無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「もし、あたしが向こうのチームに入ったら、どうするんだ?」
「着いて行くよ? 別れる理由にならんし」
「……ひょっとして、あたしに惚れてたりするか?」
「なんでそうなるのかが解らん。
 まあ、頼りにしてるのは認めるけど。
 つか、契約前も後も、恋愛とか考えた事なかったしなぁ……」
「そんなもんか?」
「そんなもんさ」


三十二章 一人増えてる

「エンカウント率、高いなぁ……」

 

 新たなGS(グリーフシード)を手に入れ、群雲は呟いた。

 

 

 

 

 

 基本的に、群雲琢磨と佐倉杏子は行動を()()()()()

 信頼していない訳ではない。

 かと言って、信頼しきっている訳でもない。

 “自分の為に動く”事を共通としている為に。

 四六時中、一緒にいるわけでもなく。

 かと言って、疎遠になる訳でもなく。

 

 

 

 

 

 “自分の為”という“共通の目的”

 

 

 

 

 

 二人を繋ぐ物を、一言で表すなら、そういう事である。

 異常だと言う人もいるかもしれない。

 だが、二人とも普通ではない。

 

[琢磨、届いてるか?]

 

 そろそろ合流して、晩飯の相談でもしようか。

 そんな事を考えていた群雲に、杏子からの念話が届く。

 

[おぉ、いいタイミングだ。

 GS(グリーフシード)の入手報告と、晩飯の相談をしたかった所だ。

 個人的には、今日はもんじゃ焼きな気分なんだけど]

[届いているなら、あたしの場所は探知できるか?]

[解ってて聞いてるだろ。

 そんな器用な事出来ないぞ、オレ]

[おまえって、自分の魔法以外は、からっきしだよな]

[言うなよ。

 照れる上に、地味に気にしてるんだから]

[わけわからん。

 それより、見滝原中学の場所はわかるな?]

[そりゃ、学生名簿を盗n……お借りした場所だしな]

[なら、その周辺の結界を索敵して、合流して欲しい]

[あらま、めっずらしぃ~。

 佐倉先輩におきましては、魔女の多いこの街は身に余ると?]

[茶化さずに聞け。

 マミのチーム、一人増えてる]

[ウェ ∑(0w0;)!?]

[器用な事すんな。

 ついでに、エンカウント中]

[おまっ!

 人の事言えないな、先輩!?]

[たまたま、同じ魔女結界を攻略しようとしてたんだよ。

 流石に4対1は辛い。

 合流できるか?]

[浄化前提で、5分。

 浄化せずに8分]

[浄化して3分だ]

[戦闘直前?]

[美樹さやかが、斬りかかって来た]

[それまで一緒かぁ∑(・ω・`)!?]

[だから器用な事すんな。

 こっちは地味にやばい]

[浄化+ストック使用。]

[1分で来い]

[30秒だ]

 

 <電気操作(Electrical Communication)>を全開。

 同時に、入手した直後のGS(グリーフシード)を右目に押し当てながら、群雲は目的地を目指した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戻ってたのね」

「この街には魔女が多いって、キュゥべえに聞いたんでね」

 

 群雲に、念話を送る数分前。

 魔女結界の中で、杏子は“マミチーム”と対峙していた。

 はっきり言って、想定外である。

 杏子は、群雲のように、自分の実力を低く評価していない。

 だが、魔法少女との戦いは、魔女との戦いとは勝手が違う。

 それを割り切り、防御の練習とかしていた群雲が異常なのだ。

 結界に入る前から食べていたフランクフルトを咥えながら、杏子は状況を観察する。

 眼前、最前線に立つのは、かつて共に戦っていた巴マミ。

 後ろに控えているのは、剣を使う美樹さやかに、弓を使う鹿目まどか。

 個々の実力に差はあれど、チームとしてのバランスは悪くない。

 

 加えて、まったく情報のない、眼鏡の魔法少女。

 

 自身の武器である槍を、油断なく構えながら、杏子はどうするかを考えて。

 ……今の“相棒”に、念話を送る事にした。

 

「今も、街の人達の為に、戦ってるのかい?」

 

 念話を送っている事を悟られないように、杏子から話を振る。

 

「そういうあなたは、変わってはいないの?」

「変わらないね。

 “誰かの為に願った末の結末”を、身をもって知ってるんでね」

 

 杏子の言葉に、マミの表情が目に見えて歪む。

 

 情報は武器になる。

 逆に、知りすぎる事は、心を揺さぶる欠点にも成り得る。

 杏子は、其処を突く。

 

「あたしは、死ぬ気は無い。

 そして、魔女を狩る事を、止めるつもりもない。

 その為には、魔女の持つGS(グリーフシード)が必要だ。

 だからあたしは“自分の為”に、魔女を狩る」

 

 自らの意思を示しながら、群雲との念話を続ける。

 

 めんどくさいな、これ。

 

 念話と会話の同時進行に、そんな印象を受けながら、油断なく構える杏子に、まどかが声を掛ける。

 

「あなたは、どうして魔法少女になったの?」

「……それを言うほど、あたし達は親しい仲かい?」

「~っ!?」

 

 群雲の言い回しを真似しながら、杏子は“時間を稼ぐ”事に専念する。

 

「気に入らない……!」

 

 だが、その言葉に反応する者がいた。

 

「せっかく、人を護る力があるのに……!

 なんでそれを、自分の為に使うのさ!!」

 

 美樹さやかである。

 想い人の為に願い、力を得た彼女には。

 自分の為だけという、利己的な使い方が納得できないのだ。

 

「あんた、バカだろ?」

 

 そして、杏子は。

 自身の経験があるからこそ。

 自分の為だけという、利己的な使い方を選んだのだ。

 

「誰かの為に願ったって、それは“自分のエゴ”を押し付けてるだけだろ?

 それに気付かないようなボンクラが、でしゃばるんじゃないよ!」

 

 言葉と共に杏子は、自身の槍を上空に放り投げた。

 後は、群雲が合流するのを待つだけだ。

 

「……なんのつもりよ?」

「あんた程度、素手で充分って事だよ」

 

 不敵に笑う杏子に、飛び掛るさやか。

 投げた武器を囮にして、魔法準備に入る杏子だが。

 二人が交差する瞬間。

 

 

 

 

 

 杏子の槍が、二人の間に落ちてきた。

 

 

 

 

 

「いや、速すぎるだろ、お前」

「それが、必死に駆けつけた相方への第一声かよ?」

 

 突然降ってきた槍に後退するさやかと、地面に刺さったそれを手に取る杏子。

 そして、数瞬後に降り立ったのは、緑の軍服に身を包む魔人。

 軽口を叩きながら、杏子は槍を構え。

 それに背を預けるように立ち、左手から鞘に納まったままの日本刀を取りだす群雲。

 

 突然の来訪者。

 その相手は、自分達を退けた魔人。

 

 巴マミは、自身の周りにマスケット銃を召還し。

 鹿目まどかは、弓を展開して構え。

 美樹さやかは、マミと同じように自分の周りに刀剣を召還する。

 

「……群雲……くん……」

 

 ただ一人。

 マミチームの四人目である“暁美ほむら”は。

 降り立った少年の名を、呆然と呟く。

 

 

 

 

 

 

 その呟きは、誰にも届かない。




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次回予告

魔法少女の軋轢
魔人の思惑

戦うが定め 戦うが宿命

魔人の想い
魔法少女の願い

差異が定め 相違が宿命




魔法少女という存在
魔人という存在





生きる者の道筋


三十三章 戦りあうしかない














TIPS 作中設定説明(公式かどうか、調べ切れなかった為)

『ほむらの盾の中身』

ほむらの時間遡行は、ほむらの“魔法(盾にある砂時計)”によるもの
SG(ソウルジェム)が、一緒に遡行している事から“魔法に関わる物”も、一緒に遡行していると思われる
故に“盾の中身は、遡行前と変わらない”としています

アニメでの兵器の量は、いくら時間停止があるとはいえ“一回のループで全てを回収し、全てを使い切っている”とは思えないので

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