岸波白野の転生物語【まじこい編】【完結】   作:雷鳥

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今回は川神学園の若干異常な部分の説明回。



【特殊な学園】

「んじゃ。今日のHR終わるぞー」

 

 宇佐美先生のやる気のない終礼と共に今日の授業が終わる。

 

「疲れた……」

 

 試験やった時も思ったけど、レベルが高い。いやホントなめてたね。

 しかも授業中は個性的なメンツ外はみんなピリピリしているし、やっぱ環境って大事だね。

 ただまあ聖杯戦争時の空気に比べればそれ程って感じなので少し戸惑う程度で済んだけど。

 

「ねえねえユーキ、良かったら学校内を案内してあげようか?」 

 

「いいのか? 助かるよ小雪」

 

 百代の決闘が終わるまで何しようか悩んでいると、小雪がやって来て学校案内を提案してくれた。元々校舎を見て回ろうと思っていたので、喜んでその提案を受け入れた。

 

「うん、任せてよ!」

 

 小雪が嬉しそうに胸を張る。そして揺れる……発育良すぎじゃないですかね?

 

「じゃあ義経達にも声を掛けるよ。小雪は準達には声をかけたのか?」

 

 胸に行った目線を逸らしつつ、どうせならみんなでと思って提案する。

 すると小雪は僅かに視線を逸らしながら口を開いた。

 

「あ、えっと、二人は用事があるって」

 

「そっか。じゃあ義経達だけ誘うか」

 

 しどろもどろに説明する小雪に首を傾げつつ、席を立って義経達に尋ねるも、こちらが近寄った瞬間に弁慶と与一には断られてしまった。

 

『悪いユウ兄。私、約束があるから』

 

『悪いな兄貴、俺は偵察に行かねばならない』

 

 そう言って二人はさっさと去り、荷物を仕舞っていた義経が顔を上げて戸惑った表情で辺りを見回して、

 

「あ、あれ? 弁慶と与一は? 決闘の申し込みがあるから一緒に校庭に行こうと思ったのに!?」

 

 と言って少し涙目になった。

 

 ……逃げたな、あの二人。

 こんな時だけは息の合う二人だった。

 

 だが自分も今日は校舎の案内に加えて百代の相手もしなきゃならないので勘弁願いたい。

 

「義経、今日は無理だが明日以降は一緒に決闘に付き合ってやる。それで許してくれ」

 

「お兄ちゃんはあの武神と戦うから仕方ない。義経は我慢する」

 

 結局決闘の申し込みの生徒は義経に任せて小雪と校舎を周る事にした。

 

 最初に案内されたのは教室を出てすぐだった。

 

「この廊下に設置された掲示板に色々な依頼や勝負、学校の知らせが張られているんだよ。因みに報酬は基本的に食券」

 

「へ~、部員との囲碁対決、ヒロイン談義、ゆるキャラ演説会……色々あるんだな」

 

 二年の教室前に設置された掲示板の掲示物に目を通す。

 

 基本的には勝負の張り出しが多いな。

 

 陸上部でハンデ有りで100メートル走で勝ったら食券10枚とか、手品で種を見破れたら食券5枚等々がある。

 他には部活の催しに参加してくれた人には食券1枚プレゼントみたいなものまであった。

 

「参加したいなら明記された時間までに指定された場所に行くといいよ」

 

「了解」

 

 ちょっと頬が赤い小雪の説明を聞きながら更に校舎を見て回る。

 

 

 

 

 次に案内されたのはどことなく淀んだ空気を放つ使われていない教室の並ぶ階だった。

 

「ここは?」

 

「入れば分かるよ~」

 

 小雪が愉快そうに笑って教室の扉を開ける。すると中に居た生徒達が一斉に、いや一部の物以外は振り返えらずにカードゲームやボードゲームに勤しんでいた。

 

「……ここはって、大和に冬馬?」

 

「おや優季君、奇遇ですね」

 

「よ。小雪に校舎の案内をして貰っているんだって?」

 

 教室に見知った二人がいたのでそちらに近寄る。

 

「ここはみんなで遊ぶ為の教室か?」

 

「違う違う。あれ見ててみ」

 

 大和に指差されてトランプで遊んでいる生徒を見ていると、負けた生徒が勝った生徒に現金を渡していた。

 

「あ~なるほど、賭場って事か」

 

「そのとおり。因みに学校側は知っていて黙認しているので問題ありません」

 

「……自己責任って事か。まあ確かにこういう所で色々学ぶ事は多いだろうが……」

 

 ホント、色々な意味で凄いなこの学園は。

 

「そう言えばユウ、姉さんと戦うんだろ? 相変わらず命知らずだな」

 

「そうか? 友達が一番楽しむ事を一緒にやるのは、友達として普通だと思うが? あ、悪い事は別だからな」

 

 自分の言葉に大和と冬馬が驚いたように目を見開き、小雪は何故か嬉しそうに微笑んでいた。

 

「……そっか、そうだな。姉さんが一番楽しいのは戦っている時だもんな」

 

「なるほど。こういう所にユキやモモ先輩は惹かれている訳ですね。いやはや天性の人誑しですね優季君は」

 

「どういうことだよ!?」

 

 なんか知力ブースト組の二人が頷きあっているが、こっちは意味が分からず困惑する。

 

「ユーキは今のままでいいって事だよ……でもフラグ建築能力だけはなんとかしたいかも」

 

「ん? 最後なんて言ったんだ小雪?」

 

 最後の方だけ物凄い小声だった為に聞き逃したので尋ねる。

 

「な、なんでもないよ~。ささ、次行こう!」

 

 顔を赤くした小雪に腕を引っ張られてそのまま賭場を後にした。

 

 

 

 

 一通り校舎を回った後、部活棟に移動して、空いている和室を紹介される。

 

「ここはね。学校側からの依頼を競り落とす競りに使われる部屋だよ。ここが空いていない時は別の空き教室を使うの」

 

「依頼に競り?」

 

「うん。生徒が学校側に依頼を頼むの。その場合生徒は依頼料として現金戻し可能の食券を学校に渡して、学校側は渡された食券を競りに掛けて、一番少ない枚数の生徒に依頼を任せるって感じだね」

 

「因みに受け取らなかった残りの食券は?」

 

「胴元の学校の物になるよ」

 

 ……ここ本当に学校か?

 

「参加資格は事件を解決できる実力があるかどうかだね。だから基本的には運動部の部長とかが多いよ。僕と準は代表で冬馬に出て貰っているんだけど、いっつもキャップが市場の最低ライン無視して持って行っちゃうんだよねぇ」

 

「あ~キャップらしいな。報酬よりも事件そのものに首を突っ込みたいって訳か。しかも仲間は風間ファミリー、依頼も完璧にこなすから学校側や周りも何も言えないと?」

 

「そう! さっすがユーキだね、良く分かってる」

 

「ま、少しの間だがファミリーの一員だったしな」

 

 そう言って昔を懐かしむように目を細めて天井を見詰めた。

 その時、ポケットに入れておいた携帯が鳴った。

 画面にはヒュームという文字が出ていた。

 

 ……いつの間に番号を、一度誰のアドレスが入っているのかチェックをすべきかもしれない。

 

「もしもし?」

 

『優季か? もうすぐ百代の試合も終わる。すぐに来い』

 

「了解です」

 

 こちらが返事をすると、ヒュームさんは『それだけだ』と言って切ってしまった。

 うーむ見事なまでに簡潔な伝達だ。ちょっと寂しい。

 

「どうしたのユーキ?」

 

「ん? そろそろ百代との決闘だから来いってさ」

 

「そっか。ねえねえ私も見に行っていい?」

 

「いいんじゃないか? まあダメだったら現場でヒュームさんあたりが注意してくれるさ」

 

 そう言って不安げな眼差しでこちらを見上げていた小雪の頭を優しく撫でる。

 

「じゃあ行くか。あ、ついでに連絡先の交換もしておくか?」

 

「う、うん!」

 

 嬉しそうに携帯を取り出した小雪と連絡先を交換した後、二人で百代の待つ多摩川へと向かった。

 




多分これで殆どの説明回は消化した気がします。
そして次回がこの作品の二度目の山場だ!


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