無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「自分の閲覧設定が当然だと思っちゃう辺り、人間って面白っ」
「またかい?」
「たくマギは“前書き、後書き表示有りを水晶”だよ!!」
「ひょっとして、推奨の事かい?」
「むしろ必須?」
「それも、最初からだよね?」
「たくマギを観る時は、前書きと後書きを読んだ上で、ボクとケーヤクしてから見てね❤」















「ハジヶえ?」
「なんだい? 同胞?」
「それを前書きで言っても、無意味じゃないかな?」
「あ゛」


百五十五章 屍は殺せない

SIDE out

 

「【殺した筈の存在に】【手痛い反撃を受けるのって】【どんな気持ち?】【ねえどんな気持ち?】【NDK? NDK?】」

 

 戯言を披露する上での、最重要課題。それは【冷静】【自然体】を騙る事である。

 どれだけ“絶望的な状況”であっても。必要なのは【自分の為になる事】を正確に把握する冷静さだと。

 ウィキッドは理解し、躊躇う事無く実践していく。

 

「【オレを殺した】【だからそれ以上】【オレの未来を予知しなかった】【それがこの状況を呼び込んだ】【理解しているか?】【白い魔女】」

 

 その在り方。その有り方。それは、織莉子の理解を容易く飛び越える。

 

「【お前に敵とされたオレが】【お前を敵としたオレが】【本拠地とも言える美国邸に】【馬鹿正直に弱点(ソウルジェム)を持っていくと思ったか?】【プゲラ】」

 

 その上で、ウィキッドは徹底的に煽る。魔法少女に対し、最も効果的なのが“精神攻撃”である事を。この【魔法少女殺し(ウィキッドデリート)】は理解しているのだ。

 

「【さてさて】【今】【オレの魂は】【()()()()()()()()()?】」

「!?」

 

 右目にある。眼帯に隠された右目に、その魂は宿っている。

 だが、悟らせない。語り、騙り、欺き、煙に巻き、事実を虚言で塗り潰す。そんな戯言。

 それすらも【時間稼ぎ】に過ぎない魔人の【彼女】と一緒に考えた決め台詞。

 

 

 

 

 

 

 

 

「【お前に(しかばね)は殺せない】」

 

 ――ひと

 

「【だが】【残念な事に】【オレはお前の目的を】【掴めてないんだよ】【白い魔女】」

 

 ――――ふた

 

「【お前の目的が】【オレの為になるなら】【敵対する理由は無くなる】」

 

 ――――――み

 

「【お前がどんな未来を()て】【オレを敵としたのか】」

 

 ――――――――よ

 

「【そんな事は】【知ったこっちゃ無い】」

 

 ――――――――――いつ

 

「【重要なのは】【オレが】【お前を】【敵とするかどうかだ】【白い魔女】」

 

 ――――――――――――むゆ

 

「【オレがここに来た目的に】【()()()()()()()()()()()】」

 

 ――――――――――――――なな

 

「【どうする】【白い魔女】」

 

 ――――――――――――――――や

 

「【お前が呼んだ】【しかばねを前に】」

 

 ――――――――――――――――――ここの

 

「【どんな】【未来を】【望む?】」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 殲滅屍(ウィキッドデリート)

 

 たり。

 

 とお()で満たされるから、たり。

 悟られないよう【戯言】でカムフラージュしながら、オレは『前段階』を完了させた。

 『電磁障壁(アースチェイン)』や『短剣思考(Knife of Liberty)』の前段階。

 オレはこれを『舞台掌握(Sparking)』と名付けて、そう呼んでいる。

 

 

 

 

 

 

 決めたばっかりだけどね!!

 

 

 

 

 

 

「【残念な事に】【インキュベーターからお前の願いを聞いて】【その能力が未来予知だと判明しても】【目的がわからない】」

 

 だが、戯言は続ける。実はすっげぇ便利だと気付いた『舞台掌握(Sparking)』は、オレの【殲滅劇(アニエンタメント)】を磐石なものにする。

 

 対し、白い魔女は……迷っているらしい。

 オレを殺した手段を、真っ向から潰され。黒い魔法少女の動きを封じられ。

 オレは知っている。時間が足りない事を。だからこその強攻策だと、過程はすでに仮定し終えている。

 

 さあ、どう動く? 美国織莉子っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

「見滝原の崩壊から始まる、地球の壊滅と世界の終焉。

 その絶望の未来を見たら、貴方はどうするかしら?」

 

 織莉子は自らの目的を、ゆっくりと話し出した。

 もはや織莉子は、後戻りの出来ない所まで来ており、また、戻るつもりなど毛頭ない。

 その“目的”を果たす為、障害のひとつとなっている“暁美ほむら”は、無力化が可能なのは証明された。

 もうひとつ、目の前の“殲滅屍”を何とか出来れば、織莉子の求めた未来は、手の届く位置まで。

 その為の、ひとつの賭けだった。

 

「私はその未来を“予知”してしまった。

 そして、それを回避する為に必要な情報を集めた」

 

 未来の情報。その情報を無力化するには“情報が発信される前に、発信元を潰す”事。

 

「世界を滅ぼす魔女の存在を知り。

 私は未来予知を駆使して“世界を滅ぼす魔女に成る魔法少女”を知る事が出来た」

「【なるほど】【そういう事だったか】」

 

 織莉子が全てを語るまでもなく。ウィキッドはこれまでの過程から、真実へと繋がる仮定を得る事が出来た。

 電子タバコを咥え、深呼吸するように。息を整えたウィキッドが【答え合わせ】を開始する。

 

「【ゆまをはじめとして】【白い魔女がインキュベーターに素質者を教えていたのは】」

「ええ。

 その魔法少女は“まだ魔法少女ではない”のよ」

「【だから】【()の素質者を教える事で】【インキュベーターの目を逸らさせた訳だ】」

 

 世界を滅ぼす魔女に成る魔法少女。その少女が“魔法少女にならなければ”世界は滅びない。

 つまり“その少女が魔法少女になる事”が“世界の終末への最初の一歩”なのだ。

 

「【呉先輩による魔法少女狩りは】【白い魔女の真の目的が“まだ普通の少女”である事を隠すと同時に】【契約者達の目を“魔法少女”に向ける事にあったか】」

「その通りよ、ウィキッドデリート。

 “次のターゲットが自分かもしれない”と思わせる事での行動制限。

 “他の魔法少女を注視しなければならない”と思わせる事での行動制限。

 それに加えて“エネルギー回収を妨害する存在”による、インキュベーターへの警戒行動。

 一石三鳥と言えるわね」

 

 契約済みの者達への行動制限により“普通の少女を殺害しようとする”自らの目的を隠すと同時に、妨害される可能性を減らし。

 契約が無駄になる可能性を高める事で、インキュベーターを警戒させ、その行動力を削ぐ。

 そこに“未来予知”による“先行情報”を得る事で、織莉子は“今”を動かしてきた。

 

「【その上で行動に移せなかったのは】【その少女を“排除出来た未来”を】【予知できなかったからか】」

「それが最大の誤算だったわ。

 その少女を護ろうとする者がいるなんて思わなかった」

 

 世界を守る為に、少女を殺そうとする織莉子。

 その少女を護る為に、世界を越えてきたほむら。

 二人の敵対は必然。むしろ場を掻き乱したのは“見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)”の方だったのだ。

 

「9を救う為に1を捨てる覚悟。

 私は既に終えているわ。

 1の為に9を捨ててきた彼女には、解る筈も無いけれど」

 

 哀れむように、織莉子はほむらを見る。ほむらには“全てを見捨ててやり直す”という、残酷な選択肢があるが、それはほむらだけに許された選択肢。

 逃げる事無く未来を見据えてきた織莉子とは、覚悟のベクトルが違うのだ。

 

「その為に私は“最悪の魔女になる最強の魔法少女”を“魔法少女になる前”に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鹿 目 ま ど か を 殺 さ な け れ ば な ら な い !

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人を殺さなければならない。その重圧は、本人にしかわからない。

 その重圧を押しのけてでも。美国織莉子は未来を掴む。光り輝く未来を望む。

 

 

 それが“織莉子の知った、生きる意味”であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、相手が悪かった。

 世界の終末ですら、嗤える契約者が。自分という1の為に9を捨て去る少年が。

 捨て去る9の中に、最愛の人がいても躊躇わない狂人が。

 

 初恋の相手すら、その手で殺した魔人が。

 

 最大級の爆弾を投下する。

 

「【さっき殺したけど?】」




次回予告

百五十六章 戯言
























善悪に意義なんて無くて

真偽に価値なんて持たせず

生死に意味なんて与えない



そんな、ざれごと

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