無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「なんで、公園のベンチで寝てたの?」
SG(ソウルジェム)の反応が無いと、根無し草なオレは、暇を持て余すもので。
 それでなくとも、明確な魔女の気配とか、察知出来ないし」
「基本だと思うんですけど、それ……」
「魔法少女と魔人の違いなんじゃね?」
(反応を確認しようにも、その都度右目を抉り出すとか、笑えねぇんだよなぁ……)


四十一章 真っ先に説得するべきは

 魔人が、二人の魔法少女と接触していたのと、ほぼ同時刻。

 

「マジかよ……」

 

 杏子は、マミとさやかの二人と対峙していた。

 冷静に考えれば。

 同じ街で、同じ物(魔女)を狩る為に行動しているのだから、鉢合わせしないはずもないのだ。

 

「まだ、やってんのか……。

 弱いんだから、引っ込んでなよ」

「なんだとっ!!」

 

 杏子の言葉に、さやかが反応する。

 しかし、それをマミが手で静止する。

 

「今日は、あの少年と一緒じゃないのね?」

「あたし達は、あんたらみたいに仲良しこよしの部活感覚で、魔女を狩ってる訳じゃないんでね」

「あんた……私たちをなんだと!」

「落ち着きなさい、美樹さん!

 佐倉さんも、無駄に挑発するのを控えなさい」

 

 マミの言葉に、杏子は鼻で笑い、SG(ソウルジェム)を取り出す。

 

「あんたらとあたし達じゃ、目指す物も、戦う理由も、何もかもが違う。

 どちらも引く気が無いんなら、とる行動は一つだろう?」

 

 杏子の言葉に合わせて、さやかとマミもSG(ソウルジェム)を取り出す。

 

「どうして、そんなにも変わってしまったの……?」

「知ってるだろ?」

 

 マミの悲しげな呟きを、杏子は切って捨てる。

 

「希望と絶望のバランスは同一でなければならない。

 この世界はそうプログラムされてんだ。

 だから、あたしは“誰かの為”には戦わない。

 “返ってきた絶望”は……もう、ごめんだよ」

 

 そして、杏子は変身する。

 振り払うかのように、断ち切るかのように。

 長く、愛用してきた槍を振るい、構える。

 

「しかたがないわね」

 

 マミの呟きと共に、残りの二人も変身する。

 さやかが剣を、マミはマスケット銃を構える。

 

「悪い子には、お仕置きをしなきゃね」

「ハッ!

 足手纏いと一緒で、あたしと満足に戦えるのかよ!」

「美樹さんは足手纏いじゃないわ。

 大切な……仲間よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、先輩達はオレと、どんな話をご所望かな?」

 

 ベンチに座りなおし、群雲は笑いながら、二人の魔法少女に問いかける。

 

「仲良く……出来ないかな?」

「それは、佐倉先輩を“裏切れ”って事か?」

「ち、ちがうよっ!?

 同じ魔法少女だから、争うのがおかしいんだよ!」

「おかしくないだろ、別に」

 

 まどかの言葉を、群雲は切って捨てる。

 

「魔法少女に限った話じゃない。

 人間(同族)が過去、どれだけの争いを繰り返してきたかは、歴史が証明している。

 自分がボス猿になる為に、他の猿を追い落とす事だってある。

 同じ魔法少女だから、争うのがおかしい?

 なら、人間同士の争いはおかしいか?

 弱肉強食という、自然のルール(世界のプログラム)を否定できるか?

 鹿目先輩は、生まれてから一度も“食事をした事が無い”のかい?

 あぁ、返答は解りきってるから、答えなくてもいいよ」

 

 口元に、笑みを張り付かせたまま。

 そう言ってのける群雲が、まどかには理解できない。

 

「まあ、個人的な意見を言うなら、無理に敵対する理由は、オレにはない」

「っ!?

 だったら!」

「だが、キミ達の方は?

 前にも言ったが、オレが魔女を狩るのは“オレの為”だ。

 そんな奴と、肩を並べて戦えるか?

 そんな奴に、背中を預ける事が出来るか?」

「それ……は……」

「まあ、無理だろうね。

 今すぐに歩み寄るとか出来れば、縄張り争いなんて存在しない。

 何よりも、前提として」

 

 眼鏡を中指で押し上げて静止し、群雲は告げる。

 

「キミ達と敵対しないとしても、他二人の先輩はどうよ?」

 

 最初の出会い、群雲に戦闘の意思は無かった。

 一番最初に手を出したのは“美樹さやか”であったのだ。

 

「鹿目先輩と暁美先輩が、優しい良い子なのは、巴先輩の拘束魔法で動けなかったオレに対して、なんかすげー勢いで叩いてきた使い魔を“巴先輩よりも先”に攻撃し、撃退した事から、理解はしてる。

 だが、それとこれとは別。

 ここに居る三人が仲良くなったとしても“大局”は変わらない。

 仲良くなりたいなら、鹿目先輩が真っ先に説得するべきは、オレじゃない。

 “先輩の仲間”じゃないのかい?」

 

 たとえ、ここで三人が仲良くなったとしても。

 群雲には“佐倉杏子(相棒)”がいるし、まどかとほむらには“仲間(マミとさやか)”がいる。

 群雲が、まどかとほむらに付いても。

 まどかとほむらが、群雲に付いても。

 最初に群雲が言ったように、それは“裏切り”と呼ばれる行為になってしまうのだ。

 

「ごめん……なさい……」

「いや、謝る意味がわからない」

 

 俯いて謝るまどかに、群雲は首を傾げる。

 

「まあ、鹿目先輩が仲良くなりたがってるってのは解った。

 で、暁美先輩も同じような話?」

 

 やはり、群雲琢磨という少年は、異常だ。

 どれほどの絶望を経験したら。

 この小ささで、そのような考えを持つまでに至るのか。

 だが、ほむらにも目的がある。

 以前とは違う、結末を。

 

「聞いて欲しい事があるんです」

「うん?」

「魔法少女の……真実を」




次回予告

人には、立場がある

物には、色々な見方がある

世界は決して、一枚岩では、ありえない







そんな中で

四十二章 キミは、どこに、立ちたい?

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