無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「所詮、自分の見た世界こそが全て。
 だから、ただ。
 子供らしく、子供のように。
 遊ぶだけさ」


六十七章 また

 ほむらは涙を拭いながら立ち上がり、群雲へ銃口を向ける。

 

「……必要ない」

 

 言いながら、左手を差し出す群雲。

 

「でも……」

「もうすでに、暁美先輩は背負ってる物がある……。

 これ以上……背負わせる気は無い……。

 ケリは……自分で着ける…………から」

 

 僅かに躊躇うも、ほむらはゆっくりとリボルバーを群雲に返す。

 受け取ったリボルバーを左手だけで操作しながら、群雲は静かに告げる。

 

「状況が絶望に向かった切っ掛けは……美樹先輩の魔女化から……なのかも知れないが。

 最後に希望を繋いだのが……美樹先輩のGS(グリーフシード)なのだから……。

 中々、素敵な演出だと……思わないか…………?」

 

 その言葉に、ほむらは驚愕の表情を浮かべながら、まどかを見る。

 右手にあるのは、砕け散ったまどかの魂。

 左手にあるのは、ほむらのSG(ソウルジェム)を浄化した、魔女の卵。

 

「ナマモノにも渡さず……大切にとっておくつもり……だったんだろうな…………。

 唯一残った……美樹先輩の“形見”として……」

 

 抜け殻が残ったマミと杏子とは違い、さやかの抜け殻は魔女結界と共に消えた。

 故に、さやかは行方不明のまま……もう、誰にも知られる事は無い。

 だからまどかは、残されたGS(グリーフシード)を、最後まで使わなかった。

 元々、使うつもりもなかったのだろう。

 

 結果的にそれが、最後の最後で希望を繋ぎとめたのだ。

 

 

 

「巴先輩の事……オレ達は責められないな……。

 結局……彼女がしようとした事を……こうして決行したんだから」

 

 巴マミは、皆を殺そうとした。

 魔法少女が魔女になる前に。

 仲間達が絶望を振り撒く前に。

 自分で背負い、自分で終わらせようとした。

 

 結局、まどかもまた、絶望を振り撒く前に終わる事を望み。

 それを、実行した。

 

 

 

 

「だからこそ……暁美先輩は、絶望するな」

 

 ようやく、リボルバーから空薬莢を取り出せた群雲は、それをほむらに投げ渡す。

 それは、()()()()()()()()()弾丸の物。

 

「もし、暁美先輩が絶望し、終わるような事があれば。

 鹿()()()()()()()()()()()()()()()のだから」

 

 その言葉を噛み締めながら。

 ほむらは、受け取った空薬莢をしっかりと握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ、行くね」

 

 盾に手を掛け、ほむらは告げる。

 

「……おー……」

 

 気の抜けた返事……と言うよりも、喋るのが億劫な感じで、群雲は返事をする。

 下手に肉体の修理に魔力を使えば、群雲のSG(ソウルジェム)が、穢れきってしまうかもしれない。

 だが、今の体では群雲はろくに動けない。

 

「ごめんなさい……また、貴方を置いていってしまう」

 

 嫌な縁である。

 前回も、今回も。

 最後に残ったのは、暁美ほむらと群雲琢磨。

 過去に戻ったのは、ほむら。

 その場に残ったのは、群雲。

 

「過去に戻り……未来が変えられるのなら……置いてかれても、置いてかれなくても、一緒だろ……?」

 

 そのあたりを割り切れるのが、群雲琢磨。

 

「だから、暁美先輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「また、な」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 暁美ほむら

 

 病室のベッドで目を覚ました私は、素早く身を起こし、洗面台に向かう。

 

 もう、まどかには戦わせない。

 彼女を、魔法少女にはさせない。

 

 洗面台の鏡の前に立ち、素早く眼鏡を外す。

 

 話をしても、信じては貰えなかった。

 信じてくれたのは、群雲琢磨ただ一人。

 あの子がいなければ、きっとまどかも信じてはくれなかった。

 ……誰かが、目の前で魔女化しないかぎりは……。

 

 SG(ソウルジェム)をかざし、視力を魔力で回復させる。

 

 魔法少女の真実は、魔法少女にとっては毒だ。

 だから私はもう、誰にも頼らず、全ての魔女を一人で殲滅してみせる。

 ……当面、最大の目標は“ワルプルギスの夜”

 あの夜を越えられなければ、私の旅は終わらない。

 私の未来は、始まらない。

 

 結んであった髪を解き、私はその場で変身する。

 

 まどかとの約束を叶える為、彼女を助ける為ならば。

 私は何度だって、この1ヵ月を繰り返してみせる。

 必ず、彼女を救う未来へ、辿り着いてみせる。

 

 盾の中から、一つの空薬莢を取り出し、それを握りしめる。

 

 その為なら私は、どれだけの間、迷路の中で迷おうとも。

 決して、絶望したりしない。

 決して、希望を捨てたりしない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分が、何回繰り返したのかは覚えていない。

 まどかを救えなかった世界に、用など無いのだから。

 それを数える必要も無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 唯一つ、気がかりなのは……。

 あの“約束の世界”以降で、私は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうせ、家族に置いて逝かれた身だ。

 今更、置いていかれる事に、文句を言う気はないさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

           群雲琢磨と、出逢っていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第二幕 これにて閉幕

そして、舞台は一新され

始まるのは、第三幕



それは、繰り返す少女と

それは、未来を変えようとする少女と

それは、孤独から抜け出した少女と

それは、拠り所を見つけた少女と

それは、繋がりを守る少女と

それは、有限を無限に捧げる少女と








それは、中心に添えられた少女と







それは、屍となった少年の










第三の悲劇









第三幕 共愛と狂愛のthird night

六十八章 無いだろう

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