とは言ってもその少し前ですが、そして驚くがいい、主人公の建築技術に!!
「
その手に気によって白と黒の双剣を具現する。
流石に相手を斬る訳にも行かないので、再現する武器は基本的には刃の無いタイプだ。 まあ人以外ならちゃんと刃のあるタイプで具現させて斬るけどね。
「行くぞお兄ちゃん!」
高速の剣戟が迫る。
「ちょっ、はや、速いって!」
目では追えても身体は付いて行かないんだよ!
気で身体を強化して辛うじて剣で弾く。その度に手から剣が弾かれ、剣は空中で四散する。
足裏から気を放って相手から大きく飛び退きつつ、空中で新しい武器を具現する。
「監獄城チェイテ!」
「っ!?」
突っ込む姿勢だった相手が、武器の名前を聞いて身構える体勢に変更する。
流石に長年稽古しているからこちらの武器も把握されているな。
着地と同時に、自分の右手に自身の身の丈近い長さの黒い槍を生み出して構える。
これを振り回していたんだから、ランサーもやっぱり凄かったんだな。
懐かしさから自然と口が綻び、改め両手でしっかりと槍を持ち、ランサーの技を発動する。
「
石突きから空気属性の気を放出して一気に急加速し、相手に向けて文字通り飛ぶ。
身体に感じる圧に負けないように姿勢を低くして飛行する。
空気抵抗が凄いんだよなぁこの技。ランサーはよく座っていられたもんだ。
「くっ!」
相手が回避するが、それは既に織り込み済みだ。
放出する気を止めて、そのまま身体を反転して腰のバックパックから二枚の札を取り出す。
「
気の込められた札の気を熱気属性に変化させて相手に向けて放つ。
札は炎へと姿を変えて相手に襲い掛かる。
「なんの!」
相手は刀に気を込めて大きく振って炎を全て切り裂く。
相変わらず凄いな。
見惚れながら、しかしその隙を突かせて貰う。
「っ!?」
相手が自身の失策に気付いて驚愕の表情を浮かべる。
炎の風のすぐ後ろに、柄の伸びた槍が迫っていた。
「
笑みを浮かべてその技の名を名乗る。そして同時に、柄の伸びた槍の矛先が、相手の手から刀を弾き飛ばした。
「あっ!」
「はいそれまで~。
審判役として見守っていた
その時、彼女のワカメの様なクセ毛と大きな胸が揺れた。うむ。見事だ。
今回の勝負は義経は武器を落したら負け、自分は義経の斬撃が身体に当たったら負けというルールで戦っていた。
「流石兄貴、『
「ふふ。
片手に小説を持った
「んぐんぐ、ぷはぁ。確かにあれだけ多彩な属性を操れるのはユウ兄だけだからね。いや~川神水も進む進む」
「こ、こら弁慶、飲み過ぎは良くない! 今日は大事な話があるとマープル達も言っていただろう!」
義経が弁慶に詰め寄って弁慶が手に持つ瓢箪を奪おうとする。
それを弁慶が持ち前の高身長を生かして瓢箪を上に持ち上げ、のらりくらりと逃げ周る。
そんな二人を眺めながら傍の木に腰掛けて、改めてこれまでの事を思い出す。
あれからもう数年経つのか……。
病室で目覚めた後、両親に東京都の小笠原諸島にいる事を教えられた。
自分では覚えていないが、なんでも自分が死に瀕した際に見せた出来事が切っ掛けで、父さんは自分に気を操る才があると判断したらしい。
父さんは治療と目覚めた後の鍛錬の為にと、予てから誘われていた『九鬼(くき)財閥』の長期依頼を受けた。
依頼内容は機密保持の為の施設の警備及び要人の警護。
要人とは今自分の目の前にいる彼らのことだ。彼らは普通の出自ではない。
なんと、かつて存在していた偉人のクローンなんだそうだ。
先程まで自分と戦っていた小柄で黒髪をポニーテールにし、腰に刀を差している女の子が
そんな彼女から逃げている長身でワカメみたいにウェーブの掛かった髪の女の子が
俺を魔術師と呼んだイケメンで鷹の様に鋭い目をした男の子が
最後やってきたヒナゲシの花の髪留めをつけた長髪で温和な表情の女の子は、クローンの中で唯一年上の
葉桜清楚などと言う英雄はいないそうだ。
25歳になるまでは本人にも秘密で、勉学に励むように指示されているらしい。その為清楚姉さんだけは戦闘訓練は無しで軽い運動だけをしている。
そしてヒナゲシの花の髪留めは自分が送った物だ。
しかし、今でもいまいちピンとこないんだよなぁ。
クローンとは言っても、彼らは別に生前の自分の行いを覚えている訳じゃない。
精々影響があるとすれば遺伝子的な趣向や行動、トラウマが無意識に僅かにある程度だ。
その為、彼らへの自分の態度は英雄に対するそれではなく『英雄と同じ名前を持つ超人』という認識で、これまで接してきた。
義経達は時期が来るまではこの小笠原諸島で暮らす事になっているそうだ。
彼らの立場上、一般の目に極力触れさせる事は出来ないし、他に身の回りにいるのは大人ばかりと、周りの自然豊かで開放的な光景に反して、彼らの環境は随分と閉鎖的だった。
偶に九鬼家の子供達がやって来る事もあるが、少し話すだけですぐに帰ってしまう事が殆どだった。まぁ、彼らは彼らで勉強や訓練があるから仕方ないと言えば仕方がない。
自分も何度か挨拶してその時に仕事や自己鍛錬なんかの話も聞いたが、いつ寝ているんだと言いたくなるくらいの過密スケジュールだった事は今でも鮮明に覚えている。
そんな環境に、無関係の一般人である俺がやって来た。しかも一緒に暮らすと知った時の四人の顔は、今でも覚えている。
はは、今思い出しても笑えるな。
最初に出会った頃の四人四様の様子を思い出して、つい笑みが零れる。
ゆっくりと時間を掛けて彼らと仲良くなり、いつの間にか義経グループからはお兄ちゃん。
清楚姉さんからは弟のように『ユウ君』なんて呼ばれるような間柄になってしまった。
自分も姉妹や兄弟が出来たみたいで凄く嬉しかった。なんせ生前は『家族』なんてものはいなかったから。
「どうした兄貴、黄昏て?」
「ん? マープルさんは何を言うのかなって思ってさ。前にほら、みんなは今の若者を導く存在となって欲しいって言っていたからさ、それ関係なのかなって思ったら少しな」
生き方を縛られているようだ。と言いかけて口を閉じる。
いくらなんでもそれは言いすぎだよな。まだ自分達は子供なんだから、ある程度は縛られていて当然だ。
「俺達は、何時だって誰かの敷いたレールの上に乗せられて生きている。今回の話もどうせ断れないものだろうさ」
「そうだなぁ。せめて乗るレールくらいは自分で選びたいよなぁ」
「まったくだ」
ニヒルにポーズを決める与一に困った笑顔を向ける。
与一は中二病を患っている。そして今もまだ、完治していない。
義経は与一は恥かしいからそういう言動をしているんだと思っている。
弁慶は完全に中二と判断して肉体言語で語る事が増えた。そのせいで心は兎も角、身体と魂は既に恐怖によって彼女に完全に屈してしまっていた。不憫すぎる。
清楚姉さんは多感な時期だからと割り切っている。
そんな与一に、自分は積極的に話しかけた。
唯一の男友達であったし、大和で慣れていたというのもあった。
与一の言葉を肯定していたり、与一が納得しそうな言い回しで説得している内に、普通に自分の言う事はそこそこ聞いてくれるようになった。
「ユウ兄助けてぇ。義経がイジメる~」
そう言って弁慶がやって来て、自分の膝を枕に寝転ぶ。
しょうがないな。と言った感じに苦笑しつつ、弁慶の頭を優しく撫でる。
「はあ~癒される」
面倒くさがりな弁慶だが、実は結構な甘えん坊なうえに構いたがりだ。
因みに甘える対象は自分、構う対象は義経だ。
そんな弁慶は頭を撫でられるのが好きなようで、よく自分の脚を枕にして顔をこちらに向けて、頭を撫でるように催促してくる。まるで猫のような女の子だ。犬系な一子とは微妙に相性が悪いかもしれない。
「こ、こら弁慶! お兄ちゃんを盾にするのはずるい!」
義経が目の前でオロオロする。いや、別に盾にされてはいないぞ義経?
その動きを見て弁慶がニヤニヤと嬉しそうな顔をする。いじめっ子だなぁ。まあこういう態度を取っても義経なら許してくれるという信用からの行動なので、特に咎めはしない。
「まあまあ。マープルさんもまだ来ないし、義経も木陰で休むといいよ。春風がちょうど良い感じに温かくて心地いいよ?」
「お、お兄ちゃんがそう言うのなら」
義経は俺の隣に座ると、こちらをチラチラと伺うので、寄り掛かってもいいよ。と言うと嬉しそうな顔をして肩、というか身長差的に腕にだが、寄り掛かる。
義経も、もう少し他人に素直に甘えてもいいのに。昔の義経なんて気にせずに『今の義経』として生きて欲しいな。
義経は前世の英雄としての自分への拘りが、他の三人よりも強い。その為みんなの模範になれるようにと、少し真面目すぎる所がある。
まあ、あの有名な源義経の生まれ変わりなんて聞かされれば、気負うのも当然か。
故に自分は義経を甘やかす。せめて自分くらいには、肩の力を抜いて我侭を言って欲しいから。
「ふっ。俺も少し休むとしよう。昨日は死闘だったからな」
そうか、与一は昨日夜更かししたのか。きっとお気に入りの掲示板巡りでもしていたのだろう。
与一は義経の隣に座って木の幹に寄り掛かる。
何かと自分に構う義経を邪険にする与一だが、なんだかんだ言って一番義経を心配しているのは彼だ。自分を闇と言い、彼女を光と呼んでいる辺りからもその気持は読み取れる。
というか与一の中二発言を普通に脳内変換できるようになっちゃったな……。
「あらあら、じゃあ私も休憩しちゃお」
清楚姉さんが自分おの隣に座って同じ様に木に寄り掛かる。
お互いに一度だけ顔を見合わせて笑い合った後、一緒に視線を空へと向ける。
自分も一眠りするか。
春の暖かな日差しに誘われて、ゆっくりと目蓋を閉じた。
はい。と言うわけで新章一話目からクローン組みが既に攻略済み!(友人・家族的な意味でですが)
ふふ、流石のラニのフラグブレイカーもたじたじってものです。
今回はキャラ紹介的な意味合いが強いです。
次回以降にもう少し主人公がクローンと関わる許可が下りた理由とかも、書くつもりです。
【技・武器解説(簡略版)】(Fate/EXTRAを知らない人用です)
『干将・莫耶』
アーチャー(エミヤ)のメイン武器の双剣。原作ではお互いに引き寄せ合う性質がある。
『監獄城チェイテ』
ランサー(エリザ)のメイン武器の槍。デカくてゴツい。
『絶頂無情の夜間飛行』
原作ではランサーが槍に腰掛けて猛スピードで突っ込んでくる技です。
そして槍を抜く時の仕草と台詞が可愛い。
『不可避不可視の兎狩り』
端的に言えば意図的に作った相手の『死角』から槍を伸ばして攻撃する技です。
原作では尻尾攻撃すると見せかけてから攻撃します。
『炎天』
原作では魔力で作り上げた符を相手に投げつけて火柱を起こす魔力依存の技です。
属性はありませんがあったら間違いなく火でしょう。