ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター34『大学選抜精鋭部隊です!(その3)』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター34『大学選抜精鋭部隊です!(その3)』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊園地跡・ラーテゾーン………

 

その名の通り、黒森峰が全国大会決勝戦で投入したラーテをモチーフにした施設である。

 

内部にはエア遊具が所狭しと置かれている。

 

「き、来たぞぉっ!?」

 

「逃げろーっ!!」

 

その中を、大学選抜戦車部隊のパーシングとチャーフィーが、我先にと争う様に逃げ回っている。

 

逃げている相手は………

 

「待てコラァッ!! 戦えやぁっ!!」

 

「それでも武士(もののふ)かぁっ!!」

 

地獄姉妹だ。

 

相変わらず、大学選抜戦車部隊からは恐怖の対象にされている様だ。

 

「ファイヤッ!!」

 

「斬っ!!」

 

クロエとしずかが叫ぶと、ヘルキャットとテケが発砲。

 

ヘルキャットの砲弾は、逃げていたパーシングの後部に命中し、エンジンを大破させ、白旗を上げさせる。

 

一方、テケが放った弾は天井に命中。

 

天井が崩れ、梁に使われていた鉄骨が落下したかと思うと、チャーフィーのエンジンルームに突き刺さった!

 

当然、チャーフィーからは白旗が上がる。

 

「「我等(私達)が、地獄だっ!!」」

 

「「「「「「ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」」」」」

 

それを見たクロエとしずかが『頑張る女の子の素敵な笑顔』を浮かべて吼えると、大学選抜戦車部隊は悲鳴を挙げて更に逃げ回る。

 

「!? そこ左っ!! 外へ出てっ!!」

 

と、1輌のパーシングが、左手側の壁に戦車が通れる程の出入り口を発見し、すぐさま操縦士にそこへ行く様に命じる。

 

余程焦っていたのか、他の仲間に連絡する事も無く、そのパーシングは単独でラーテゾーン内からの出口へ飛び出す。

 

その途端!

 

車体が前のめりになった!!

 

「へっ………?」

 

思わず間抜けた声を挙げたパーシングの車長は、そこで出口の先が巨大な滑り台になっている事に気づく。

 

滑り落ちる先は砂場である。

 

「! ちょっ!? 砲身が刺さるっ!! 旋回してダメージ回避っ!!」

 

「間に合いませんっ!!」

 

慌てて叫ぶ車長だったが、時既に遅し。

 

滑り台を滑り落ちたパーシングの砲身は、深々と砂場へと突き刺さった!

 

「こ、後退っ! 後退っ!!」

 

すぐにバックして砲身を引き抜こうとするパーシングだったが、かなり深く突き刺さってしまったのか、履帯は空回りするばかりである。

 

すると、そこへ………

 

西部戦車チームとナイトウィッチ戦車チーム、そしてアヒルさんチームの八九式が現れ、砲身が刺さっているパーシングを取り囲んだ。

 

「あ………」

 

パーシングの車長が思わず間抜けた声を挙げた瞬間、一斉砲撃が炸裂!

 

爆煙が収まると、ボコボコになったパーシングが白旗を上げていた。

 

それを確認すると、歩兵部隊も姿を現す。

 

「な~んか、卑怯だなぁ………」

 

「優勢火力ドクトリンよ。戦術の基本でしょ」

 

ミケがそう呟くと、シャムが言い返す。

 

「それにしても………手持無沙汰ですね」

 

ノーラが、先程から砲撃音が鳴り止まないラーテゾーンの建物を見上げながらそう呟く。

 

「殆どの敵はあの2人が相手してるからね………」

 

「もうあの2人だけで良いんじゃありません事?」

 

シロミの言葉に、ブチがそうぶっちゃける。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

その言葉に、その場に居た全員が沈黙する。

 

それは、誰もが感じていた事だった。

 

「こういう時こそ根性ですっ!!」

 

しかし典子だけが、相変わらずの根性理論を展開する。

 

「根性とか、スマートじゃねえぜ」

 

そう言うノリが苦手なカロがそんな言葉を漏らす。

 

「まあまあ、兎も角、このまま………」

 

と、シュガーが何か指示を出そうとした瞬間………

 

砲撃音が響き、ミケの乗るスチュワートに砲弾が命中!

 

「「「「うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」」」」

 

ミケ達が悲鳴を響かせる中、スチュワートは横倒しになって白旗を挙げる。

 

「! ミケさんっ!!」

 

「今の砲撃はっ!?」

 

マヨネとペッパーがそう言った瞬間、近くに在った建物の陰から、『パーシングらしき』シルエットが現れる。

 

「! パーシングッ!!」

 

「敵の増援かっ!!」

 

ブチのシャーマン・ジャンボと、シロミのイージーエイトが、その『パーシングらしき』シルエットに向かって発砲する。

 

しかし、ジャンボの榴弾は通用せず、イージーエイトの徹甲弾もアッサリと弾かれる。

 

「!? 何っ!?」

 

良い所に当たった筈なのに弾かれた事にシロミが驚きの声を挙げた瞬間、その『パーシングらしき』シルエットの姿がハッキリとした。

 

そのパーシングは、他の車輌と比べ、やや太っている様な印象を受ける車輌だった。

 

「! 『T26E5』!!」

 

「成程………『パーシング・ジャンボ』ね」

 

ソルトが驚きの声、シュガーが納得が行った様な声を挙げる。

 

とそこで、そのパーシング・ジャンボのハッチが開き、黒髪のストレートヘアの後頭部に結ばれた模様と縫い目入りの大きな赤いリボンを付けた大学選抜戦車部隊員が姿を見せる。

 

「…………」

 

その戦車部隊員は、手元に在った手配書の様な書類と典子達を見比べる。

 

「西部とナイトウィッチ&ハロウィン機甲部隊、それに大洗の八九式か………まあまあ良いのが揃ってるじゃない」

 

戦車部隊員『レイミ』は、典子達に向かってそう言い放つ。

 

「オイ、姉さん。ソイツは一体何だい?」

 

一同の疑問を代弁する様に、ジャンゴがレイミが見ている手配書の様な物を示しながら尋ねる。

 

「見れば分かるでしょう。手配書よ。アンタ達をやればこの手配書に書いてある額の金がアタシに入るワケ」

 

レイミはその手配書を典子達に見せながらそう言う。

 

手配書には各戦車チームの登場戦車と乗員、更にエース歩兵達のデータが載っており、更に賞金首よろしく金額が振られていた。

 

「オイオイ、まるで傭兵みたいな事を言うじゃねえか」

 

「似た様な物よ。私はアンタ達を仕留めれば金が貰えるからチームに居るのよ」

 

パンサーがそうツッコミを入れたが、レイミからは身も蓋も無い答えが返って来る。

 

「金って………求道者がそれで良いんですか?」

 

「何言ってるの? 世の中金よ」

 

続くオリバーの言葉もバッサリと斬り捨てるレイミ。

 

典型的な守銭奴の様だ。

 

「さ、無駄話もココまでよ。大人しく私のお金になりなさい」

 

レイミはそう言うと、パーシング・ジャンボの車内へ引っ込んだ。

 

そして、パーシング・ジャンボが再度前進して来る。

 

「冗談じゃねえぜっ!!」

 

「貴様の様な下賤な奴に負ける我々ではないっ!!」

 

スコールとオセロットが、そのレイミのあんまりの態度に腹を立て、いきり立ちながら収束手榴弾やバズーカを構える。

 

と次の瞬間、『パチンッ!』と言う音が聞こえたかと………

 

「「「「「「「「「「!? ぐああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

スコールとオセロットが、周りに居た西部、ハロウィン歩兵部隊員共々ブッ飛んだ!

 

「!? オセロットっ!?」

 

「スコールッ!? 如何したっ!?」

 

ジャンゴとカロが慌てて駆け寄る。

 

だが、2人と共にブッ飛んだ西部、ハロウィン歩兵部隊員達は、全員が戦死判定となっていた。

 

「!? コレはっ!?」

 

そしてジャンゴは、2人と西部、ハロウィン歩兵部隊員達の戦闘服に、まるで鋭い刃物で斬られたかの様な傷が出来ている事に気づく。

 

するとそこで、またもあの『パチンッ!』と言う音が鳴り響いた!

 

今度はノーラのシャーマン・カリオペに振動が走ったかと思うと………

 

何と!

 

シャーマン・カリオペと主砲身が斬り裂かれたっ!!

 

「なっ!?」

 

ノーラが驚愕の声を挙げた瞬間に再度振動が走り………

 

今度はM4A3の車体に目に見える形で切り傷が刻まれ、爆発の後に白旗を上げる!

 

そして3度『パチンッ!』の音が鳴り響いたかと思うと………

 

今度はいきなりシャムのT28が撃破された!!

 

「な、何が起こってるのっ!?」

 

ワケが分からぬままやられたシャムが、唖然となってそう叫ぶ。

 

とそこで………

 

レイミのパーシング・ジャンボの陰から、1人の大学選抜歩兵が不意を衝く様に姿を現した!

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

一同の注目が、現れたその大学選抜歩兵に注がれた瞬間!

 

大学選抜歩兵は、右手の指を弾いてパチンッ!と言う音を鳴らす行為………

 

所謂『指パッチン』をした。

 

その途端!!

 

マヨネのトータスが爆発し、白旗を上げた!!

 

「「「「「「「「「「!?!?」」」」」」」」」」

 

何が起こったのか分からず、混乱する一同に、大学選抜歩兵は再び指パッチンを行う。

 

「!? うわああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!?」

 

すると今度は、オリバーが周囲に居た西部歩兵共々吹き飛ばされ、地面に倒れると戦死判定となった。

 

その戦闘服には、スコールやオセロットと同様に、鋭い刃物で斬られたかの様な跡が残っている。

 

大学選抜歩兵は更に、片腕を背中に回しながら両手で指パッチンを繰り出したかと思うと、そこから今度は両腕を右へと振る様に移動させて再度両手で指パッチン。

 

更に左、右と両手での指パッチンを繰り出したかと思うと、最後は正面に両手の指パッチンを繰り出す。

 

まるで踊っているかの様なその一連の動きが終わったかと思うと………

 

ブチのジャンボ、シロミのイージーエイト、ペッパーのブルムベア、ヴィーネのヴァリアント、ソルトのシュトゥルムティーガーが白旗を上げ………

 

更に、サミー、レオパルド、サーバル、カルカラ、明夫、武志が戦死判定となっていた。

 

他の戦車チームや歩兵部隊員達も多数犠牲となっている。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

一瞬にして大量の撃破車輌と戦死判定者を出されてしまった事に、典子達は戦慄を露わにする。

 

「オノレェーッ!!」

 

「妙な事しやがってぇーっ!!」

 

しかしそこで、その恐怖からか、或いは仲間達をやられた恨みからか、西部とハロウィンの歩兵達の一部が、指パッチンの大学選抜歩兵に向かって突撃して行った!

 

「! オイ、待てっ!!」

 

ジャンゴが慌てて止めるが時既に遅し。

 

「…………」

 

大学選抜歩兵は再び指パッチンを、突撃して来る西部とハロウィンの歩兵達の一部に向かって繰り出したかと思うと………

 

「「「「「「「「「「!? うぎゃあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!?」」」」」」」」」」

 

突撃して行った西部とハロウィンの歩兵達の一部は宙を舞い、地面に叩き付けられると戦死判定となった。

 

その戦闘服には、やはり鋭い刃物で斬り裂かれた様な跡が残っている。

 

「ええいっ! 名を名乗れぇっ!!」

 

と、辛うじて生き残っていたハロウィン歩兵が、ナイフを手に指パッチンの大学選抜歩兵に斬り掛かろうとした。

 

「…………」

 

「うっ!?」

 

だがそれよりも早く、大学選抜歩兵が指パッチンを出来る様にした手を、そのハロウィン歩兵の眼前に突き付けた!

 

「フッフッフッ………良かろう」

 

すると、その大学選抜歩兵はそう言い、指パッチンをする。

 

「! ぎゃああああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

ハロウィン歩兵の戦闘服に、切り傷が走ったかと思うとブッ飛ばされ、戦死判定となった。

 

「私の名は……『素晴らしきヒィッツカラルド』」

 

その瞳孔の無い白眼と頬から目の付け根辺りまで走る謎のラインに赤髪のカニ頭が特徴的な歩兵………

 

『素晴らしきヒィッツカラルド』はそう名乗りを上げる。

 

「『素晴らしきヒィッツカラルド』!?」

 

その名を聞いた小太郎が、驚きの声を挙げる。

 

「知っているのか、小太郎?」

 

「指パッチンで真空波を発生させ、そのカマイタチで相手を切り裂く達人が居ると言う話を聞いた事があったでござるが………まさか大学選抜チームに居たとは」

 

大詔が尋ねると、小太郎はそう説明する。

 

「いやいや、君達は運が良い。此処で私と出会えるとは」

 

そんな小太郎の言葉を聞きながら、ヒィッツカラルドは不敵に笑う。

 

「皆気を付けてっ! コイツはヤバイわっ!!」

 

シュガーが皆に向かってそう叫ぶ。

 

無理も無い………

 

あの一連の動きだけで、半数以上の味方を壊滅させてしまったのだ。

 

目の前の相手がどれほどの実力者なのかは言うまでもない………

 

「ちょっと、ヒィッツカラルド。余計な事しないでよ。私の取り分が減っちゃったじゃない」

 

とそこで、獲物を取られたレイミが、ハッチを僅かに開けて顔を覗かせ、ヒィッツカラルドの方を見ながらそう言った。

 

「コレは失礼。では君が撃破したと報告しておきたまえ。私は戦績には興味が無いのでな」

 

「そ、なら良いわ」

 

ヒィッツカラルドがそう返すと、レイミは納得した様に車内へ引っ込んだ。

 

そして、再度パーシング・ジャンボが前進する。

 

「フフフ…………」

 

ヒィッツカラルドも不敵に笑いながら、指パッチンを出来る態勢を取って近づいて来る。

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

嘗て無い危機に、典子達は背中に冷たい汗が流れるのを感じたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

ワールドゾーンの出入り口………

 

ニュルンベルクのケーニヒ門を模したゲートの付近では………

 

そのゲートを盾にして、グロリアーナ&ブリティッシュ機甲部隊、黒森峰機甲部隊、そしてウサギさんチームとハムスターさん分隊に、紅茶仮面とフクロウ男爵の姿が在り、全員がゲートを盾にする様に陣取って砲撃や銃撃を行っている。

 

だが、一際大きな砲撃音が響いたかと思うと………

 

ゲートから連なっている頑強さを感じさせる城壁の一部が吹き飛び、バラバラと瓦礫が地面に落ちた。

 

「ゲロ~………貧乏クジを引いたでありますなぁ」

 

その様子を見ながら、愚痴る様にそう呟く久美。

 

そして再び、ゲートの先の方へと視線を向けると………

 

コチラに向かって迫って来る、T29重戦車、T30重戦車、T34重戦車のアメリカ超重戦車達の姿が在った。

 

後方には、中隊規模の大学選抜部隊も控えている。

 

如何やら最も大きい敵部隊が、この場へと押し寄せて来ている様である。

 

「久美! 弱音吐いてんじゃないわよ! 黒森峰機甲隊員は弱音を吐かないっ!!」

 

そんな久美を、エリカがどこぞのドイツ軍人の様な台詞で叱咤する。

 

「………先程はお楽しみでしたなぁ~」

 

すると久美は、クロエとの一件を持ち出して言い返す。

 

「! 言うなぁーっ!!」

 

途端にエリカは形容し難い表情でそう怒鳴った。

 

「最近の黒森峰さんは随分と賑やかですわね」

 

「無駄口叩いてないで、この状況を如何にする方法を考えろ」

 

その様子を見ていた紅茶仮面がまほにそう言うが、余裕の無いまほはそう返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

ラーテゾーンで相変わらず無双する地獄姉妹。
しかしそこへ、大学選抜の傭兵戦車乗り、レイミのパーシング・ジャンボが出現。
更に前回言っていた超人………
『素晴らしきヒィッツカラルド』が現れる!

ハイ、超人とは今川泰宏作品に登場する超人………
所謂、今川超人でした。
スパロボαでコイツにグルンガスト参式を真っ二つにされて唖然としたのは私だけではない筈。
いきなり半数以上の味方を葬り去ってくれましたが、今川だからしょうがない。
流石にコレ以上の今川超人は出ません。
あんまり出すと、戦車とか要らないだろって事になるので。

そしてまほ達はアメリカ超重戦車シリーズの相手をする事になります。

次回もまた大学選抜の精鋭が登場。
歩兵の方がまた特撮からで、かなりの有名かつ強キャラが登場しますのでお楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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