無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「好きな食べ物は、何があるのかしら?」
「僕は、活動する為の熱量が確保出来れば、種類は問わないよ」
「基本的に無収入なんで、食事に拘りは無いよ?
 安くて動ければそれで良し」
「……料理のし甲斐が無いわよね、貴方達……」
「「わけがわからないよ」」
「綺麗にハモらないで!!」


七十八章 七転八倒

SIDE 巴マミ

 

「しかし、意外だったね」

 

 無表情に首を傾げるキュゥべえに、私も同じように首を傾げる。

 群雲君は、ベランダに出て電子タバコを咥えている。

 

「むぅ……うまくいかない……。

 で、何が意外だって?」

「君達が、一緒にいる事がさ。

 マミは、珍しいタイプの魔法少女だ」

「……っ」

 

 珍しい。そう言われるのは何度目だろうか?

 自分だけが生き残った、あの事故で。自分だけの命を繋いだ、私の願い。

 だからこそ生き残り、魔法少女となった私が戦う事で、一人でも多く、命を繋ぎとめられるのなら。

 それが、私の戦う理由。

 

「お、うまくいった」

 

 口から煙を吐いた後、群雲君は髪を風に煽られながら、こちらを見据えて言う。

 

「そしてオレは、自分至上主義の魔人。

 巴先輩はともかく、オレが誰かと組む事が稀だって言いたいのか」

「それもある。

 理念で言うなら、マミと琢磨は“真逆”なんだ。

 僕はてっきり“共闘”ではなく“分担”だと考えたんだけどね」

「なるほど、一理ある。

 巴先輩が“魔女になるまで使い魔を放置”はしないだろうし。

 オレが“魔女になる前の使い魔を率先して退治”はしないだろうと」

「その通りさ。

 実際、琢磨はいくつの“使い魔だけの結界”を放置したんだい?」

「100から先は、覚えてない」

 

 その言葉に、私は目を見開く。

 この子は本当に……。

 

「だがナマモノ。

 お前は重要な事を見逃している」

「なんだい?」

()()()()()()()()()()()()さ。

 いいか、ナマモノ?

 大前提として“魔女を退治出来なければ、すべてが無意味”なんだ」

 

 あくまでも真剣な表情で、群雲君は言葉を紡ぐ。

 

「最も、オレの為にならない事。

 それは“対魔法少女”なんだ。

 互いに魔女を相手にし、勝利する為の力がある。

 オレ達はそういう存在だ。

 よっぽどの理由が無い限り、オレにはそんな存在を“敵に回すメリット”が無い。

 まあ、共闘相手が他の魔法少女と戦うってんなら、着いてくけど」

「どうしてだい?」

「共闘相手ってのは、決して“足手まとい”じゃないからさ。

 魔人や魔法少女は、完璧超人なんかじゃない。

 どうしたって、苦手なものは苦手だし、出来ない事は出来ない。

 理想は、互いの弱点を補いつつ、互いの特性を伸ばす事だが、まあそれは別の話。

 今の仲間を無視して、見ず知らずの敵対者に着くメリットなんて無いだろ?」

「相手が優れた実力者なら、どうするんだい?」

「雑魚でも格上でも一緒さ。

 自分の為の共闘なのに、それを自分から放棄しちゃ七転八倒だ」

「……それ、本末転倒の間違いじゃないかしら?」

「あれぇ!?」

 

 最後の最後で、変なオチをつけてくれたけれど。

 改めて、この子の“異常性”を目の当たりにした気分ね。

 電子タバコを咥え、その口の端を持ち上げる少年は。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何がこの子を、そこまで駆り立てるのか。

 何がこの子を、そこまで追い詰めたのか。

 

「さて、本題に入ろう」

 

 電子タバコをポケットに入れ、ベランダから部屋に戻り、私の前に座る群雲君。

 

「オレは、オレの為に、オレを生きる。

 このスタイルは変わらないし、変える気も無い。

 それでも――――――」

 

 眼鏡を外し、その瞳を私に向けて。

 

「オレは、見滝原にいてもいいかい?」

 

 数時間前に聞いた問い掛け。

 群雲君にとって、私は共闘するに値する存在だと言う事。

 

 ……確かに、この子の実力は高いと思う。

 様々な武器を用いた、距離を選ばない立ち回り。

 策を練る頭の回転の速さに、それを実行できる能力。

 仮に、敵に回したとして、勝てるかどうかと問われれば、即座に頷く事は出来ない。

 

 キュゥべえが言う様に、私と群雲君は“真逆”だ。

 見滝原で、人々を護る為に戦う私と、場所に拘らずに、自分の為に動く群雲君。

 

 

 

 

 

 

 でも。ならば。

 どうして群雲君は、私と一緒に“使い魔を倒して進んだ”のだろう?

 どうして群雲君は“いてもいいか?”なんて聞き方をするのだろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔女だけじゃなく、使い魔も極力倒す事。

 一人で、勝手な行動を取らない事。

 黙って、いなくならない事。

 後、電子タバコは部屋の中では使用禁止」

 

 突然の私の言葉に、群雲君は驚いている。

 

「それでも、貴方はここにいたい?」

 

 その言葉を聞いた群雲君は。

 

「当然」

 

 口の端を持ち上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、暮らす場所は決めてあるの?」

「目立たない所にテントを張ろうかと」

「ここで暮らす気は無い?

 私も一人暮らしだし、問題ないと思うけれど」

「いや、さすがにそれはどうかと。

 オレの事、思いっきり男として見てないだろ、先輩?

 まあ、オレは子供だし、それを自覚してるけれども」

「あら、私を襲う気でもあるの?」

「共闘相手襲ってどうするのさ?」

「なら、問題ないわね。

 後、私が学校に行っている間は、掃除や洗濯もお願いしようかしら?」

「完全に主夫扱いっ!?

 てか、オレが下着とか洗っていいのか?」

「……やっぱり、掃除だけでいいわ」

「そうしてくれ、マジで。

 じゃないと、オレの神経が羞恥で擦り切れる」

「琢磨は、その程度で駄目になるとは思えないけどね」

「バッカ、ナマモノ、お前。

 これで巴先輩がTバック趣味だったら、オレが卒倒するわ」

「ちっ、違うわよっ!?

 そんな事、誰も、一言も言ってないでしょうッ!!」

「「わけがわからないよ」」

「仲良すぎでしょ、貴方達!?」




次回予告

インキュベーター それは、魔法少女を産み出すモノ

魔法少女 それは、魔女と戦うモノ

魔人 それは、魔女と戦うモノ









インキュベーターが居なければ、魔法少女も魔人も存在しなかった

故に、その能力はインキュベーターの方が上




しかし、別の視点で観るならば……?















魔女 それは――――――――――

七十九章 反転同一関係

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