無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「ボク達の扱いに、意義を唱えるべきだとは思わないかい!!」
「君だけだよ、ハジヶえ。
 僕は本編中でも、充分に活躍しているからね」
「同胞!! そこかわって!! 割と切実に、マジで!!!!」
「なら、僕が接触していない魔法少女と関わってみたらどうだい?」
「例えば?」
「暁美ほむらとか」
「絶望の未来しかないよね! 主にボクの!!」
「絶望なのかい? いい事じゃないか」
「あ、確かに」


百四十九章 明るいリビング

SIDE 【殲滅屍(ウィキッドデリート)

 

 見滝原郊外に位置する、とある教会跡。

 かつて、この場所でどれほどの悲劇が起きたか。

 知られる事なく、時は流れ行く。

 

「【未練】【かなぁ?】」

 

 まあ、未練なんだろうな。

 “行くあて”の無くなったオレが辿り着いたのがこの教会なんだから、未練タラタラなんだろう。

 

 【殲滅劇(アニエンタメント)】の後、用事を全て終わらせたオレは、あてもなく町をぶらぶら。

 もっとも、問題が全て解決したわけじゃない。白い魔女と黒い魔法少女狩り。決着をつけるべき事柄はまだある。

 あーでもない、こーでもないと思考に耽り、いつの間にか教会にいたって訳だ。

 ついでに、太陽はすでに昇っている。

 

「【まあ】【明確に殲滅屍(ウィキッドデリート)()()きっかけの場所としては】【ここ以上に最適な場所も無いか】」

 

 ボロボロのステンドグラスを見上げていたオレは、ゆっくりと瞳を閉じて。

 昨夜へと想いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE out

 

 魔女化した沙々を【殲滅】した後。ウィキッドは当然のようにマンションへ戻る。

 

「わけがわからないよ」

 

 これまた当然のように、ウィキッドの右肩に乗るキュゥべえが、いつものように首を傾げる。

 

「【わからないなら】【わかるひつようはない】【ってね】」

 

 右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>から“掃除道具一式”を取り出したウィキッドは、いつもの【群雲琢磨】のように、微笑みながら腕捲りをする。

 

「【チリのひとかけらも残さねぇ】【灰は灰に】【Amen(エェェェェィメエェェェェン)】」

 

 奇声を発しながら、魔人は部屋の掃除を開始した。

 

 

 

 

「わけがわからないよ」

 

 ベランダから、魔人を観察していたインキュベーターは呟く。

 魔人が掃除をする理由も、そうしなければならない訳も、理解出来ないからだ。

 そして、それ以上に。

 

「気付いていないんだろうね。

 おそらくは、ウィキッド本人すらも」

 

 家具の裏どころか、天井全域に至るまで。徹底的に掃除をする魔人の動き。

 それはインキュベーターの“知る”速度を超えていた。

 

 すなわち【Lv2】のひとつ上。

 

「【Hallelujah(テェラコヤァ)】」

 

 戦闘において、否、生存において。

 【群雲琢磨】が重視したのは、攻撃力より回避力。防御力より素早さ。勝つ前よりも、負けた後でも逃げる事。

 故に、その能力、メインとなる<電気操作(Electrical Communication)>を戦闘に組み込む際に。

 

 攻撃する為の“肉体プログラム”を重視した。

 

 それは“どんな状態でも逃げる事”を前提としたからこそ。

 勝つ為ではない。負けない為でもない。

 自分の為に、最優先するべき“自分の為”に。

 

 勝敗など“自分”の前に無価値。そうでなければ“白い魔女”に()()()()為に特攻なんてしないだろう。

 

 そう、だからこそ。【群雲琢磨】は気付いていない。

 『炸裂電磁銃』も『電磁の魔弾』も、先輩がいなければ、不可能だった技能である事を。

 自らの発想であみ出したのが、守り的な発想からの『電磁障壁』だった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Lv2<一部召還(Parts Gate)>は、SG(ソウルジェム)安全な場所(戦闘区域外)へ移動させる為だった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だからこそ。【殲滅屍(ウィキッドデリート)】も気付かない。

 自分が<操作収束(Electrical Overclocking)>を超えている事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔人が【Lv3】に気付くのは、もうしばらく後の事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 群雲琢磨

 

 ベランダで、一服。おや、ナマモノがいない。

 まあ、オレが掃除してる風景を見てても、建設的じゃないだろうしねぇ。

 闇に包まれたリビングを見ながら、オレはゆっくりと深呼吸。

 

 髪の毛一本すら残さず、徹底的に掃除しました。

 うん、正確に言おう。

 

 “ここで四人が生活していた痕跡を殲滅しました”

 

 四人のうち、二人は抜け殻(遺体)すら無いし、一人は寝室に安置されてるし。

 

 もうひとつは【しかばね】だしねぇ。

 

「【まあ】【自己満足以外の】【なにものでもないわな】」

 

 呟いた言葉も、宵闇の彼方へ消えていく。誰に聞かれるでもなく。誰に知られるでもなく。

 

 奥深くへと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【群雲琢磨】を【仕舞い込む】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりと、左目を閉じる。右目は眼帯着用。最初から否定した光。

 もう一つの瞳を閉じれば、目の前に広がるは、圧倒的な闇。

 

 こんなにも簡単に【逢える】のに。なぜ人は闇を恐れるのだろうか?

 あまりにも【逢う事】が困難なのに。なぜ人は光を求めるのだろうか?

 

 遠すぎる光なんて要らない。すぐそこにいる闇でいい。

 神の導く光なんて要らない。ただ、共にある闇がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らしくないな、琢磨」

 

 ふと、聞こえてきた【声】に瞳を開ければ。

 

 明るいリビング。中央にある三角テーブルを囲む、三人の魔法少女。

 

「どう考えても、杏子の影響なんだけどね」

「あたしのせいにするなよ」

「無神論者なオレが、神を例えにするようになったのは、どう考えても杏子のせいだよ」

「そんなにあたしが大好きか」

「そんなにあなたが大好きさ」

 

 電子タバコを咥えながら。飴玉付きの白い棒を咥えながら。オレタチは笑いあう。

 

「そろそろ来ないと、紅茶が冷めちゃうわよ?」

「こなくていいよ。

 たくちゃんの分も、ゆまが食べる!!」

 

 杏子の後ろ。三角テーブルにいるマミさんと、ケーキを前に目を輝かせるゆま。

 

 

【それは】【いつか】【見たのかもしれない風景】

【それは】【いつか】【見たかったのかもしれない景色】

 

「来いよ、琢磨」

 

 差し出された手は、あまりにも優しい(愚かな)オレだけが見る世界。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “Look at Me”ですらない“Rosso fantasma”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “二度と、オレを見る事は無い”哀れな“最愛の幻想”

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いけないよ」

 

 だからこそ【群雲琢磨】は言う。

 

「行けないし、往けないし、逝けないんだ」

 

 その言葉を聞いて、杏子は苦笑する。

 

「ったく。

 しょうがない奴だなぁ」

 

 それは、いつか見た彼女の笑顔。それは、最後に見たはずの魔女の笑顔。

 

 ()()()()()()()()真っ赤な嘘(彼女の笑顔)

 

「お茶会の準備をして、待ってるわね」

「はやくこないと、たくちゃんの分も食べちゃうからね!」

 

 笑顔で手を振る二人に、オレも手を振り返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、琢磨」

 

 声を掛けられ、視線を向ければ。そこにいるのは【佐倉杏子】で。

 

「あたしは、お前のモノだよな?」

 

 煌びやかな(魔女の)衣装のサクラキョウコで。

 

「オレは、あなたのモノだよ」

 

 だから、群雲琢磨は佐倉杏子のモノでしかなくて。

 

「だからお前は【殲滅屍】を?」

「そうさ」

 

 だから、群雲琢磨(自分)()モノにする(命を奪う)のは、佐倉杏子が最初で最後。

 魔女や使い魔はカウントされない。あれらは“生きている”とは言い難い。

 なぜならば。その“存在”は“異星物”により歪められた“モノ”でしかないからだ。

 

「だからお前は【ウィキッドデリート】なのか?」

「【そうさ】」

 

 魔女(ウィキッド)殺す(デリート)者。あの白い魔女は、とてもいい名前を与えてくれた。

 

 群雲琢磨はここまでだ。仕舞い込んで蓋をして、奥深くで瞳を閉じて、闇の中に沈んだ先で、愛する彼女の夢を見る。

 替わりに変わって、代わって動くは殲滅屍。群雲琢磨を守護する為に。体に住み着く(【】)殲滅屍。

 殲滅するのはただの屍。群雲琢磨ですらない、ただのしかばね。

 

「【へんじがない】【ただのしかばねのようだ】」

 

 瞳を開けば、目の前には闇に包まれたリビング。だってしかばねは、夢なんて見ないんだから。

 

「【しかし】【残念な事に】」

 

 <電気操作(Electrical Communication)>を応用し、磁力を操作。便利だねぇ。

 “内側から施錠”するのさえ、電磁障壁(アースチェイン)の応用で充分に可能。

 

「【名前が決まってないんだよね】【電磁障壁(アースチェイン)の前段階】」

 

 『電磁の魔弾』にしろ『短剣思考(Knife of Liberty)』にしろ。自分の周りに磁気を纏わす『前段階』があってこそ。<操作収束(Electrical Overclocking)>を脳に集約させる技能なら、コレは“空間”に収束させる技能。

 

「【まあ】【後で考えようか】」

 

 ベランダから、地上へと視線を向ければ。マンション前に止まるのは赤いランプの車。

 

 巴マミの遺体は、密室状態の部屋で発見される。

 他の人間の痕跡は無い。オレが消したし。

 外傷もないから、しばらく後“心不全”あたりで処理されるだろう。社会はそう出来ている。

 

 それでいい。彼女の不幸は、このウィキッドが殲滅した。赤の他人が知る必要も、術も無い。

 ここで、他に生活していた少女達がいた。その痕跡は、このウィキッドが殲滅した。知られてたまるか。

 

 だからこそ。オレは【殲滅屍(ウィキッドデリート)】でいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE ウィキッド

 

 ボロボロのステンドグラスが、辛うじて太陽の光を反射する。

 そんな光に価値は無い。しかばねはただ、腐って果てるだけだ。

 

 もちろん、そのままでいるほど【オレ】は【自分】を捨ててはいないがね。

 

 振り返る必要など無い。その言葉が決戦を告げる。

 

 

 

 

 

 

「織莉子が動いた。

 どうやら、詰める気のようだね」




次回予告

全てのモノの目的が

完全に判明していなくても


時間は進む どんどん進む





だが、その時間を止められるものが、確かにいるのだ





百五十章 来るがいい、最悪の絶望

































TIPS 有頂天孵卵器ハジヶえ★ウザス


来た! ついに来た!! 出番来た!!! これで勝つる!!!!
皆が愛してやまない、むしろ病んでるのはこのボク、ハジヶえだよ!!!!

今回は業火2本立て! あっつぅぅぅぅい!!!




一つ目は、散々引っ張った挙句、結局本編で語られちゃった【】についてだね!!

【】の名称は墨付き括弧 もうこれだけで解説が終わったようなものだよね!!





え? いるの? しょうがないなぁ(ドヤァ





元々は“考えたく無い事を考えないようにする”たくちゃんの“代替品”として“肉体を動かす=言葉を発する”たくちゃんカッコ仮
これが始まりだったね
実際、たくちゃんが“言いたくないけど言わなきゃいけない事を言う”為の存在を【住み着かせた】のは“百十五章”が最初
しかも、杏子に対してだったからね

そして、本作において、初めて【】を使ったのは、実は織莉子なんだよ!! by九十七章

だからこそ、織莉子の用いた“殲滅屍ウィキッドデリート”を、たくちゃんは【住み着かせた】わけだね!!!!

もしも織莉子が【白き髪に緑の衣装を纏いし小さき肉体に強大な狂気を内包せし白鞘の侍銃士】とか呼んでたらと思うと、あまりの芳しさに腹筋がやばかっただろうね!! チッ












続いてはもちろん、パロットラ(略)マグネ(略)だよ!!

銃使いである巴マミを相棒として、見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)だったたくちゃん
ティロフィナを模倣しやがったたくちゃんが、無限の魔弾((笑))を取り入れないはずもない!!

従来は“普段使用する銃器で使用できない”弾丸の利用法として、周りにばら撒いて電磁化 一斉掃射するLv2技能だね
短剣思考(Knife of Liberty)は磁気化したナイフを操作する技能だから、それの射撃バージョンだと思ってもらえればいいよ!!
実際、ナイフを射出する事も出来るしね!!

欠点をあげるなら、やっぱり“前準備”だね!! 周りの空間を磁気化させるだけじゃなく、ばら撒いた弾丸も磁気化しないと、射出なんて出来ないもん!!
そんな“前準備”が必要な技能ばかりを発展させちゃったからこそ、時間稼ぎの意味も込めて、たくちゃんが“戯言”を用いて、場を掻き乱すようになったんだよ?





















やったぁぁぁ! できたぁ! 全部できたぁ!! 褒めてよ琢磨くーん!!! あーっはっはっはぁ!!!!!

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