無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「普通は、マスコットが魔法の使い方とか、教えてくれるものじゃないの?」
「僕は、マスコットじゃないよ?」
「なん………だと………」


三章 どうせいっちゅーねん

SIDE 少年

 

 魔女に関する、一通りの情報をナマモノから教わったオレは、落書き世界をゆっくりと歩く。

 いじめられっこなオレが魔女退治をする事になるとは、この世界は中々不条理なシステムで出来ているらしい。

 そんな事を考えてから、自分の服装を改めてチェックする。

 

 緑色の軍服に、両手には黒い手袋。

 足には手袋と同じような黒いブーツ。

 そして、黒い外套。

 

 以上。

 

 …………。

 

「武器が無ぇっ!?」

 

 そう、武器が無い。

 まあ、ファンシーな魔法のステッキとか渡されたら、軽く死ねる(精神的に。

 かと言って、現状のオレの戦闘手段は、肉体言語ぐらいしかない。

 魔法ェ……。

 

「どうやら、ここにいるのは“使い魔”だけのようだね」

 

 付いてきたナマモノが言う。

 使い魔とはすなわち、魔女の下僕。

 まあ、いきなり大ボスとか出てこられたら、そこで終焉だろうが。

 

「しかし、単独で結界を張るほどに成長している使い魔とはね。

 いつ魔女化しても、おかしくはなさそうだ」

 

 上げて、落とすな、ナマモノ。

 いきなり中ボスクラスとの戦闘って事じゃねぇか。

 

「まあ、いいか」

 

 動かなければ、事態は変わらない。

 そう思い、オレはゆっくりと歩き出した。

 

 

 

 

 

 絵の具で書かれた、整備工場。

 それが、オレの感想だった。

 そんな、異常な場所を歩きながら、オレは思考の海に沈む。

 

 オレは契約した。

 男なので“魔法少女”と言う表現は適切ではないが、そうなったのは事実だ。

 そして、これから“魔女”と戦わなければいけない。

 まずは、事実を受け入れる事。

 考察は、後でゆっくりすればいい。

 “魔女”を倒す事が、今のオレの目的なのだ。

 なら、考えるべきは、その手段。

 

1.魔法を使う

 この手段は却下。

 使い方が解らないし、そもそもオレがどういう魔法が使えるのかも、解らない。

 

2.拳を使う

 こう、バチバチッって感じでなんか纏って、ドーンッって出来ないものかね?

 スーパーな猿人みたいな感じで。

 

 ……無理だね。

 そもそも、そんなに強いなら、いじめられっこにならんよ、オレ。

 

3.武器を使う

 拳銃持って、ヘッドショットで魔女をパーンッっと。

 無理だわ。

 武器を持ってないんだってヴぁ。

 

 ……あれ? 詰んでね?

 超有名RPGだって、最初に棒と服を貰えるよ?

 服はあるけど、棒が無いよ、オレ。

 ……そもそも、棒と服だけで魔王倒して来いとか、お偉いさんは中々に鬼畜n

 

「いたね。

 あれが使い魔だよ」

 

 思考が逸れてきた所で、ナマモノがオレを呼んだ。

 言われて視線を向けると、何かがこちらを壁の隅から覗き込んでいた。

 絵の具で書かれた、女の子っぽいナニカが。

 

「あれが、使い魔……」

「魔女によって、当然使い魔も変わるから、どんな能力なのかは、戦わないとわからないよ」

「こっちの使い魔、つかえねー」

「僕は使い魔じゃないよ」

 

 ナマモノの言葉を無視しつつ、オレは使い魔を凝視する。

 相手がどう動くか解らない為、こちらも警戒を怠らない。

 もっとも、相手がどう動こうと、オレ自身に戦闘する手段が無い以上、事態解決にはならないだろうが。

 ……あれ? オレ、死ぬんじゃね?

 そもそも、魔女と戦う為に魔法少女(男)になったのに、魔女と戦う力が無いとか、詐欺じゃね?

 きっと今のオレは、ナマモノを耳の輪でグリグリやっても、許されるんじゃね?

 鍋のだし汁にでもすれば、意外とおいしいんじゃね?

 そういえば最近、コンビニ以外で飯を買った記憶がないな。

 第一、小学四年生が一人暮らしって時点で、相当異常な上に、無理があるにきまってr

 

「動かないね。

 キミはそもそも、契約者としても異端だし、向こうも警戒しているみたいだ」

 

 ナマモノの言葉で、逸れていた思考を強制的に戻す。

 まあ、別の事を考えながらも、視線は反らしていないので、問題は無い。

 ……問題なのは、こちらに戦う手段が無い事なのだが。

 

 そのまま、事態は膠着状態へと移行する。

 

 

 

 

 

(´・ω)

|ω・`)

 

 図にすると、こんな感じ。

 うん、シリアスの欠片もねぇ。

 

 

 

 しばらく見つめていると。

 

|ミ サッ

 

 逃げました。

 オレじゃなくて、使い魔の方が。

 

(´・ω)…

 

「追わないのかい?」

「どうせいっちゅーねん」

 

 思わず、ツッコミを入れたオレは、悪くない。

 てか、契約後のアフターサービス悪すぎるだろ、この悪徳勧誘員(ナマモノ)は。

 

「他の魔法少女も、初戦闘はこんな感じか?」

「普通なら“固有魔法”と“魔法道具”が与えられるから、こんな無意味な状況にはならないよ」

 

 無意味、言うなし。

 

「通常なら、自分の魔法や、魔法道具がなんなのかは、本人がすぐに自覚するはずなんだけどね」

「オレって、普通じゃなかったんだな」

 

 まあ、自覚はあるけれども。

 

「「わけがわからないよ」」

 

 ナマモノとハモッたオレは、そのまま来た道を引き返す事にした。

 

 

 

 

 

 初エンカウント

 モンスターは逃げ出した

 経験値を0ポイントてにいれた

 

 

 

 

 

 どうやら、オレの人生はクソゲーにシフトしたらしい。

 ………リセットボタン、どこかに売ってないかなぁ………




次回予告

人とは、思考する生き物である

どれだけ、理不尽な事が起きようとも
どれだけ、想定外の事に巻き込まれようとも

人とは、思考する生き物である


でなければそれは、獣と変わらないのだから

四章 少女じゃないよ!?

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