「人間の死に方の中に、感電死があるからね。
本当に、君達は多彩な死に芸を披露するよね」
「相変わらず、不謹慎だな、ナマモノ」
「で、電気がどうかしたのかい?」
「スルーかよ、慣れてるけど。
前に、全身に電気を纏っていれば、攻撃されないんじゃね?
とか考えて、実行した事があるんだけど」
「どうなったんだい?」
「動けなくなった。
多分、纏った電気が、脳からの電気信号を妨害したみたい。
残念ながら、専門的知識がないから、仮定するしかないけど」
「まあ、普通の人間なら、全身に電気を纏った時点で死ぬよね」
「静電気程度じゃ、意味無いからな。
そういう意味じゃ、
「電気を纏うのは拳。
すなわち“手首から先”の部分。
対して、動かすのは腕。
すなわち“手首より手前”の部分。
なるほど、効果的だね」
「応用出来れば、完璧なんだけどね。
発動したら、その状態を繰り返すだけのプログラムである
そもそも、魔女戦での使い道が無いからな、これ」
「どうして、メインとなる魔女戦で使えないような魔法を、思いつくんだろうね、君は」
「せーの」
「「わけがわからないよ」」
SIDE out
「すごいね……」
「ああ。
そうだな」
杏子とゆまは、観賞していた。二人の
完全に銃撃戦だった。マスケットを編み出し、舞うように回転しながら、的確な射撃を行う巴マミ。
二丁の
刀剣に比べて、圧倒的な威力を持つが、あくまでも直線的でしかない、銃による攻撃。
しかしそれは“飛来する弾丸を回避する能力があって、初めて言える事”である。
そして、この二人はそれを保有していた。
契約すれば、身体能力が上がる。そのままでは魔女に対抗する事など出来ない。
杏子やゆまにだって、弾道を見切る事は不可能ではない。魔法少女とは
飛来する弾丸を、設置したマスケットで防ぎ、時に舞うように回避する巴マミ。
飛来する弾丸を、紙一重で左右へとかわし、時に手に持つ銃で弾き落とす群雲琢磨。
時に二人の弾丸が衝突相殺されたりもする。
そんな、真正面の銃撃戦は、双方の弾切れにより、幕間となる。
「大分、上達したわね」
「巴先輩が学校に行っている間、射撃練習をしてるからね。
ゲーセンのガンシューティングで」
「よく、補導されないわね」
「逃げるからね!」
「胸を張って言う事じゃないわ」
そんな、他愛ない会話をしながら、マミは周りのマスケットを消す。
対する群雲は、自動拳銃の弾倉を交換する。
「なんで、ゲームなのよ?」
「オレの魔法、知ってるでしょ?
<
それを鍛えるには、ガンシューってうってつけだと思うんだが、どうよ?」
「聞かれても、返答に困るわ」
「ですよねー」
補充の終わった銃を、両腋に戻し、群雲は電子タバコを咥える。
「さて、銃撃戦はここまで。
そろそろ、攻めさせてもらうぜ?」
接近戦においては、群雲に分がある。それを理解している為、当然間合いを詰めるのが重要。
「させないわよ」
接近戦においては、群雲に分がある。それを理解している為、当然間合いを詰めさせないのが重要。
「佐倉さんとゆまちゃんが一緒になって。
自分に求められる役割を考えてみたわ」
マミの言葉に、群雲は煙を吐きながら、耳を傾ける。
「今までは、前に出る琢磨君を、私が後から援護するのが最適だった。
でも、佐倉さんの武器は多節槍だし、ゆまちゃんのはハンマー。
四人の布陣を考えるなら、やっぱり私が後になるわね」
「オレが後に回るのも、ありだけどな。
それを想定して、
「琢磨君は、どの距離でも戦えるものね。
でも、私は遠距離に重点を置いている。
その上で“前衛が三人になる”とすれば」
マミが、ゆっくりと右手を上げる。それを合図に、マスケットが一丁、設置された。
地面にではなく、空中に。その銃口を群雲に向けて。
「私の銃は、単発式。
それを補うには」
新たに、マスケットが空中に設置される。二丁、四丁、八丁。加速度的に増えていく。
「単純な話。
“銃の数を増やせば良い”のよ」
無数のマスケットが、マミの周りに設置された。地面にではなく、空中に。
「そうきたか……。
オレとは逆に、火力ではなく手数を……」
僅かに顔を引き攣らせながら、群雲は電子タバコを右手の<
「凌ぎきれるかしら?
繰り出される魔法の弾幕。
無限の魔弾を」
「さあ、どうだろうね?」
互いに笑みを浮かべ。戦闘が再開する。
「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!!」
ほぼ同時に、全てのマスケットが火を噴く。迫り来る無数の弾丸は、まさにその名に相応しい。
それに対し群雲は、ゆっくりと右手の平を正面に突き出す。
「回避するには多すぎる。
だが、当たらなければ、どうという事は無い!」
そして、無数の弾丸が。
空中で静止した。
「っ!?」
「はぁ!?」
「????」
三者三様のリアクション。しかし、共通するのは驚愕。
まるで、群雲の前に見えない壁でもあるかのように。
「……くっそ」
そして、群雲自身は悪態をつく。
「数が多すぎる……全部は無理だったか」
何発かは、止まる事無く群雲を貫いていた。しかし、致命傷には至らない。
「当たらなければ、どうという事は無い。
だが、当たるとやっぱり痛い!」
「駄目じゃねぇか……」
叫ぶ群雲に、思わず杏子が呟く。それに対し、マミはゆっくりと周りの使用済みマスケットを消す。
「防御系魔法?
琢磨君らしくないわね」
「うん、オレの事を巴先輩がどう思ってるのか解る一言だね。
全肯定しますが、なにか?」
無数の弾丸が、空中で静止する中。群雲は言葉を紡ぐ。
「先日の、四人での魔女戦。
あの時は、オレが右腕を失った。
まあ、自業自得ではあったし、時間と魔力をかければ、その内生えてきたと思うが」
「生えるって……」
「まあ、それは置いといて。
誰かが怪我をした場合、当然治療する。
オレ以外が怪我をした場合を仮定すると、必要となるのは、治療を終えるまでの安全確保。
で、考えたのが
<
そうだな……『
発電と磁力は、物理学的に深い関係がある。
電気を発生、収束させる<
「この間、TVの教育番組で、電磁石についてやってたんでね。
なんとなく、オレにも出来る様な気はしていた」
群雲が右手を下ろすと同時に、宙に浮いていた無数の弾丸も、重力に従い地面に落ちる。
「でも、まだまだ未完成だな。
覚えたての付け焼刃じゃ、こんなもんか」
体の状態を確認し、戦闘継続が可能であると判断した群雲は。
「それでも、3連戦は辛い。
そろそろ、決めさせてもらうぜ」
腰の後から、ショットガンを取り出した。
次回予告
それは、ある意味、必然の流れであったのかもしれない
まったく違う構造によって
まったく違う過程をもって
それでも、まったく同じ響きをもつ
それは、ある意味、必然の流れ
しかし、その決着においては……
百十二章 ティロ・フィナーレ対決