【完結】ポップになりました   作:しらいし

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6.北の勇者(笑)

 リンガイア王国。この世界の中央に位置するギルドメイン大陸の四大王国の一つである。ギルドメイン山脈の北方に位置しており、城塞王国と呼ばれている。後々の事を知っていれば、城塞王国(笑)である。相手が悪かったせいであるが、たった一週間で壊滅させられた国である。まあバランが本気出してたらドルオーラで一日で終了してたから遊ばれた結果の一週間が短いか長いか正直分からないが、ようは超竜軍団しゅごい! バランしゅごい! という描写に利用されただけの国である。そしてその後、ピラァ・オブ・バーンまで投下され廃墟すら消滅してしまう悲しい国でもある。

 

 そんな悲しいリンガイアに一人のクソガキがやってきた。ポップである。ポップがリンガイアにやってきた理由。それは「どうせ滅びる国なんだから何やっても平気だろ」とかいう最低な理由である。

 

 

 さて、この国の出身といえば北の勇者と言われるノヴァ君がいる。おそらく独学で身に付けたであろう、ヒュンケルやヒムのように闘気を使って戦う事ができる子なんです。そして作中、人間側では他にポップとマトリフしか使えなかった上位の攻撃呪文まで唱える事が出来るのです。有名な師匠も持たずにである。こいつガチの天才だと思う。しかも闘気と魔法の両方を使えるのは、劇中では竜の騎士であるダイとバラン、魔族であるハドラーとバーン、そしてアバン先生とノヴァの六人だけである。マァムはあれ魔法だからね。そして魔界の魔物相手でも周りが傷ついている中でほぼ無傷で負けていなかった。しゅごい!

 

 デビュー戦の相手がオリハルコン軍団とかいう最強クラスで無ければ勘違い野郎で噛ませ犬とかいうポジションに入らなかっただろうに。というか初期ハドラーくらいならノヴァ君なんとかしそうな気がする。なんせオーラブレードはオリハルコンすら傷つける事が可能な技であり、ノーザングランブレードに関しては、その当時最強技だったダイのライデインストラッシュも真っ青の威力だと目を丸くしたポップが評している程の技である。まぁ防御したヒムは「柱の角に頭をぶつけた」程度とか言われたので、確かにノヴァ君の心は折れるものがあったであろうと同情を禁じ得ない。相手が悪かったね。合掌。

 

 

 

 今、リンガイアは祝賀ムード一色であった。リンガイアにとって厄介であったモンスターをノヴァが単騎で討伐を成し遂げたのである。その功績でノヴァがリンガイアの勇者、北の勇者と認められたという。ロモスでクロコダイン倒した時のダイみたいなもんだね。城のバルコニーから顔を出して民衆に手を振るノヴァ。とても喜ばしい事であるのにも関わらず、ノヴァの顔には若干の影があった。勇者としての重責に緊張してるのかな?

 

 そのノヴァを建物陰からこそっと見て邪悪な笑顔を浮かべる小僧がいた。我らが腐れ外道、ポップ君である。

 

 

 城から出てきたノヴァが街道を歩いていると、物陰から声を掛ける人物がいた。やはりポップ君である。登場の仕方が悪役である。

 

 

「ようノヴァ、さっきは楽しそうに手なんか振っちゃってたなあ?」

「お、お前は……ヒュンケル……」

 

 ポップ、またヒュンケルの名を語るの巻。

 

「くっくっく、勇者(笑)なんか名乗っちゃって恥ずかしくないの?」

「き、君が僕が一人で討伐した事にしたんじゃないか!」

 

 

 そう、偶然討伐現場に遭遇したポップ。そのままノヴァ一人でモンスターを倒せそうだったので、後ろからこっそり魔法でノヴァを不意討ちしてモンスターを助け、ノヴァが大ピンチになった所でノヴァを助けるとかいうマッチポンプをやって、ノヴァを恩着せがましく助け出したのだ。その後、駆け付けたリンガイアの兵士に「ノヴァは一人でモンスターを倒した」と言い、ノヴァに「黙っといてやるからな……」とボソッと言ったのである。

 ようはこの男、この状況を利用して最大限に遊ぶつもりである。最悪どうなっても潰れる国だから何してもいい精神である。お前リンガイア助けようとか思わないのかよと思うだろうが、この男は思わない。思わないったら思わない。クズだから当然とも言える。

 

 

「あ、良いのかなー? 本当の事バラしちゃおっかなー?」

「な!? 君が黙っておくと言ったのだろう!?」

「黙っておくと言ったが、いつまでとは言ってないんだなあ」

「なんて奴だ……」

「あれれー? そんな口の聞き方していいのかなー?」

「くっ、な、何が望みだ!」

「そうだなー、うーん。よし、ちょっとナンパしてこい」

「……は?」

「いいからナンパしてこい」

「な、何故僕がそんな事を……」

「いいからしてこいっつってんだよハゲ」

「僕はハゲてない!」

「なんだ、勇者ってのはナンパのひとつも出来ない腰抜けなのか。あー分かったよ。勇者様にはナンパなんて難易度高過ぎて無理でしたね」

「なんだと! ……分かったよ、やってやる!」

 

 

 タッタッタッと駆け出して往来でナンパをぎこちなく始めたノヴァの様子を見て、ポップはその辺にいた住民に声を掛ける。

 

「ねえねえ、あれ見て下さいよ」

「あ? なんだお前」

「いいからいいから。ノヴァが勇者になった途端に立場を利用して女を引っ掛けようとしてるんですよ。ゲス野郎ですね」

「な……、ほんとだ。あいつ調子に乗りやがって」

 

 よし!っとポップは次々に住民に声を掛けてノヴァを陥れに掛かった。なんでそんな事をしているのか? こいつにとってただの暇潰し以外の理由なんてないよ!

 

 

 

「ヒュンケル! 貴様ー!」

「ん? ノヴァどうかした?」

「どうかしただと! 貴様のせいで国中に僕の悪口が拡がっているじゃないか!」

「ナンパしてたのは事実だろ?」

「それだけじゃない! さっき父上から呼び出され『勇者としての自覚がまったく足りない!』と怒られたんだぞ!」

「で?」

「お前ちょっとは!」

「ナンパで引っ掛けた娘とはどうだったんだ? (頭が軽そうな)可愛い娘だったじゃん」

「……」

 

 

 黙ってしまったノヴァを見て、ティーンとポップが閃いた。そしてノヴァの肩を叩き同情したような表情で言ってやった。

 

 

「誰でも初めは緊張して失敗するもんよ。童貞野郎」

「殺す!」

「けっけっけ、やっぱり卒業出来て無いでやんの」

「殺してやる!」

 

 

 ノヴァはいきり立ち、抜刀した。そこまで確認してポップは大声で叫ぶ。

 

 

「助けてー!! 勇者ノヴァに殺されるー!!」

「な!?」

 

 

 叫んだ後、地面にうずくまったポップ。何事だとワラワラ住民が集まってきた。そして騒ぎを聞き付けたリンガイアの兵士達もやってきた。ノヴァは激しく動揺した。

 

「何事だ!」

「……ノヴァに調子乗ってんじゃなくて勇者としてしっかりしろと言ったら襲われました」

「ひ、ヒュンケル貴様!」

 

「なんだ痛い所を突かれて逆上したのかノヴァは」

「調子に乗りすぎだよな」

「じゃなきゃ急に往来でナンパなんかしないよな」

「でも童貞臭い顔は変わってないね」

 

 

 住民から熱い非難の声を浴び、ノヴァはがっくり肩を落とし口から魂が抜けたような顔になった。そして城に連れて行かれ、また父親に雷を落とされる。人間不信になったノヴァは、その夜リンガイアから人知れず修行の旅に出た。きっと原作より強化される事になるであろう。

 そして人知れず旅に出たはずのノヴァがリンガイアでナンパしている姿がしょっちゅう目撃される。更に「俺は勇者だぞ」と言って横柄な態度をとっている様子も目撃される。

 

 当然、モシャスで化けたポップ君である。誰かこいつなんとかしろ。




前半で誉めてやってフォローしてやったからええやろ(下衆顔

ほんとは北の勇者からキタキタの踊り子に転職させるつもりだった。
ノヴァを耐久チートの無敵変態盾にしようかと思ったけど、禿げてないのとスネ毛が薄そうなので辞めた。

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