今日は小母様の家で鬼達が集まり宴会する日。
宴会の日、和真は萃香が他の鬼と飲み比べなどをするので一人になってしまう。和真は熱いお茶を冷ましながら飲んでいるところに男の鬼が近づく。
「なんでぇ和真、また怒られたんかい」
「家に帰る時間が少し遅れただけなのに…」
「はっはっは!!次から気をつければいいさ!それに絶対なんて世の中にありゃしないんだ!こんな日もあるさ」
ガハハ、と大きく笑う鬼をみて少し元気が出てきた。笑う鬼を見ると元気になれるな。
「そうじゃぞ和真」
そういい和真の正面に鬼の大将が座る。
「大切なのは守ろうとする気持ち」
「守ろうとする気持ち…」
「そう、そして守れなかったときの謝罪の言葉。それさえあれば萃香の頑なに怒ったりはしないじゃろうて」
「うん」
そうだよな、ちゃんと誤れば母さんだって許してくれるよな。俺が間違ってたって認めれば母さんだって……あれ?俺最初誤った……よな?……きっとごめんなさいだけじゃ駄目なんだ。……そうだよな?
◇
あれから3時間半経過したが宴会は終わる気配を見せない。むしろ鬼達のテンションが上がる一方だ。その鬼達とはうらはらに和真のテンションは下がっていく一方である。
「はぁ…」
宴会は楽しい。けどそれは最初の1時間だけだ。それ以降は疲れていろいろとめんどくさくなる。それに修行して帰ってきているのでものすごく眠たい。そのいろいろと極限状態の俺に鬼達はかまわず、いつも以上のテンションで絡んでくるので困る。お酒飲めれば違ったのだけれど子供は酒飲んではいかんとのことで素面である。
「和真はよぉ~自分の事を『俺』って言ってるけどよ~『僕』のほうがにあってんじゃねえのか~?」
「え?」
「男ならやっぱ『俺』だけども和真はなんか『僕』って感じがするんだよな~」
なんだそれは!?もしかして俺は子供っぽいということか?いや、しかし実際に子供だし……周りからしたら背伸びをしているようにしか見えないということか!?しかし、前世から『俺』で通してきたらから癖でもう変えることは出来ないし…考えてるときは前世のように落ち着いた考えが出来るが発言するときは精神が体に引っ張られて子供っぽくなるし……あれ?よく分からなくなってきた。つまり俺は『俺』は似合わないということなのか?今度文達に聞いてみるか。
駄目だ。酒の匂いで具合悪くなってきた。とりあえず風に当たって来るか。そのときに新技でも考えるか。
「風に当たってきます」
「あんま遠くにいくんじゃないぞー!」
ガハハ、と笑いながら注意掛けをする鬼。酔っているのか?鬼が?まぁ、いいか。早く外に出ない吐く。
ヒュゥゥと夜の冷たい風が駆け抜ける。和真は鬼神の家の屋根の上に寝転んでいた。
彼の顔にはどこかすっきりしたところが見られる。鬼神の家の近くのモザイクは気のせいではないだろう。
「月が綺麗だな…」
彼に似合わないセリフを吐く。誰かに聞かれていたら間違いなく黒歴史となったであろう。彼はあたりを見回す。そして誰にも聞かれていないことにほっとしてもう一度月を見直す。
「月が綺麗だな…だって!ぶはっ!駄目!死ぬ!アハハハハ」
「和!今のはないわ!アハハハハ」
「うるせー」
黒歴史決定。
「で、どうしたんだよこんな夜中に。宴会中だから良かったものの普通だったら攻撃されてるんだぞ?」
「大丈夫だって、あたい等は強いんだ鬼神はわからんが四天王になら勝てるさ」
「そこは鬼神も倒せるさと自身もって言いたかったけどこれが現実なのだ!」
「いや、四天王倒せる時点ですごいけどね…ていうかチル姉もルーミアも酔ってるの?」
彼女たちはチルノとルーミア。氷の妖精と常闇の妖怪だ。
「酔ってなんかいないさ、今日は満月だからね。少しテンションが上がってるだけよ」
「あたいはその場の雰囲気に合わせてるだけさ」
何でこの二人と仲いいかって?え?それよりも何で二人が性格違うのって?そんなことは後だ。とりあえず仲良くなった経緯を聞いてくれ。
チルノとは文や椛、にとりと友達になる前に友達になった初めての友達。ルーミアは修行し始めて6ヶ月経つ頃に襲ってきたので返り討ちにしてなんやかんやで仲良くなった5人目の友達。因みに友達になった順番はチルノ・文・にとり・椛・ルーミアである。
次に何で性格が違うかとかは知らん。始めてあったときはびっくりした。チルノは身長高いし大人っぽいし、ルーミアはかなり強いしEXだし…とにかくそんな感じで知らん。
「ツッコミ遅れたけど四天王を倒せる私に勝ったのはどこのどいつよ」
「チル姉です」
「間違っちゃいないけど……」
「どうでもいいじゃないか、そんなことよりせっかく遊びに来たんだ。なんかしようぜ」
「いや、もう夜だし母さんたちに見つかったらやばいんだけど」
「なら月でも見ながら雑談でもしようじゃないか」
「それぐらいなら……」
雑談って言われてもな…雑談をしようって言われていきなり始めれるわけでもないだろうし、面白い話題もないし話のしようがないな。二人は話すことないのか?と、チラッと横目で見てみるが黙って月を見上げるだけである。この二人何しに来たんだよ。
少ししてルーミアが口を開いた。
「月が綺麗だな…」
「ぶはっ!」
「ひでぇ…」
何であんなこと口走ってしまったのだろう。周りに誰かいることを考えなかったのが駄目だったな。反省反省。
「いや~、和真って私と戦ってるときも臭いセリフ言ってたよね。あれ、何だっけ?」
「お願いだから思い出させないでくれ」
「あたいが来たのは最後らへんだったから興味があるな」
「いや、チルノも知ってるセリフさ」
ああ、こいつらたちが悪い。戦闘のときくらいいいじゃないか。戦闘だからこそ言えるセリフってのがあるわけで、ていうか戦闘くらい厨二じゃないとやってらんないよ。
「ああ、思い出した。『お前は一人じゃねえ、俺たちがいる。だから、そんな悲しい顔して戦ってんじゃねえ!』ってのがあったのよ」
「ああそれか!」
「何だよ!事実じゃねえか!しかもそれそんなに臭いか!?」
「「ああ」」
やべ、泣きそうだ。
「それとあたい達が勝ったときルーミアが安心して寝るときのあのセリフ」
「私は途中で寝ちゃったから最後まで聞いてなかったね」
「それが『起きたときには隣に俺たちがいる。だから安心して眠っていいよ』って言ったのさ」
「くっさ!」
「何だよ!駄目かよ!そんなに俺が臭いセリフ言ったら駄目なのかよ!」
「いや、だって和真は10歳でしょ?そんな小さい子供がそのセリフを吐くのよ?」
「もういい!帰る!」
和真は拗ねて帰ってしまった。
◇
「で、臭い臭い言ってたけど実際どうなんだ?」
「何がよ」
「わかってるくせに」
ルーミアは少し間を置いてから懐かしむように話す。
「まぁ、かっこよかったわ」
「惚れたんだろ?」
「…そうね。人間の10歳児に惚れるとか」
二人は月を見ながら語りあう。その中、ルーミアの顔は少し赤く染まっていた。
「あなたもなんでしょう?」
「私は弟として見てるから」
「そうなの?顔赤いわよ?」
「そうなんだ。顔赤いのは気のせいだ」
二人はクスクスと笑う。6歳児に惚れるなど普通はありえないことだ。しかも種族が違う。だが、それほどにルーミアにとって彼は特別な存在なのだ。
「守ってあげないと」
「そうだな。和はまだ弱い。ルーミアと戦ったって言ったって手加減されての話だからな、あいつとやったら瞬殺される」
「そうね、動くとしたらもうそろそろ」
「あたい達でやれるかどうか…」
「まあなるようになるわよ」
◇
同時刻。
妖怪の山から少し離れた場所。月明かりに照らされた一人の女性が向日葵に囲まれた場所に立っていた。
「…そろそろね」
女性は楽しそうに笑う。その姿は美しいというには程遠く、悪魔を連想させられる恐怖の笑みであった。
「和真」
彼女は笑う。
自分の文才の無さに鬱になってくる・・・あぁ、ルーミアに食べられて死にたい。