「またかい?」
「たくマギは“前書き、後書き表示有りを水晶”だよ!!」
「ひょっとして、推奨の事かい?」
「むしろ必須?」
「それも、最初からだよね?」
「たくマギを観る時は、前書きと後書きを読んだ上で、ボクとケーヤクしてから見てね❤」
「ハジヶえ?」
「なんだい? 同胞?」
「それを前書きで言っても、無意味じゃないかな?」
「あ゛」
SIDE out
「【殺した筈の存在に】【手痛い反撃を受けるのって】【どんな気持ち?】【ねえどんな気持ち?】【NDK? NDK?】」
戯言を披露する上での、最重要課題。それは【冷静】【自然体】を騙る事である。
どれだけ“絶望的な状況”であっても。必要なのは【自分の為になる事】を正確に把握する冷静さだと。
ウィキッドは理解し、躊躇う事無く実践していく。
「【オレを殺した】【だからそれ以上】【オレの未来を予知しなかった】【それがこの状況を呼び込んだ】【理解しているか?】【白い魔女】」
その在り方。その有り方。それは、織莉子の理解を容易く飛び越える。
「【お前に敵とされたオレが】【お前を敵としたオレが】【本拠地とも言える美国邸に】【馬鹿正直に
その上で、ウィキッドは徹底的に煽る。魔法少女に対し、最も効果的なのが“精神攻撃”である事を。この【
「【さてさて】【今】【オレの魂は】【
「!?」
右目にある。眼帯に隠された右目に、その魂は宿っている。
だが、悟らせない。語り、騙り、欺き、煙に巻き、事実を虚言で塗り潰す。そんな戯言。
それすらも【時間稼ぎ】に過ぎない魔人の【彼女】と一緒に考えた決め台詞。
「【お前に
――ひと
「【だが】【残念な事に】【オレはお前の目的を】【掴めてないんだよ】【白い魔女】」
――――ふた
「【お前の目的が】【オレの為になるなら】【敵対する理由は無くなる】」
――――――み
「【お前がどんな未来を
――――――――よ
「【そんな事は】【知ったこっちゃ無い】」
――――――――――いつ
「【重要なのは】【オレが】【お前を】【敵とするかどうかだ】【白い魔女】」
――――――――――――むゆ
「【オレがここに来た目的に】【
――――――――――――――なな
「【どうする】【白い魔女】」
――――――――――――――――や
「【お前が呼んだ】【しかばねを前に】」
――――――――――――――――――ここの
「【どんな】【未来を】【望む?】」
SIDE
たり。
悟られないよう【戯言】でカムフラージュしながら、オレは『前段階』を完了させた。
『
オレはこれを『
決めたばっかりだけどね!!
「【残念な事に】【インキュベーターからお前の願いを聞いて】【その能力が未来予知だと判明しても】【目的がわからない】」
だが、戯言は続ける。実はすっげぇ便利だと気付いた『
対し、白い魔女は……迷っているらしい。
オレを殺した手段を、真っ向から潰され。黒い魔法少女の動きを封じられ。
オレは知っている。時間が足りない事を。だからこその強攻策だと、過程はすでに仮定し終えている。
さあ、どう動く? 美国織莉子っ!!
SIDE out
「見滝原の崩壊から始まる、地球の壊滅と世界の終焉。
その絶望の未来を見たら、貴方はどうするかしら?」
織莉子は自らの目的を、ゆっくりと話し出した。
もはや織莉子は、後戻りの出来ない所まで来ており、また、戻るつもりなど毛頭ない。
その“目的”を果たす為、障害のひとつとなっている“暁美ほむら”は、無力化が可能なのは証明された。
もうひとつ、目の前の“殲滅屍”を何とか出来れば、織莉子の求めた未来は、手の届く位置まで。
その為の、ひとつの賭けだった。
「私はその未来を“予知”してしまった。
そして、それを回避する為に必要な情報を集めた」
未来の情報。その情報を無力化するには“情報が発信される前に、発信元を潰す”事。
「世界を滅ぼす魔女の存在を知り。
私は未来予知を駆使して“世界を滅ぼす魔女に成る魔法少女”を知る事が出来た」
「【なるほど】【そういう事だったか】」
織莉子が全てを語るまでもなく。ウィキッドはこれまでの過程から、真実へと繋がる仮定を得る事が出来た。
電子タバコを咥え、深呼吸するように。息を整えたウィキッドが【答え合わせ】を開始する。
「【ゆまをはじめとして】【白い魔女がインキュベーターに素質者を教えていたのは】」
「ええ。
その魔法少女は“まだ魔法少女ではない”のよ」
「【だから】【
世界を滅ぼす魔女に成る魔法少女。その少女が“魔法少女にならなければ”世界は滅びない。
つまり“その少女が魔法少女になる事”が“世界の終末への最初の一歩”なのだ。
「【呉先輩による魔法少女狩りは】【白い魔女の真の目的が“まだ普通の少女”である事を隠すと同時に】【契約者達の目を“魔法少女”に向ける事にあったか】」
「その通りよ、ウィキッドデリート。
“次のターゲットが自分かもしれない”と思わせる事での行動制限。
“他の魔法少女を注視しなければならない”と思わせる事での行動制限。
それに加えて“エネルギー回収を妨害する存在”による、インキュベーターへの警戒行動。
一石三鳥と言えるわね」
契約済みの者達への行動制限により“普通の少女を殺害しようとする”自らの目的を隠すと同時に、妨害される可能性を減らし。
契約が無駄になる可能性を高める事で、インキュベーターを警戒させ、その行動力を削ぐ。
そこに“未来予知”による“先行情報”を得る事で、織莉子は“今”を動かしてきた。
「【その上で行動に移せなかったのは】【その少女を“排除出来た未来”を】【予知できなかったからか】」
「それが最大の誤算だったわ。
その少女を護ろうとする者がいるなんて思わなかった」
世界を守る為に、少女を殺そうとする織莉子。
その少女を護る為に、世界を越えてきたほむら。
二人の敵対は必然。むしろ場を掻き乱したのは“見滝原の
「9を救う為に1を捨てる覚悟。
私は既に終えているわ。
1の為に9を捨ててきた彼女には、解る筈も無いけれど」
哀れむように、織莉子はほむらを見る。ほむらには“全てを見捨ててやり直す”という、残酷な選択肢があるが、それはほむらだけに許された選択肢。
逃げる事無く未来を見据えてきた織莉子とは、覚悟のベクトルが違うのだ。
「その為に私は“最悪の魔女になる最強の魔法少女”を“魔法少女になる前”に」
鹿 目 ま ど か を 殺 さ な け れ ば な ら な い !
人を殺さなければならない。その重圧は、本人にしかわからない。
その重圧を押しのけてでも。美国織莉子は未来を掴む。光り輝く未来を望む。
それが“織莉子の知った、生きる意味”であったのだ。
しかし、相手が悪かった。
世界の終末ですら、嗤える契約者が。自分という1の為に9を捨て去る少年が。
捨て去る9の中に、最愛の人がいても躊躇わない狂人が。
初恋の相手すら、その手で殺した魔人が。
最大級の爆弾を投下する。
「【さっき殺したけど?】」
次回予告
百五十六章 戯言
善悪に意義なんて無くて
真偽に価値なんて持たせず
生死に意味なんて与えない
そんな、ざれごと