ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター39『死闘です!(その4)』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター39『死闘です!(その4)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロート艦上・大洗連合部隊の第2補給地点………

 

防衛部隊のお蔭で出発する事が出来た補給部隊は、遊園地から少し離れた場所に新たな補給地点を設け、後退して来た部隊の整備・補給を行っていた。

 

「良し! 満タンだっ!!」

 

「砲弾の補給、完了しましたっ!!」

 

「足回りを含め、各部の整備完了ですっ!!」

 

「ふん……悪くない…故に神は全知全能であるのか…? 希望を私たちの光に変えます(訳:ありがとうございます)」

 

補給を受けていた部隊の中にはサンショウウオさんチームのクロムウェルの姿も在り、整備終了の報告を挙げる整備隊員達に、今日子が感謝を述べる。

 

「ふう、流石に疲れましたわ………」

 

しかし、早苗がそう漏らした様に、搭乗していたメンバーには長時間の戦闘で疲労の色が見えていた。

 

するとそこへ………

 

「皆! お待たせっ!!」

 

「ココからは私達の出番よ」

 

そう言う台詞と共に、聖子と里歌を先頭に、残りのサンショウウオさんチームの面々が姿を現した。

 

「悪いね、後は頼むよ」

 

「お任せ下さい」

 

郁恵の言葉に、優がそう返事を返す。

 

そう、クロムウェルに聖子達ではなく今日子達が乗って居たのはこの為なのだ。

 

他チームと違い、余剰メンバーの居るサンショウウオさんチームならではの芸当である。

 

「さあ、行くよ、皆!」

 

疲労したメンバーと交代し、聖子が車長、伊代が通信手、優が砲手、満里奈が装填手、里歌が操縦手としてクロムウェルに乗り込む。

 

と、その時!!

 

「敵襲ーっ! 敵襲ーっ!!」

 

「「「「「!?」」」」」

 

補給拠点の防衛に回っていた歩兵の1人からそう叫びが挙がり、聖子達の顔に緊張が走る!

 

「皆!」

 

「照準器、正常!」

 

「駆動系、問題無いわ」

 

「砲弾………確認にゃ」

 

「通信機も感度良好っ!」

 

聖子が呼び掛けると、乗り込んだメンバーは自分の担当部署の機器をチェックし、異常が無い事を確認する。

 

「良し! パンツァー・フォーッ!!」

 

お馴染みの掛け声と共に、クロムウェルは緊急発進した!

 

「敵は………居たっ! アレねっ!!」

 

キューポラから姿を晒していた聖子は、双眼鏡を手に襲撃を掛けて来た敵の姿を探し、やがて激しく土煙を巻き上げながら走っている1輌の戦車を発見した。

 

「!? えっ!? アレって………!?」

 

だが、その戦車を見た瞬間………

 

聖子の顔は、驚愕に染まるのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

遊園地跡・ワールドゾーンの出入り口………

 

ニュルンベルクのケーニヒ門を模したゲートの付近………

 

ヤークトパンター1輌が、T34の120ミリ砲の直撃を受け、爆発したかと思うと白旗を上げる。

 

「すみません、総隊長」

 

「気にするな。お前は十分に義務を果たした」

 

申し訳無さそうに報告して来る戦車部隊員に、まほはそう返す。

 

「コレで残るは我々だけですか………」

 

オレンジペコがそう言って辺りを見回すと、そこいら中で白旗を上げている黒森峰とグロリアーナの戦車部隊と、倒れ伏している黒森峰とブリティッシュの歩兵部隊員を見渡す。

 

「けど、敵はコチラの想定通り、大橋まで前進して来てくれたわ」

 

しかし、アッサムが照準器越しにT29、T30、T34を見据えてそう言う。

 

現在その3輌は、随伴歩兵分隊と共に、既にゲートを抜け、そこから繋がっていた大橋へと差し掛かっていた。

 

「それでは皆さん。準備は宜しくて?」

 

そこで紅茶仮面が皆にそう呼び掛ける。

 

「何時でも良いぞ」

 

「同じく」

 

「準備出来ています」

 

「ゲロゲロリ」

 

「どうぞ」

 

まほ、エリカ、小梅、久美、ルクリリが次々に返事を返す。

 

「では、行きますわ」

 

「…………」

 

それを確認した紅茶仮面が、フクロウ男爵へ目配せをしたかと思うと、フクロウ男爵が手に持っていたスイッチの様な物を押した。

 

その途端!

 

橋桁で爆発が起こった!

 

「!?」

 

「しまったっ!! 罠かっ!?」

 

橋を崩す積りかと慌てる大学選抜部隊。

 

しかし、橋には罅が入ったものの、崩落するまでには至らなかった。

 

「何だ、発破に失敗か。驚かせやがって」

 

「そもそもアイツ等もまだ橋の上に居るんだ。爆破出来るワケがない」

 

爆破に失敗したと思った大学選抜部隊からそんな声が挙がる。

 

その言葉通り、大橋の上にはまほ達や紅茶仮面達も陣取っており、今大橋を崩落させれば、漏れなくまほ達と紅茶仮面達も巻き添えになってしまう。

 

それが分かっていて爆破出来るとは思わない大学選抜部隊は、加速して一気にまほ達と紅茶仮面達を肉薄しようとする。

 

すると………

 

「都草! 今だっ!!」

 

「ああ………」

 

今度はまほが都草に呼び掛けたかと思うと、先程のフクロウ男爵と同じ様に、都草は手にしていたスイッチの様な物を押した!

 

再度橋桁で爆発が起こり、今度こそ本当に橋が崩落を始めた!!

 

「!? な、何っ!?」

 

「さ、最初の爆発はコチラを油断させる為の罠だったのっ!?」

 

「馬鹿なっ!? 我々を道連れにする積りかっ!?」

 

一気に前進して、全部隊が橋の上へと移動してしまっていた大学選抜部隊は、全員が崩落に巻き込まれる。

 

しかし、まほ達と紅茶仮面達は………

 

「行けっ!!」

 

「総隊長に続くのよっ!!」

 

「コレはスリリングだね………」

 

「スリリングってレベルじゃないよっ!!」

 

何とっ!!

 

崩落する大橋の破片の上を、まるで飛び石の跳び始めた!!

 

「な、何ぃっ!?」

 

「そんなっ!? 歩兵なら兎も角、戦車にあんな動きがっ!?」

 

目の前の光景が信じられず、驚きの声を挙げる大学選抜部隊員達。

 

「ハイ、ちょっとゴメンでありますっ!!」

 

「!? ギャアッ!?」

 

久美に至っては、瓦礫の代わりにT29を踏み台にして行った。

 

「エキサイティングですわね」

 

「躊躇しないで下さいっ! したら巻き込まれますっ!!」

 

「ヒイイッ! 怖いーっ!!」

 

こんな状況でも紅茶を零さない紅茶仮面と、必死なオレンジペコ。

 

そして泣きながら悲鳴を挙げるルクリリ。

 

やがて、まほ達と紅茶仮面達は次々に岸へと到達。

 

アメリカ超重戦車を中心とした大学選抜部隊は、全員が橋の崩落に巻き込まれ、川へと落ちたのだった。

 

「あんまり良い気分じゃないですね………」

 

去年戦車ごと水没した事を思い出したのか、小梅が川の中で白旗を上げているアメリカ超重戦車部隊を見てそう呟く。

 

「大丈夫よ、この川は浅いから」

 

しかし、エリカの言う通り、川の深さは30センチ程しかない為、崩落に巻き込まれた大学選抜部隊の心配は無用である。

 

「足回りをチェックしたら次の場所へ向かうぞ。我々に休息は許されない」

 

まほはそう言い、工兵達に戦車の足回りのチェックと応急処置をさせ、次の戦場へ向かう準備をさせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして………

 

遊園地跡・ラーテゾーンでは………

 

「根性ーっ!!」

 

「撃てっ!!」

 

八九式とバレンタインがパーシング・ジャンボに向かって発砲する。

 

しかし、どちらの砲弾も弾かれ、明後日の方向へ飛んで行く。

 

「撃て」

 

反撃とばかりに今度はパーシング・ジャンボが発砲する。

 

「危ないっ!」

 

「クッ!」

 

しかし、八九式とバレンタインは撃った瞬間には走り出していた為、パーシング・ジャンボの砲弾は地面を爆ぜさせる。

 

そして今度は、パーシング・ジャンボの側面に回って砲撃する。

 

しかし、今度もパーシング・ジャンボの砲塔側面に弾かれ、砲弾が明後日の方向に飛んで行く。

 

「止めなさいよ、弾代が勿体無いわよ」

 

「お金の問題じゃないんですっ!!」

 

「金以上に大切なものがあるかぁっ!?」

 

「!? うわっ!?」

 

レイミにそう言い返した典子であったが、途端にレイミはそれまでの淡泊な態度から一変して、典子に向かってそう怒鳴った。

 

「何かお金で相当苦労したのかしら?」

 

そんなレイミの態度に、シュガーは冷や汗を掻きながらそう推測する。

 

「でも、何かこの人にだけは負けたくありません!」

 

「同感ね………」

 

典子とシュガーはそう言い合い、何とか打開策を見出そうと機動戦を続行する。

 

「ああ、もう。無駄に燃料と砲弾を使わせるんじゃないわよ」

 

そんな2人に向かって、レイミは苛立ち気にそう言い放つのだった。

 

 

 

 

 

そして、歩兵部隊は………

 

「フフフ………」

 

不敵な笑いと共にまたも指パッチンをするヒィッツカラルド。

 

「!? おうわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

「親分ーっ!!」

 

直撃を喰らった大河がブッ飛ばされ、戦死判定となる。

 

「チキショウッ! 指パッチンをしたらカマイタチが来るってのは分かるのによぉっ!!」

 

「元々カマイタチ自体が空気の刃だからね………発見が難しい」

 

「やれやれ、物理法則もあったもんじゃねえな」

 

カロ、ジャック、ジャンゴがその光景を見てそう言い合う。

 

「フフフ。私に掛かれば何でも真っ二つだぞ」

 

相変わらず余裕綽々と言う態度でヒィッツカラルドはそう言い放つ。

 

おお、ブッダよ。

 

貴方はまだ寝ているのですか?

 

この様な人外を相手にするなど、ショッギョ・ムッジョ!

 

「さて、一気に終わりにしてやろうか………」

 

そこでヒィッツカラルドは、両手で指パッチンの体勢を取る。

 

ナムサン!

 

両手から同時に放たれるカマイタチの威力は、相乗効果を生み出し、片手で放つ時の威力の約10倍!!

 

喰らえばジャンゴ達は一溜りも無い!!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

ジャンゴ達に緊張が走る。

 

「フフフ………」

 

だが、ヒィッツカラルドの不敵な笑いが木霊した瞬間………

 

「Wasshoi!」

 

ニンジャシャウトと共に、1つの影がヒィッツカラルドへ踊り掛かった!

 

殺戮者のエントリーだ!!

 

「むうっ!?」

 

すぐさまその陰に向かって指パッチンでのカマイタチを繰り出すヒィッツカラルド。

 

「イヤーッ!!」

 

だが、再びのニンジャシャウトと共に横薙ぎに振られた忍者刀が、カマイタチを切り裂き、雲散させた!

 

「ぬっ!?」

 

そこでヒィッツカラルドは初めて驚きの表情を見せる。

 

カマイタチを切り裂いた影は、反動で一旦後退する様に後ろに跳び、宙返りを決めながら着地する。

 

「ドーモ。ヒィッツカラルド=サン。葉隠 小太郎です」

 

小太郎は、ヒィッツカラルドに向かって身体の前で両手を合わせると頭を下げて、アイサツと共にオジギをする。

 

「ニンジャか………ドーモ。初めまして、葉隠 小太郎=サン。ヒィッツカラルドです」

 

それに対し、ヒィッツカラルドは当然の様に挨拶を返す。

 

大学選抜の精鋭だけあって、NRSへの耐性もある様だ。

 

「大学選抜倒すべし………慈悲は無い」

 

「それはコチラの台詞と言わせてもらおうか」

 

殺気を溢れさせる小太郎に対し、ヒィッツカラルドは指パッチンの体勢を執る。

 

「小太郎………」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その様子に見入る大詔を初めとした生き残りの連合歩兵達。

 

相手は指パッチンでカマイタチを起こす様な超人である。

 

今この場でヒィッツカラルドに対抗出来るとすれば、それはニンジャである小太郎だ。

 

下手に手出しをすれば足手纏いになる。

 

そう思うと大詔達は動けなかった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ラーテゾーンの内部では………

 

「コレでっ!!」

 

「終いよっ!!」

 

クロエとしずかの声が木霊すると、ヘルキャットの90ミリ砲がパーシングのエンジン部を貫き、チャーフィーに肉薄したテケが粗零距離から砲塔基部に砲弾を叩き込む!

 

パーシングとチャーフィーは爆発を起こし、一瞬の間の後、白旗を上げた。

 

「片付いたわね………」

 

ラーテゾーン内に居た全ての大学選抜戦車部隊の戦車を全て撃破した事を確認し、クロエがそう呟く。

 

「足りぬ………まだ戦い足りぬ………血の滾りが押さえ切れぬわ」

 

だが、まだまだ戦い足りぬと言う雰囲気を隠そうともしないしずかが、『頑張る女の子の素敵な笑顔』を浮かべたままそう言い放つ。

 

(姫がいつにも増して怖い~~っ! 今私、後ろ振り向けないよぉ~~っ!!)

 

背中越しにしずかの殺気を感じ取り、冷や汗を流す鈴。

 

「そうね………私もまだ全然戦えるわ」

 

((((勘弁して下さい~~っ!!))))

 

クロエの方も、まだまだ戦えると言う様子を見せているが、搭乗員の方は鈴と同じ様に冷や汗を流している。

 

とそこで、内部での戦闘が終わって静かになった事で、外から聞こえて来る爆発音や何かが切り裂かれる様な音が2人の耳に入り始める。

 

「? 何っ?」

 

「外にも敵か?」

 

自分達がラーテゾーン内で戦い、逃げ出した敵を外で待機している部隊が倒す手筈だった事も有り、外の様子を気に掛けていなかった2人は、そこで漸く、交戦中辿り付いたラーテゾーンの屋上から、外の様子を見やる。

 

そこには、何時の間にか残り少なくなっていた連合戦車部隊を追い詰めているレイミのパージング・ジャンボと、指パッチンをしながらカマイタチを飛ばし、それをニンジャ運動神経でかわしている小太郎の姿が在った。

 

「!? 嘘っ!? 何時の間にか全滅しかけてるっ!?」

 

鈴が、大損害を受けている連合部隊の様子を見て声を挙げる。

 

「アヤツ………相当デキるな………」

 

一方しずかは、小太郎と戦っているヒィッツカラルドを見て、そう呟く。

 

「けど、だからこそ戦ってみたいと思わない?」

 

するとそこで、今度はクロエが『頑張る女の子の素敵な笑顔』を浮かべてしずかに告げる。

 

「………当然!」

 

しずかは、再び『頑張る女の子の素敵な笑顔』を浮かべてクロエに返す。

 

(((((ああ、やっぱり…………)))))

 

何となくこの光景が予測出来ていた鈴とヘルキャットの乗員は、心の中で溜息を吐いた。

 

「となると、アッチのパーシング・ジャンボが邪魔ね………如何してくれようかしら?」

 

ヒィッツカラルドと戦うにはレイミのパーシング・ジャンボが邪魔だと考えるクロエが、顎に手を当てて思案を巡らせる。

 

「………ん? ねえ、あの戦車の人、さっきから何か言ってない?」

 

するとそこで、鈴が気付いた様にそう言う。

 

「「うん………?」」

 

しずかとクロエは耳を澄ます。

 

そして、レイミが何かにつけて金、金、金と言っている事に気づく。

 

「金に執着している様だな………」

 

「傭兵かしら………?」

 

クロエとしずかはそう言い合ったかと思うと………

 

「「…………」」

 

まるで悪戯を思い付いた悪ガキの様に笑った。

 

(((((あ、超絶嫌な予感………)))))

 

そんな2人の顔に、鈴とヘルキャットの乗員達は、ここ一番の悪寒を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

補給中に何者かの急襲を受けるサンショウウオさんチーム。
果たしてその正体は?

まほ達はアメリカ超重戦車軍団を退けるも、アヒルさん達はレイミとヒィッツカラルドに苦戦。
この場を打開出来るか、小太郎。
そして、しずかとクロエが思いついた策とは?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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