無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「群雲君は、学校に行っていたら」
「今は小五になるかな」
「行く気はないの?」
「ないよ」


七十二章 オレと巴先輩の相性

SIDE 巴マミ

 

「……よりにもよって、この結界かよ」

 

 両手に銃を持つ群雲君が、うんざりしたように呟いた。

 

「知ってるの?」

「魔女本体とは、戦ったことは無いけど、ね」

 

 落書きで構成された結界。

 それが、私の印象だったけど。

 

「……初陣の相手が、この結界の使い魔でした。

 ぶっちゃけ、死ぬかと思ったとです……」

 

 言いながら、群雲君が顎で先を示す。

 つられて見た先には、一体の使い魔。

 飛行機の体をした、お下げの女の子。

 そんな、使い魔だった。

 

 使い魔が、落書きで書かれたようなミサイルをこちらに発射すると同時に。

 私と群雲君は、手に持つ銃で、ミサイルを打ち落とす為に引き金を引く。

 

 ミサイルの数は3つ。私の銃は1つ。群雲君の銃は2つ。放たれた弾は3発。

 

 打ち落とせたミサイルは………………2つ。

 

「っと!?」

 

 慌てて、群雲君が再び引き金を引き、最後のミサイルを打ち落とした。

 

「ひょっとして、同じミサイルを狙ってた?」

「らしいね」

 

 どうやら、私の狙った物と、群雲君の狙った物が同じであったため、一発打ち漏らしたみたい。

 

「まあ、いきなり阿吽の呼吸とか無理だよな」

「当然ね。

 私たちはまだ、出逢って数時間程度だもの」

 

 群雲君の言葉に、私は肯定しながらマスケット銃を周りに編み出して設置する。

 群雲君は、僅かにのけぞりながら、左腕を伸ばし、右腕を曲げて、それでも銃口を前に向ける。

 

「独特の構えね」

「見よう見まね」

「……誰の?」

 

 そんな、他愛ない会話をしながら。

 私の――――――――――――私たちの初陣が、幕を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 魔女を狩るもの。

 魔法少女と魔人。

 そう簡単に負けるほど、この二人は弱くはないが。

 そう簡単に勝てるほど、魔女というのは優しくはない。

 加えて、二人はほぼ初対面なので……。

 

「ちょっ、あぶっ、あぶなっ!?」

「斜線に入らないで!

 なんで、いきなりナイフに武器が変わってるのよ!?」

「いや、そっちが遠距離武器なんで、オレは近接の方がいいかと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   \あ/       \アーッ!/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優れた連携が出来るはずもない。

 マミは、マスケット銃による遠距離攻撃を基本とする。

 対する群雲は、複数の武器を所持し、使い分ける戦法を執っているのだが。

 

 なによりも、この二人は“独りで戦う事に慣れてしまっている”のである。

 

「ちょっ、邪魔っ、マスケット邪魔だってッ!?」

「し、仕方がないでしょ!

 手数を補う為なんだもの!!」

「せっかく銃に持ち替えたのに、邪魔で狙いにくいって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   \ぶっ/ \顔面強打したわね/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 巴マミ

 

 た、戦いにくい……。

 群雲君と二人、魔女結界を進んだ私の感想。

 

 自分の為に、自分の為だけに。

 そう言っていた群雲君は、言葉の通りに戦っていた。

 ナイフで特攻したかと思えば、銃に持ち替えて立ち回り。

 日本刀で逆手の居合い抜きをしたと思えば、鞘で使い魔を切り裂いてみたり。

 銃も、ハンドガンタイプからリボルバー、水平二連式のショットガン。

 そうかと思えば、無造作に蹴り込む。

 動きを合わせる事も出来なければ、動きを合わせようともしてくれない。

 

「やっぱ、いきなり合わせるとか、無理があるよなぁ」

 

 私の横で、リボルバーに弾を込めながら、群雲君が呟いた。

 一応、合わせようとはしてくれていたのね。

 ……まったく合わなかったけど。

 

「戦闘スタイルの問題なのか……。

 オレと巴先輩の相性によるものなのか……。

 魔法銃と実兵器によるもの……な、訳はないよなぁ」

 

 ……うん、ちょっと待って。

 

「それ……本物?」

「ん? もちろん。

 オレ、外に出す系の魔法ってからっきしなんだよね」

 

 外に出す……射出系や具現系の事かしら?

 いえ、それ以前に。

 

「どこから持って来たのよ?」

「それなりに有名だった、ヤの字の組長宅。

 ついでに、崩壊させてきた」

「なにしてるのっ!?」

「評判最悪だったし……。

 オレの“力”が、一般人に通用するのかも確かめたかったし……。

 銃だけの予定だったんだけど、日本刀があったんでついでにパクr……お借りしてみた。

 返す気なんて、あるわけないが」

 

 ……こ、この子は……。

 

「さらに言うなら<オレだけの世界(Look at Me)>で進入したのはいいけど、時間停止中だと他の魔法が使えないもんでね。

 必然だった様な気もする」

 

 ……。

 

「……もっと、考えて行動しなさいよ」

「当時のオレに言ってくれ、無理だけど。

 それに、流石に今のオレは……。

 ……。

 大して変わらなくね?」

 

 聞かれても困るわ、色々な意味で。

 

「さて、と」

 

 リボルバーの弾込めを終えて、群雲君がそれをクルクル回しながら。

 

「先に進もうか、巴先輩」

 

 変わらず、からっぽの笑顔を向けてきた。

 ……前途多難だわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガシャン! \あ/  \落とすなら、回さないの!/




次回予告

戦い、倒し、進む

それは、至極当然の流れ

されど、確かに違和を感じさせる




魔人を表す、最適の言葉


七十三章 矛盾

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