無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「独りでいる事は、幸か不幸か?」
「誰かといる事は、幸か不幸か?」


八十二章 チームってのはそう言うものだろう?

SIDE 佐倉杏子

 

 公園の片隅で。

 ゆまの治療魔法で、一命を取り留めたあたしは。

 以前、一度だけ出逢った魔人(しょうねん)と、予想外の再会を果たしていた。

 

「なんで、こんな所にいるんだよ?」

 

 こいつは今、マミと一緒に見滝原にいる筈だ。

 見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)の噂は、あたしも耳にしている。

 

「ちょいと野暮用でね。

 巴先輩が起きる前に戻らないと、怒られるのよ」

 

 白い棒を咥えながら。飄々とした態度で。

 

「戻る途中で、結界っぽいような雰囲気を感じ取った気がしない事もなかったんで寄ってみたら、佐倉先輩が居たって訳です」

「……曖昧すぎるだろ、おい……」

 

 そうだ。こいつはそう言う奴だった。

 たった一度、共闘しただけの相手。

 なのに、色々と会話した相手。

 

「……知り合い?」

 

 あたしの服を掴み、ゆまが聞いてくる。

 

「婚約者です」

「呼吸するように嘘を付くんじゃねぇよ!?」

「キョーコ、結婚するの!?」

「ゆまも信じるなっ!」

 

 そうだよ。こいつはそう言う奴だったよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 想定外の再会。まあ、佐倉先輩から見滝原に来る事はないと()()()()()()から、当然と言えば当然。

 まあ、出逢っても出逢わなくても、オレには知ったこっちゃない訳ですがね。

 

「さて、オレは見滝原に戻るけど、先輩はどうする?」

 

 いつかのように、オレは質問する。

 まあ、答えは以前と変わらないだろう。

 GS(グリーフシード)を“取り分と言う側”の先輩が、見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)に合流するとは考えにくい。

 

 だが。

 

「……」

 

 顎に手を当てて、佐倉先輩は考え込んだ。

 想定していなかった反応に、一瞬面食らう。

 

「何を悩んでるんだい?」

 

 オレの言葉に、佐倉先輩はポケットからキャンディを取り出して、口に放り込む。

 くっついていた少女――――ゆまという名前らしい――――も、佐倉先輩から同じキャンディを貰っている。

 

「仮に、仮にだ。

 着いて行くと言ったら、お前はどうする?」

 

 ……本気で想定外なんですが。

 オレは、電子タバコから白い煙を吸い込み、ゆっくりと深呼吸するように吐き出す。

 そのまま<部位倉庫(Parts Pocket)>にタバコをしまうと、眼鏡を押し上げながら聞く。

 

「どういう心境の変化?

 見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)の噂は耳にしていると思うが」

「質問の答えになってないぞ」

「……ふむ」

 

 さて、困ったぞ。

 元々“見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)”は“利用されやすい性格の巴先輩の為”に、流布したようなもの。

 だが、少なくとも。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 オレは、そう考えている。

 そうなると……。

 

「それは、オレたちのチームに。

 “見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)”の一員になりたい、と解釈しても?」

 

 オレの質問に、佐倉先輩は無言を貫く。

 どうやら先に、オレの答えを聞かないと返答する気は無いらしい。

 

 変身せずに、ある程度使えるようになった<電気操作(Electrical Communication)>で、オレは思考をフル回転させる。

 

 オレと別れてから今日までに、佐倉先輩に“ナニカ”があった。そう考えるのが自然だ。

 では、何があった? 自分の考えを変えるナニカとは?

 理解不能。情報不足。当然だ。オレは別に佐倉先輩の事を調べていた訳じゃない。

 ならば何故? 以前の彼女と今の彼女で何が違う?

 違いはある。そうだ、違いなら既に目にしている。

 

 

 

 

 ゆまという名前らしい、少女。

 

 

 

 

 そもそも“何故、この二人は一緒にいる?”

 

 偶然、魔女に襲われた。それを偶然助けた。そう考えるのが自然?

 だがそれだけか? 佐倉先輩にくっついている以上、ゆまはある程度懐いている。そうなる程度には一緒にいる?

 新しい魔法少女? だが佐倉先輩が“取り分”を減らすか? それを理由に見滝原行きを拒んだはずだぞ?

 

「その質問に答える前に、一つ答えてくれ。

 そこの少女も“同業者”か?」

「……ああ」

 

 同業者。素質者。契約者。魔法少女。

 何故、一緒にいる? 佐倉先輩が一緒にいる理由?

 過程を仮定する事は可能。だがありえるのか? なぜありえないと言い切れない?

 

 未変身状態では限界がある。思考を放棄? 否、それは愚策。

 ならば……。

 

「最終的な結論は、巴先輩次第かねぇ?

 独断で決める訳にはいかない。

 チームってのはそう言うものだろう?」

 

 やることは、いつだって決まってる。

 オレは、オレの為に、オレを生きる。

 

「まあ、個人的な意見を言うなら」

 

 その為に。オレは言葉を紡ごう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐倉先輩“だけ”なら賛成だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE キュゥべえ

 

「ゆまとの契約には成功したけど……。

 本当に、なんで君がここにいるのかな?」

 

 公園にある木のひとつ。

 その枝の上で、僕は状況を見守っていた。

 

「でも、僕は君達に介入する気はない。

 なぜか、杏子はゆまを魔法少女にはしたくなかったみたいだし。

 いつものように、琢磨と会話できそうもない」

 

 しかし、織莉子の言った通り。

 ゆまも素質者だった。契約も完了した。

 でも。

 

「魔法少女は、多ければ良いと言うものじゃない。

 需要と供給は、バランス良くないと。

 そうなると、君にも警戒が必要になるんだよ?

 美国織莉子」

 

 GS(グリーフシード)に限りがある以上、魔法少女が魔法少女を増やすメリットはない。

 考えられるとしたら“GS(グリーフシード)を入手する為の生贄”といった所か。

 だがそうなると、織莉子は“契約直後に全てを()った”事になる。

 魔法特性は願いに左右され、その能力の高さは願いの強さで決定される。

 その事に対し、僕たちは“一切の介入が出来ない”のだ。

 

「だからこそ、僕らは言うのさ。

 “魔法少女は条理を覆す存在”だと」

 

 さて、眼下にいる“三体”は。

 どういう行動に出るのだろう?

 

「見届けさせてもらうよ。

 それもまた、僕の役割だからね」




次回予告

想いは、形となり

願いは、力となり

奇跡が、生となる

そんな存在であったとしても

やっぱり、その子は



人であり、子供である






八十三章 役立たず

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