ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター46『例え神にでも従わないです!』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター46『例え神にでも従わないです!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロート艦・地下空間………

 

「ひ、弘樹くん………嘘だよね?………嘘だと言ってっ!!」

 

「…………」

 

みほが必死な様子でそう問い質すが、弘樹はみほに背を向けたまま何も答えない。

 

「当然の事だ。目の前に神の力がぶら下がっているのだ。飛び付かない人間がいるものか」

 

対する様にそんな事を言うロッチナ。

 

「それに舩坂 弘樹。お前は絢爛舞踏の勲章を持つ武勲者だが………正直、もう戦いだけの日々に飽き飽きしているんじゃないのか?」

 

「…………」

 

弘樹は沈黙を通すが、ロッチナはそれを肯定と受け取る。

 

「さあ、行くぞ。神が待っている」

 

「…………」

 

ロッチナがそう促し、ワイズマンの元へ繋がる入り口へ向かうと、弘樹もそれに倣った。

 

「舩坂くんっ!」

 

「舩坂さんっ!」

 

「舩坂殿っ!」

 

「舩坂っ!」

 

「…………」

 

沙織、華、優花里、麻子が呼ぶが、振り返ろうともしない………

 

「弘樹くんっ!!」

 

とそこで、みほが弘樹を呼びながら、Ⅳ号の機銃架から外したMG34を構えた!!

 

「!? 西住殿っ!?」

 

「み、みぽりんっ!?」

 

その姿にギョッとする優花里と沙織。

 

「…………」

 

弘樹は漸く足を止め、首だけ振り返りながらMG34を構えるみほを見遣る。

 

「………行けば撃つよ」

 

そんな弘樹を真っ直ぐ見返しながら、みほはそう告げる。

 

「…………」

 

「ホントに撃つよっ!!」

 

無言を貫く弘樹に、みほは再度そう言いながら、引き金に指を掛ける。

 

「…………」

 

そんなみほの事を少し見遣っていた弘樹だったが………

 

「…………」

 

やがて興味を無くした様に前に向き直った。

 

「! 弘樹くんっ!!」

 

と、遂にみほはMG34の引き金を引いた!!

 

………かに思われた瞬間!!

 

1発の銃声が鳴り響き、みほの身体が宙に舞う。

 

「「「「「「「!!」」」」」」」

 

沙織達の表情が驚愕に染まる。

 

その銃声は………

 

弘樹が振り向き様に撃ったM1911A1のものだった。

 

そう………

 

 

 

 

 

弘樹はみほを撃ったのである!!

 

 

 

 

 

やがて、宙に待っていたみほの身体が、やがて背中から地面に叩き付けられる。

 

「! みぽりんっ!!」

 

「西住殿っ!!」

 

「みほさんっ!!」

 

沙織が弾かれる様にみほの元へ駆け寄り、優花里と華も続く。

 

「アイツ!………とうとうやりやがったっ!!」

 

一方麻子は、みほを撃つと言う暴挙に出た弘樹に、憤怒の視線を向ける。

 

「…………」

 

だが、弘樹は冷めた無表情で、今自分がした事さえも気に掛けていない様子でM1911A1を腰のホルスターにしまった。

 

『そうだ。それで良い、舩坂 弘樹。全てを敵に回し、かつ自分自身の力で私の下へ辿り着くが良い』

 

響き渡るワイズマンの声。

 

「いよいよ神の誕生だ………」

 

「…………」

 

その声を聞きながら、弘樹は遂に………

 

電磁バリアで守られた入口を、ロッチナと共に潜り抜けたのだった。

 

「舩坂くんっ!」

 

「舩坂さんっ!」

 

「舩坂殿っ!」

 

沙織達が再度呼び掛ける中、弘樹とロッチナの姿は光の中へ消えた………

 

「舩坂くん………」

 

「私、失望しました………舩坂さんがあんな方だったなんてっ!」

 

「舩坂殿………嘘だと………嘘だと言って下さいっ!!」

 

「止めろ………もうアイツは私達に知っているアイツじゃない………」

 

愕然とする沙織に、怒りを露わにする華。

 

信じられないと言っている優花里に、冷たく言い放つ麻子。

 

あんこうチームを嘗てない絶望が襲っていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

弘樹はロッチナと共に、ワイズマンの元へと続く通路を只管に歩いている。

 

やがて、開けた場所に出たかと思うと………

 

その場所には、中央に巨大な円形の機械が鎮座し、そこから放射状に広がる様に箱の様な物が無数に並んでいる。

 

「コレは………」

 

弘樹が近くに在ったその箱状の物を見やる。

 

低い駆動音を立てているそれは、スパコン………スーパーコンピューターだった。

 

「………コレがワイズマンの正体か」

 

『その通りだ』

 

「! ワイズマン!」

 

またも響き渡るワイズマンの声。

 

『お前の覚悟は見させてもらった。お前の意志が固いのは良く分かった、神の器たる者よ』

 

「あんたの………力が欲しい」

 

『では、進め。中央のユニットの上に来い』

 

「…………」

 

そう言われて、弘樹はフロアの中央に有るユニットに近づく。

 

そして、そのままユニットの外壁を登り始めた。

 

「舩坂 弘樹………本当に人を超越した存在となるのだな」

 

その様子を感慨深そうに見つめているロッチナ。

 

「…………」

 

ユニットの外壁を登る弘樹。

 

その顔は苦しそうである。

 

既に数時間以上戦い続け、イプシロンや愛里寿から受けたダメージも有り、流石の弘樹の身体も限界を迎えようとしていた。

 

「…………」

 

だがそれでも脂汗を滝の様に流しながら、ユニットの外壁を登り続けて行く。

 

『登って来い。さあ、早く………登れ!』

 

煽るかの様なワイズマンの声が響き渡る。

 

『既にお前は、私の内部に居るのだ………この保存装置に蓄えられた私の力と知恵は………一瞬にお前に与えられる』

 

「………ぐ………あ………」

 

そして遂に………

 

弘樹がユニットを登り切り、その上に寝転がった。

 

「ハア………ハア………ハア………ハア………」

 

『立て、弘樹』

 

息を切らせている弘樹の上に、何かの機械が降りて来る。

 

「だ、駄目だ………もう動けない………」

 

『私の力が欲しくないのか? お前に渡す力はすぐ近くに有る』

 

「げ、限界だ………」

 

『この伝達装置に触れれば、お前は全てを手に入れられる』

 

「だ、駄目だ………」

 

『お前ともあろうものが………弱音を吐くのか?』

 

機械………伝達装置はドンドンと降りて来て、遂には弘樹がすぐに手を触れられるまでの距離に迫る。

 

『後は立ち上がるだけだ。手を触れるだけで良い。私の力と知恵を受け取れ、弘樹』

 

と、その瞬間………

 

 

 

 

 

「………断る」

 

 

 

 

 

弘樹はニヤリと笑ったかと思うと、眼前にまで迫っていた伝達装置に、M1911A1の弾丸を撃ち込んだ!

 

「!? 何だとっ!?」

 

ロッチナが驚愕の声を挙げる。

 

『弘樹………何をした!?………伝達装置が………』

 

「…………」

 

ワイズマンも驚愕する中、弘樹は弾倉の中に在った残り3発の弾丸を、全て叩き込む!!

 

伝達装置は完全に壊れ、スパークを発する。

 

『私にはとても信じられない………お前は………神の座を拒絶すると言うのか!?』

 

「そんなものに興味は無い………」

 

驚愕し続けるワイズマンに、弘樹はそう吐き捨て、ユニットの上から飛び降りた!

 

そして、近くに在ったスパコンの傍に寄ると、カバーを開け放つ。

 

「幾ら貴様でも………剥き出しになった心臓を守る術は有るまい」

 

そう言うと弘樹は、弾の無くなったM1911A1の銃身の方を摑み、グリップの底をハンマー代わりに、内部の基盤や回路を叩き壊し始めた!

 

『私の力が欲しくないのか!? 私が怖くないのか!? 私に逆らうなど、考えられん!! 弘樹!!』

 

「…………」

 

絶叫するワイズマンだが、既に弘樹は興味を無くした様に、次々とスパコンを叩き壊して行く!

 

「や、止めろっ! 止めるんだ、舩坂 弘樹っ!!」

 

とそこで、我に返ったロッチナが弘樹を止めようとする。

 

「邪魔をするな………」

 

「お、お前は自分が何をしているのか、分かっているのかっ!?」

 

「…………」

 

必死に止めるロッチナだが、弘樹はまるで耳を貸さず、スパコンを壊し続ける。

 

「止めろ! 止めるんだっ!!」

 

とそこで、ロッチナは弘樹に向かって銃を構えた!

 

「………!」

 

漸く動きを止める弘樹。

 

「お前は全てを支配する事を心の中で望んでいる! その証拠にお前は西住 みほを撃ったっ!!」

 

「…………」

 

『そうだ、舩坂 弘樹! お前はその事を悔いている筈だ! だが神となればそれは罪とならんっ!!』

 

ロッチナの言葉に、ワイズマンも続く。

 

「さあ! 今すぐに………」

 

と、ロッチナが更に言葉を続けようとした瞬間………

 

「えいっ!!」

 

「!? ぐあっ!?」

 

ロッチナは後頭部に衝撃を受けて、気絶して倒れた。

 

「弘樹くん!」

 

「! みほくん………」

 

それは、Ⅳ号の車体に取り付けられていたスコップを手にした、弘樹に撃たれた筈のみほだった。

 

「コレを壊せば良いんだね………皆! 手伝ってっ!!」

 

「任せてっ!!」

 

「承知致しましたっ!!」

 

「お任せ下さいっ!!」

 

「やってやる………」

 

そこで更に、沙織、華、優花里、麻子も、其々に整備用の大型工具を手に現れ、弘樹に倣って次々にスパコンを叩き壊して行く!

 

「弘樹くん………」

 

「すまない………ワイズマンの目を欺くにはああするしかなかった」

 

「弘樹くんが外した時に分かったよ。だって、あの距離で弘樹くんが外すなんて『絶対に有り得ない』もん!!」

 

そう言い放つみほ。

 

実はあの時………

 

弘樹が撃った弾は、みほに命中していなかったのだ。

 

みほが持っていたMG34に弾かれて、頭上へと消えた弾丸を見て、みほは弘樹の意図を瞬時に理解。

 

撃たれたフリをして、一芝居打ったのである。

 

「………仕上げに掛かるぞ」

 

「うんっ!!」

 

そして弘樹とみほはそう言い合うと、みほがスパコンを叩き壊し始め、弘樹はロッチナが落とした銃を拾い、中央の大型ユニットに向かって全弾撃ち込んだ!!

 

『やめろ! 弘樹! お前は何をしているのか分かっていないのだ。何と愚かな事を………この力が消滅したら………二度と復元不可能………なのだ。この世の………仕組み、知性の………結晶………』

 

徐々にワイズマンの言葉が途切れ途切れになって行く。

 

『やめろ………ひろき………やめろ………ひろき………や………め………ろ………わた………し………は……こわ………い………こ……わ………い………』

 

そして遂に………

 

最後に恐怖の言葉を残して………

 

ワイズマンの声が、耳障りなノイズとなって消え………

 

全てのスパコンと中央のユニットから光が消えた………

 

「………う………!? ハッ!?」

 

そこで漸くロッチナが目を覚ますが、もう全ては終わっていた………

 

「ワ、ワイズマン………止めろ! もう良いっ!! もう奴は死んでいるっ!!」

 

「「「「「「!!」」」」」」

 

ロッチナの叫びに、尚スパコンの破壊を続けていた弘樹達の手が止まる。

 

「遂に………遂にやっちまったかっ! 大変な事を………何て馬鹿な! 何故用意された支配者の座を受け取らなかったんだ! お前は神を殺したんだぞっ!!」

 

と、錯乱した様子のロッチナは、壁際に走って行ったかと思うと、そこに在った何かの装置を起動させた!

 

途端に、施設内に警報が鳴り響き、赤ランプが点滅する。

 

如何やら、ロッチナが起動したのは自爆装置だった様である。

 

「折角の権利を捨てて、卑しい道を選んだのは恐怖からだ! 支配する事の余りの大きな重さに、お前は怯えたのだ!!」

 

「………脱出だ」

 

「! うん!」

 

尚も呪詛の言葉をぶつけるロッチナだったが、弘樹達は聞いてなぞ居られないと言う様に、その場を後にした。

 

「私があれほど望んだ力を、お前は殺したのだ! 私が異能者であったなら………私が異能者であったなら!」

 

錯乱し続けてロッチナが叫ぶ中、遂に自爆装置のカウントダウンが終わり………

 

『ワイズマンだった物』が在る場所は爆発と炎に包まれた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロート艦・港………

 

大洗学園艦の昇降口に集まっている大洗機甲部隊の面々………

 

「ちょっ! ヤバいよ!! ドンドン爆発して沈んでるよっ!!」

 

あやがそう声を挙げる。

 

現在メガフロート艦は彼方此方で大小の爆発を挙げ、徐々に沈み始めている。

 

幸いにも、愛里寿達や大学選抜部隊に撃破された大洗連合部隊の面々は、補給地点も潰されてしまっていた為、最初の拠点である其々の学園艦に帰還しており、爆発が始まった時点で出航して居た。

 

大学選抜機甲部隊の面々も、其々の学園艦へと回収している。

 

しかし、まだみほ達と弘樹、それにミカ達に加えて、愛里寿とイプシロンの退避が確認出来ていない為、大洗学園艦だけが港に残り、ギリギリまで待っていた。

 

だが、メガフロート艦から上がる爆発がドンドン激しさを増しており、沈むスピードも上がって行っている。

 

『会長方! コレ以上この場に留まり続けるのは危険です! 大洗学園艦まで沈んでしまいますっ!!』

 

艦橋の航海科の生徒から、迫信と杏にそう悲鳴の様な通信が送られる。

 

「すまない。もう少しだけ待ってくれ………」

 

「西住ちゃん達はきっと戻って来る………きっと」

 

だが、迫信と杏は弘樹とみほ達の帰還を信じ、ギリギリまで待ち続ける。

 

しかし、その思いに反して爆発は更に激しくなって行く………

 

『も、もう駄目です! 出航しますっ!!』

 

限界だと判断した航海科の生徒が、出航を決める。

 

「! 待って下さいっ!!」

 

とそこで、双眼鏡を覗き込んで居た楓が、何かに気づく。

 

「! 来ました! 舩坂さん達ですっ!!」

 

「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」

 

楓がそう言って指差した方向を、大洗機甲部隊の面々が見遣る。

 

そこには、Ⅳ号と並走するBT-42の姿が在った。

 

Ⅳ号の車体の上には、イプシロンを背負った弘樹と、センチュリオンの乗員。

 

BT-42の方にも、車外に出ているミカに抱えられる形で、愛里寿と千代が乗っかっている。

 

「西住総隊長ーっ!!」

 

「弘樹ーっ! 急げぇーっ!!」

 

その姿を認めた梓と地市が叫ぶ。

 

2人の声が響く中、学園艦の乗り込み口に繋がるタラップを登り始めるⅣ号とBT-42。

 

と、2輌が通過した後に、タラップが崩壊を始める。

 

「「うわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!」」

 

みほとミカが思わず叫び声を挙げる中………

 

間一髪、Ⅳ号とBT-42は大洗学園艦に上がり込んだ!!

 

直後に、タラップが完全に崩れ、瓦礫が海中へと没した。

 

『出航っ!!』

 

と、艦長の号令と、豪快な汽笛と共に、大洗学園艦はメガフロート艦の港を出港。

 

直後に、一際大きな爆発が起こり、メガフロート艦の艦体にヒビが入って行き………

 

やがてバラバラになって、激しい波飛沫を上げながら海中へと沈んで行った………

 

「………終わったね」

 

「ああ………全てな」

 

その光景をキューポラから出て来たみほが見てそう言うと、弘樹もそう返す。

 

「西住総隊長!」

 

「弘樹ーっ!!」

 

「総隊長ーっ!!」

 

「分隊長っ!!」

 

とそこで、Ⅳ号の周りに大洗機甲部隊の面々が集まって来る。

 

「ホント、心配したぜ! 無事で何よりだ!!」

 

「あはは、ありがとう、地市くん」

 

「お疲れ様です、華さん」

 

「飛彗さんこそ………お疲れ様でした」

 

「やったみてぇだな………ま、頑張ったじゃねえか」

 

「ハ、ハイッ!! 神狩殿っ!!」

 

「お疲れ………カフェオレを入れてあるが飲むか?」

 

「飲む………」

 

地市と沙織、飛彗と華、白狼と優花里、煌人と麻子がそう会話を交わす。

 

「…………」

 

一方弘樹の方は、イプシロンを背負ったままⅣ号の上から降りると、そのまま彼をⅣ号に背中を預けさせる様に地面に降ろした。

 

「ご苦労だったね、舩坂くん」

 

「会長閣下」

 

と、そんな弘樹に迫信が声を掛けると、弘樹はヤマト式敬礼を返す。

 

「………イプシロン。考えてみれば、彼もまた被害者なのかも知れないね」

 

「…………」

 

迫信が気絶したままのイプシロンを見ながらそう言うと、弘樹は振り返る。

 

「愛里寿ちゃん! 愛里寿ちゃん!」

 

「愛里寿! 愛里寿!」

 

とそこで、みほとミカの声が聞こえて来て、今度はそちらを見やると、愛里寿に向かって呼び掛けている2人の姿が目に入る。

 

如何やら、愛里寿が意識を取り戻しかけているらしい。

 

「………う………う~ん………此処は?」

 

遂に目を覚ます愛里寿。

 

「愛里寿ちゃん!」

 

「愛里寿!」

 

「みほさん………お姉ちゃん………! そうだ! 私っ!!」

 

みほとミカの姿を確認すると、バッと跳び起きる愛里寿。

 

そこで、メガフロート艦が爆発しながら沈んで行っている光景を目撃する。

 

「!? メガフロート艦がっ!? 如何してっ!?」

 

何が起こっているか分からず困惑する愛里寿。

 

「愛里寿ちゃん………」

 

「愛里寿………」

 

「みほさん………お姉ちゃん………」

 

「良いかい? よおく聞くんだ………」

 

そんな愛里寿に向かって、みほとミカは、愛里寿が気絶している間に起こっていた事を説明し始めた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな………お父様が………もう………」

 

「愛里寿………」

 

ショックを受けている愛里寿を、ミカが優しく抱き締める。

 

「………私………今まで何の為に………」

 

「愛里寿ちゃん………」

 

とそこで、今度はみほが愛里寿に声を掛ける。

 

「みほさん………」

 

「………過去はどんなに頑張っても消せないし、忘れる事も出来ないよ」

 

「…………」

 

「でも………それでも明日はやって来るから………心を決めて生きて行くしかないよ」

 

「………!」

 

「けど、心配しないで。愛里寿ちゃんは1人じゃないから。私が居るし、此処に居る皆だってきっと助けてくれるから」

 

みほがそう言うと、大洗機甲部隊の面々は力強く頷いて見せる。

 

「勿論、私もだよ、愛里寿。もう逃げ出さないよ………」

 

愛里寿を抱き締めたままのミカもそう言う。

 

「………如何してそこまでしてくれるの?」

 

「友達を助けるのに理由なんて要らないよ」

 

「友達………」

 

とそこで、みほが何かをポケットから取り出した。

 

それは、あの時に愛里寿が落として行った、激レアのボコだった。

 

「! それ………」

 

「受け取って貰えるかな? 今度は私と愛里寿ちゃんの………友情の証として」

 

「………うん!」

 

そこで愛里寿は、涙を流しながらも笑顔を浮かべ、みほからボコを受け取った。

 

「………う………ううう………」

 

「「「!!」」」

 

するとそこで、BT-42に背中を預けさせていた気絶してる千代の方から、呻き声が聞こえて来る。

 

「お母様………」

 

「母さん………」

 

「嫌………嫌よ、敏………私を………置いて行かないで………」

 

亡き夫の事を夢に見ているのか、涙を流しながらそう漏らす千代。

 

「…………」

 

愛里寿はミカの腕の中から抜け出すと、千代に近づき、そのまま自分の胸に抱える様に抱き締めた。

 

「お母様………大丈夫………私が居るよ………お父様の代わりには成れないけど………私が傍に居るから………」

 

「………愛………里………寿………」

 

「私もだよ………母さん」

 

そこでミカも、愛里寿ごと千代を抱き締める。

 

「………ミ………カ………」

 

千代は徐々に落ち着いた様子となって行き………

 

やがて、目から流れていた涙が止まる。

 

「…………」

 

そんな愛里寿達の様子を見据えるみほ。

 

と、その肩に、誰かの手が置かれる。

 

「…………」

 

当然、弘樹である。

 

「…………」

 

弘樹の顔を見たみほは微笑む。

 

「…………」

 

それを見た弘樹も、無言で頷いて見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして………

 

一連の騒動の裏で蠢いていたワイズマンは………

 

弘樹達の手により葬り去られた………

 

もしワイズマンが世に出ていれば………

 

事態は無人戦車道の台頭などと言う問題だけでは済まされなかったであろう………

 

神に等しき力を持っていたワイズマン………

 

だが、奴はたった1つだけ………

 

致命的なミスを犯していた………

 

そう………

 

ワイズマンが犯した最大の過ち………

 

それは………

 

 

 

 

 

『舩坂 弘樹を敵に回した』と言う事だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

神の座に着こうとした弘樹………
が、そんなワケがある筈も無く、全てはワイズマンを欺く為の一芝居でした。
神をも恐れぬ男、舩坂 弘樹。
彼の手によって、遂にワイズマンは葬りさられます。

次回はエピローグとなり、それから後日談の愛里寿・ウォーをやって、いよいよこの作品も完結となります。

最終章は全話の公開が終わった後に考えますので、大分先になります。

そこでなのですが………
最終章の全話公開が終わるまでは、執筆を休む積りですが、彼是5年近く連載していたのを読んで頂いていた読者の皆様をそれほど待たせるのも悪いと思いまして、過去に別サイトに連載していて完結させた作品をコチラに再投稿してみようかと思いまして。

それは『天元突破インフィニット・ストラトス』と言う作品です。
題名の通り、インフィニット・ストラトスと天元突破グレンラガンのクロスです。
詳しい作品内容は、活動報告にアンケートと共に記載します。
掲載するかしないかは、アンケートで決めますので、見たいと言う方はアンケートへの回答を、活動報告にお願いします。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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