「なら、キミは殺されて終わりだね」
「男女差別はよくないよね、うん!」
「わけがわからないy「そぉい!!」ぎゅっぷい!?」
SIDE 少年
結局、あのまま家に帰ることにした。
ナマモノは、オレが戦わない事に首を傾げていたが、オレにとっては戦闘を避けられた事は幸運であると言えた。
契約の代価は魔女と戦う事。
なら、戦わなかったオレに、ナマモノが不満を持つのは理解できる。
しかし、オレにその“手段”が無い以上、そもそも“戦い”にすらならない。
魔女と戦い、退治する事が代価の筈なのに、その手段が無いのだから、契約も意味を為さない。
“魔女を退治する事”を望んでいるナマモノと“魔女を退治する手段が無い”オレでは、互いの意見が交わらないのは道理。
「次の候補を探しに行くよ」
と、ナマモノは姿を消した。
さて、ナマモノがいなくなった為に、今以上の情報が得られなくなった訳で。
ならば、今ある情報から、色々と考えてみるしかない。
ナマモノと出会ってから、ナマモノがいなくなるまでの事を思い出しながら、オレは思考の海に沈む。
文字通り何も無い、四畳半のワンルームで。
この世界には、魔女が存在する。
絶望で作られた魔女は、それを呪いへと変換し、人々を陥れている。
ナマモノは、それに対抗する為に、魔法少女を必要としている。
絶望で作られた魔女に対抗する、希望で作られた魔法少女。
ナマモノが願いを叶えるのは、希望で作られなければ、魔女の
そして、希望と共に魔法少女となった者は、魔女と戦い続ける。
願いの代価として。
概要としては、こんなところだ。
そこから、自分を中心に状況を組み立てて考察する。
オレは“落書き=魔女の結界”を確認できた。
魔法少女じゃなくても、結界を認識できる者はいる。それは“魔法少女になれる素質を持つ者”だ。
……とりあえず、魔法“少女”の時点で、色々とツッコミたいのだが、それだと話が進まないので、渋々スルーする。
オレに、素質があった。それが、事実だ。
オレは契約し、魔法少女になった。
しかし、変身できた(軍服姿が変身後の姿らしい)のだが、武器を持っておらず、魔法の使い方も解らない。
いじめられっこなオレが、拳で語れる筈も無く、しかも魔女の使い魔がこちらを見て、逃げ出した。
その為、結界を後にして、家に帰った。
これが、今日の出来事だ。
うん、わけがわからないよ。
わけがわからないが、契約した以上、オレは魔法少女として、魔女を退治しなければならない。
魔法少女が変身し、戦う力を得る為に必要なのが“ソウルジェム”だ。
人によって、異なるらしいが、
他にも、魔女の気配を感じたりとか出来るらしいが、ぶっちゃけ詳しくは知らない。
……なんで、聞かなかった、オレェ……。
基本的に
オレの場合は、それが“右目”になった。
……おかげで、視力ガタ落ちですよ、ええ。
ちなみに、家に帰る途中、公園の公衆トイレの鏡で確認したら、右目が緑になってました。
黒かったはずの箇所か緑色ですよ。左目は、普通に黒いままでしたよ。
……いじめられる要素が増えたorz
閑話休題
変身したり、魔法を使って魔女と戦うと、魔力を消費する。
そうすると、
その穢れを浄化し、魔力を回復させる為に必要なのが“グリーフシード”であり、魔女の卵でもある。
これが“魔法少女が魔女を退治する理由”である。
そして、穢れた
つまりナマモノは“穢れた
その対価として、願いを叶える。
これが魔法少女であり、オレもそうなったらしい。
「少女じゃないよ!?」と言う全力のツッコミを無視しつつ、考察を続ける。
魔女を倒す存在である“魔法少女”であるならば“魔女を倒す手段”があるはずだ。
それが“魔法”であり、オレもその“手段”を持っていて、当然である。
「少女じゃないよ!?」と言う全力のツッコミを無視しつつ、考察を続ける。
“能力は、願い事に左右される”
ナマモノはそう言った。
オレの願いはこうだ。
“オレの、何時、如何なる時も、オレの想うがままに、笑って過ごせる事を”
……戦いに関する要素が無ぇ∑( ̄◇ ̄;)!?
そして、この願いから得られる魔法って何よ?(つД`)・゜・。
失礼、取り乱しますた(´・ω・`)
それはさておき
魔法少女なのだから、魔法が使える筈。
仮に、戦闘向きでなかったとしても“魔法が使える”筈なのだ。
そして、オレは魔法の使い方が解らず、それがどんな魔法なのかも、解らない。
ついでに、一緒に手に入るはずの“魔法道具”とやらも、それらしいものがなかった。
( ゜д ゜)
軽く、詰んでる気もするが、考察を続けよう。
当面の目標は
1.魔女を倒す事
その発展系は
1-1.魔女を倒す為の手段を得る事
つまり
1-1-1.魔法を使えるようになる事
1-1-2.武器を手に入れる事
1-1-3.殴り倒せるようになる事
とりあえず“1-1-3”は無理だろう。
それが出来るなら、悩まないって。
道場にでも通うか?
……お金がないお(´・ω・`)
まあ、せいぜいが拳法の本とかを図書館で読んで、腕立てとかするぐらいしか……。
“1-1-2”だが……どこから?(;´д`)
そんな、物騒な物持ってる知り合いなんぞ、おらんし。
そもそもオレ、学校の関係者は当然として、親類の名前すら知らないぞ?
魔法少女になった以上は“1-1-1”が、最も近道であるのは、間違いないだろう。
ともすれば、色々と試してみるしかない。
とりあえず、人気の無い所で変身して、色々やってみるか。
武器になりそうなものは、なにがあるだろう? 図書館で調べて、手に入りそうな物をピックアップしてみるか。
魔法少女の対極である魔女に効きそうなもの……あるか?
それこそ、剣とか槍とかじゃないと、無理じゃね? さすがに、石でぶん殴るとかで倒せるなら、苦労しないだろうし。
体も鍛えないとなぁ……。
今日は、向こうが逃げてくれたから良いが、いざとなったら逃げ出すだけの脚力は必要だ。
願いをかなえてもらったのに、魔女と戦って死ぬとか、本末転倒だ。
せめて、ジョギングとかして、体力だけでもつけないと。
思考を中断した時に、夜になっている事に気付いた。
どんだけ考え込んでいたんだか。
同時に、オレは苦笑する。
“肉体が生きているだけ”だったオレが、随分と必死になっている。
……なるほど、願いは叶っているのかもしれないな。
苦笑を続けながら、オレは立ち上がり、外へと向かう。
秘密裏に動くなら、夜の方がいいだろう。
オレの異常な一日は、まだ終わらない。“魔法少女初日”は、日が落ちても続いていく。
次回予告
契約した事で得たモノ
契約した事で失ったモノ
往々にして、それらに気付くのは
直後ではなく、しばらく後である
だから
五章 オレは、この日にこそ