とある科学の距離操作(オールレンジ):改訂版   作:スズメバチ(2代目)

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気が付いたら禁書目録の3期が始まっていました。


再度アニメ化する前にはとっくに終わるだろうなあと思っていたあの頃の自分を殴りたい。




 


御坂美琴のそっくりさん-ⅴ

 

 

 

 

 

 

秋の夕暮というのは何かと寂しくなるような物悲しくなるような、ホームルーム後はそんな時間帯だ。

 

教室のカーテンの隙間から毀れる夕日の光は暖かい光というよりも冷たく突き刺さる光、そっちのほうが合っている気がする。

 

初春飾はそんな詩人のような感傷に浸っていたことにはっと気づいた瞬間、周囲を見渡した。

 

自分がこういう風に物思いにふけっている時はだいたい近場で佐天が待機していて必殺のスカート捲りをお見舞いされるのであるが……。

 

 

 

「あ、はい分かりました。それじゃ常盤台の校門の前でお待ちしてますね」

 

 

 

今日は誰かと電話中だったようで一安心、良かった。

 

会話の相手はどうやら御坂か白井のように思えたが……。

 

 

 

「佐天さん、誰と話してたんですか?」

 

「あ、初春。御坂さんだよ、常盤台の近くに全国的に有名なカフェのチェーン店がオープンしたから暇だったらどう、っていうお誘い」

 

「そうだったんですが。常盤台の近くに出店するなんてそのお店は相当なお金もちですね、あそこの地価は物凄い高値がついていたと思うんですけれど」

 

「だからこそ期待出来るって、その高い土地代払っても賄えるであろう収益を見込んでの出店!それだけ美味しいに違いない!そして奪えそうな味付けは頂きます!」

 

「あはは、佐天さんは本当料理が得意ですからね……羨ましいです」

 

「初春も一緒に行く?白井さんはジャッジメントの活動があって来れないらしいけど」

 

「そうですね、私は今日は特に予定が入っていないので御一緒したいです」

 

「オッケー!それじゃあ……んー、七惟さんも呼んでみる?」

 

「な、七惟さん!?」

 

 

 

七惟とは、最近初春たちのクラスに転入してきた転校生、七惟美咲香のことである。

この転校生、普通の転校生とは色々大きく違うのだ。

 

まず外見が初春たちの友人である御坂命琴とそっくり……というかもう全て同じなのだ、性格は正反対だが。

 

そしてその身体能力が唯の中学生とは思えない程図抜けており、その存在はあっとういう間に校内に知れ渡り一躍時の人となった。

 

更に頭脳明晰、数学に関してはもうぐうの音も出ない程であり一部では数学の教師よりも数学に詳しいのではないかと言われる程の優等生。

 

その一方で国語、特に現代文に関しては致命的にダメでありどうすればこんな点数が取れるのだろうかと言われる、因みに漢字テストは満点である。

 

そんな一癖も二癖も変わった特徴を持つのが七惟美咲香、転向してきた初日から仲良くなり家族にも既に会っている程のなのだが、初春の中には出会った時から疑問に思っていることが幾つかある。

 

今週末には勉強会を七惟宅でやるということにもなっていたので、その時に色々と話が出来ればと思っていたのだがそれを待たずにこの佐天の不意打ちだ。

 

 

 

「でも七惟さんは……」

 

「えー、まだ七惟さんのこと気にしてるの初春~?ここ数週間一緒に過ごしてきたけど特に変なところなんて全然無かったじゃん」

 

「っ、それはそうですけど!いきなり疑惑のど真ん中に突き進むのは……その、度胸がないと言いますか」

 

「大丈夫だって、私達も色々経験してきたけど七惟さんがそんなトラブルを持ち込むようには全然見えないしさ」

 

 

 

そう、初春と佐天は普通の中学生では経験出来ないようなことを既に2回も経験している。

 

それは一重に彼女たちが不幸だから、という訳ではなく彼女たちと交友関係がある学園都市第3位の御坂が関係している可能性というのは少なくない。

 

だがそれを彼女たちは不快に感じたことは一度もなかった、彼女たちはそれすらも思い出として語り合える。

 

何故かと言えば、傍から見れば可笑しな日常も彼女たちからすればそれが当たり前、大人になるにつれて経験していくことが自分の根幹となっていくことが多いのだが彼女たちはそれを形成する多感な時期にその可笑しな日常が当たり前になったからだろう。

 

もちろんそれでも事件が起こるたびに狼狽はするのだが。

 

 

 

「うー、佐天さんの言う通りではあるんですけど」

 

「そうでしょ、それにそんなに気になるんだったら直接御坂さんか七惟さんに聴いてみたら?」

 

「ちょ、直接ですか」

 

「そう、そうすればすぐに初春が思ってることなんて解決するじゃん。私は別段気にしてないからそこは初春に任せるけど」

 

「佐天さんみたいな度胸が私にはないんですよぉ」

 

「昔ある人が言ってた言葉があってね、女は度胸!男は愛嬌!」

 

「それ絶対逆ですよ普通」

 

「私もそう思うけど、偶にはガツンと言ってみるのも大事だって。私には結構ガツンと言ってくれるから、無理じゃないよ」

 

 

 

そりゃあ佐天は親友だから、と言いそうになって口ごもる。

 

どちらにせよ自分と佐天との距離感は自分と御坂、自分と七惟とに置き換えたらものすごい違いがある。

 

御坂に関しては学年は一つ上の先輩だし、学園都市に8人しかいないレベル5の超電磁砲で憧れの常盤台のお嬢様であることに今でも変わりはない、本当によくそんな凄い人と友人関係になれたと思う。

 

一方七惟は言わずもがな、知り合って僅か数週間である。

 

そんなまだ知り合ったばかりの人にどぎつい質問をすることなんて出来っこない。

 

 

 

「まぁ今日会えばさ、きっと何か教えてくれるって。もちろん七惟さんには御坂さんに会うことを伝えてから誘うけど」

 

「……御坂さんにはどう伝えるんですか?」

 

「もちろん七惟さんからオーケーが出たら友達一人連れていきますって伝えるかな、実は初春が気になっている御坂さんそっくりの人がー」

 

「あわわあ!そんなストレートに私の名前出すんですか!?」

 

「だって初春が気になってるんでしょ?」

 

「そうですけど、物事には順番ってものがあると思います!もっとこう外堀を埋めてから……」

 

「そんなこと言ってもう数週間経ってる」

 

「う、言う通りです……」

 

「とにかく七惟さんがオーケー出すかどうか分からないからさ、それから決めよっか」

 

「それは問題の先送りなのではないでしょうか……」

 

 

 

初春と佐天は自分の席で帰宅する準備をしている話題の人物に声を掛ける。

 

そこでもう一度まじまじと初春は七惟美咲香を観察する。

 

やはり何処からどう見ても御坂命琴そっくりである、もう寸分の違いもないくらいに全てが同じだ。

 

唯一違うところを言うとなればそれは瞳だ、その瞳は御坂と七惟では大きな違いがある。

 

御坂の目は生命の躍動に溢れている輝いた瞳だが、一方の七惟は何処までも澄んでいる海のような深い綺麗な瞳。

 

その違いは表情に一番大きく現れる、端的に言ってしまえば御坂は運動系の活発系美少女、七惟は文学美少女。

 

どちらも運動神経は図抜けているのだが……。

 

表面の違いはでも本当にそれくらいしかない、性格は真反対だったとしても此処まで一緒なんて有りえるのだろうか、御坂から双子の妹の話なんて聞いたこともない。

 

此処で七惟に御坂のことを聴いても大丈夫なのだろうか、もしかしたらとんでもない地雷で取り返しのつかないことになるのでは……。

 

だが現実は非常にもそんな不安を抱える初春を無視して佐天が糸も容易く声を掛ける。

 

 

 

「ねぇ七惟さん、この今日はこの後時間ある?」

 

「佐天さん、如何しましたかと尋ねます」

 

「えーとね、この後実は初春とちょっとカフェに行く話をしてたんだけど、七惟さんもどう?」

 

「なるほど、そういうことですか」

 

 

 

七惟と初春の視線が重なる、その澄んだ瞳は本当に綺麗で落ち着いた佇まいや言動、有りえない程似合っているセーラー服からもう御坂よりも七惟のほうが遥かにお嬢様のような気がしてきた。

 

……なんとなく、クラスの男子達の大半が七惟に視線を集中している理由が分かった。

 

 

 

「申し訳ありませんが夕方兄と用事が入っています」

 

 

 

七惟の返答に若干ほっとする初春。

 

 

 

「あ、そうなんだ。それならまた次回だね」

 

「はい、また声を掛けてくれると嬉しいです」

 

「もちろんだよそんなの~。それじゃあまた明日、バイバイ七惟さん」

 

 

 

どうやら杞憂に終わったらしい、初春は胸をなで下ろしつつクラスを出ていく七惟を見送る。

 

彼女がクラスを出て行ったところで佐天が初春のもとに戻ってきた、残念そうな表情を浮かべているがこちらはハラハラものである。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

 

美咲香の用事、それはとある人物に兄と一緒に呼び出された為会いに行くということだ。

 

美咲香は七惟よりも学校が早く終わる。

 

その為彼女が移動し集合場所は七惟の学校、実は既に到着済みだ。

 

ここから電車で一緒に目的地へ向かう予定である。

 

どうやら待ち合わせをしている人物は相当に癖が強い人らしく、今朝出かける前に七惟はしきりと警戒は怠るなと美咲香に注意していた。

 

まぁどんな人物が来ても自分の兄や超電磁砲を超える人間なんてそうそういないため大丈夫だとは思うが。

 

そんなこんなで彼女は佐天達からのお誘いも断り、こうして一人高校の正門の前で暇を持て余している。

 

こういう時こそ近づいてきているテストに向けて苦手な科目の勉強でもしたほうがいいに違いない。

 

美咲香は鞄に手を入れするりと国語の問題集を取り出す。

 

そして案の定問題集に登場する主人公の行動が理解出来ずに頭をぐるぐると回す。

 

やはりダメである、この問題集に出てくる人たちは余りに非合理的な動きをし過ぎている。

 

こんなことをしていて自分の行動に疑問を持たないのだろうか……?いやそんなことを考えている自分がまず疑問を抱いていて……?

 

頭の中が完全にハツカネズミ状態になった美咲香。

 

そんな彼女に近づく影が一つ。

 

 

 

「あれ、七惟んとこの……」

 

「……上条当麻さん、何のようでしょうか?」

 

「何のようって、俺は此処の学生だからな」

 

「そうなのですか、それは失礼しましたと頭を下げます」

 

「お、おーい。斜めになってる斜めに」

 

 

 

声の主は妹達憧れの的、上条当麻。

 

美咲香にとっては思いもよらない相手であった。

 

 

 

 

 


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