみを着ていると言う、コスプレ姿だった。

 

「ウサギさんチームの皆」

 

「何だ、その恰好は?」

 

みほがそう言い、弘樹が珍妙な恰好について問い質す。

 

「あ、私達のクラスで、コスプレ喫茶やってるんです」

 

メイド服姿の梓が、自分達のクラスの教室を指差してそう言う。

 

その言葉通り、その教室は従業員のクラスの生徒達と客が仮装やコスプレをしている喫茶店となっていた。

 

「へえ~、そうなんだ」

 

「最近の若い奴の趣味は分からんな………」

 

繁盛している様子のコスプレ喫茶を見てそう呟くみほと、年寄りの様な台詞を吐く弘樹。

 

「先輩、お爺ちゃんみたいなこと言ってますよ~」

 

「御2人も如何ですか? 衣装は貸し出ししてますから、そのまま学園祭を回ったり出来ますよ~」

 

「そうと決まれば、2人もコスプレしましょう! さあさあ!」

 

と、あやと優希がそう言ったかと思うと、桂利奈が2人の背を強引に押して行く。

 

「えっ!? あの!?………」

 

「オ、オイ………」

 

何か言おうとした2人だったが、桂利奈はその小柄の身体の何処から出ているのか、信じられない力で、2人をそのまま男性用と女性用の更衣室へと押し込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10数分後………

 

ウサギさんチームのクラスの前………

 

「ひ、ひだまりポカポカ?………」

 

そこには、思いっきり照れた様子で、キュアロゼッタの衣装に身を包んでいるみほの姿が在った。

 

「~~~~っ! 恥ずかしいよ~っ!!」

 

「西住総隊長可愛い~!」

 

「すっごく似合ってますよ~」

 

「アイ~! 声もそっくりだし!」

 

耐え切れずにそう声を挙げるみほを余所に、あや、優季、桂利奈はそう言う。

 

「すみません! 皆悪乗りしちゃ駄目だよ!」

 

そこで梓が、皆を代表する様にみほに謝罪し、あや達を嗜める。

 

「「「ええ~~っ?」」」

 

「ええ~っ?じゃない!」

 

不満そうにするあや達に、梓は更にそう言う。

 

「そう言えば、舩坂先輩は?」

 

とそこで、あゆみが弘樹が居ない事に気付く。

 

「みほくん」

 

「!? ひ、弘樹くん!?………!??!」

 

すると、背後から弘樹の声が聞こえて来て、みほが慌てて振り返り、そのまま固まる。

 

何故なら、そこに居たのは………

 

「…………」

 

赤い耐圧服を着込み、ゴーグルと酸素ボンベが付いたヘルメットを被った、ボトムズ乗りだった。

 

むせる

 

「だ、誰っ!?」

 

「小官だ………」

 

思わずみほがそう言うと、ボトムズ乗りは目の部分に在ったバイザーを上げる。

 

そこで漸く、弘樹の顔が見える様になった。

 

「あ! 弘樹くん!」

 

「おお~~! やっぱり舩坂先輩に似合いますね! その耐圧服!!」

 

みほが声を挙げる中、桂利奈がキラキラとした目で耐圧服姿の弘樹を見やる。

 

「一体何処から持って来たんだ、こんな物………」

 

そう言いながら、腰のホルスターに納められていた『バハウザーM571アーマーマグナム』を抜いて見やる。

 

「ア、アハハ………」

 

コレにはみほも苦笑いを零した。

 

「…………」

 

「アレ、紗希まで?」

 

とそこであゆみが、紗希がHTBのマスコットキャラの着ぐるみ姿のまま、弘樹のヘルメットに付いて居るバイザーをしている事に気付いてそう言う。

 

「ちょっと皆~! 人入って来たから、早く戻って~!」

 

するとそこで、ウサギさんチームのクラスから出て来た生徒が、梓達にそう呼び掛ける。

 

「あ、ハイ!」

 

「は~い」

 

「今行きま~す」

 

途端に、梓達は教室の喫茶店へと戻って行く。

 

「あっ! ちょっと!」

 

「オイ!」

 

キュアロゼッタと耐圧服姿で置いて行かれそうになったみほと弘樹が慌てて声を掛ける。

 

「…………」

 

すると、紗希だけが立ち止まり、2人の方を振り返る。

 

「あ、丸山ちゃん………」

 

「…………」

 

しかし、紗希は2人を見ながらグッとサムズアップを決めたかと思うと、ウサギさんチームの皆に続いて、教室へと入って行った。

 

「あ!………」

 

「あの子の事は未だに理解出来んな………」

 

そんな紗希の姿を見送った弘樹がそう呟く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後………

 

大洗女子学園の敷地内………

 

「や、やっぱり目立つね………」

 

「………そうだな」

 

他の来客や学園の生徒達からの注目されている中を歩くみほと弘樹。

 

何せプリキュアと最低野郎の組み合わせである。

 

ミスマッチ感も相まって、注目の的だった。

 

あの後、梓達のコスプレ喫茶は混み合い出し、落ち着くまで着替えは出来ないと言われた為、2人は止むを得ず、その恰好のまま学園祭巡りを続行。

 

結果はご覧の通りである。

 

「し、視線が………」

 

「気にしなければ気にならないさ」

 

「それはそうだけど………」

 

こんな時でも冷静な様子の弘樹に、みほは呆れる様な表情を見せる。

 

すると………

 

「おっと………会長から? ちょっと失礼するぞ」

 

弘樹の携帯電話が鳴り、電話の相手が迫信で有る事を確認した弘樹は、一旦ヘルメットを取ると電話に出る。

 

「もしもし、舩坂 弘樹ですが………」

 

『やあ、舩坂くん。すまないがちょっとトラブルが有ってね。頼み事をしたいのだが………』

 

電話の先の迫信が、弘樹にそう言って来る。

 

「トラブル?………何でしょうか?」

 

『実は、今日大洗女子学園を訪問してくれる予定の346プロダクションの『ニュージェネレーションズ』なのだが、学園艦の訪問は初めての様でね。道に迷ってしまったと言う連絡が入った。すまないが、迎えに出てくれないか? 生憎、今手の空いている者が居なくてね………』

 

そこに住んで暮らしている者にとってはそうでもないが、内地に住む人達の中には、学園艦の構造に不慣れで、迷ってしまうと言う事は多々有る事なのだ。

 

「分かりました。すぐに向かいます」

 

『すまないね。場所は上空から坂井くん達が見つけている。今メールで送るよ』

 

「了解しました」

 

弘樹がそう言って携帯を切ると、程無くしてメールが着信する。

 

「この場所か………」

 

「如何したの?」

 

メールに添付されていた地図のデータを見て弘樹がそう呟くと、みほが尋ねて来る。

 

「学園に来るアイドル達にちょっとトラブルがあった様だ。すまないが、迎えに出て来る」

 

「あ、じゃあ私も行くよ」

 

弘樹がそう言うと、みほも付いて行くと言う。

 

「いや、みほくんは学園祭を………」

 

「私が一緒だったら、迷惑かな?」

 

学園祭を楽しんでくれと言おうとした弘樹だったが、みほはそれを遮る様にそう言う。

 

「むう………」

 

そう言われると、弘樹は何も言い返せなくなる。

 

「じゃあ、行こうか」

 

そう言うと、弘樹の手を取り、歩き出すみほ。

 

(………敵わないな)

 

みほに手を引かれながら、弘樹は内心でそう思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

あんこうチームととらさん分隊の学園祭散策の様子。
そしてその中で新たな歩兵道メンバーの登場です。
モデルは勿論、あの世界を縮める最速のアニキです。

そんな中、道に迷ったニュージェネレーションズを迎えに行く事になった弘樹とみほ。
次回、遂にあのプロデューサーと会合です。(アイドルは?)
お楽しみに。

これからも、よろしくお願いします。

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