ドラクエⅢをやった事があるだろうか。勇者一人旅プレイよりも勇者と魔法使い三人旅のほうが難易度が高いゲームだという認識をポップとなった青年はしていた。そして現在、彼は魔法使い一人旅である。凄まじい縛りプレイ状態である。彼は現在、パプニカの城下町に滞在していた。とりあえず近くにパプニカがあったからというだけの理由だが。
彼は一つ、試してみたい事があった。彼の聖書であるラノベ、スレイヤーズで主人公であるリナがやっていたマントの中は常に火属性の魔法や氷属性の魔法で気温をコントロールして快適な温度を保つというものである。リナは天才だから出来た。この身体の元の持ち主、ポップだって天才である。世界観が違ってもそれくらい出来るだろうとマントを購入し、試してみた。
「キャアアアア!!!」
「ぎゃああああ!!?」
ポップは街中で炎上した。目の前で急に炎上したポップ少年を見て悲鳴をあげる住民達と自分が燃えてパニックになったポップ。目の前でエクストリーム自殺を敢行された住民は間違いなく心にトラウマが出来たに違いない。
「うおおお!? ひゃ、ヒャダルコ! あああー今度はマントが全部氷付いた! 寒! メラ! あー! また燃えたー!」
往来で一人コントを繰り広げていたポップの元に騒ぎを聞き、バダックじいさんとパプニカの兵士達が駆けつけた。
「人が燃えてるじゃと!? い、いや氷っておる??」
「あちいー! メラミ! ヒャダルコ! 半分ずつでフレイザードなんつって! あちゃちゃちゃちゃ」
「……余裕がありそうじゃな。しかし……」
街中で騒ぎを起こしたハタ迷惑な少年を見ながらバダックは思う。マントを燃やしたり凍らせたりしながら自身にダメージを負わないというのは、魔法をよくは知らないが高度な技術なのではなかろうかと。そして火炎系と氷系の中位の呪文を繰り返し唱え続けている少年は、もしかしたら凄い魔法使いなのかも知れない。ただし、馬鹿だとも思っていた。
「どうしたもんかのう」
一人で燃えたり氷ったりしている彼は、とりあえず実害は無い、多分。迷惑なくらいでいる。しかし、いつまであのマント燃えたりするのだろうか、灰にならんのかのうと思考がどうでもいい方向に悩み始めたバダックじいさんの背後から真空系呪文が唱えられた。
「バギ!」
「うぎゃあああ!!」
真空系呪文がもはや遊んでいたとしか思えないポップのマントを切り裂き粉々にした。ついでに衣服も切り裂いた。肌も少し切り裂いた。
「痛たたたたた!?」
「往来で騒ぐからよ」
後から駆けつけたパプニカ三賢者の一人、マリンが傷付いてもがいているポップに声を掛けた。正論である。
「ていうか服着なさいよ」
「それは理不尽!?」
切り裂いたの何処の賢者だよと思ったポップだったが、なんとなく怖くて言えない。ここはあれしかない。こそっとアバンが持っていたから契約したあの呪文だ。
「しょうがない……出来るかな? モシャス!」
「!?」
ポップはモシャスをとなえた! パプニカのミニスカ賢者 マリンに変化した!
「おお、出来た出来た。これがご都合主義か……モシャスで服まで似せるってどういう原理なんだろう」
「メラミにヒャダルコにモシャスまで!? 何者なんじゃ!?」
「ちょっと! なんで私なの! 早く変化解きなさい!」
「むさいおっさんより美人がいいのは当たり前なんだよなあ」
「……お主、ちょっと城まで来てもらおうか」
「嫌だ」
「こんだけ騒ぎ起こしたんだから素直に従いなさい」
「うるせえ! この姿のままそこのジジイにパフパフしてその後この往来でストリップしてやろうか!」
「何! パ、パフパフじゃと!」
「ちょっと! じいさん喜ぶな! なんて外道な事を考えるの! この変態!」
「なんて奴だ!(マリンさんのストリップ!いいぞ!」
「鬼畜男め!(よし、はよ脱げ!」
「男の風上にも置けぬ奴!(お前は最高の男だぞ!」
「俺にもパフパフ!(この屑野郎!)」
「おっぱい! おっぱい!(おっぱい! おっぱい!)」
マリンはわなわなと肩を震わせて怒りを隠さない。だが他の兵士達はもしかしたらマリン(偽)のストリップが見れるかも知れないという状況に、まるで心の声が聞こえてくるように鼻の下が伸びている。
「なんて男……名を名乗りなさい!」
「俺か? 俺の名は……ヒュンケル! イケメン銀髪戦士ヒュンケル様よ!」
「な……!? じゃあ先程までの黒髪バンダナ間抜け面もモシャスだったとでもいうの!? く、ヒュンケルって最低の屑だわ!」
「……戦士は無理があると思うがのう」
「ヒュンケル……最低な奴め(お前がナンバーワンだ」
「ヒュンケルか、覚えたぞ!(ヒュンケルは最高の漢だぜ)」
「パフパフまだ?」
「おっぱい! おっぱい!」
「フフ、そうだヒュンケルだ! よく覚えておくがいい! ではさらばだー!」
「待ちなさい! 変化解きなさい!」
マリン……じゃないヒュンケル……じゃなかったポップは逃げ出した。それを追い掛けるマリン。あのミニスカで走るとかそれだけでエロスを感じる。きっとふとももに釘付けのパプニカの兵士達もそう思っているはずだ!
その後、ほとぼりが覚めたかなとポップはマリンの姿のまま男物の服と下着を購入し、パプニカ城に請求してくれとマリンのサインを書いて去っていった。あとエッチな本もマリンの姿のまま買ってパプニカ城に請求させた。
後にマリンは(男を)賢者(モードにするエロミニスカ恥女)として、世界で名が売れ、世界中にファンが出来、多数のマリンに関する(エロい)本が出版される事となるのだが、ヒュンケルのせいである。