無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「そもそも、女の子を殴るとか、ナンセンスだぞ」
「なら、キミは殺されて終わりだね」
「男女差別はよくないよね、うん!」
「わけがわからないy「そぉい!!」ぎゅっぷい!?」


四章 少女じゃないよ!?

SIDE 少年

 

 結局、あのまま家に帰ることにした。

 ナマモノは、オレが戦わない事に首を傾げていたが、オレにとっては戦闘を避けられた事は幸運であると言えた。

 契約の代価は魔女と戦う事。

 なら、戦わなかったオレに、ナマモノが不満を持つのは理解できる。

 しかし、オレにその“手段”が無い以上、そもそも“戦い”にすらならない。

 魔女と戦い、退治する事が代価の筈なのに、その手段が無いのだから、契約も意味を為さない。

 “魔女を退治する事”を望んでいるナマモノと“魔女を退治する手段が無い”オレでは、互いの意見が交わらないのは道理。

 

「次の候補を探しに行くよ」

 

 と、ナマモノは姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ナマモノがいなくなった為に、今以上の情報が得られなくなった訳で。

 ならば、今ある情報から、色々と考えてみるしかない。

 ナマモノと出会ってから、ナマモノがいなくなるまでの事を思い出しながら、オレは思考の海に沈む。

 

 

 

 文字通り何も無い、四畳半のワンルームで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この世界には、魔女が存在する。

 絶望で作られた魔女は、それを呪いへと変換し、人々を陥れている。

 ナマモノは、それに対抗する為に、魔法少女を必要としている。

 絶望で作られた魔女に対抗する、希望で作られた魔法少女。

 ナマモノが願いを叶えるのは、希望で作られなければ、魔女の対極(天敵)になれない為。

 そして、希望と共に魔法少女となった者は、魔女と戦い続ける。

 願いの代価として。

 

 

 

 

 

 概要としては、こんなところだ。

 そこから、自分を中心に状況を組み立てて考察する。

 

 

 

 

 

 オレは“落書き=魔女の結界”を確認できた。

 魔法少女じゃなくても、結界を認識できる者はいる。それは“魔法少女になれる素質を持つ者”だ。

 ……とりあえず、魔法“少女”の時点で、色々とツッコミたいのだが、それだと話が進まないので、渋々スルーする。

 オレに、素質があった。それが、事実だ。

 

 

 

 

 オレは契約し、魔法少女になった。

 しかし、変身できた(軍服姿が変身後の姿らしい)のだが、武器を持っておらず、魔法の使い方も解らない。

 いじめられっこなオレが、拳で語れる筈も無く、しかも魔女の使い魔がこちらを見て、逃げ出した。

 その為、結界を後にして、家に帰った。

 

 

 

 

 

 これが、今日の出来事だ。

 うん、わけがわからないよ。

 

 

 

 

 

 わけがわからないが、契約した以上、オレは魔法少女として、魔女を退治しなければならない。

 

 

 

 

 

 魔法少女が変身し、戦う力を得る為に必要なのが“ソウルジェム”だ。

 人によって、異なるらしいが、SG(ソウルジェム)は契約した証で、変身アイテムのようなものらしい。

 他にも、魔女の気配を感じたりとか出来るらしいが、ぶっちゃけ詳しくは知らない。

 

 ……なんで、聞かなかった、オレェ……。

 

 基本的にSG(ソウルジェム)は、未使用状態だとアクセサリーになるんだそうだ。

 オレの場合は、それが“右目”になった。

 ……おかげで、視力ガタ落ちですよ、ええ。

 ちなみに、家に帰る途中、公園の公衆トイレの鏡で確認したら、右目が緑になってました。

 黒かったはずの箇所か緑色ですよ。左目は、普通に黒いままでしたよ。

 ……いじめられる要素が増えたorz

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 変身したり、魔法を使って魔女と戦うと、魔力を消費する。

 そうすると、SG(ソウルジェム)が穢れていくらしい。

 その穢れを浄化し、魔力を回復させる為に必要なのが“グリーフシード”であり、魔女の卵でもある。

 これが“魔法少女が魔女を退治する理由”である。

 そして、穢れたGS(グリーフシード)は、ナマモノが回収していく。

 

 つまりナマモノは“穢れたGS(グリーフシード)を回収する為に、魔法少女を増やしていく”のが、目的らしい。

 その対価として、願いを叶える。

 

 

 

 

 

 GS(グリーフシード)SG(ソウルジェム)の穢れを浄化しながら、魔女と戦い続ける。

 これが魔法少女であり、オレもそうなったらしい。

「少女じゃないよ!?」と言う全力のツッコミを無視しつつ、考察を続ける。

 魔女を倒す存在である“魔法少女”であるならば“魔女を倒す手段”があるはずだ。

 それが“魔法”であり、オレもその“手段”を持っていて、当然である。

「少女じゃないよ!?」と言う全力のツッコミを無視しつつ、考察を続ける。

 

 

 

 

 

“能力は、願い事に左右される”

 ナマモノはそう言った。

 オレの願いはこうだ。

 

 

 

“オレの、何時、如何なる時も、オレの想うがままに、笑って過ごせる事を”

 

 

 

 ……戦いに関する要素が無ぇ∑( ̄◇ ̄;)!?

 そして、この願いから得られる魔法って何よ?(つД`)・゜・。

 失礼、取り乱しますた(´・ω・`)

 

 

 

 

 

それはさておき

 

 

 

 

 

 魔法少女なのだから、魔法が使える筈。

 仮に、戦闘向きでなかったとしても“魔法が使える”筈なのだ。

 そして、オレは魔法の使い方が解らず、それがどんな魔法なのかも、解らない。

 ついでに、一緒に手に入るはずの“魔法道具”とやらも、それらしいものがなかった。

 ( ゜д ゜)

 

 

 

 軽く、詰んでる気もするが、考察を続けよう。

 当面の目標は

 

1.魔女を倒す事

 

 その発展系は

 

1-1.魔女を倒す為の手段を得る事

 

 つまり

 

1-1-1.魔法を使えるようになる事

1-1-2.武器を手に入れる事

1-1-3.殴り倒せるようになる事

 

 

 

 

 

 とりあえず“1-1-3”は無理だろう。

 それが出来るなら、悩まないって。

 道場にでも通うか?

 ……お金がないお(´・ω・`)

 まあ、せいぜいが拳法の本とかを図書館で読んで、腕立てとかするぐらいしか……。

 

 

 

 

“1-1-2”だが……どこから?(;´д`)

 そんな、物騒な物持ってる知り合いなんぞ、おらんし。

 そもそもオレ、学校の関係者は当然として、親類の名前すら知らないぞ?

 

 

 

 

 魔法少女になった以上は“1-1-1”が、最も近道であるのは、間違いないだろう。

 ともすれば、色々と試してみるしかない。

 

 

 

 

 とりあえず、人気の無い所で変身して、色々やってみるか。

 武器になりそうなものは、なにがあるだろう? 図書館で調べて、手に入りそうな物をピックアップしてみるか。

 魔法少女の対極である魔女に効きそうなもの……あるか?

 それこそ、剣とか槍とかじゃないと、無理じゃね? さすがに、石でぶん殴るとかで倒せるなら、苦労しないだろうし。

 体も鍛えないとなぁ……。

 今日は、向こうが逃げてくれたから良いが、いざとなったら逃げ出すだけの脚力は必要だ。

 願いをかなえてもらったのに、魔女と戦って死ぬとか、本末転倒だ。

 せめて、ジョギングとかして、体力だけでもつけないと。

 

 

 

 

 思考を中断した時に、夜になっている事に気付いた。

 どんだけ考え込んでいたんだか。

 同時に、オレは苦笑する。

 “肉体が生きているだけ”だったオレが、随分と必死になっている。

 

……なるほど、願いは叶っているのかもしれないな。

 

 苦笑を続けながら、オレは立ち上がり、外へと向かう。

 秘密裏に動くなら、夜の方がいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

オレの異常な一日は、まだ終わらない。“魔法少女初日”は、日が落ちても続いていく。




次回予告

契約した事で得たモノ
契約した事で失ったモノ

往々にして、それらに気付くのは

直後ではなく、しばらく後である

だから



五章 オレは、この日にこそ

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