無法魔人たくま☆マギカ   作:三剣

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「なんでもかんでも、電気を纏わせればいいって訳じゃない」
「人間の死に方の中に、感電死があるからね。
 本当に、君達は多彩な死に芸を披露するよね」
「相変わらず、不謹慎だな、ナマモノ」
「で、電気がどうかしたのかい?」
「スルーかよ、慣れてるけど。
 前に、全身に電気を纏っていれば、攻撃されないんじゃね?
 とか考えて、実行した事があるんだけど」
「どうなったんだい?」
「動けなくなった。
 多分、纏った電気が、脳からの電気信号を妨害したみたい。
 残念ながら、専門的知識がないから、仮定するしかないけど」
「まあ、普通の人間なら、全身に電気を纏った時点で死ぬよね」
「静電気程度じゃ、意味無いからな。
 そういう意味じゃ、黒く帯電する拳(ブラストナックル)は、ベストな形とも言える」
「電気を纏うのは拳。
 すなわち“手首から先”の部分。
 対して、動かすのは腕。
 すなわち“手首より手前”の部分。
 なるほど、効果的だね」
「応用出来れば、完璧なんだけどね。
 発動したら、その状態を繰り返すだけのプログラムである黒腕の連撃(モードガトリング)しか、今の所使い道がない。
 そもそも、魔女戦での使い道が無いからな、これ」
「どうして、メインとなる魔女戦で使えないような魔法を、思いつくんだろうね、君は」
「せーの」
「「わけがわからないよ」」


百十一章 付け焼刃

SIDE out

 

「すごいね……」

「ああ。

 そうだな」

 

 杏子とゆまは、観賞していた。二人の銃闘士(アルマ・フチーレ)の舞を。

 

 完全に銃撃戦だった。マスケットを編み出し、舞うように回転しながら、的確な射撃を行う巴マミ。

 二丁の自動拳銃(オートマチック)で、一発ごとに自分の軸を左右にずらしながら、的確な射撃を行う群雲琢磨。

 刀剣に比べて、圧倒的な威力を持つが、あくまでも直線的でしかない、銃による攻撃。

 しかしそれは“飛来する弾丸を回避する能力があって、初めて言える事”である。

 そして、この二人はそれを保有していた。

 

 契約すれば、身体能力が上がる。そのままでは魔女に対抗する事など出来ない。

 杏子やゆまにだって、弾道を見切る事は不可能ではない。魔法少女とは()()()()()()だ。

 

 飛来する弾丸を、設置したマスケットで防ぎ、時に舞うように回避する巴マミ。

 飛来する弾丸を、紙一重で左右へとかわし、時に手に持つ銃で弾き落とす群雲琢磨。

 時に二人の弾丸が衝突相殺されたりもする。

 そんな、真正面の銃撃戦は、双方の弾切れにより、幕間となる。

 

「大分、上達したわね」

「巴先輩が学校に行っている間、射撃練習をしてるからね。

 ゲーセンのガンシューティングで」

「よく、補導されないわね」

「逃げるからね!」

「胸を張って言う事じゃないわ」

 

 そんな、他愛ない会話をしながら、マミは周りのマスケットを消す。

 対する群雲は、自動拳銃の弾倉を交換する。

 

「なんで、ゲームなのよ?」

「オレの魔法、知ってるでしょ?

 <電気操作(Electrical Communication)>でコントロールした方が、射撃速度も命中精度も上。

 それを鍛えるには、ガンシューってうってつけだと思うんだが、どうよ?」

「聞かれても、返答に困るわ」

「ですよねー」

 

 補充の終わった銃を、両腋に戻し、群雲は電子タバコを咥える。

 

「さて、銃撃戦はここまで。

 そろそろ、攻めさせてもらうぜ?」

 

 接近戦においては、群雲に分がある。それを理解している為、当然間合いを詰めるのが重要。

 

「させないわよ」

 

 接近戦においては、群雲に分がある。それを理解している為、当然間合いを詰めさせないのが重要。

 

「佐倉さんとゆまちゃんが一緒になって。

 自分に求められる役割を考えてみたわ」

 

 マミの言葉に、群雲は煙を吐きながら、耳を傾ける。

 

「今までは、前に出る琢磨君を、私が後から援護するのが最適だった。

 でも、佐倉さんの武器は多節槍だし、ゆまちゃんのはハンマー。

 四人の布陣を考えるなら、やっぱり私が後になるわね」

「オレが後に回るのも、ありだけどな。

 それを想定して、炸裂電磁銃(ティロ・フィナーレ)を考え付いた訳だし」

「琢磨君は、どの距離でも戦えるものね。

 でも、私は遠距離に重点を置いている。

 その上で“前衛が三人になる”とすれば」

 

 マミが、ゆっくりと右手を上げる。それを合図に、マスケットが一丁、設置された。

 地面にではなく、空中に。その銃口を群雲に向けて。

 

「私の銃は、単発式。

 それを補うには」

 

 新たに、マスケットが空中に設置される。二丁、四丁、八丁。加速度的に増えていく。

 

「単純な話。

 “銃の数を増やせば良い”のよ」

 

 無数のマスケットが、マミの周りに設置された。地面にではなく、空中に。

 

「そうきたか……。

 オレとは逆に、火力ではなく手数を……」

 

 僅かに顔を引き攣らせながら、群雲は電子タバコを右手の<部位倉庫(Parts Pocket)>に戻し、<操作収束(Electrical Overclocking)>を発動する。

 

「凌ぎきれるかしら?

 繰り出される魔法の弾幕。

 無限の魔弾を」

「さあ、どうだろうね?」

 

 互いに笑みを浮かべ。戦闘が再開する。

 

「パロットラ・マギカ・エドゥ・インフィニータ!!」

 

 ほぼ同時に、全てのマスケットが火を噴く。迫り来る無数の弾丸は、まさにその名に相応しい。

 それに対し群雲は、ゆっくりと右手の平を正面に突き出す。

 

「回避するには多すぎる。

 だが、当たらなければ、どうという事は無い!」

 

 そして、無数の弾丸が。

 空中で静止した。

 

「っ!?」

「はぁ!?」

「????」

 

 三者三様のリアクション。しかし、共通するのは驚愕。

 まるで、群雲の前に見えない壁でもあるかのように。

 

「……くっそ」

 

 そして、群雲自身は悪態をつく。

 

「数が多すぎる……全部は無理だったか」

 

 何発かは、止まる事無く群雲を貫いていた。しかし、致命傷には至らない。

 

「当たらなければ、どうという事は無い。

 だが、当たるとやっぱり痛い!」

「駄目じゃねぇか……」

 

 叫ぶ群雲に、思わず杏子が呟く。それに対し、マミはゆっくりと周りの使用済みマスケットを消す。

 

「防御系魔法?

 琢磨君らしくないわね」

「うん、オレの事を巴先輩がどう思ってるのか解る一言だね。

 全肯定しますが、なにか?」

 

 無数の弾丸が、空中で静止する中。群雲は言葉を紡ぐ。

 

「先日の、四人での魔女戦。

 あの時は、オレが右腕を失った。

 まあ、自業自得ではあったし、時間と魔力をかければ、その内生えてきたと思うが」

「生えるって……」

「まあ、それは置いといて。

 誰かが怪我をした場合、当然治療する。

 オレ以外が怪我をした場合を仮定すると、必要となるのは、治療を終えるまでの安全確保。

 で、考えたのが()()だ。

 <操作収束(Electrical Overclocking)>の応用編。

 そうだな……『電磁障壁(アースチェイン)』とでも名付けようか」

 

 発電と磁力は、物理学的に深い関係がある。

 電気を発生、収束させる<操作収束(Electrical Overclocking)>を応用し、自身の前に磁力の壁を作り出したのだ。

 

「この間、TVの教育番組で、電磁石についてやってたんでね。

 なんとなく、オレにも出来る様な気はしていた」

 

 群雲が右手を下ろすと同時に、宙に浮いていた無数の弾丸も、重力に従い地面に落ちる。

 

「でも、まだまだ未完成だな。

 覚えたての付け焼刃じゃ、こんなもんか」

 

 体の状態を確認し、戦闘継続が可能であると判断した群雲は。

 

「それでも、3連戦は辛い。

 そろそろ、決めさせてもらうぜ」

 

 腰の後から、ショットガンを取り出した。




次回予告

それは、ある意味、必然の流れであったのかもしれない

まったく違う構造によって

まったく違う過程をもって

それでも、まったく同じ響きをもつ

それは、ある意味、必然の流れ

しかし、その決着においては……




百十二章 ティロ・フィナーレ対決

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