無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「おまえって、銃弾ってどこから調達してるんだ?」
「そりゃもちろん、金儲けと保身しか考えてない、税金泥棒達から盗n……死ぬまでお借りしてるだけだが?」
「……少し前に、とある軍事基地が窃盗の責任で解体したとか、ニュースになってたんだが」
「ざまぁwwwww
 ゲフンゲフン。
 それは、大変だねぇ」
(……こいつ、色々とえげつねぇな……)


三十章 親しい仲

 時間停止。

 群雲が使う魔法で、最も凶悪な力だろう。

 使い方によっては、全ての状況をひっくり返しかねない。

 時間停止中に、ひっくり返すほどの行動が出来るかどうかは、別問題ではあるが。

 

「いずれ動くとは思ったが……。

 少しだけ“遅かった”な」

 

 自分だけの世界で、群雲は呟いた。

 

 群雲の言う“遅かった”とは、魔法少女達の動きの事ではない。

 実は群雲、先程までインターバル中だったのである。

 魔法少女達との邂逅も、想定外。

 杏子と別行動中に、魔女との殺し合いを終えた後、使い魔の結界を確認。

 入ってみたら、彼女たちがいた。

 つまり、群雲からすれば、絶賛連戦中なのである。

 

「さて、そろそろ帰りたいんだが……」

 

 呟いた群雲は、時間の静止した世界で、状況を再確認する。

 剣を振り上げている魔法少女と、矢を放った後の魔法少女。

 静止している矢は、時が止まらなければ、確実に群雲を捕らえていただろう。

 タイミングは、完璧だったといえる。

 連携力が高ければ、1+1は数字以上の成果を見せる。

 個々で考えれば、群雲にしては“不合格”だが。

 チームとしてみれば、充分に“合格”と言えるかもしれない。

 そして、群雲は気付いた。

 魔法準備に入っている、もう一人の魔法少女の存在を。

 

「……時間停止しなければ、詰んでたっぽいな」

 

 口の端を持ち上げながら、群雲はその魔法少女の後ろに立つ。

 どんな魔法を使うつもりだったのか。

 今の群雲に、それを確認する術は無い。

 魔法が発動していたとして、五体満足で捌ききれるか。

 今の群雲に、それを確認する術は無い。

 

「ま、今回は優位に立たせてもらうけどな」

 

 そして、群雲は魔法を解除する(秒針を動かす)

 

 世界は、全てを見始める(動き出す)

 

「え……きゃぁ!?」

「さやかちゃん!?」

「えっ!?」

 

 魔法少女達からすれば、突然群雲が消えたように錯覚するだろう。

 飛び掛ったさやかは、目標の消失に戸惑い。

 まどかの放った矢は、同一直線上であった為、さやかに直撃する。

 マミは、拘束魔法の対象を見失い、発動を止める。

 

[相変わらず、見事な瞬間移動だな]

 

 届いた念話に、群雲は苦笑しながら、刀を鞘に収める。

 その音が、辺りに響き、マミが慌てて後ろを振り返る。

 その先に、日本刀を左手の<部位倉庫(Parts Pocket)>に入れた群雲が、不敵な笑みを浮かべていた。

 

「いつの間に……!?」

「それを、詳しく教えるほど、オレ達は親しい仲かな?」

 

 マミは回りにマスケット銃を召還。

 群雲は右腰からSAAを右手で、腰の後から水平二連ショットガンを左手に持つ。

 

(刀だけではなく、銃まで使いこなすの!?)

(しくじった、刀継続すればよかった!?)

 

 互いに同種の武器である事に、一瞬状況が静止する。

 しかし次の一瞬には、マミはマスケット銃を手にとって構え、群雲も歪な二丁拳銃を構える。

 

[佐倉先輩、へるぷみ~!]

[自力でなんとかしな]

[この人が動いたら、加勢するんじゃなかったんかい!?]

 

 互いに銃口を向け合う緊迫な状況ながら、群雲はこんな念話をしている。

 だが、マミがマスケット銃を召還した瞬間、杏子は変身を完了させている。

 もっとも、今の群雲にそれを確認する術は無いが。

 

「そもそも、3対1の時点で、オレがかなり不利」

「あら、それも織り込み済みで、私達の前に姿を見せたんじゃないの?」

「いやいや、結界を見つけたから入ってみただけですよ?」

「それを素直に信じるほど、私達は親しい仲かしら?」

「oh……」

 

 傍から見れば、それは軽口の叩きあい。

 されど、状況を見れば、それは生死を分ける、緊迫の空気。

 そして、群雲の視線の先。

 マミの後では、立ち上がるさやかと、それに手を貸しているまどかがいる。

 さすがに、三人同時に相手にして立ち回れるほど、群雲は自分の実力を信じていない。

 よって。

 

[全力で逃げる]

[逃げるのかよ]

[いいかげんSG(ソウルジェム)を浄化したいし……。

 情報収集も充分じゃね?]

[それはいいが、その状況をどう打開するんだよ?]

[向こうの“性質”を利用する。

 仕掛けるぜ?]

 

 念話の後、群雲は右手の銃を右腰に戻す。

 

「あら、降参かしら?」

「まさか。

 左手のショットガンはそのままだろう?」

 

 さやかが剣を構え、まどかが弓を構える。

 完全に3対1の構図が出来上がり。

 

 群雲は微笑んだ。

 

 全員が群雲に集中する。

 この構図こそ、群雲が逃げ切る為に、必要な構図だからだ。

 

「では、闘劇を続け……る前に、だ。」

 

 右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>から、次に取り出す物を確認し、群雲は声をかける。

 後は一瞬。

 三人全員が、同時に集中を切らす瞬間を狙うだけ。

 その為に、群雲は言葉を紡ぐ。

 

「オレ達は、魔女を狩る」

「……そうね」

「オレ達は、魔女を狩る為に結界に入る」

「……何が、言いたいのよ?」

「オレ達は今、結界の中にいる。

 つまり、使い魔は健在中。

 さて、質問。

 使い魔は、普通の人間をどうしたい?」

「「「!?」」」

掛かった(フィーッシュ)!]

[やっぱ、性格悪いだろ、お前]

 

 三人の魔法少女達の性質。

 それは“魔女の脅威から人々を守る為に戦っている”という、生き様。

 今、この瞬間も、この結界を生成している使い魔がいる。

 その事実は、確実に彼女達の心を揺さぶる。

 その一瞬こそが、群雲の狙い。

 右手から目的の物を取り出し、それを放り投げる。

 そして、左腕だけをそのままに反転、両足に<電気操作(Electrical Communication)>を発動。

 走り出すと同時に、引き金を引いて、目的の物を撃ち抜いた。

 一瞬。

 本当に一瞬だが、辺りが昼間を超えるほどの光に包まれる。

 その光を背に、群雲は全力を超えた全力疾走。

 

[見事な逃げっぷりだな]

[敗走ではない。

 後ろに向かって、全力前進DA!]

[まあ、勝敗で言えば、お前の勝ちだろうな]

 

 そんな念話をしながら、二人はその場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだったのよ、あいつ!!」

 

 強烈な光が収まった時。

 魔人の姿は既に無く。

 さやかが声を荒げるのも、納得であろう。

 

「結局……何をしたかったんでしょう?」

 

 さやかを宥めながら、まどかは質問する。

 

「考えても、答えは出なさそうね……」

 

 その質問に答えを出せるほど、マミも魔人を知らない。

 

「ひとまず、使い魔を探しましょう。

 あの少年の言う通り、結界が健在な以上、使い魔も遠くにはいないはずよ」

 

 魔法少女達は、気を取り直して、結界の中を進む。

 魔人の存在を、心に留めながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[出口がわかりません]

[とことん考え無しか、てめぇ!?]

 

 その魔人が、魔法少女が使い魔を倒すまでの間、結界の隅で体育座りしていたのは、余談である。




次回予告

その少女、魔法少女
家族の為に願った、優しき少女

その少年、魔人
自分の為に願った、狂いし少年




その少女、魔法少女
自らの為に動く、強かな少女

その少年、魔人
考え無く動く、不可思議な少年







魔法少女 佐倉杏子
魔人 群雲琢磨

二人の性質と、二人の願い







その者達 魔女を狩る者につき





三十一章 互いに情けない話をした

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