[これが、念話だ]
(これが、心の中の言葉)
「そういう形式ですすんでいくんで、よろしく!」(`>ω<)b
「……誰に言ってんだよ……」
「
相手が学生なら、身分を調べるのは簡単。
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「見滝原中学の学生名簿を盗んd……借りてきたぜ」
そう言って、佐倉杏子が目を覚ます前に、群雲は“弓を使うツインテールの魔法少女”と“剣を使うショートカットの魔法少女”を調べてきた。
起きて、朝飯をどうするか考えていた杏子は、その発言に目が点になった。
「なにしてんだ、てめぇは!?」
「いや、頼まれたから調べてきたんだが。
ちなみに、これはコピーだから、本物が転載されたなど夢にも思うまいて。
くくく……はははは…………はーっはっはっはっはっはっはっがっげほっごほっ!」
三段笑いの挙句、むせる群雲に、杏子は思わず頭を抱える。
しかし、情報を得るのは早いに越した事は無い。
10秒チャージな朝ご飯を投げ渡し、自分は食パンを咥えながら、群雲が持ってきた書類に目を通す。
支離滅裂で理解不能。
だが、実力は折り紙付き。
それが、杏子の群雲に対する評価であり、出来れば敵に回って欲しくない理由でもある。
「で、どう思うよ?」
10秒チャージを終えた群雲が、歪な眼鏡を押し上げながら、杏子に問いかける。
「マミの一つ下か。
どちらも家族持ちって事は、マミに賛同した協力者で、確定っぽいな」
「誰かの為に、か」
「なんにもなりゃしないのにな……」
「それを決めるのは、佐倉先輩じゃないだろ」
呟いた杏子の言葉に、群雲は反論する。
書類から顔を上げ、群雲を睨みつける杏子。
眼鏡がずれ、長い前髪から緑の瞳が覗く群雲と、互いの視線が交錯する。
「幸せの形なんて、人それぞれだ。
今、オレ達にとって重要なのはそこじゃない」
眼鏡を押し上げたまま静止する事で、群雲は顔全体を隠して、問いかけた。
「どう、動くんだ?」
長く、白い前髪が。
縁の無い丸レンズの眼鏡が。
そして、右手が。
群雲の表情を完全に覆い隠す。
杏子は、それを見ながらスティックチョコを取り出すと、口に咥えた。
「……様子見、だ」
「なら、オレはちょいと寝るぜ。
流石に眠いんでね」
言いながら、欠伸をしながら傍らの椅子に腰掛ける群雲。
それを軽く一瞥し、杏子は立ち上がる。
「何かあれば、念話で叩き起こすぞ」
「……優しくしてね♪」
「うぜー」
「ほっぺにチュ~で起こしてくれるのを、期待する」
「耳を噛み切ってやるよ」
「こえー」
軽口を叩きあい、杏子はその場を。
――――――父親の教会跡を立ち去った。
「マジに、正義の味方ごっこかよ……」
使い魔を相手にする三人の魔法少女を、少し離れた所で見ながら、杏子は悪態をつく。
既に、太陽は西に傾いている時間。
学校に通っているのだから、魔法少女としての行動は、放課後だろうと当りをつけた杏子は、三人揃って学校を出た魔法少女達を、離れた所から尾行し、観察していた。
三人は、街中をパトロールし、魔女や使い魔の気配を探す。
しばらく後、使い魔の結界を発見した三人は、即座に討伐に向かった。
「……なんか、マミ以外はチョロそうだわ」
どうやら、使い魔討伐には、後輩魔法少女の経験値稼ぎも兼ねているようだ。
変身しながらも、後方に控えて手を出さずに見守っているマミを見ながら、杏子はそう結論する。
丸い毛玉に髭を生やしたような使い魔と、必死に戦う残り二人の魔法少女。
使い魔が発生させた結界内で戦う新人らしき魔法少女を見ながら、杏子は咥えていた飴を味わう。
飴に刺さり、口から出ている棒を、上下に揺らしながら、さてどうするかと考えていた杏子は。
「この街には、優秀な魔法少女がいると聞いていたが……」
平然と歩きながら、使い魔と魔法少女の戦いへ声を掛けた、魔人の姿に目を疑った。
「なっ!?」
なにしてんだよ、あいつは!?
反射的に、念話を送る。
[てめぇ、琢磨!
お前、何してんだ!?]
[ちょっ!?
佐倉先輩煩いって!?
念話で叫ぶとか、器用な事すんなよ!!]
決して表情に出さないあたり、群雲はとんでもない。
……表情を作れないだけなのかもしれないが。
[てか、佐倉先輩の事だから、無駄な事すんなとか言って、介入するかと思ったが]
「この程度の使い魔すら、満足に倒せないなら、魔法少女廃業を勧めるが」
念話と会話を同時に行うと言う、器用な事を披露しながら、変身状態の群雲は不敵に笑う。
「なっ……なんなんだよ、あんた!?」
[実力を見てたんだよ。
弱い奴と組む気ないんてないからな]
さやかの戸惑いの言葉と、杏子の質問の答えを聞きながら群雲は「これ、意外に大変だなぁ。」なんて事を思いながら、同時会話を継続していく。
「君たちと同じく、魔女狩りを生業とする者」
[昨日の戦いを見て、ある程度は把握してたんじゃないの?]
[流石に、一度戦闘を見ただけで判断するほど、あたしは馬鹿じゃないぞ?]
「まさか……魔法少女なの?」
「金髪のお姉さんには、オレが少女に見えるか?」
[てか、組む前提で動いてたのか?
やっぱ、お師匠様と一緒がいいのかね、馬鹿弟子?]
[お前、晩飯抜きな]
「さやかちゃん、使い魔が逃げちゃうよ!」
「使い魔と遊ぶより、重要な事があると思うが?」
[それは横暴じゃね?
寝る間も惜しんで、情報収集してきた相方に向かって]
[じゃ、お前は今、何してんだよ?]
「……なんなのさ、あんた」
「人にものを尋ねる時は、まず自分から名乗るのが筋じゃないのか?」
[情報収集。
直に接触した方が良いと判断したまでさ。
よくよく考えれば、魔法少女なんて口外不能な情報って、実際に接触しないと得られないんじゃね?]
[そりゃそうかもしれないが……。
タイミングが悪くねぇか?]
「……美樹さやか」
「私は、鹿目まどか」
「チームリーダーの、巴マミよ」
「美樹先輩、鹿目先輩、巴先輩、ね」
[なんでさ?
関係者だと分かり易くする為に、変身して結界に侵入したのに?]
[戦いの邪魔すれば、警戒されるだろうが!]
「……先輩?」
「そちら、中学生だろ?
自分、学校に通ってたら小学生なんで」
[……ゴメン]
[考え無しか、てめぇ!]
「小学生!?」
「行ってないけどね」
[ったく……。
どうすんだよ、この状況?]
「それで、あなたは何なの?」
[……どうしよ?]
[マジに考えなしか!?
とりあえず、あたしは動かないから、自分でなんとかしな]
「まずは、自己紹介からだな」
[まあ、状況の流れに任せるさ]
「オレは、君たちの様に、魔女を狩る運命を背負う、魔法少女の男バージョン」
「魔人群雲」
次回予告
出会った者は、同じ存在
希望で生まれた、奇跡の存在
出会った者は、違う存在
別の道を生きる、異端の存在
出会った者は、真逆の存在
道を譲らぬ、邪魔な存在
二十八章 不合格だ