無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「ちょっと! 離しなさいよ!!」
「うるせぇ、ババア!!
 こちとら人数が増えたせいで、やりくりが大変なんだよ!!
 この小麦粉はわたさねぇっ!!!!」

「わけが「てめぇはとっとと、お一人様一パック限りの卵をキープしてこいやぁ!!」わからないよ」


百十九章 将来が心配

SIDE 巴マミ

 

「優木さんは、最近どう?」

「相変わらず、平穏ですよぉ~?」

 

 帰宅途中、私は優木さんと合流し、並んで歩いていた。

 優木沙々。魔法少女である私の、数少ない()()()()()だ。

 

「平穏なのは、良い事じゃない」

「そうなんですけどぉ、それはそれで退屈ですよ~」

「あら、優木さんなら、面白い事でも見つけていそうだけれど」

「面白い事ですか~?」

 

 私の言葉に、優木さんは立ち止まって考え込んでしまった。そこまで、深い意味で言った訳ではないのだけれど。

 しばらくして、優木さんが首を傾げながら言った。

 

「不登校なのか、微妙な生徒が居るってのは、聞いた事ありますけどねぇ~。

 全然、知り合いでもなんでもないんですけど」

 

 知り合いじゃないって……。いや、それほどに違和感があるという事かしら。

 

「詳しく、話をしてもらってもいいかしら?」

「お? 食い付きましたねぇ。巴さんもやっぱり気になります? ですよね~」

 

 自分の提示した話題が採用されて嬉しいのか、優木さんは上機嫌で話し出す。

 

「いじめられてるんじゃないかって疑惑があった子なんですけどね。

 休みがちだったその子が、ある日を境に性格が明るくなったそうで。

 先生達も一安心だって話ですよ~」

 

 ある日を境に、ね。やっぱり“契約”かしら? キュゥべえの事を知っている身としては、その可能性が真っ先に浮かぶ。

 

「たしか“呉さん”です。

 ただ、それでも微妙に休みがちらしくて~。

 病弱って訳でもないのに、不思議な話ですよねぇ」

 

 ……ここで、真っ先に琢磨君を連想してしまうあたり、あの子も異常な存在感よね。

 

 琢磨君は、本当なら小学六年。学校に行っていないと駄目な12歳。

 でもあの子は「学校なんかよりも、魔人の方が重要ですしおすし」とか言ってる子。おすし?

 まあ、佐倉さんも今は学校行ってないし、一緒だったゆまちゃんも当然……。

 

 家の同居人、将来が心配すぎて、胃が痛くなるわね……。

 

 その“呉さん”というのも、魔法少女となっていたら。学業より魔女狩りを優先するような子だとすれば。

 説明可能な分、怪しいわね。

 

 いつもの十字路で優木さんと別れ、私は帰路を急ぐ。

 キュゥべえなら、呉さんが魔法少女なのかどうか、知っている筈。確認は早いほうがいいわ。

 

 

 

 

 

SIDE 優木沙々

 

 手を振って、巴さんの背中を見送り、別の道を歩く。

 

「ふ」

 

 どうしよう? 我慢する? うん、無理。

 

「くふふふふふふふふっ」

 

 首尾は上々。ちょろいわ~。見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)ちょろいわぁ~。

 情報なんて、簡単に入手できます。ちょっと高めの立場の人に、魔法でちょちょい。らくしょ~。

 

「これで、潰しあってくれればいいですけどね~」

 

 狙うのはやっぱり、実力者と名高い見滝原の銃闘士(アルマ・フチーレ)です。

 でも、キュゥべえの話では、魔法少女よりも魔人の方が弱いそうで。そっちは後でいいですよね。弱いなら“私の使い魔”でちょちょい。

 私が直接出張るのは、一番最後。最後の一人を倒しちゃえば、自動的に見滝原は私のものですから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 呉キリカ

 

 前方にいた生徒二人が、十字路で別れた。当然、私が尾行するのは“銃闘士”の方。それが織莉子の指示だからね。

 

「妙な手出しをする魔法少女が居るけれど、そちらは気にしなくていいわ」

 

 織莉子がそう言っていたからね。従うのは当然でしょ。

 狙うのは銃闘士。その中での頂点。リーダー格。

 

「っ!?」

 

 お? 前方の銃闘士が歩みを止めた。私も歩みを止めて観察する。

 

「こんな時に……っ!」

 

 少し悩んだ後、銃闘士はSG(ソウルジェム)を手に、別の道へ進んだ。

 流石、私の愛する織莉子。ちゃんと言われてた通りに状況が動いてる。

 

「だったら私が、それを磐石なものにしなきゃね」

 

 銃闘士が向かう場所は確定。なら、先回りでいこう。確実に迎え撃って。

 

「織莉子が指示を出し、私が手を下す」

 

 完璧だよ! 出来ない事なんて、ないさ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SIDE 佐倉杏子

 

[佐倉さん、聞こえてる?]

 

 ゆまと二人、リビングでテレビをみてたら、マミからテレパシー。

 

[マミおねーちゃん?

 どうしたの?]

 

 どうやら、ゆまにも届いていたようだ。先に返事をされた。

 

[魔女結界を察知したわ。

 琢磨君と三人で合流出来る?]

[たくちゃん、いないよ?]

[……説教が必要ね]

 

 あたしに殴り倒され、マミに説教されるのが確定したぞ、琢磨。

 

[テレパシー範囲内かしら?]

[無理だな。

 あたしやゆまも、何回か送ってはみたが、返事が無い]

[どこいったのよ、あの子は!]

[セール会場]

[ティロってやろうかしら?]

[マミおねーちゃんが怖いっ!?]

 

 居ないのに、掻き乱すのか、あいつは。そういう奴だな。知ってる。

 

[私は魔女に向かうから、佐倉さん達は琢磨君を回収して頂戴]

[回収って……いや、マミ一人で大丈夫かよ?]

[もちろん、深追いはしないわ。

 ただ、琢磨君はテレパシーが不慣れすぎて、受信範囲が狭いのよ。

 最初は、同じデパート内ですら届かず、迷子のお呼び出しだったんだから。

 しかも、私が放送で呼ばれたのよ!]

 

 うん、実に琢磨らしい行動だ。最近、二言目には琢磨の愚痴になってるぞ、マミ。

 

[だから、頼んだわよ、佐倉さん]

[ったく、しょうがねーな]

 

 まあ、魔法少女なんだから、魔女を倒すのは当然の事。

 

「いけるな、ゆま?」

「うん!」

 

 元気良く答えたゆまに笑顔を向けながら、あたしは立ち上がる。

 

「琢磨の奴、絶対に殴り倒してやる」

「ゆまもやっていい?」

「武器はやめとけよ?」

「や」

「……治すの、ゆまだぞ?」

「むぅー」

 

 そんな会話をしながら、あたしたちは“家”を出た。




次回予告

遂に出会う、真逆の少女

互いの信念 それ故に




譲り合う事など、ありえない

百二十章 私が創る

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