無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「つまり、群雲君は」
「魔女の気配を追いかけた結果」
「偶然、この街に来た、と」

……なんで、台詞を三等分するん?(´・ω・`)


十一章 鋭く、冷たく

SIDE 群雲琢磨

 

 オレは、事情を説明した。

 と、言ってもたいしたことではない。

 

 キュゥべえと契約して、魔女狩りの為に放浪し、この街で魔女の結界を見つけて中に入り、戦闘中に三人に会いました。

 

 わぉ、わかりやすくて、単純。

 

「じゃあ、テリトリーを広げるとか、そういう意味合いはないのね?」

 

 ……ほわぁい?

 

GS(グリーフシード)は、魔女の卵であると同時に、SG(ソウルジェム)を浄化できる唯一の物。

 それを目的に争う魔法少女もいるのよ。

 悲しい事だけどね」

「悲しい事、ねぇ」

「マミのような魔法少女は珍しいんだよ」

「……まあ、想像に難しくないな。

 人間誰しも、利益と見返りを考えるからね」

「……冷たい言い方ね」

 

 悲しそうな顔せんでくれ。

 こちとら、そんな大人にばかり、囲まれててん(´・ω・`)

 

「まあ、巴先輩が優しいのは分かった」

「納得する所、そこなの?」

「わけがわからないよ」

「黙れナマモノ。

 ついでに言えば、他二人の先輩が優しいだろう事も、想像はつく」

 

 鹿目先輩が優しいのは、先程の魔女空間で理解してるし、そんな二人と一緒にいる暁美先輩も、実は極悪人って事はないだろう。

 ……多分。

 対人経験、ほとんど無いのよ、オレ。

 

「と言うか……先輩って?」

「自分、元小学生。

 そちら三人、中学生」

 

 暁美先輩の質問に答えたら、沈黙が降りた。

 ……?

 

「小学生なの!?」

 

 鹿目先輩が、声を上げた。

 

「元、ね」

「元って……」

「行ってねぇもの。

 最初の使い魔戦でメチャクチャ苦労したもので「こりゃ、あんなとこ行ってる暇ねぇな」と」

「あんなとこって……」

「つっこんだ質問をするけど、親は?」

「入学式に事故で死んだ。

 てか、親がいたら放浪なんぞ出来ないんじゃね?」

 

 オレの言葉を最後に、再び沈黙が降りる。

 ……なんなの?

 

「……ごめんなさい」

「何故に、鹿目先輩が謝る!?

 他二人も、何を悲しげな表情をするの!? イミフ!!

 そして変わらず無表情なナマモノがなんかムカつくからそぉい!!!」

「ぎゅっぷい!?」

 

 ……せんせー、はなしがすすみませーん(´・ω・`)ノ

 

 

 

 

 

SIDE 巴マミ

 

 魔女空間で、出会った少年。

 男の子なのに、キュゥべえと契約して。

 子供なのに、魔女と戦う為に旅をしていて。

 年下なのに、妙にしっかりした考えを持っていて。

 でも彼は――――――やっぱり、子供で。

 

「失礼、取り乱しました」

 

 先程と同じように、落ち着いて紅茶を飲む少年は……。

 どこか、自分と同じような気がして。

 

「とりあえず、こっちから質問」

 

 眼鏡を指で押し上げながら、群雲君は手を上げる。

 

「先輩達は魔法少女である」

「えぇ」

「……オレって、魔法少女なん?」

 

 ……えっと……どうなのかしら?

 

「過去にも、琢磨のように、僕と契約した男性はいたよ」

 

 それは、興味があるわね。

 

「その内の一人は、自分の事を“魔人”と呼んでいたね」

 

 魔人……あまり良い印象を持たない呼び方ね。

 

「その人の願いは、何だったの?」

 

 鹿目さんの質問に、キュゥべえは即座に答えてくれた。

 もしかしたら、群雲君の件があるから、調べておいたのかもしれないわね。

 

「“魔王の暴挙を止める事”だよ」

「……ちょっと待て」

 

 その答えを聞いて、群雲君が声を上げる。

 私を含めた全員が、群雲君に集中する。

 背が低く、眼鏡が少しずれていたから、長い白髪の間から、彼の目が見えた。

 黒と緑のオッドアイ。

 SG(ソウルジェム)が右目に入った影響だと、彼とキュゥべえが言っていた。

 その右目の輝きは暖かく、左目の輝きは鋭い。

 浄化直後だから、右目の輝きはSG(ソウルジェム)のものであるはず。

 ならば……本来の彼の輝きは左。

 どんな人生を歩んだら、こんな小さな少年が、これほどの瞳を持てるのだろう?

 鋭く、冷たく。

 

 ――――悲しい輝きを。

 

「何故“魔王”なんだ?」

「どういうことだい?」

「契約によって得た力を、傍若無人に使った。

 そんな状況じゃないと“暴挙を止める”なんで願いは、出てこないんじゃないのか?」

 

 群雲くんの言葉が、よく理解出来なかった。

 

「だからこそ“魔人を名乗った人物”は、契約をしたんだろうね」

 

 そして、キュゥべえの言葉を聞いて、全容を想像する事が出来た。

 

「つまり、魔法少女(男?)としての力を、魔女討伐ではなく、自分の好きなように使った“魔王”が現れた結果。

 同種の契約者(そんざい)が生まれることになった、と?」

「その解釈でいいだろうね」

 

 キュゥべえの言葉に群雲君は「頭いてぇ~」と呟きながら、残り僅かな紅茶を飲み干した。

 

「魔人群雲かぁ~。

 胸が痛くなるな」

 

 ……熱くなる、じゃないのね。

 

「じゃ、次の質問。

 先輩達は、この街を拠点に、魔女狩りをしている」

「えぇ、そうね。

 学校があるから、それほど遠出はできないし」

 

 質問に答えると、群雲君は眼鏡を中指で押し上げた状態で固まった。

 ……考える時の癖なのかしらね。

 

「それじゃ、お世話になりました」

 

 そう言って、群雲君はおもむろに立ち上がり

 

「ちょっと待って!

 なんでそうなるの!?」

 

 鹿目さんに呼び止められた。

 

「だってオレがいたら、取り分減る訳で」

 

 GS(グリーフシード)の事なのだろうけど、それを“取り分”と明言する辺り。

 

「別にオレ、見ず知らずの誰かの為に、魔法少j……魔人やってるわけでもないしな」

 

 彼の冷酷さが伺える。

 

「じゃあ…なんで魔女を?」

「自分の為」

 

 暁美さんの質問に、群雲君は即答した。

 

「オレは、いつだって“自分の為”に動いてる。

 見ず知らずの人がどうなろうと、それは対岸の火事。

 知ったこっちゃない」

 

 そう言って、彼は笑う。

 前髪と眼鏡で、ほとんど顔が見えず、口だけで笑っている。

 不気味……そんな印象を受ける笑顔だ。

 でも……。

 

「じゃあ、何で助けてくれたの?」

 

 私の質問に、群雲君は首を傾げる。

 

「最初、挨拶をする前に。

 私達の後から迫っていた使い魔を、どうして倒してくれたの?」

「……結果論。

 倒した使い魔が、たまたま先輩達の後ろにいただけでしょ?」

「なら、どうしてその後に、私達に質問したの?」

 

 立て続けの私の質問に、群雲君は眼鏡を押し上げて静止する。

 

「自分の為に、魔女を狩る。

 それは、GS(グリーフシード)目当て、と言う事でしょう?

 なら、私達の動向を気にする必要はなかったわ」

 

 何処か、自分と同じような気がしたから。

 

「その後も、どうして自ら先頭に立って進んだの?

 魔女との戦いも、どうしてわざわざ近距離武器を選んだの?

 どうして群雲君は……GS(グリーフシード)を使わずに、私達に渡したの?」

 

 きっと彼は、自覚していないのだ。

 彼の行動は、少しでも私達から危険を遠ざける為の行動だったと。

 

「……結果論……かな」

「そうね、結果論ね」

 

 彼の言葉に同意した私を、全員が見つめる。

 

「なら、群雲君はこの街で、何も得ていないわね」

「……まあ……」

 

 曖昧な彼の返事に、私は笑みを浮かべた。

 

 私も、一人で戦ってきた。

 彼も、一人で戦ってきた。

 私は、鹿目さんと暁美さんに出会い、独りではなくなった。

 なら……。

 

「じゃあ、何かを得るまで、私たちと一緒に、この街で戦ってみるのはどうかしら?」

 

 群雲君も、独りでいる必要はないんだ。




次回予告

人とは、思考する生き物である
それは、生き方の大まかな指針を決めるもの

しかし、この舞台には残念ながら
それ以外も、確かにいるわけで





十二章 調子が狂いっぱなしだ

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