「どっちなんだい?」
「ドッチモー!!」
「どうせ
「もう同胞のツッコミがクールすぎて、生きてるのが辛い!! 感情無いけど!!!!」
「それで?」
「幕間という名の【その時間軸の魔人説明】が入らないと、ボクの役割は十全に発揮されないのさ!!
ボクは言ってしまえば【読者を誘う狂言まわっしー】だからね!!」
「どう考えても、人選ミスだよね」
「ボクだからね!!」/)(0◕ω◕0)(\モチーン
「がああぁぁぁぁ!!」
化け物になった女刑事の異形な腕が、かずみとキッドを纏めて吹き飛ばす。
窓枠ごと、外に放り出された二人を追い、化け物も外に出てくる。
「なにこれ!?
なんなのよ、これはぁ~!?」
「【知らん】【流石にこれは】【初体験だよ】」
混乱するかずみと、変わらぬ無表情のキッド。そんな二人を殺す為に化け物が再びその腕を振るう。
いつの間にか、左手に持っていたトンファーで、キッドが前に立ち受け止めようとするが。
「【う】【お】」
その威力は凄まじく、キッドはそのまま吹き飛ばされてしまう。
「キッド!?」
自身を庇う形で前に立ち、吹き飛ばされたキッドに、かずみが慌てて駆け寄ろうとするが、その前に化け物がかずみを捕らえる。
リン
響く鈴の音
導かれる、記憶の映像
「耳障りだ……」
化け物が、呻く。
「耳障りだぁ!!」
「【お前の声がな】」
かずみを掴む化け物の腕を、キッドが右手に持つナイフで切り落とす。
リン
響く鈴の音
紡がれる、記録の調べ
無造作に転がるかずみを庇うように、キッドは逆手に持ったナイフとトンファーを広げるように構える。
「【本当に】【初体験にも】【ほどがある】」
電子タバコを咥えながら、無表情、無感情な
リン
響く鈴の音
招かれる、力の奔流
「【まあ】【相手がどんな存在だろうと】【オレは】」リン「【さっきから】【なんの音だ?】」
響く鈴の音
覚醒する、少女
「お、おぉ!?」
立ち上がったかずみの服装が、変化していた。黒をベースとし、白をアクセントに加えた、ファンタジーな衣装。
それはまさに「魔法少女」を体現した姿と言える。
「なにこれ?」
「【オレに聞くな】」
自分の衣装をあれやこれやと観察しながら、かずみは嬉しそうに聞く。当然、答えを持たないキッドは、無感情にかえす。
「か~わい~~!!」
「【それは否定せんが】」
はしゃぐかずみに、キッドが釘を刺す。
「【それどころじゃなくね?】」
かずみが見た先には、化け物の腕をトンファーで受け止めるキッドの姿。
「ちょっ!?
大変なら言ってよ!!」
「【むしろ】【この状況ではしゃぐな】」
「だって、可愛くない?」
「【ファッションショーは後にしてくれ】【割と切実に】」
異常な状況である。
化け物となった女刑事。それに平然と対応するキッド。いつの間にか服装が変わっていたかずみ。
今、この場所に【人の常識】に当て嵌まるモノは、存在しない。
「【それで】」
カマキリのような化け物になった女刑事の攻撃を、トンファーとナイフで往なすキッド。
最初に吹き飛ばされた経験から、相手の攻撃を“受ける”のではなく“力の方向をずらす”事で、完全に対応しているのだ。
「【早着替えした理由は?】」
「わかんない!!」
鈴の音に誘われるように、かずみは“変身”していた。
しかし、それは【無自覚】のままに行われた変化。当人であるかずみには、何もわからない。彼女には記憶が無いのだ。
リン
響く鈴の音
「キッド、大丈夫?」
「【大丈夫に見えるなら】【お前の目は意味無いな】」
「ひどくないっ!?」
かずみとキッドは会話する。その会話は、同じような流れのまま。
今が、どんな状況であったとしても。
その“異常”を、
キッドが化け物の攻撃を往なし続け、かずみはそれを近くで見守る。
そんな状況でも、会話は続く。
「え~っと……、なんとか出来るような気もするんだけど」
「【はやいとこ】【この化け物を殺して】」
「あ、いや、それはダメ」
「【このままだと】【オレが死ねる】」
「それもダメ!!」
「【どうせいと】」
響く鈴の音
それは、かずみを―――が
「【あ】【ナイフの刃が折れた】」
「わたしの、杖? 使う?」
「【どうせいと】」
響く鈴の音
それは、キッドに―――が
「【はい】【次のナイフですよ】」
「どこから出したの?」
「【手品は】【タネを知らない方が】【楽しめるものさ】」
響く鈴の音
それが、二人の子供を
「【とりあえず】」
化け物の攻撃を往なし続けていたキッドが動く。
振り抜かれた腕を、上へ弾いて懐に潜り込み、その勢いのままに前蹴り。
「【邪魔】」
あり得ないほどの衝撃に、化け物が宙を舞う。
この場にいる全てのモノにとって。この出来事は初体験。
「キッド、つよ~い!!」
「【いやいや】【ありえない】」
「え~? なんで~?」
「【強かったら】【倒せてるだろ】【アレ】」
化け物と、距離を離すことに成功したキッドが、かずみの横に立つ。
事実、キッドは化け物の攻撃を往なし続けていただけで、攻撃出来た訳ではない。
手を抜いていた訳ではない。手を抜かずになんとか出来ているなら、躊躇い無く実行するのが、キッドである。
「なんとかなる気がするの」
かずみは笑顔を、キッドに向ける。この状況でも笑顔である。しかも横にいるのが無表情だから、それは異常を助長させる。
「でも、わたしだけじゃ無理っぽい」
「【ダメじゃん】」
電子タバコをふかし、キッドが呟く。無表情のままに動く少年の横には、明るい少女。それは異常を助長させる。
「かああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
吼える化け物。異形と化した女刑事が、異常な状況を体現する。
「キッド」
「【なに?】【今】【忙しい】」
「手伝って!!」
「【うん】」
異常な状況。
記憶を亡くした少女。感情を失くした少年。化け物になった女刑事。
此度の“悲劇”を象徴するように、魔人が行う、いつもの宣言。
「【では】【闘劇を】【はじめよう】」
次回予告
歯車は回り始めた 少女の目覚めを切っ掛けに
歯車は回り始めた 少年の来訪を切っ掛けに
悲劇であろうと 喜劇であろうと
幕は、上がってしまったのだ
歯車は回り始めた 終わるために始まった
百六十六章 最後の射撃が懐かしい