無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「どうあろうと、どうなろうと。
 それを自分だと受け入れられないなら。
 キミ達は、契約するべきじゃないよね」


六十二章 魔法少女の失態

 耐えていた。

 魔女は、3人の魔法少女の攻撃に耐えきった。

 かなり、ギリギリであっただろうが、耐え抜いた。

 

 魔法少女の失態。

 もし、群雲が万全でなくとも、魔女に攻撃を加えていれば。

 倒しきれていたのかもしれない事。

 

 魔女を倒したかどうかの確認を怠った事。

 GS(グリーフシード)が無い事、魔女結界が健在な事。

 気付ける要素は、確かにあったのだ。

 

 そして、芸術家の魔女の姿とこれまでの戦いから。

 “移動しない”と、思い込んでいた事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結果、上条恭介が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやああああああああああああああ!!!!!」

 

 声を上げたのは志筑仁美。

 

「……………………え」

 

 友人と想い人からの拒絶から、死。

 状況を理解できず、否、理解する事を拒み、呆然とするのは美樹さやか。

 

「いい加減、うざってぇ!!」

 

 愛用の槍を構え、交戦状態に入るのは、佐倉杏子。

 

「美樹さん、速く魔女から離れて!!」

 

 チームメイトに、必死に声を掛けるのは、巴マミ。

 

(声を出すより先に<オレだけの世界(Look at Me)>を使うべきだったか?)

 

 ここに至っても尚、冷静に状況を見るのは群雲琢磨。

 

 

 

 

 

「返して!

 上条君を帰してぇ!!」

 

 半狂乱になりながら、近くに居たさやかに掴みかかる仁美。

 しかし、茫然自失状態のさやかは、何の反応も示さない。

 

 だが。

 ここに至って尚。

 魔法少女の失態は続く。

 

 何故なら。

 次に動いたのは。

 

 

 

 

 

 

 魔女だったからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身を中心とした衝撃波。

 唯一、先程の言葉通りに距離を置いていた群雲を除いた全員が、それをまともに受けてしまう。

 

 美樹さやかが弾き飛ばされ。

 佐倉杏子が弾き飛ばされ。

 巴マミが弾き飛ばされ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 志筑仁美が、弾けとんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女は、肉体を強化されている。

 変身中はもとより、通常状態でもそれは適応される。

 魔法少女にとって肉体とは“道具”であり“魂の器ですらない”のだ。

 変身とは“魂が運用する魔力を効率良く使う為、道具()を改良した”結果なのである。

 かと言って、通常状態でその恩恵をまったく得られないのでは意味が無い。

 変身しなくても使える魔()はあるが、変身した方が使える魔()が増える。

 そういうシステムなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな、強化された肉体を持つ魔法少女をも弾き飛ばす衝撃波を。

 普通の人間が受けたとしたらどうなるか。

 それは、ボールが当たるのとミサイルが直撃するぐらいに、意味合いが変わる。

 基本的に人間は“魔女と戦う為に創られた訳ではない”のだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………あ」

 

 皮肉な事に。

 一瞬で、無数の肉片に成り果てた志筑仁美を目の当たりにして。

 さやかはようやく絶望(ゲンジツ)を認識し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何かが、変わった。

 上条恭介が事故に遭ってから、美樹さやかの世界の何かが変わってしまった。

 

 見ていられなかった。

 夢を失い、希望が見えず、絶望に泣く想い人を見ていられなかった。

 

 だから、願った。

 キュゥべえに願い、魔法少女になる事を対価に、上条恭介の腕を治して貰った。

 

 元に戻るはずだった。

 事故による怪我を克服した上条恭介の横で、再び好きな人が奏でる音色を、聴ける筈だった。

 

 自分ではなくなった。

 今、上条恭介の近くに居るのは志筑仁美であり、美樹さやかではなくなった。

 

 捨てなかった。

 それでも、自分が長年培ってきた想いを、そう簡単に捨てられる筈もなかった。

 

 立ち上がった。

 鹿目まどかという親友と、巴マミという先輩が、自分を必死に励ましてくれた。

 

 戦う事を選んだ。

 それが願いの対価であったし、自分が戦う事で、一人でも多く、大切な人を失う事が減るのだと信じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無力だと痛感した。

 魔人には軽くあしらわれ、赤い魔法少女にはボロボロにされた。

 

 疑問を感じた。

 人々を護れる力があるのに、自分にしか使おうとしない二人が、理解できなかった。

 

 共闘した。

 まどかとマミだけでなく、信じられない事を言った転校生とも、自分をボロボロにした赤い魔法少女とも、造りモノとしか感じられない笑顔を向ける魔人とも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 話をした。

 正面から真っ直ぐに、自分の考えと、相手の考えを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、戦った。

 魔女結界を見つけ、中に入り、魔女を倒す為に戦った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして……美樹さやかは…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 拒絶された。

 護る為に戦っていた筈なのに、護るべき存在に否定された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 護れなかった。

 目の前で、上条恭介が死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 護ろうとしなかった。

 志筑仁美に対し、さやかは何の行動も示さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望した。

 それは、終末と再誕を意味する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 芸術家の魔女。

 その結界の最深部。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法少女の、最後の失態。

 新たな魔女が孵る事を、止められなかった事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[告白してれば、変わったのかな?

 恭介と一緒に居られたかな?

 仁美に、取られないですんだのかな?]

[え……さやかちゃん!?]

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしって、ほんとバカ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人魚の魔女―――オクタヴィア・フォン・ゼッケンドルフ―――

その性質は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恋慕




次回予告

希望は魔法少女を生み

絶望は魔女を産む














それは、偽りだ

六十三章 羨ましい

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