無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「仕方が無いとはいえ、納得いかないよ!!」
「どっちなんだい?」
「ドッチモー!!」
「どうせH(ハジヶえ・)K(ザ・キョウゲンマワシ)の役割を奨めるんだろう?」
「もう同胞のツッコミがクールすぎて、生きてるのが辛い!! 感情無いけど!!!!」
「それで?」
「幕間という名の【その時間軸の魔人説明】が入らないと、ボクの役割は十全に発揮されないのさ!!
 ボクは言ってしまえば【読者を誘う狂言まわっしー】だからね!!」
「どう考えても、人選ミスだよね」
「ボクだからね!!」/)(0◕ω◕0)(\モチーン


百六十五章 初体験

「がああぁぁぁぁ!!」

 

 化け物になった女刑事の異形な腕が、かずみとキッドを纏めて吹き飛ばす。

 窓枠ごと、外に放り出された二人を追い、化け物も外に出てくる。

 

「なにこれ!?

 なんなのよ、これはぁ~!?」

「【知らん】【流石にこれは】【初体験だよ】」

 

 混乱するかずみと、変わらぬ無表情のキッド。そんな二人を殺す為に化け物が再びその腕を振るう。

 いつの間にか、左手に持っていたトンファーで、キッドが前に立ち受け止めようとするが。

 

「【う】【お】」

 

 その威力は凄まじく、キッドはそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「キッド!?」

 

 自身を庇う形で前に立ち、吹き飛ばされたキッドに、かずみが慌てて駆け寄ろうとするが、その前に化け物がかずみを捕らえる。

 

 リン

 

 

 響く鈴の音

 

 

 導かれる、記憶の映像

 

 

 

 

「耳障りだ……」

 

 化け物が、呻く。

 

「耳障りだぁ!!」

「【お前の声がな】」

 

 かずみを掴む化け物の腕を、キッドが右手に持つナイフで切り落とす。

 

 リン

 

 響く鈴の音

 

 

 紡がれる、記録の調べ

 

 

 無造作に転がるかずみを庇うように、キッドは逆手に持ったナイフとトンファーを広げるように構える。

 

「【本当に】【初体験にも】【ほどがある】」

 

 電子タバコを咥えながら、無表情、無感情な子供(キッド)が、化け物と対峙する。

 

 

 リン

 

 響く鈴の音

 

 

 招かれる、力の奔流

 

 

「【まあ】【相手がどんな存在だろうと】【オレは】」リン「【さっきから】【なんの音だ?】」

 

 響く鈴の音

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 覚醒する、少女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おぉ!?」

 

 立ち上がったかずみの服装が、変化していた。黒をベースとし、白をアクセントに加えた、ファンタジーな衣装。

 それはまさに「魔法少女」を体現した姿と言える。

 

「なにこれ?」

「【オレに聞くな】」

 

 自分の衣装をあれやこれやと観察しながら、かずみは嬉しそうに聞く。当然、答えを持たないキッドは、無感情にかえす。

 

「か~わい~~!!」

「【それは否定せんが】」

 

 はしゃぐかずみに、キッドが釘を刺す。

 

「【それどころじゃなくね?】」

 

 かずみが見た先には、化け物の腕をトンファーで受け止めるキッドの姿。

 

「ちょっ!?

 大変なら言ってよ!!」

「【むしろ】【この状況ではしゃぐな】」

「だって、可愛くない?」

「【ファッションショーは後にしてくれ】【割と切実に】」

 

 異常な状況である。

 

 化け物となった女刑事。それに平然と対応するキッド。いつの間にか服装が変わっていたかずみ。

 今、この場所に【人の常識】に当て嵌まるモノは、存在しない。

 

「【それで】」

 

 カマキリのような化け物になった女刑事の攻撃を、トンファーとナイフで往なすキッド。

 最初に吹き飛ばされた経験から、相手の攻撃を“受ける”のではなく“力の方向をずらす”事で、完全に対応しているのだ。

 

「【早着替えした理由は?】」

「わかんない!!」

 

 鈴の音に誘われるように、かずみは“変身”していた。

 しかし、それは【無自覚】のままに行われた変化。当人であるかずみには、何もわからない。彼女には記憶が無いのだ。

 

 リン

 

 響く鈴の音

 

「キッド、大丈夫?」

「【大丈夫に見えるなら】【お前の目は意味無いな】」

「ひどくないっ!?」

 

 かずみとキッドは会話する。その会話は、同じような流れのまま。

 今が、どんな状況であったとしても。

 その“異常”を、二人(子供達)は自覚していない。

 キッドが化け物の攻撃を往なし続け、かずみはそれを近くで見守る。

 そんな状況でも、会話は続く。

 

「え~っと……、なんとか出来るような気もするんだけど」

「【はやいとこ】【この化け物を殺して】」

「あ、いや、それはダメ」

「【このままだと】【オレが死ねる】」

「それもダメ!!」

「【どうせいと】」

 

 響く鈴の音

 

 それは、かずみを―――が

 

「【あ】【ナイフの刃が折れた】」

「わたしの、杖? 使う?」

「【どうせいと】」

 

 響く鈴の音

 

 それは、キッドに―――が

 

「【はい】【次のナイフですよ】」

「どこから出したの?」

「【手品は】【タネを知らない方が】【楽しめるものさ】」

 

 響く鈴の音

 

 それが、二人の子供を

 

 

「【とりあえず】」

 

 化け物の攻撃を往なし続けていたキッドが動く。

 振り抜かれた腕を、上へ弾いて懐に潜り込み、その勢いのままに前蹴り。

 

「【邪魔】」

 

 あり得ないほどの衝撃に、化け物が宙を舞う。

 

 この場にいる全てのモノにとって。この出来事は初体験。

 

「キッド、つよ~い!!」

「【いやいや】【ありえない】」

「え~? なんで~?」

「【強かったら】【倒せてるだろ】【アレ】」

 

 化け物と、距離を離すことに成功したキッドが、かずみの横に立つ。

 事実、キッドは化け物の攻撃を往なし続けていただけで、攻撃出来た訳ではない。

 手を抜いていた訳ではない。手を抜かずになんとか出来ているなら、躊躇い無く実行するのが、キッドである。

 

「なんとかなる気がするの」

 

 かずみは笑顔を、キッドに向ける。この状況でも笑顔である。しかも横にいるのが無表情だから、それは異常を助長させる。

 

「でも、わたしだけじゃ無理っぽい」

「【ダメじゃん】」

 

 電子タバコをふかし、キッドが呟く。無表情のままに動く少年の横には、明るい少女。それは異常を助長させる。

 

「かああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 吼える化け物。異形と化した女刑事が、異常な状況を体現する。

 

「キッド」

「【なに?】【今】【忙しい】」

「手伝って!!」

「【うん】」

 

 異常な状況。

 記憶を亡くした少女。感情を失くした少年。化け物になった女刑事。

 此度の“悲劇”を象徴するように、魔人が行う、いつもの宣言。

 

 

 

「【では】【闘劇を】【はじめよう】」




次回予告

歯車は回り始めた 少女の目覚めを切っ掛けに

歯車は回り始めた 少年の来訪を切っ掛けに

悲劇であろうと 喜劇であろうと


幕は、上がってしまったのだ


歯車は回り始めた 終わるために始まった




百六十六章 最後の射撃が懐かしい

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