ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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第66話『楽しいビンゴ大会です!』

『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』

 

第66話『楽しいビンゴ大会です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦車道・歩兵道全国大会の第4回戦………

 

大洗機甲部隊VSパシフィック機甲部隊の試合………

 

水陸両用車中心のパシフィック戦車部隊と、高身長の歩兵達で構成されたパシフィック歩兵部隊を前に………

 

大洗機甲部隊は大苦戦を強いられたが………

 

竜真達とウサギさんチームの奮戦………

 

そしてあんこうチームと弘樹の活躍により………

 

またも辛くもながら、勝利を勝ち取ったのだった。

 

そして試合から2日が過ぎたこの日………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシフィック学園艦・パシフィック高等女子校とパシフィック高等男子校が共同使用している多目的ホールにて………

 

「皆ー! 盛り上がってるーっ!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

特設されたステージ上に居る唯を除いたスクールアイドル衣装姿のサンショウウオさんチームメンバーの中で、聖子がそう問い掛けると、観客である大洗機甲部隊とパシフィック機甲部隊の面々から歓声が挙がる。

 

「OK! 盛り上がってるねー! 実は今日は新曲を披露しようと思ったの!!」

 

「「「「「「「「「「おおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

聖子がそう言うと、大洗機甲部隊とパシフィック機甲部隊の面々から再び歓声が挙がる。

 

「それじゃあ、心行くまで堪能して行ってね! 新曲! 『DreamRiser』!!」

 

「カモン!」

 

その瞬間に、バックバンドである磐渡達の演奏が始まる。

 

そして、曲に合わせてサンショウウオさんチームの面々が歌い舞い踊る。

 

「聖子ちゃ~ん!」

 

「伊代ちゃ~ん!」

 

「優ちゃ~ん!」

 

「明菜ちゃ~ん!」

 

「静香ちゃ~ん!」

 

「満里奈ちゃ~ん!」

 

「今日子ちゃ~ん!」

 

大洗機甲部隊とパシフィック機甲部隊から、次々とメンバーをコールする声が挙がる。

 

「…………」

 

そんなサンショウウオさんチームの様子を、舞台袖から見ている唯。

 

「やっぱり………皆凄い………私も………何時か………」

 

その目には、聖子達と同じステージに立つ自分の姿が映っていた。

 

「へえ~、良いじゃない。貴方達の学園のスクールアイドル」

 

「ど、どうも………」

 

サンショウウオさんチームのステージを見ながらそう言うローレライに、若干萎縮している様子のみほがそう返す。

 

「本当に良かったんですか? 態々学校のホールを貸してくれてまで………」

 

「総隊長の許可は下りてますから」

 

続いて沙織がそう言うと、ローレライに代わる様にメロウがそう答える。

 

「敗者には敗者の矜持が有る………それだけの事ですわ」

 

そして、セイレーンが優雅な佇まいでそう言う。

 

 

 

 

 

何故、サンショウウオさんチームがパシフィック校の多目的ホールでライブをし、大洗機甲部隊の面々の姿が在るのか?

 

話は第4回戦が終了した頃まで遡る………

 

苦しくも大洗機甲部隊の勝利で幕を閉じた戦車道・歩兵道全国大会第4回戦………

 

ルールに則り、今回も勝利校のスクールアイドル達のライブが行われる予定だったが………

 

当のサンショウウオさんチームは、リーダーである聖子の体調がまだ完全に回復していなかったので、止むを得ず今回のライブを辞退しようとした。

 

しかしそこで、パシフィック校側のスクールアイドル………

 

つまり、セイレーン、ローレライ、メロウ達3人からなる『MERMAIDS(マーメイズ)』がある提案を持ちかけて来た。

 

以前の非礼のお詫びを兼ねて、大洗機甲部隊の祝勝会を開きたいので、そこで歌ってくれないかと。

 

困惑した大洗機甲部隊のメンバーだったが、お詫びとあっては断るのも悪いと思い、その提案を快諾。

 

現在に至ると言うワケである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もぐもぐ………美味過ぎるっ!!」

 

「まだまだありますから、遠慮無く食べて下さいね」

 

食事は立食パーティー式となっており、テーブルの上に所狭しと並べられている海鮮料理に手を付けていた大詔がお馴染みの叫びを挙げ、傍に居たツナがそう言う。

 

「うむ、川魚はサバイバル訓練の時も良く食べたが、海の魚も美味いな」

 

「へえ~、川魚を………天ぷらにでもしたんですか?」

 

「いや、生だ」

 

「えっ?………」

 

大詔から返って来た答えに絶句するツナ。

 

「な、生って………」

 

「サバイバル訓練中だと言ったろ。火を熾す余裕が在れば焼いていたさ。調味料も有れば使っていた」

 

「で、でも………川魚って、確か寄生虫が………」

 

「良く噛んで食べれば死んで、その寄生虫の分の栄養も摂れる」

 

「…………」

 

余りに壮絶な大詔のサバイバル訓練内容に、ツナは無意識の内に大詔から距離を取ったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、別の一角では………

 

「…………」

 

ライブや食事に夢中になっている一同を、片手に飲み物の入ったコップを持ち、壁に寄り掛かった状態で見守る様に見ている弘樹の姿が在った。

 

皆が楽しんでいる様子に微笑を零すと、コップの中身を一口呑む。

 

「………少し良いか?」

 

と、そんな弘樹に声を掛ける人物が居た。

 

「………カジキ」

 

そう、カジキであった。

 

「…………」

 

弘樹と同じ様に片手に飲み物の入ったコップを持ったカジキは、無言で弘樹の隣へ移動すると、これまた同じ様に壁に背を預ける。

 

「「…………」」

 

そしてそのまま互いに沈黙する両者。

 

すぐ目の前では、大洗機甲部隊とパシフィック機甲部隊の面々が飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎを繰り広げているが、2人にはその喧騒さえ遠く聞こえた。

 

「………見事だった、舩坂 弘樹。完全に俺の負けだった。試合の勝敗もお前が決めた」

 

やがてカジキは、弘樹に向かってそう言った。

 

「小官だけの力では無い………部隊の皆が其々の役割を懸命に果たした結果だ」

 

いつもと変わらぬ様子でそう返す弘樹。

 

「………俺は来年もう1度仕切り直しだ。視野が狭過ぎた」

 

そう言いながらカジキは、持っていたコップの中を覗き込み、飲み物の表面に自分の顔を映す。

 

「舩坂 弘に憧れ、目標としていながら、その本質を理解していなかった………歩兵道は1人で戦う武道ではない」

 

「…………」

 

「お前とお前の居る部隊がどこまで行けるのか………どんな戦いをするのか………それが見てえ」

 

そこでカジキは弘樹の方へと視線を移す。

 

「必ず決勝まで勝ち残れ………大洗の強さを最後まで見せつけてやれ」

 

「ああ………」

 

そう短く返すと、弘樹は再び飲み物を一口飲む。

 

「………それだけ言いたかっただけだ」

 

そこでカジキは、その場を後にしようとする。

 

「舩坂 弘樹………お前は紛れも無く………英霊を継ぐ者だったよ」

 

去り際に、そんな言葉を弘樹へ残して行った。

 

「…………」

 

弘樹はそんなカジキの背を、見えなくなるまで見送る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、パーティーはドンドン盛り上がって行く。

 

「さあお前等! いよいよお楽しみ!! ビンゴ大会の始まりだぜぇーっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

サンショウウオさんチームがライブを終えた特設ステージ上に立ったホージローがそう言うと、コレまでで最大の歓声が響き渡る。

 

「OK! 良い盛り上がりっぷりだぜ、ブラザーッ!! 早速豪華賞品の発表だぁっ!! 先ずは3等!!」

 

「我が校のマスコット! ジプシー・デンジャーくんのぬいぐるみです!!」

 

ホージローがそう言うと、スクイッドが40cmくらいは有りそうなサイズのデフォルメされたロボットのぬいぐるみを持って現れる。

 

「うわあっ! カッコイイッ!!」

 

アニメ好きな桂利奈が反応する。

 

「おや、桂利奈ちゃん。あのぬいぐるみが欲しいのかい?」

 

「欲しいーっ!!」

 

その様子を見ていた圭一郎が尋ねると、桂利奈は迷わずそう答える。

 

「OK、分かったぜ。じゃあ、俺が当てたら桂利奈ちゃんにプレゼントしてあげるよ」

 

「ホントッ!?」

 

目を輝かせて圭一郎を見やる桂利奈。

 

「その代わり、今度デートしようじゃないか」

 

そんな桂利奈を、圭一郎はプレゼントに託けてナンパに掛かる。

 

「うん! 良いよぉ!! うわーい!! やったーっ!!」

 

それをアッサリと了承し、小躍りを始める桂利奈。

 

如何やら色々と良く分かっていない様子である。

 

「ありゃりゃ………コレは結構手強かったかな?」

 

そんな桂利奈の様子を見て、圭一郎は苦笑いを零すのだった。

 

「続いて2等の景品はコレだぁっ!!」

 

「言わずと知れた、我等がアイドル『MERMAIDS(マーメイズ)』の直筆サイン入りアルバムCD! しかも水着グラビア写真付きだぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

ホージローがそう言うと、サインが入ったCDとMERMAIDSの水着のグラビア写真を携えたシイラが現れ、大洗とパシフィック歩兵部隊の一部を除いた面々から歓声が挙がる。

 

「水着! グラビア! ぐふふふふふふふ………」

 

「了平、顔が危ないですよ」

 

「まあ、そうなると思ってたよ」

 

またも法律違反な顔になる了平を見て、楓と地市が呆れながらそう言う。

 

「結構なお宝だけど、コレが2等か………」

 

「となると1位は一体何なんだ?」

 

「否が応でも期待させられるな………」

 

2等の景品がかなり豪華な物であるのを見て、磐渡、鷺澪、重音の3人が1等の景品に期待を膨らませる。

 

「それじゃあ待たせたなぁ! いよいよ1等の景品の発表だぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

遂に1等の発表となり、テンションが最高潮に近づく両機甲部隊の面々。

 

「コイツは凄い賞品だぁ! ハッキリ言って俺が欲しいっ!!」

 

「勿体ぶるなぁーっ!!」

 

「早く言えーっ!!」

 

ホージローが勿体ぶる様にしていると、歩兵部隊の隊員から野次が飛ぶ。

 

「聞いて驚くなぁ! そのブツとは、何と!………我等がパシフィック機甲部隊の総隊長であり、MERMAIDSのリーダーである、セイレーン先輩の熱~いキッスだぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「!? うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

その発表がされた瞬間!

 

コレまでで最大の歓声が、一部を除いたパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊から挙がった!

 

「マジかよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーっ!!」

 

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」

 

「ワッザッ!?」

 

「うひょおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」

 

「ダイターン! カムヒアッ!!」

 

「敵の潜水艦を発見っ!!」

 

「ちょっ!? 皆落ち着いて!!」

 

興奮し過ぎて色々な叫びを挙げる一部を除いたパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々を見て、沙織が若干引きながらそう言う。

 

「何ですか、この盛り上がりは?」

 

「如何やら、コイツ等にとっては想像以上の賞品だったみたいだな」

 

華も戸惑いの色を浮かべ、麻子は冷めた目でそんな一部を除いたパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々を見やる。

 

「ホ、ホージローさん!? わ、私! そんな事は聞いて居ません事よっ!!」

 

と、当の本人であるセイレーンも、狼狽しながらそう抗議の声を挙げた。

 

「ええ~~? でも、企画報告した時に、『私に協力出来る事なら何でも言って下さいね』って、言ったじゃ~ん」

 

「僭越ながら総隊長………同席していた自分も確と聞きました」

 

「自分もであります!」

 

ホージローがすっとぼけた顔でシレッとそう言い放つと、シイラとツナが援護する様にそう言う。

 

「それは………確かにそう言いましたけど!」

 

「キッスが嫌ならそれ以上の事とか………」

 

「それは絶対に嫌ですっ!!」

 

それだけは断固拒否すると言う態度を見せるセイレーン。

 

「じゃあキスね! 決まり! 総隊長のOKも出たところで、行ってみようかぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

そのまま強引に、ホージローはビンゴを決行するのだった。

 

「い、良いんでしょうか?」

 

「ブレーキ役のカジキはちょっと外してるし………大洗の面々はあの様子だしね………止めるのは無理ね」

 

そしてそんな様子に戸惑いを浮かべるメロウと、まるで他人事の様に見ているローレライだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小一時間後………

 

ビンゴ大会は予想以上に白熱。

 

リーチとなった者が多数出るものの、未だに1人もビンゴした者は居ない………

 

段々とパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の間に、ピリピリとした緊張感が漂い始める。

 

「さあ~、いよいよ30巡目! リーチの奴は多数居れど、未だにビンゴは出ず! 盛り上がって来たぜぇーっ!! 果たして勝利の女神は誰に微笑むのかーっ!!」

 

(Uの63、来い!)

 

(頼むぜ、Zの45だ………!)

 

(Eの19! Eの19! 大穴、来いっ!!)

 

(Jの28! 来てくれ!!)

 

ホージローの実況の中、リーチの者達が心の中で念じる。

 

「よし、来たぁっ! 気になる番号は………」

 

そこで遂に、新たな番号がコールされようとする。

 

「Aの7だ! 誰か、居ないかぁっ!?」

 

するとそこで………

 

「ビンゴォッ!!」

 

杏がそう声を挙げた。

 

「!? 会長っ!?」

 

「ええっ!?」

 

柚子と蛍が驚きの声を挙げ、パシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々も動揺する。

 

「かあ~っ! 勿体ねえっ! あ、でも、キマシタワーな展開も有りちゃ有りだなぁ………」

 

「何ですか、キマシタワーって?」

 

了平が節操無い様子を見せ、楓が呆れる。

 

「ああ、違う違う。当たったのはアタシじゃないよ」

 

するとそこで、杏はそう訂正をする。

 

「ああ、な~んだ………」

 

「驚かさないで下さいよぉ」

 

「全くだぜ」

 

途端に安堵の声を漏らすパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々だったが………

 

「当たったのは舩坂ちゃんだよ!」

 

「「「「「「「「「「!? ゲッホッ! ゴッホッ! エッホッ!!」」」」」」」」」」

 

続く杏の言葉を聞いた瞬間、全員が………

 

むせる

 

「…………」

 

当の本人は何時も通りの仏頂面で、ビンゴカードを片手に携えて突っ立っていた。

 

「マジかよ、こいつは………」

 

「ある意味、最も意味の無い人間に当たったわね………」

 

「英霊の血には運を引き寄せる力も有るんでしょうか………」

 

そんな弘樹の姿を見て、ホージロー、ローレライ、メロウはそう呟く。

 

「いやあ、残念だったね、皆。如何やらセイレーンのキスは最強のムッツリのものだよぉ!!」

 

杏がそう言った途端、パシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々は弘樹に向かって一斉にブーイングを送る。

 

「…………」

 

そして、1番のショックを受けていたみほは、呆然とその場に立ち尽くしていた。

 

「に、西住殿?………」

 

「みほさん?」

 

「大丈夫か?」

 

「…………」

 

優花里、華、麻子が心配して声を掛けるが、みほは反応しない。

 

「み、みぽりん! しっかりして!!」

 

とそこで沙織がみほの肩を掴んで揺さ振る。

 

「………はっ!?」

 

そこで漸く我に返るみほ。

 

「みぽ………」

 

「如何しよう沙織さん! 舩坂くんがセイレーンさんと、キ、キキキキ、キススススススス………」

 

「落ち着いてみぽりん!」

 

途端に動揺を露わに沙織に泣きつく様に縋るみほと、如何にか落ち着かせようとする沙織。

 

「心配要らねえと思うぞ」

 

しかしそこで、地市がそんな事を言う。

 

「? 如何言う事? 地市くん」

 

「アイツの事だからきっと………」

 

「で、では、舩坂さん。コチラにいらして下さいな」

 

地市が沙織に言葉を返そうとした瞬間に、セイレーンが弘樹を呼ぼうとする。

 

すると………

 

「………辞退する」

 

そう言って弘樹は、ビンゴカードを破り捨てた。

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

途端にパシフィック歩兵部隊と大洗歩兵部隊の面々から何度目とも知れぬ大歓声が挙がる。

 

「良いぞ、舩坂! お前は最高の男だ!!」

 

「よ! 男前!!」

 

「見せてもらったぜ! お前の生き様をよ!!」

 

先程までブーイングを送っていたにも関わらず、熱い掌返しで弘樹の事を褒め称える。

 

「ハイ! 本人が嫌なの無理強いしちゃいけないね! 今回の当選は無効だぁっ!!」

 

「「「「「「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーっ!!」」」」」」」」」」

 

「…………」

 

ホージローがそう言い、再び歓声が挙がる中、弘樹は会場を後にする。

 

(拒否されるなんて………舩坂 弘樹………忘れませんわ!)

 

そして、拒否された事がそれはそれでプライドが傷付いたセイレーンだった。

 

その後、再度抽選が行われたが………

 

次に1等を引き当てた人物にも全員のブーイングが行われ、とうとう血で血を洗う戦いが勃発。

 

そこへカジキが帰って来て、見かねた迫信が熾龍に鎮圧命令を出した事で、大多数の人数が拘束され、1等の賞品はお流れとなった。

 

尚、3等は桂利奈が、2等は聖子が引き当てたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシフィック男子校・屋上………

 

「…………」

 

潮風を浴びながら、流れる雲を見上げている弘樹。

 

「あ、舩坂くん」

 

「ん?………」

 

とそこで背後から自分を呼び声が聞こえ、振り返るとみほの姿が在る事を確認する。

 

「西住くんか………」

 

「こんな所に居たんだ。何処行ったのかと思っちゃったよ」

 

そう言いながら弘樹の隣に並び立つみほ。

 

「すまない。少し風に当たりたくなって………」

 

「確かに、学園艦の上の潮風って気持ち良いよね」

 

風に揺れる髪を抑えながら、みほはそう言う。

 

「………ねえ、舩坂くん。如何して賞品を断ったの?」

 

やがてみほが思い切った様に弘樹にそう尋ねる。

 

「余興としては楽しんでいたが、見世物になる気は無かったからな。それに………ああいう事は矢鱈滅多らにするもんじゃない。もっと大事な時の為に取っておくものだ」

 

屋上から見える景色を見ながら弘樹はそう答える。

 

(舩坂くんらしい考えだなぁ………)

 

そんな弘樹の考えをらしいと思うみほ。

 

「じゃあ、もし………」

 

「ん?………」

 

「もし………キスするのが私だったら………受けてた?」

 

「えっ?………」

 

みほの思わぬ言葉に、弘樹は思わず間の抜けた表情を浮かべる。

 

「!! ああ、ゴ、ゴメン! じょ、冗談! 冗談だからっ!!」

 

そこでみほも、自分が凄く大胆な事を言ったと気付き、顔を真っ赤にして慌てて冗談だと執り成す。

 

「じゃ、じゃあ私! 会場に戻るから!!」

 

そして逃げる様にその場を後にして行く。

 

「…………」

 

1人残された弘樹は、暫く呆然としていたが、やがて表情を隠すかの様に学帽を目深に被り直したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、また少し時間が流れ………

 

遂にパシフィック校でのパーティは終了。

 

大洗機甲部隊の面々は撤収を開始した。

 

「今日はどうもありがとうございました」

 

「あんがとねー」

 

「この返礼は何れさせて頂くよ」

 

大洗機甲部隊を代表して、みほ、杏、迫信がパシフィック機甲部隊の面々にそう言う。

 

「そんなの気にしないで」

 

「また何時でも遊びに来て下さいね」

 

「お待ちしておりますわ」

 

ローレライ、メロウ、セイレーンがそう返す。

 

「じゃ、帰ろっか」

 

杏がそう言うと、大洗機甲部隊の面々はパシフィック校を後にし始める。

 

「頑張りなさいよ、ウサギちゃん達」

 

「ハムスターもしっかりな!」

 

「ハイ!」

 

「…………」

 

「了解です!」

 

「ラジャー!」

 

「了解っす!」

 

ローレライとホージローがウサギさんチームとハムスターさん分隊にそう言うと、梓、竜真、ジェームズ、正義が返事をし、紗希も笑みを返した。

 

「「…………」」

 

一方、弘樹とカジキは、お互いに一瞬目線を合わせただけで、そのまま去って行く。

 

やがて、大洗機甲部隊の姿が完全に見えなくなった………

 

「終わりましたね………」

 

「ああ………俺達の戦いもな」

 

ツナとシイラがそう言い合う。

 

「………そっか………俺達………負けちまったんだよな………」

 

そこでホージローが、改めて自分達が負けた事を認識する。

 

「………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」

 

やがてそのまま慟哭し始める。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

それを皮切りに、パシフィック機甲部隊の面々に、悔しさを露わにする者が出始めた。

 

「総隊長………申し訳ありません。最初で最後の大会をこんな形で………」

 

カジキがセイレーンにそう謝罪する。

 

セイレーンは3年………

 

今年の大会が最初で最後だったのである。

 

「良いんですわ………私、こんなキャラ作りしてますから………今まで真面な友達が居なくて………けど、ローレライさんやメロウさん。カジキさんにホージローさん達………今年はこんなにも友達が出来て、その皆と一緒の事をして………凄く………楽しかったですわ」

 

セイレーンは涙を流しながらも、笑顔を浮かべてそう言うのだった。

 

ココに………

 

パシフィック機甲部隊の戦いは………

 

終わりを告げた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗学園艦・大洗女子学園の戦車格納庫内………

 

自分達の学園艦へと戻って来た大洗機甲部隊の面々は、そのまま解散する予定となっていたが………

 

次の対戦相手が決まったとの通知が送られて来たので、発表の為に一旦大洗女子学園の戦車格納庫内へと集合した。

 

「角谷くん。次の対戦相手は何処に決まったんだい?」

 

皆を代表する様に、迫信がそう尋ねる。

 

「河嶋ー」

 

「ハッ!」

 

杏がそう言うと、桃が次の対戦相手を告げようとする。

 

しかし心做しか、その表情には随分と緊張の様子が見て取れる。

 

「如何したんだ? 河嶋先輩?」

 

「お腹でも痛いのかな?」

 

弦一郎と満里奈がそんな事を言い合う。

 

すると………

 

「次の対戦相手は………『プラウダ高校』の『プラウダ戦車部隊』と『ツァーリ神学校』の『ツァーリ歩兵部隊』からなる『プラウダ&ツァーリ機甲部隊』だ」

 

「!?」

 

桃が次の対戦相手を告げ、みほが表情を変えた。

 

「プラウダ&ツァーリ機甲部隊っ!?」

 

「それって、確か去年、みぽりんが居た黒森峰と戦った!?」

 

「前回の優勝校だな………」

 

優花里と沙織も驚きの声を挙げ、麻子がそう呟く。

 

「みほさん………」

 

「…………」

 

華がみほを気遣う様に声を掛けたが、みほは強張った表情で俯いていた。

 

(此処へ来て前回の優勝校と当たるとは………しかも、西住くんにとっては因縁の有る部隊か………)

 

そんなみほを心配しながらも、次なる相手………『プラウダ&ツァーリ機甲部隊』との戦いに、若干の不安を感じる弘樹だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

パシフィック校戦のアフターストーリーです。
敗者の矜持として、大洗機甲部隊を招き、祝勝会を行うパシフィック機甲部隊。
その最中、色々とありながらも無事にパーティーを終え、自分達も戦いが終わった事を改めて認識する。
コレで大洗はパシフィックの分まで戦う事を義務付けられたワケです。

そして、次回の相手は運命のプラウダ&ツァーリ機甲部隊!!
………何ですが、肩透かしする様で申し訳ないのですが、その前に1戦練習試合を入れたいと思います。
全国大会中のこの時期に練習試合と思われるかもしれませんが、コレがプラウダ&ツァーリ戦、引いては大洗がこの先も戦い抜く為の伏線となります。
その練習試合の相手とは、原作にも登場し、弘樹が大洗以外に所属だったら、間違いなくココになるだろうと思われる、『あの学園』です。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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