白義蒼仁~浅井長政伝~   作:楽一

9 / 9
先にこちらが出来上がったのでこちらを投稿します。
久しぶりのリハビリのため若干おかしなところもあるかと思います。


第八章 金ヶ崎追撃戦

 

 

第八章 金ヶ崎追撃戦

 

 

 オレが小谷城に戻るとすでに夜だった。だが、それにしては小谷城は明らかに静かたった。

 

「なんだこれは? 開門せよ! 浅井家当主浅井長政だ!」 

 

 するとゆっくり城門が開きオレは入城する。

 

「ん? おい」

 

「はっ! なんでしょうか?」

 

 オレは明らかに城の兵士が少ないことに疑問を抱き近くの兵に聞くと、

 

「はい、木之本に連れていかれましたよ?」

 

「木之本に? 誰が?」

 

「四翼と久政さまです」

 

「はぁ!? 誰が親父を竹生島から呼び戻した!?」

 

「え、長政様じゃないんですか? 長政様の命で四翼が・・・」

 

「ま、まさか、あいつら・・・」

 

 その言葉を聞いてオレは嫌な予感がした。この時期姉上は朝倉が若狭を攻めたことを皮切りに朝倉に宣戦布告をし一乗谷に向かった。そして父久政は木之本へ。これから予測されること、

 

「金ヶ崎・・・」

 

「いかがなされた御館様?」

 

「直経、すぐに木之本へ行け」

 

「・・・どうしてですか?」

 

「いいから行け! そこに親父の陣がある。そこから情報を持ってこれるだけ持って帰って来い!」

 

「・・・ぎょ、御意」

 

 そういって直経はすぐに向かった。

 

「オレたちはこのまま小谷に残る。場合によっては父と合流する。武装はこのままだ。良いな!」

 

『応!』

 

 オレは一室に籠もり直経の帰りを待った。今宵は冷えた風が出ていたので市は自室で早めに眠らせた。だが、恐らく起きているのだろう。

 

「・・・長政様」

 

「どうだった」

 

「・・・久政様、義景と共に信長公を挟撃するものかと」

 

「・・・・」

 

 オレは苦い顔をしていただろう。歴史が動いた。それも最悪の形で。

 

「・・・今なら間に合います! 止めに――」

 

「もう遅い。親父はおそらく動いただろう。場所はここからだと金ヶ崎。あそこの地形は大軍で行動するにはきつい」

 

「・・・で、ですか!」

 

「浅井の不始末はオレの不始末。当主であるオレが甘かったからだ。・・・!」

 

 オレはふと外を見るとそこに一つの影があった。おそらく市だろう。

 

「やむ無しか」

 

 そういってオレは二つの書状をかきとめ、それを持って市の部屋に行く。

 

「市、いるか?」

 

「!」

 

 市は後ろに何かを隠しているようだった。おそらく袋の両端を縛った小豆袋だろう。おそらくそれを陣中見舞いに送り挟み撃ちの危機を伝えるつもりだろう。

 

「市、これを姉上の元へ届けてくれ」

 

「これは?」

 

「浅井と朝倉が姉上を挟撃しようとしていることを書き留めた書状と、そこからの退避路だ」

 

「!?」

 

「オレは浅井家の不始末にけりをつける。おそらく二度と織田と肩を並べることはできんだろう。最悪どちらかが負ける」

 

「そんな! もう一度話し合えば!」

 

 そんなことも考えた。だがオレは首を横に振った。

 

「無理だ。オレがそうでなくても浅井家と言う家は織田に対し刃を向けた。もうその時点でオレがとる道は決められている」

 

「そんな・・・・」

 

「市、最初で最後の命令だ。お前は織田に戻れ」

 

「い、いやです!」

 

「市!」

 

「!」

 

 思わず大声を出してしまったがここで引いたらいけない。例え嫌われてもいい、たとえもう二度度会いたくないと思われてもいい。お前は生きてくれ。

 

「お前はもう浅井家の人間ではない! お前は織田の人間だ! オレの敵の人間だ! ならお前の帰る家はここではない!」

 

「そんな・・・」

 

「お前との婚儀は破談とする! 早々にここから―――」

 

「そ、それでも嫌です!」

 

「!?」

 

 どうしてそんなことを言う。オレは嫌われる言葉を言ったのだ。嫌うはずだ。嫌ってくれ。そしてそんな目で見ないでくれ。

 

 

SIDE市

 

 

 長政様にひどいことを言われた。浅井の人間じゃない。敵の人間だ。

 

 でも、その目からはそんなことを思わせる色が出ていない。

 

 

 むしろ苦しそうだ。

 

 

 悲しそうだ。

 

 

 なんでこんなにも優しい人がこんなことをしなければならないのだろう。

 

「お前との婚儀は破談とする! 早々にここから―――」

 

 イヤ! そんなのぜったいに嫌!

 

「そ、それでも嫌です!」

 

 長政様と離れ離れになるなんて嫌! 絶対に離れたくない!

 

「私は浅井の人間です! 例え長政様がそう言おうとも私はあなたの妻です」

 

「・・・・まだ、そんなこといってくれるか・・・・」

 

 長政様のほほから涙がこぼれる。あぁ、この人もやはり辛いんだ。なんでこんなことになったのだろう。

 

「頼む、頼むからお前だけでも生き延びてくれ」

 

 長政様が抱きしめてくれる。あぁ、あったかい。この人のぬくもりだ。

 

「・・・許せ。市」

 

「え・・・」

 

 すると私のお腹に衝撃が走る。

 

「な・・・が・・・まさ・・・・・さ・・・」

 

 そこで私の意識が飛んだ。

 

 

END

 

 

「済まない市。清綱、直経、綱親、清貞」

 

『ここに』

 

「市を織田方まで引き渡しに行け。そしてお前らは二度とここに戻ってくるな」

 

「え・・・」

 

「・・・いまなんと?」

 

「もう一度言ってやろう。二度とここに戻るな。これは命令だ」

 

「御館様! 我らも共に!」

 

「ならぬ!」

 

 オレも辛いんだ。だからさっさと行ってくれ。嫌ってくれ。

 

「これは命令だ。お前らは織田のために忠義を尽くせ!」

 

「あたしは主の家臣です! 他の者になんて!」

 

「私もそうです!」

 

 オレは拳に力が入る。それは手のひらから血が出るほど力が入ってしまうほどに。

 

「誰かいるか!」

 

「こ、ここに」

 

 そこにいたのは阿閉だった。

 

「この者たちは謀反人の疑いがある。そこの四人と市をこの北近江から追放しろ!」

 

「え・・・・」

 

「これは命令だ! さもなくば!」

 

「ぎょ、御意! おい、こいつらを連れ出せ!」

 

「お、御館様!?」

 

「・・・・すまない」

 

 オレは一言そう言った。

 

 その後兵士たちに連れられ五人はその場から去った。

 

「・・・ははっは。オレも悪人になったものだ。それに、オレは」

 

 

 

 

 

 

 

 

――歴史を変えれなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 この先に待つことは予期している。だがせめてあいつらだけでも生き残ってほしい。

 

 乾いた声しか出なかった。だが、その場にいた人の気配に感じ、

 

「政元達も城から出て行け。罪を背負うのはオレだけでいい」

 

「いいえ。私も浅井の人間。兄上と共にします」

 

「政元さまがそういう以上ボクも」

 

「せやな。ウチもこれ以上の主君はもう二度度現れんと思うし」

 

「我も付き合うぞ。共にあの世にも行ってやる」

 

「ありがとう。そして済まない」

 

 その後オレは城の正門に来ていた。

 

「これより我らは我が一族の恥をはらしに行く!」

 

 すると兵士たちは「何だ」という顔をしてた。

 

「我が父久政と四翼が朝倉と共に我が姉信長を討ちに行った!」

 

 兵士たちはその言葉にざわめき始めた。

 

「我らは四翼と父を討ったのち一族の恥を払しょくするために朝倉と共に織田を討つ!」

 

『え・・・・』

 

「これはオレたちにとって不義の戦い。オレは織田と朝倉に不義を通すことになる。そして両方に浅井の義を見せつける! 皆、オレについてきてくれるか?」

 

 すると、やはり戸惑いもあるだろう。困惑もするだろう。軽蔑する者もいるだろう。オレは罵倒されることを覚悟した。だが、

 

「オレたちは長政様と共にある!」

 

「長政様のためにならこの命なんぼのもんじゃ!」

 

「あ、ありがとう!」

 

 そういってオレは頭を下げる。そして、

 

「全軍進撃する!」

 

『応!』

 

 

SIDE(元)四天王

 

 

 長政に追放されてしまった四天王は小谷城の裏門から城外に出された。

 

「なぜ、なぜなんですか、主?」

 

「・・・長政様」

 

 清貞と直経はなぜ長政がこのような行為に及んだのかが分からなかった。

 

「綱親よ。お前は何かわかるか?」

 

「おそらくこれが原因かと」

 

 そういって取り出したのは長政が市に渡した書状だった。清綱も綱親からその書状を見ると、

 

「なるほどな。御館様。やはりあなたはお優しい。自分の命よりも我らの命を大切にするなど普通なら考えれまい。だが、それがあなた様のよさでしたな」

 

「え? どういうことですか?」

 

「これを見ろ」

 

 そういって二人にも見せた。

 

「・・・長政様、あなたと言う人は」

 

「ど、どうします?」

 

「なら、お市様を信長公の元へ連れて行くまで」

 

 

END

 

 

 

SIDE信長

 

 

 許せ長政。これも我が天下布武のため。

 

 私は一乗谷にいる朝倉に向け進軍を続けていた。そして今は日が暮れてきたため行軍をやめ野営の準備をしている。

 

「お、御館様」

 

「なんだ光秀?」

 

「は、はい。信長様にお会いしたという方が」

 

「? 誰だ」

 

 すると、天幕に入って来たのは長政の家臣四人と市だった。

 

「なんだ、お前ら。朝倉の進撃をやめよと長政が送って来たのか?」

 

「いいえ、長政様がこれを姉さんに」

 

 そういって手渡したのは二枚の書状。しかしそれを受け取ると市はボロボロと涙を流していた。それを見た私は驚いた。

 

「まさか!?」

 

 私は市の様子を見て嫌の予感が走った。奪うようにその書状を受け取り読み始めるとやはりその予感は当たった。外れてほしかった。心から本当に外れてくれと願ったのはいつ以来だろうか。

 

「・・・長政」

 

 私はあまりにも信じがたいことに驚愕した。

 

「御館様?」

 

「市、これは本当か?」

 

「はい。これを姉さまにお渡ししようとしたとき長政様が来てこの書状をと」

 

 そやってみせるのは両端をしばった小豆袋。つまり挟撃の意味だ。

 

「なぜだ、なぜだ長政!?」

 

 私はあまりのことに混乱した。

 

「こ、これは・・・」

 

「!?」

 

 光秀や秀吉もあまりのことに衝撃を受けていた。

 

 その内容は。

 

 

 

 

 

 

 

『姉上へ

 此度の不義と姉上に牙をむけることお許しください。此度の不始末は当主であるオレが家を監視できていなかったことにあります。この罪オレがすべて背負います。故に市と浅井家の家臣においてはなにとぞお許しください。あなたと暮らした日々楽しかったです。

 

 

 

追伸 もう一枚の方にその場からの撤退路をかいてあります。そこにいる浅井家はオレが信用できるものです。これを見せ京へお戻りください。

                                    長政』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すると、兵士が一人来て、

 

「御報告! 後ろに三つ盛亀甲の紋! 浅井家謀反!」

 

 嘘じゃなかった。嘘であってほしかった。長政が、長政が!

 

「・・・全軍京へ撤退! 浅井と朝倉の挟撃がくる! 急げ!!」

 

 長政、なぜだ、なぜなんだ!? 私が朝倉を攻めたからか!? 私が天下に名をはせようとしたからか!? なにがいけなかったんだ? 教えてくれ、長政!

 

 私はその場にいるはずもない長政に向け何度も何度も問いただした。だが当然帰ってくる答えはない。

 

 

 

 

――次は敵

 

 

 

 

 その言葉だけが重くのしかかった。今までそんなこと気にしたこともなかった。向かってくる敵は蹴散らすだけ。だが、今これほどこの言葉が重くのしかかったことはなかった。

 

 

END

 

 

「姉上は撤退したか?」

 

「はい。殿は秀吉どのみたいです」

 

「そうか」

 

 オレはその場に縛った五人の姿を見た。一人は父久政、そして残りの四人は四翼だ。

 

「なぜ勝手な行動を取った?」

 

「我らが浅井家の盟友を放っておけるか!?」

 

「織田など伝統ある朝倉の前では露程でもないのだ!」

 

 あまりにも惰弱すぎる。誰が見てももう朝倉は滅びるしかない。織田は地位と名声をほしいままにし今なお駆け上がる。それこそ龍のごとく。だが、朝倉義景は酒におぼれ金におぼれた。そんなものに天下など来ない。ましてや義昭様をかついで京へ上洛するチャンスもあったにもかかわらずそれを見逃した。そのようなものにこの世は任せれない。

 

「だがお前らは当主であるオレの命令に背いた。これがどういうことか分かるな?」

 

「・・・・どういう意味じゃ」

 

 そうか父は知らないのか。

 

「オレは朝倉と織田の戦いには不参加、中立の立場を取った。だが、それをお前らが破った。こうなった以上浅井は嫌でも織田と戦わねばならない」

 

 そういうと、オレは刀を抜く。

 

「ならば戦神に捧げものを捧げねばらならない」

 

「ま、まさか!?」

 

「や、やめ―――」

 

 そしてそこに大きな血だまりができた。

 

「我らは織田と戦う! だが当初の予定通りに進める。いいな!」

 

『応!』

 




さてはて、金ヶ崎撤退戦の次はと聞かれると・・・・・・みなさんご存知ですよね?
なるべく早く上げれるといいなと思っていますが、まぁ頑張ってみます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。