ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース   作:宇宙刑事ブルーノア

241 / 287
チャプター18『決戦! 大学選抜チームです!!』

『劇場版 ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース ~炎のさだめ~』

 

チャプター18『決戦! 大学選抜チームです!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海原を進んでいた学園艦連合艦隊の前方に………

 

巨大な人工島………島田家所有のメガフロートが現れる。

 

各校の学園艦は、接岸用の港に次々と着けると、陸上部隊を降ろし始める。

 

一航専の学園艦と、呉校を初めとする各校の支援艦隊は、やや沖合に待機している。

 

基本的に支援艦隊と支援航空部隊の出番は、支援要請が出されてからである。

 

その為、一航専以外の学園の航空部隊も、各学園艦の飛行場や沖合に待機させている艦隊の中に居る空母の甲板で待機している。

 

「オーラーイッ! オーラーイッ!」

 

「ハッチ開けろーっ! ゲート開けーっ!!」

 

「モタモタすんな! 急げーっ!!」

 

大洗の学園艦の傍で、整備部の部員が忙しく走り回り、次々と戦車部隊や歩兵部隊の車輌を揚陸して行く。

 

揚陸が終わった各戦車は、其々のチームメンバーが最終チェックを行っている。

 

「エンジン、燃料系もまぁ、異常無し」

 

「無線機異常無し」

 

「照準器、作動機構異常無し」

 

「閉鎖機周り異常無し」

 

「分かりました」

 

麻子、沙織、華、優花里からの報告を受け、チェックリストに印を書き込んで行くみほ。

 

「………アレ? 何だろう?」

 

するとそこで、沙織が怪訝な顔になって無線機を弄り始める。

 

「? 沙織さん? 如何したの?」

 

「何かノイズが………誰かが通信を送って来てるみたい」

 

みほが尋ねると、沙織は通信機の周波数を調節し、受信しようとする。

 

『………初めまして、あんこうチームの武部 沙織さんかしら?』

 

と、やがて周波数が合ったのか、通信機から女性の声が聞こえて来た。

 

「えっ!? えっと………何方ですか?」

 

戸惑いながらも、相手の正体を問い質す沙織。

 

『アラ、ごめんなさい。申し遅れたわね………私は島田流家元、島田 千代よ』

 

「!? 島田流家元っ!?」

 

「「「「!?」」」」

 

何と、通信先の相手は島田流の家元・島田 千代であり、沙織は仰天の声を挙げ、みほ達の顔にも緊張が走った。

 

『そちらの総隊長さん………西住 みほさんと代わって貰っても良いかしら?』

 

そんなみほ達の様子を知ってか知らずか、千代は更にそう言って来る。

 

「えっ!? みぽりんにっ!?」

 

突然みほを指名され、沙織は戸惑いながら車長席のみほを振り返る。

 

「………沙織さん、繋いで」

 

「う、うん、分かったよ………」

 

みほがそう促すと、沙織は回線をみほへ回した。

 

「………西住 みほです」

 

『初めまして、『西住の娘』さん。貴方の活躍は拝見させて貰っていたわ』

 

みほの事を態々『西住の娘』と呼ぶ千代。

 

彼女の西住流に対する恨みが言葉に表れたのだろうか。

 

「御用件は何でしょうか?」

 

だが、みほはそれを気にせず、千代に向かってそう問い質す。

 

『………正直に言わせてもらうと、貴方には少し同情していたのよ』

 

「えっ………?」

 

『あのしほのせいで戦車道から離れる事になった………しほの犠牲者と言う意味では私と同類だとね』

 

「………私は島田さんとは違います」

 

『その通り。結局貴方は戦車道に復帰し、剰えしほの教えの全てを受けた黒森峰を打ち破った………その時思ったわ。やっぱり貴方も西住の娘なんだって』

 

「…………」

 

『憎い………西住が憎いわ。西住流さえなければ………しほさえ居なければ、島田流が没落しかける事も………あの人が死ぬ事だってなかったのに』

 

「………お母さんがした事は代わって謝ります。でも、こんな事をしても、何にもなりませんよ」

 

『お黙り、小娘っ!!』

 

「うわっ!?」

 

そこで千代はハウリングが起こる程の声を挙げ、みほは反射的にヘッドフォンを耳から外す。

 

『貴方に何が分かるのっ!? あの人がどんな思いで死ぬまで研究に打ち込んだのか!! あの人の意志を無駄にしない為にも! 私は西住を叩き潰すのよっ!! 徹底的にねっ!!』

 

先程までの態度は打って変わり、ヘッドフォンを外した状態でも聞こえる程の声で、激情に駆られるまま叫び続けている千代。

 

「………愛里寿ちゃんと話をさせてくれませんか?」

 

するとみほは、再度ヘッドフォンを装着し、愛里寿と話がしたいと願い出た。

 

『ええ、良いわよ………愛里寿、西住 みほよ』

 

『………島田 愛里寿です』

 

千代に代わって、愛里寿の声がヘッドフォンから聞こえて来た。

 

「久しぶり、愛里寿ちゃん。元気だった?」

 

みほは、まるで友達に語り掛けるかの様にそう言う。

 

『………何を言っている、西住 みほ。私とお前は敵同士だ。西住と島田の者である以上、それは免れない』

 

愛里寿はそんなみほの言葉をそう切って捨てたが………

 

「私は今でも愛里寿ちゃんの事を友達だと思ってるよ」

 

『!?』

 

そうみほが言葉を続けると、驚きを露わに沈黙した。

 

「私には愛里寿ちゃんが背負っているモノがどれだけのものなのか分からない………けど、例え愛里寿ちゃんが私の事を敵だと思っていても、絶対に友達は止めないよ。愛里寿ちゃんの気持ち………受け止めてみせるから」

 

『う………あ………』

 

続けてみほがそう言うと、愛里寿が苦しそうにしている様な声を漏らす。

 

と………

 

『妹を誑かすのは止めてもらおうか、西住 みほ』

 

「! イプシロンさん………」

 

突如通信機からイプシロンの声が響き、みほは僅かに驚きを露わにする。

 

『我々島田にとって西住の名を持つ者は全て打ち滅ぼさねばならん。貴様の戯言に付き合っている暇は無い』

 

「…………」

 

敵意全開なイプシロンの言葉を、みほは黙って聞く。

 

『小癪にも仲間を引き連れて来た様だが、無駄な事だ。今日で西住流の名は地に落ちる』

 

『………随分な物言いだな』

 

「! 弘樹くん!」

 

とそこで、弘樹の声が通信回線に割り込んで来た。

 

『舩坂 弘樹か………いよいよ戦いの時が来たな。パーフェクトソルジャーである私にはお前の悪運も通用せんぞ。真のパーフェクトソルジャーとは悪運では無く力によってなるものだと言う事を教えてやる』

 

『お前の言うパーフェクトソルジャー等と言う称号に興味は無い………小官は小官の前に立ちはだかった者を排除するだけだ』

 

口調こそ穏やかだが、明らかに殺意が籠った言葉に、弘樹はいつもの様に冷静かつ淡々とした様子でそう返す。

 

『ふん、その冷めた態度は長くは続かんぞ………覚悟しておけ』

 

イプシロンはそう言い残し、一方的に通信を切った。

 

「…………」

 

それを確認すると、みほはハッチを開けてキューポラから姿を曝す。

 

「…………」

 

そして視線を横へ向けると、先程まで通信機で会話していた弘樹の姿を確認する。

 

「…………」

 

そのみほの姿を無言で見返す弘樹。

 

「西住総隊長。大洗機甲部隊、出撃準備完了だ」

 

とそこで、迫信が大洗機甲部隊の出撃準備が整った事を報告して来た。

 

「………コレより我々は、大学選抜チームとの試合に臨みます。全員………覚悟を決めて下さい」

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

みほがそう言い放つと、大洗機甲部隊員達の顔に緊張が走る。

 

「………パンツァー・フォーッ!!」

 

「アールハンドゥガンパレードッ!!」

 

そして、お馴染みの掛け声と共に、大洗機甲部隊は進軍を開始。

 

他校の機甲部隊も、次々に出撃するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

大学選抜チーム側の集合地点では………

 

「…………」

 

集結した大学選抜機甲部隊の中心に陣取っていたセンチュリオンのキューポラから姿を見せ、何処か悲しげな顔をしている愛里寿。

 

「…………」

 

ふと下を向き、車内を覗き込むと、そこにはあのノートPCに繋がっているバイザー付きヘッドフォンが在った。

 

「…………」

 

その装置を見た愛里寿の表情が更に曇る。

 

「総隊長、何か悲しそうな顔してない?」

 

「やっぱり、友達になったって言う敵の総隊長の子と戦いたくないんじゃ………」

 

「当然よ。幾ら島田流戦車道の後継者って言っても、まだ13歳。普通なら中学生よ?」

 

そんな愛里寿の様子を見て心配そうにしている3人の女性………

 

グレーのショートヘアで眼鏡を掛けている『ルミ』

 

濃い茶髪のロングヘアーの『メグミ』

 

茶髪のミディアムヘアーの『アズミ』

 

大学選抜機甲部隊の戦車参謀メンバーである。

 

島田流の教えを受けており、島田兄妹の実力を誰よりも理解している優秀な参謀達だ。

 

特に総隊長である愛里寿の事は、島田流の後継者である事とは別に可愛がっており、その心中をも良く察している。

 

「やっぱり、この試合………止めた方が良いんじゃ?」

 

「馬鹿。家元からの直々の命令なのよ」

 

「下手に逆らったりしたら、間違いなくチームから外されるわね」

 

「そうなったら総隊長が孤立しちゃうわよ」

 

「それは………」

 

島田流戦車道の後継者であり、大学へ飛び級で進学している天才少女の愛里寿であるが………

 

それが全ての人間から認められているかと言えば、そう言うワケでもない………

 

大学選抜チームのメンバーは、島田流の門下生の他に、昔から軍事道に打ち込んで来て、実力を持って選ばれ、様々な大学から召集された者達である。

 

故にプライドの高い者達が多く、例え実力が有っても、年端も行かない少女である愛里寿の命令を聞く事に不満を覚えている者達も居た。

 

そんな者達の間に立ち、愛里寿とチームメンバー達の仲を取り持っているのがメグミ、アズミ、ルミである。

 

もし彼女達がチームから外されてしまえば、大学選別チームのチームワークに支障が生じかねない上………

 

大人の悪意が諸に愛里寿に向かう事になってしまう。

 

そう思うと、3人は面と向かって千代に意見する気にはなれなかった………

 

「今更もう手遅れよ。私達に出来る事は只1つ………」

 

「最後の最後まで総隊長を支える………」

 

「そして勝利するのみ………」

 

メグミ、アズミ、ルミは悲壮な決意を固める。

 

「………総隊長から全隊員へ」

 

「「「!!」」」

 

そこで、愛里寿から機甲部隊全隊員に向けた通信が入り、3人の顔に緊張が走る。

 

「コレより作戦を開始する。先ず火力に優れる車輌………特に黒森峰とプラウダの重戦車部隊は優先的に撃破。アズミとルミの部隊は私と共に前進。側面からの強襲に注意せよ。偵察部隊は敵と遭遇しても攻撃するな」

 

「「「「「「「「「了解っ!!」」」」」」」」」」

 

愛里寿がそう命令すると、チャーフィーを中心としたM8装甲車とM20装甲車やオートバイに乗った機械化歩兵部隊が大学選抜機甲部隊より先行した。

 

「各車前進」

 

「こちらルミ。了解」

 

「アズミ、了解しました。前進開始」

 

「メグミ、部隊を変針させます」

 

そして遂に、大学選抜機甲部隊が行動を開始した。

 

「愛里寿、何故ヘッドフォンを付けていない?」

 

とそこで、前進するセンチュリオンに随伴していたジープの助手席に乗っていたイプシロンが、愛里寿が例の装置を使っていない事を尋ねる。

 

「………使うまでもないから」

 

愛里寿はそう、やや苦しい言い訳を返す。

 

「そうか………まあ良い。だが忘れるな、愛里寿。今日で父上と母上の悲願が達成されるのだと言う事を」

 

「………うん」

 

イプシロンの言葉に、愛里寿は俯きながら小さな返事を返した。

 

「………むざむざ敵に空をやるワケにも行かんな。こちらイプシロン。航空支援を要請する」

 

とここで、イプシロンは先んじて制空権を確保しようと、航空支援要請を出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メガフロート艦・上空………

 

西部学園のマークを付けた数機のスチンソン L-5C センチネルが、一定の間隔を空けた編隊飛行を行っている。

 

「! 3番機より1番機へ! 目標発見っ!!」

 

するとその内の1機の乗員が地上で動くモノを発見し、隊長機に報告を送る。

 

その動くモノは、大学選抜機甲部隊だった。

 

「コチラ偵察機隊! 大学選抜機甲部隊を発見! 位置は………」

 

隊長機が、すぐに大洗連合部隊に報告を送ろうとするが………

 

「! 3時方向より敵機来襲っ!!」

 

すぐに敵機来襲の報告が挙がり、3時方向を確認すると………

 

大学選抜機甲部隊のマークが描かれた『F8F-2 ベアキャット』と『P-51 マスタング』の編隊の姿が在った。

 

「来たか! 急速離脱っ!!」

 

直ちに離脱を指示する偵察機隊の隊長。

 

しかし、ベアキャットとマスタングはすぐにセンチネルに追い付いて来る。

 

AN/M3 20mm機関砲と12.7mm重機関銃M2が火を噴き、センチネルが1機撃墜される。

 

「敵機甲部隊の位置! Yの3地点! 北へ向かって進行中!! 尚、現在敵機より逃走中! 戦闘機の支援を請うっ!!」

 

そんな中でも、隊長は冷静に大学選抜機甲部隊の位置と進行方向を大洗連合部隊に報告し、戦闘機の支援を願う。

 

その横で、僚機が火を噴いて墜落して行った。

 

「隊長! もう駄目ですっ!!」

 

「やかましいっ!!」

 

同乗員が弱音を吐くのを一蹴し、自機に回避運動を取らせる偵察機隊長。

 

しかし、その努力も虚しく、遂にP-51のレティクルに捉えられる。

 

「…………」

 

P-51のパイロットがニヤリと笑いながら操縦桿の引き金を引こうとする。

 

だが、その瞬間!!

 

そのP-51に無数の機銃弾が浴びせられた!!

 

「!?」

 

パイロットが驚いている内に射出座席が作動し、脱出。

 

蜂の巣にされた機体は火を噴き、主翼が片方折れると錐揉み回転しながら落ちて行った。

 

「良く頑張った! 後は任せろっ!!」

 

そしてそこで、六郎の声と共に、一航専の戦闘機部隊と大洗連合に参加した各校の戦闘機部隊が現れる。

 

「助かった! 後は頼みますっ!!」

 

偵察機隊長はそれを確認すると、そう言い残して生き残ったセンチネルを引き連れて離脱して行く。

 

「ベアキャットとマスタングか………だが、この『烈風改』とて後れは取らん」

 

六郎は相手となる機体が傑作機と名高い2機である事を認めるが、自身の烈風も改良された物であると言い、引けは取らないと豪語するのだった。

 

「行くぞ! 全機交戦!!」

 

「メビウス1、交戦」

 

「ラーズグリーズ隊、交戦」

 

六郎がそう言い放つと、紫電改のメビウス1、疾風のラーズグリーズ隊を中心に、大洗連合の戦闘機部隊が交戦を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大洗連合・大洗機甲部隊………

 

『コチラ六郎! 現在敵戦闘機部隊と交戦中! 制空権は拮抗状態っ!!』

 

「了解しました! 出来る限り早く制空権を確保して下さい!」

 

『善処する!』

 

六郎から報告を受けたみほはそう返し、先程偵察機隊長から入った大学選抜機甲部隊の位置を地図上で確認する。

 

(この位置から北に………交戦場所は………此処になる)

 

地図上のある地点………

 

高地を中心に、右手の森林、左手に湿地帯が広がっている場所を見て、みほはそう思いやるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させていただきました。

遂に開始された大学選抜チームとの試合。
其々に様々な思いを抱えつつ戦場に向かう両部隊。
制空権争いが拮抗する中、最初の接敵地帯を予測するみほ。
勝利の女神はどちらに微笑むのか?

相変わらず進みが遅くて申し訳ありません。
前にも言いましたが、如何にも筆が進まなくて………
けど、必ず書き上げますので、心配しないで下さい。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。