地噴の帯び手   作:観光

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プロローグ1/2

「あー、こんないい月夜なんだから、いい出会いのひとつでもないもんかね」

 

 鬱蒼と生い茂る森の中に枝から枝へと飛び跳ねる男がいた。男は二十二・三の黒髪黒目で、分厚く丈夫そうな古ぼけた衣服に身を包んでいる。

 彼の肉体は服の上からでも鍛えられた肉体が見て取れる。分厚い胸部の筋肉と、細身ながらもしなやかな四肢。男の飛び跳ねる姿はいかにも慣れた動きで、見るものに不安を与えない常人離れした動きだ。黄色の肌は生気に溢れ、男の頬は野獣のように笑みを描いている。

 星明りの闇夜を飛ぶ彼に付き従う影はない。男の言葉は独り言となって虚空に吸い込まれていく。

 

「いい月夜? 僕にはそんな風情のある夜には思えないね」

 

 答えるものがいないはずの男の言葉に返す声が上がった。人の姿はない。男の右耳に下げられた勾玉から響いた声だった。

 水越しを思わせる、洞窟で聞くごときこもった声だ。

 

「そう言うなよ。これからあの紅世真正の神”祭礼の蛇”をブッ倒そうなんて考えるお仲間に会うんだ。期待は止められない」

「期待? それはどっちに対する期待だい。紅世の神との戦い、それともこれから会えるかもしれない歴戦のフレイムヘイズ。どっちかな?」

「ははっ、お前にはばれるか—— ”地壌(ちじょう)(かく)”ヒノカグツチ!」

「ばれる? 隠せると思われたことに驚いたよ、我が薄弱な契約者、自称『地憤(ちふん)の帯び手』クズキ・ホズミ?」

「なーに。そのうち他称になるさ」

 

 大笑いする青年——クズキは一際強く枝を蹴って天空へと身を躍らせた。

 

「ああ、楽しみだ! 大和の国に出てくる化生どもは歯ごたえがないからな!」

「歯ごたえ? それは酷というものだよ。君はこれで強大な討ち手なのだから」

「まだたいした年月生きちゃいないがな!」

 

 天高くあるクズキの体から炎が噴き出し、空気を震わせる稲妻のごとく周囲を照らしだした。

 その炎は輝く白色に僅かな黄金を混ぜた太陽の色をしている。夜に顔を出した太陽に森の生命がざわめくのを感じながら、クズキは『存在の力』を操り、空を駆った。

 

「年月? そういえば向こうには”不抜の尖麗”がいるんだったね」

「おうよ! それにあの”払の雷剣”もいるときた。強力な討ち手がよりどりみどり……さらには強大極まる”王”まで集まってるって話だ。強くなっておいてよかったよかった!」

「よかった? 浮かれるのはいいけれど死なないでおくれよ。君には残しているものもいるし、まだまだやることが残っているのだから。ええと……なんだっけ、あれの名前? 確か——灼眼の……」

「何度言えば覚えるんだっての——我が昼行燈の契約者」

「昼行燈? 聞き捨てならないね。ちょっと待ってくれ。その汚名をすぐにでも返上してみせるから……そう、確かあれは、灼眼の……しゃ、しゃ——しゃば?」

「……本当に俺の期待を裏切らない契約者だよな。もう一度言ってやるからよーーく覚えておけ!」

 

 目的地へと一直線だった行く先を星に向け高度を上げると、クズキは雲を突き破る。遠い未来で失われる天河を眼上に両手を突き出し、高速移動ゆえの騒音に負けぬようクズキは大声で叫んだ。

 

「ああ麗しき紅世界の化生ども! 今や同族たる炎の揺らぎ! 遠い時代に二つが織りなす、新しき創世の神話を紡ぐ物語!」

 

 それは遠い未来に起きる創世の神話。

 代替物でしかない青年と、かくあれと望み望まれた少女の、愛の物語。

 

「俺だけが知っている! その始まりと終わりの物語を! わずかな偶然が必然となって、積み重ねられた幾多の想いの果て、世界を巻き込み紡がれたる神話! そが名を————」

 

 放埓を極める紅世の徒と、跋扈する同胞を世界のため討滅せんとする炎の揺らぎ。

 二つの異邦者と人間。人間以下でしかない代替物。三様の者どもが複雑に絡み合い、果てに世界を作ったある物語。

 クズキの記憶の奥に存在する確かな未来。

 その名は——

 

「——————灼眼のシャナ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地憤の帯び手 プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはずっとずっと昔のお話。

 人間は文明人などという洒落たものではない時代。右手に青銅の武器を持ち、左手に泥を焼き固めたつぼを持ち、土埃にまみれた貫頭衣を着ていた——そんな時代。

 とある場所——遠い未来で言う所の栃木——でなぜか後の時代が知るよりもずっと早くに伝わり始めた稲作をしている集落があった。

 その集落にある畑は大層大きく、そして大層な量が収穫できた。それには稲作に適していたという理由が多分に含まれていたが、いささか想像以上の量が取れていた。村人たちは不思議に思うが思うだけで、当時の人間にとってこの場所だけ大量に取れるということで神の奇蹟と信じ、崇め、畑の中央にそれはそれは立派な社がたてられていた。

 

 ある日のことだ。

 その社の前に不可解なことが起きた。

 稲穂を収穫し始めた一日目、穂摘(ほずみ)の日――稲穂を摘み始める日のこと――のちょうど正午の時間。村の人間が祈りをささげる前で——空間に巨大な罅が入った。それはまるで海の上で船と船がぶつかった時にできる木の罅のようだった。大きく重量のある物体がぶつかり、押しつぶしあうようにできたその罅は、原住民にとってまさに『およびもつかぬ神の力』、その具現だった。

 恐れ、恐慌の波に攫われる人間たちだったが、その罅は僅かな時間をもって空に溶けていった。——一人の青年を落として。

 

 人々はその見知らぬ言葉を話し、見知らぬ服を着て、見知らぬものを持った青年を『神の落とし者』として敬った。

 もちろん初めからそうだったわけではない。そこには多分に青年が現れてから村の生活が楽になったことが関係している。

 青年は瞬く間に村を豊かにし、田畑を広げ、周囲の村を飲み込み、当時としては最大級の国を——むろん現代とは比べ物にならないほど拙いものではあるが——僅か数年で作り上げた。

 いつしか妻を取り、青年は幸せを感受し始める。辛く険しいながらも充実した毎日に青年は満足していた。

 

 それから幾ばくかの時間が流れた日のこと。

 国の人間が誰にも気づかれずごっそり減った。そして減ったことに誰も気がつかない(・・・・・・)

 傘下に収められていた村のいくつかが消え、しかし誰も気づかない。村の誰もがそれを当り前のようにふるまった。

 だというのに、自分だけは欠落したことを覚えている。

 

 その事実に『神の落し子』——名をクズキ、性をホズミ——が悩ましげな唸りをあげた。

 彼はいつしか成っていた国の代表という立場ゆえに、この問題を軽視ぜず、根本的原因を考えていた。

 すでにこれは一定期間ごとに、三度起こっていた。

 一度目は不思議に思いつつも、いつしか忘れていた。

 二度目はおかしいと考えつつも、戦の忙しさに埋もれさせた。

 三度目は解決すべきだと悟りつつも、常に解決方法を模索していた。

 しかし彼がいくら唸り声を絞ろうとも答えは出てこない。この時代の人間が想像できないような時代——後の世にいう現代——で教育を受けたクズキであっても、人が消え、そして誰もそれを認識できない……などという現象は習ったこともないし、聞いたこともなかったからだ。

 俗にいうところの『現代知識ちーと』なるものを使ったがゆえの立場ではあるが、彼自身は革新的な人間でもなければ特別優秀な人間でもなかったということも唸り声に拍車をかけた。

 つい先日、東山の麓の村が消えたばかりだ。

 あまりにも自然に不自然が起きる。

 それは原住民が嵐を神の怒りと恐れるのを、原理を知っているからこそ恐れないクズキにとって、あまりにも恐ろしいことだった。

 未知がもつ恐怖を久方ぶりに思い出し、クズキは畑の中心に建てられた神殿で体を震わせる。

 

 次は自分かもしれない。

 根拠のない恐怖がクズキの体を襲う。

 されど、クズキは震えたままの男ではなかった。

 ここにきて早数年。クズキは襲い来る周囲の国から国を守るため、幾度となく戦いを繰り広げた。戦場の恐怖を飲み込み、殺人の忌避を振りはらい、守るための勇を胸に秘め、障害を乗り越えていった。

 その精神は打ち鍛えられた鋼のごとく強靭で、未知の恐怖を味わいつつも胸を張り続けられる強さを持っていた。

 月明かりを存分に浴び、どうしてくれようかと舌なめずりする。

 

「失礼します」

 

 ふいに、横から声が聞こえた。

 そこには腰元まである長い髪を首あたりでまとめた女がいた。両手首に縄を通して作った水晶の飾りをつけ、巫女の立場を示す翡翠で作られた勾玉を耳につけている。月明かりに照らされた彼女は冷たい鉄を思わせる雰囲気の女だった。

 この時代には少ない白い貫頭衣を羽織った女は、名を落穂巫女(おちほのみこ)といった。

 かつては違う名を名乗っていたが、クズキが異世界から渡ってきたとき、祈りをささげていた巫女ということで、そう呼ばれていた。ここでの落穂とは村に実りをもたらしたクズキを意味しており、落穂巫女とはクズキの巫女であるという意味の称号だった。

 

「どうした」

「神酒を、お持ちいたしました」

 

 毅然とした面持ちで巫女は手に持っていた水稲(すいとう)——ここでは稲の一種ではなく、稲を編んで作られた貯蔵用の酒器——のふたを開けて、酒器に上澄みを注いだ。

 清酒、とまではいわないが静かに上澄みを注がれたそれは、美しい色合いを備えている。巫女はこぼさぬよう静かに酒器をクズキの足元へおいた。

 クズキは酒に月を揺らめかせ、香りをかいで十分に楽しんでから、ぐいと酒を飲み干した。

 

「うまい」

 

 と口の中でほのかな酒の味をかみ締めたクズキがつぶやく。

 来たばかりのころは、もう酒があるのか! と驚いたものだ。

 今クズキが飲んだのは山葡萄を土器にいれておき、自然酵母によって作る原始的な果実酒であり、ほかにも口噛み酒などがすでに存在している。よくよく考えればかの有名なヤマタノオロチの尻尾を落とすために使ったものは大量の酒であった。この時代に酒があっても不思議ではない。

 

「御身に喜ばれたとあっては、西の村のものも喜びましょう」

「ああ、これはいい酒だ。喜ばなければ嘘だろ。どうよ、お前も一つ」

 

 クズキは水稲を巫女から取ると、酒器になみなみと注いで手渡した。

 巫女は慣れたものと遠慮なく酒を飲み干し、仕えるべきクズキの隣に腰を下ろした。

 一見すると立場の違う巫女と神の落とし子(昔は神の血を引くというだけで立場が上だという認識だった)が対等に酒を飲んでいるように見え、巫女が不敬を犯しているともとれる。

 しかし二人が飲む酒は、農耕儀式のために『神の落とし子』であるクズキに供えられたものであり、この時代の酒は神と共に儀式の場で飲み干すものであって、決して神だけが飲むものではない。共に飲み干す物なのだ。ある種接待のための飲み物であった。

 

 クズキは酒器を空にした巫女——二人だけのとき穂乃美(ほのみ)と呼んでいた——の須恵器(酒器の一種)に手ずから酒を注いでやる。

 甘い——というほど甘くはないが、祭儀の場くらいでしか飲めない酒を前に、清廉とした穂乃美の表情がほころぶ。

 電灯ひとつない時代の夜は驚くほど月が明るく、穂乃美の笑顔を星が彩る。クズキの口元にも、あくびのように笑みが移った。

 穂乃美は巫女であり、その身をクズキという『神の落とし子』に捧げられた人間である。同時に男と女として、お互いが愛情を育んだ——神と巫女の領分を越えた夫と妻の関係でもある。その証拠に薬指には黄金に輝く指輪がある。

 彼女の笑みが夫に移るのはごく自然なことだった。

 

「あの子はもういいのか?」

「もう十分に夜の神に抱かれているのでしょう。ぐっすりと眠っていますよ」

 

 あの子——つまるところ穂乃美(ほのみ)の子供であり、同時にクズキ自身の子供であり、まだ一才に届かない子供のことだ。いつもは心配症の穂乃美がついているのだが、離れていてもいいのか? というクズキの確認もかねた質問に穂乃美は胸を張って答える。

 

「そうか、今日はゆっくりできるな」

「ええ」

 

 穂乃美が静かに同意し、甘い瞳でクズキを流し見た。

 彼女のほころんだ表情はどこか艶やかで、瞳には色が奥に潜み、誘うような瞳でクズキを見ていた。

 穂乃美は酒に弱い。それほど高くない酒でも飲めば体の底が熱くなるらしい。

 クズキは彼女の流し目がそういう(・・・・)意味のものであると察しながら、彼女の空になった酒器に酒を注ぐ。無言の拒絶だった。

 わずか、穂乃美の表情が悲しげになる。しかし注意深くクズキを見て、クズキの表情に隠された憂いの色を感じ取るや、心配そうな顔でクズキの横に移動し、肩を触れ合わせた。

 

「何か、杞憂なことでも?」

「——」

 

 国を繁栄させ、敵なしとなった自国について悩むことは、それほど多くない。どれもが他愛ないもので、悩みというほどではなかった。

 悩みと呼べるほどの問題は今やひとつ。 ————人が気づかれずに消えてゆくこと。これだけだ。

 

 時には村がまるまるひとつ姿を決しても、誰も不自然に思わない。誰に聞いても記憶にすら残らない。

 何一つ原因がわからない、どころか誰も覚えていられない。

 この件に関して、おそらく穂乃美も覚えていないのだろう。

 わずかに口に出すことを躊躇し、

 

「少し前のことだ。東山のふもとの村が、忽然と姿を消した」

 

 言い切った。

 近隣の人間すら覚えてられなかった東山のふもとの村。

 確かに存在したはずのそれ。

 どうせ覚えていないのだろうと、わずかな希望を持ちながら穂乃美にいう。

 

「消えた……?」

 

 戸惑いをあらわにする穂乃美。

 ああ、やはり。

 クズキは思った。続く言葉は——

 

(——そんなところに村などありましたか?)

「——あの村が消えた、という報告に覚えはありませんが……」

 

 という穂乃美の眉をひそめたものだった。

 

 クズキの眼が、真ん丸を、描く。

 

「穂乃美……覚えて、いるのか?」

「覚えて? 何のことでしょう。あの村には何度か足を運んだではありませんか」

「――っ!」

 

 今度こそ、息をのんだ。

(穂乃美が覚えている――!)

 クズキは体ごと彼女に向き直り、彼女の肩をつかんだ。

 驚きに、酒器が落ちる。

 はやる鼓動を抑え、クズキはゆっくりと確認する。

 

「東の、日上る地、三鷹山の、紫ぶどうの取れる、山成という男の治める村、のことだぞ?」

 

 東山の麓の村、というのは三つほど存在している。

 もしかしたら彼女のいう村とは、他の村のことかもしれなかった。クズキは自分との間に齟齬の生まれる余地がない問いかけを、息も絶え絶えに吐き出す。

 

「――? え、ええ。山成の治める村、昨年も多くのぶどうを手押し車で納めた東山のふもとの村でしょう」

「――は」

 

 クズキの中にあった小さな期待に、穂乃美はこれ以上無いくらい明確に答えた。

 彼の両手から力が抜ける。

(――俺以外にも、あれを知ってる人間がいる……)

 それは希望だった。

 今までのように村の仲間たちと共に戦うのではなく、誰にも知られずに戦うしかないと腹をくくっていたクズキにとって。彼女が隣にいるという事実は、何よりも強い希望となってクズキを支えてくれる。

 わずかな脱力の後、クズキの芯に一本の支柱が築き上げられた。

 それは、

(変わらない。今までのように俺は――――村を、守る)

 国主として、そして国守としての覚悟だった。

 

 クズキは水稲(すいとう)に直接口をつけ、一気にあおった。

 精魂込めて作られた酒の心地よい熱さを感じながら、勢い良く立ち上がり、

 

「穂乃美、明日の予定が決まった」

「……明日は西の村へ赴くのでは?」

「いや。そうじゃない」

「では?」

「東山の麓の村へ。俺たちは行かなきゃならない」

 

 穂乃美はため息を一つ。

 すでに数年、慣れてはいた。しかし仕えるべき『神の落し子』の突拍子のない行動に、辟易としてしまう。

 いや、嫌なわけではない。飽きさせない彼の行動はむしろ好ましいと言える。ただ、今夜ばかりは久方ぶりの『二人の夜』だったのだ。穂乃美は巫女として伽という清める行為を行う身ではあるが、やはり人として獣欲という穢れを期待しないわけではないし、愛されたいという願望もあった。

 それにこの時代の平均年齢はかなり低い。抵抗力の低い子供が死んでしまうことはざらにあった。だから彼との子供を未来へとつなげる為にも、あと二人は欲しいと考えていた。

 

 だが、意気揚々と寝所へ向かう夫の背中をみて、穂乃美は諦めた。ため息はその現れだった。

 東山の麓の村は遠いというほどではないが、それなりに距離がある。

 それに国主が出かけるとなればそれなりの護衛も必要だ。人が彼を襲うとは思えないが、狼の群れに囲まれることも十分に考えられるからだ。そういった不足の自体に対応する準備もしなければならない。

 準備の為の体力、行動の為の体力。それを考えれば余計な疲れを明日に残すわけにはいかない。

 つまりは――お預けということだ。

(まったく、『神の落し子』は私の気を知っていてこうなのだから、そう。たちが悪い)

 繰り返すことになるが、穂乃美は妻であり、クズキとは夫婦の関係である。しかし、それ以前に巫女である。

 故に、彼女は巫女として『神の落し子』と寝所をともにすることが許されない。というよりも、自分が許さない。夫婦となった初期の頃、自ら律するため、そう定めたのだ。

 『神の落し子』には『神の落し子』としての寝場所がある。朝日を浴び、共に眼を開けることを許されるのは、今日のような子を宿す為の行為の夜のみである。

 彼女はそれが、いかに心を満たす行為かよく知っている。

 それができないとあって、穂乃美は――巫女でありながら――落胆の色を隠せなかった。

 穂乃美は表情を隠すように、深く頭を下げた。

 

「どうか、御心を安らかに。おやすみなさいませ」

 

 寝所で布をかぶり、ごろりと横になったクズキに声をかけ、穂乃美は静かに神社を出た。

 しばらく彼女の足音を聞き、十分に遠くにいったことを確認してから、クズキは仰向けになって伸びをした。

(悪いことをしたかな……?)

 むろん、クズキは穂乃美の内心を大体理解している。

 しかし彼は――彼の若さでは珍しいことに――そういったことに関して積極的ではなかった。

 決して欲がないわけではない。むしろできるのならば心ゆくまでしたい。……ただ、出産という行為はこの時代ではあまりにも致死率が高かった。

 十分に医療技術が発達した現代ですら、時折死んでしまうこともある。ましてやこの時代の医療技術では、その致死率は高いと言わざるおえない。

 クズキは穂乃美を愛しているからこそ、そういった行為をほとんど行わなかったのだ。

 先ほどの拒絶も、愛ゆえのものだった。

 けれど、愛があるがために。彼女の子供が欲しいという想いに答えたい自分がいる。

 自分はどうすれば――

(――いや、今はよそう。考えるべきはこの欠落の原因だ)

 

 クズキは首をふって、夫婦の悩みを追い出した。

 事実、すでに三度人間が消えている。毎年これが続くとなれば――それも毎年被害が増加する傾向にあるならなおさらに――すぐに対応しなければならない。

 人は木材のように簡単に作れるものではないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝、太陽が昇り始めたころ。村人から護衛を募り、馬を用意し、食料を準備し、と戦の前のような忙しさを乗り越え、クズキを中心とした一団が東山の麓の村に出発した。

 八面六臂の活躍をした穂乃美(ほのみ)はわずかにけだるげな面持ちながらも、しっかりと馬に乗り、クズキの後ろを着いてきている。

 すでに半日ばかりの行軍を行っており、もうそろそろ東山の麓の村に着こうかという位置だった。

 

「そろそろ目的地につく頃だが……何もないんだろうな」

「……あなたのいうこととは言え、にわかには信じられません」

「朝あれだけ、ぶどうが納められた倉庫が空になっていたのを確認しておいて……まだ信じられないか?」

 

 うっ、と穂乃美が呻いた。

 彼女は何かしら言おうと口を開くが、「ネズミなんて言わないでくれよ」と先に可能性をつぶすと、黙って馬の手綱を握りしめた。

 だまってしまった穂乃美に代わり、警護に志願した村人の一人がクズキに声をかける。

 男はクズキが来たばかりの頃からの知り合いで、クズキも頼りにする腕っ節の強い男だった。彼は不思議そうな顔をして、クズキに問う。

 

「にしても……なんで東山のふもとへ? それも村の無い場所に。何かあるんですかい?」

「ああ、かなり重要なものが」

 

 クズキは明確になにがある、とは答えなかった。

 男にはそれで十分なのか、そうですか、と一言残して背後の隊列に戻った。男はすでにクズキが稀に起こす突拍子のない行動には慣れていたからだ。

 代わりに、男に並ぶようにして馬を歩かせていた少年が顔を赤くして、クズキに声をかける。

 

「あ、あの!」

「ん?」

 

 男は隣を歩く少年の顔に見覚えがなく、多分外の村の奴だろうな、と辺りをつける。

 外の村の若いものはクズキに声をかけるとき、大体こういう反応をするからだ。やれやれ、と肩をすくめる。

 

「先日はありがとうございました! 妻にいろいろとしてもらったおかげで、家族も子供ができたと大喜びで」

 

 青年が大きな声で言った。

 クズキの隣を歩く穂乃美の眼がぎょっと見開かれる。隊列を歩いていた男もたいそう驚いた顔で、あんたまさか人妻に手を出したんじゃないだろうな、と唇をわななかせた。

 穂乃美の瞳が冷たく鋭利な刃物となってクズキをさす。

 クズキは、なんて言い方すんだよこのやろう、と穂乃美の視線におびえながら、

 

「俺はただ奥さんに妊娠しやすい日が来る周期を教えただけだから。別にそんなに改まってお礼をいうようなことじゃないって」

 

 と誰に言われるまでもなく説明する。

 クズキはただ妊娠しにくい女性に少しでも、という気持ちからなんとなしに教えたもの――俗にいうオギノ式である――だが、夫の不倫を疑っていた穂乃美と隊列に並んでいた男たち、誰もが等しく驚愕に身を震わせた。

 子供とは行為の結果授かるものであり、授かれるかどうかは神のみぞしる。というのが一般の認識だったのだ。それをクズキはいとも容易く覆し、それも授かりやすい周期まで知っているという。この時代からすれば、それは重大な知識だった。

 穂乃美はぜひともその知識を教えてほしい! と口を開きかけたが、いやここで聞くのはまるで自分が催促しているみたいではないか。と思い至り、何食わぬ顔でクズキの隣を歩き始めた。ただし、彼女の背中からは隊列に向かって「だれか聞けよおら!」という威圧感を放っていたが。

 穂乃美の無言のオーラに隊列の男たちは萎縮し、逆に穂乃美の聞きたいことを聞けそうになかった。

 隊列の中の一人が、空気を変えようと意を決して声を上げる。

 

「そういえば向こうについたら俺たちはまず何をすればいいんだ!?」

 

 おお、と周りの男が内心で喝采する。よく落穂巫女の無言のオーラを無視できた! という喜びの声だった。

 しかも彼が聞いたのは後々聞かなければならないことで、穂乃美も無視できないものだったから、なおさら今の空気を帰るにはぴったりだったのだ。

 

「そうだなぁ……とりあえず向こうで何日間か泊まることになるかもしれない。だから数日間留まれるような準備が必要だ」

「というと水や食料ですね」

 

 穂乃美が具体的な例を上げる。

 護衛の男たちは心得たもので、「じゃぁあれとあれだな」「あれも必要だろ」としきりに会話している。

 頼もしいかぎりだ、とクズキは思った。

 

 それから三時間ほどだろうか。

 途中ウサギなどの食料を見つけ、狩るなどの手間はあったが、無事隊列は麓へとたどり着いていた。

 

「そんな……っ!」

「……」

 

 声を荒げたのは穂乃美だった。

 彼女の目の前には不自然なまでに広がった何もない広場がある。深い木々に囲まれた場所にぽつんと存在するなにもない広場はとても自然にできるとは思えないもので、穂乃美は強い違和感を感じる。まるで何かが欠落(・・)してしまったような……

 いや、事実欠落したのだ。

 穂乃美の記憶では、ここには確かに村があったはずなのだ。

 東山の麓の村としては最大の大きさを持ち、山葡萄を大量に栽培していた村が。

 何人かは穂乃美もかかわり合いがあり、友人というべき人間も、確かにいたはずだった。

 

 誰にも知られぬ間に大移動したのか?

 そうだとしても、ここまで何の痕跡も残さずには移動できない。

 穂乃美の脳内にかつてない混乱が襲いかかった。

 いつも落ち着いた落穂巫女の姿に、何も無いことを自然だと感じている隊列の男たちがざわめく。

 目の前のぽっかりと空いた場所を見ていると、穂乃美の中に真っ白な部屋に閉じ込められるような漠然とした不安がわき出してくる。

 

「……今回は村ごと、か」

 

 慌てふためき、珍しく相好を崩した穂乃美の隣で、ざわめきを無視したクズキがつぶやいた。

 それは予想以上の被害に対するものだった。

 

 一度目は村の中の一人の男だった。

 二度目は併合した村の数人だった。

 三度目は――村ごとだった。

 

 クズキは徐々に広がる被害に、作為的なものを感じ、焦りに頬をひくつかせる。

(わかっていたことは二つ。こいつは徐々に被害を広めているってこと。そしてちょうど一年おきに襲える知恵がある存在(・・・・・・・)だってこと。でもここにきて確信した。こいつは――――――やばい!)

 眼前に広がる無人の広場。

 あるはずのものが無くなったそこに、誰もが当たり前にしか感じない。

 しかしクズキには、そして穂乃美には大切な物が抜け落ちたような違和感が、蛇が肌をなで回すように感じられるのだ。ともすれば吐いてしまいそうな薄気味悪さがあった。

 

 クズキは広場に踏み入るのを躊躇った。

(ここに踏み入って、俺は大丈夫なのか? 同じように消えはしないのか?)

 だめだ。

 怖さがクズキに悪い方向ばかり想像させる。

 穂乃美も不安そうにクズキの背中を見ていた。つられるように、隊列を組む男たちもどことなく不安そうにクズキを見る。

(いや――ここで怖じ気づいてどうする! 俺は国主なんだ!)

 首をふって、頭の中に巣食う悪い気を振り払う。

 そしてクズキは堂々と胸をはって、一歩、踏み込み、

 

 

「おんやぁ〜〜〜、見知らぬ人がひーふーみー。ちょっーと数えきれませんねぇー」

 

 

 その人を小馬鹿にしたような声が耳朶を振るわせたとき、最初にクズキが想像したのは――巨大な山脈を滑り落ちる雪崩だった。

(なぁっ……!)

 声を表に出すことはできず、急ぎ振り返った先、何も無かった平坦な場所にひょろりと細い男性が立っていた。無精髭とぐるぐると渦をまく髪型、細められ奥を見ることのできない眼をしている。

 着ているのは、明らかに文明レベルの違うよれよれのシャツとスカートのような服。

 一見すれば外来人のようにも見えなくもない。

 しかしここにいる一同、だれも彼をただの人間だとは思っていなかった。

 

 ただ男が立っているだけだというのに、眼を離せない奇妙な存在感を感じる。それは隊列を組む男たちも同じで、中には歯を振るわせる者もいた。

 端的に言って、恐怖していた。

 男の視線が怖い。

 男から感じる圧力が暴風のようだ。

 男を見るだけで手足から力が抜けていく。

 クズキたちはその感覚を知っている。それは自分が勝ち得ない圧倒的な存在を前に、勝てないと本能が全面降伏したが故の反応なのだと。

 夜の闇にまぎれ、襲いくる大嵐。

 土砂降りの雨が引き起こす大河の反乱。

 爆音とともに周囲を吹き飛ばす落雷。

 そのどれもが勝ち得ないもので、そして目の前の奇妙な男もまた――勝ち得ない存在なのだと、誰もが本能で悟った。

 

「いーったいなんのようなんでしょーねぇ? 誰もここのことは覚えてなぁーいはず(・・)なのにー……」

 

 男は首を傾げ、しばしの熟考の後にクズキたちの腰に下げられた青銅の剣に気がつく。

「ほっほーうっ?」特徴的な笑い声と共に男がゆっくりと近づいてくる。

 隊列を組んでいた男の一人が膝を屈した。彼が一歩近づくたびに、彼から感じる圧迫感は二乗三乗と大きくなっていた。

 

「これは武器ですか――? ずいぶんとがんばりましたねぇー」

 

 まるで剣ができるまでの歴史を見てきたように、男は感心する。そしてクズキをじっと見ると、なにやら興味深げに瞳を輝かせた。

 

「おんやぁ……? あなた……私たちをぉー、正しく認識して(・・・・)いるぅ……?」

 

 それがクズキのしゃくに障った。

 上から目線で何様のつもりだろう。

 クズキはこちらの世界に来てから、基本的に敬われる立場にあった。それ相応の働きはしてきたが、クズキも知らぬ間に彼の中には自分が上に立つ身分なのだという自尊心が芽生えていたらしい。

 恐怖に歯を鳴らしながら、腹の底から力を振り絞って腰元の剣を引き抜いた。

 

「――――――」

 

 ――お前は、何者だ。

 震えるクズキの声は言葉にならず、木々のざわめきに飲み込まれた。

 しかし男には十分だったのか、大仰に両手を広げ、

 

「わたーし? わたーしはぁ! 隣の世界からぁーわたって来たっ”紅世の王”が一人――――”万華胃(ばんかい)()”ぉーーー!!」

 

 誰もが眼を剥いた。

 男――”万華胃(ばんかい)()”の広げられた両手、そのいたるところに口が現れ、大きく口を開けたからだ。その口の奥には洞窟の奥のような闇が広がり、口の端からよだれをこぼしている。生理的嫌悪に鳥肌が立つのを止められない。

 未知に震え上がるクズキ一同を前に、”万華胃の咀”は機嫌良く小さな声でささやいた。

 

 ――――――いただきまぁーす 、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 猛烈な悪寒に教われ、咄嗟に穂乃美を背中にかばったクズキが見たのは、これこそ地獄と言うべき光景だった。

 体中に口を付けた化け物に、あり得ない薄緑の炎が広がり、そして仲間が食われている光景だ。

(食われた? 違う、喰われたんだ)

 人が食物に感謝し、未来へと繋ぐ為に命を食すのではない。ただ食べる必要もないのに、それが娯楽だからと無為に命を消費するために、奴は喰らった。

 腕に現れた口はうまそうに咀嚼し、汚らしい音を響かせている。

 その口からはクズキの周囲の男たちにつながるように一本の線が見える。線は薄い緑色で、男たちも緑色に燃え上がっていた。自然では決して見ることのできない『あり得ない炎』にクズキの思考が、混乱の極地へと誘われた。

 

 クズキは混乱するまま、ただ男たちが炎に包まれるのを見ていた。

 いや、ただ見ていただけではない。

 彼らの存在が薄くなっていくのを、クズキは感じていた。

 

「やめ……」

 

 燃える男たちの一人は、クズキが来てからずっと一緒に戦い、町を守ってきた男だった。

 初期に、不信感を持たれていたクズキに少ない食料を分けてくれた恩人で、度重なる戦にクズキが折れそうになったときに、一喝してくれた男だった。

 

「やめろよ……」

 

 その隣にいた男はクズキが最初に迎え入れた他村の一人だった。村の統治の勝手が分からず、合併してすぐに村々の喧嘩になったところを納めてくれた人だった。

 それからは何度も村の統治のことでお世話になってきた。

 

「やめろ……っ」

 

 その後ろにいた青年は、ここにくる途中話しかけてきた青年だった。

 妻をとても愛していることが、端から見ていてよくわかる。そんな裏表のないやつだった。立場の差はあれど、見ているだけでわかる邪気のなさに、将来はもっと仲良くなれたら……そう思っていた男だった。

 

 誰もがクズキにとって大切な人だった(・・)

 毎朝顔を合わせて挨拶し、昼には仕事を共にこなし、夜には疲れたと笑いあう。そんな仲間たちだった。

 なのに――喰われていく。

 ただ身を喰われるのではない。

 気色悪い炎に身を焼かれながら、その存在(・・)ごと喰われていく。一秒ごとに仲間たちがいた記憶が、確かな絆が、陽炎のように消えて、ゆく。

 

(だめだ。こんなこと、俺は――――――っ!!)

 

 気がつけばクズキは走り出していた。

 そして何の策もないまま、愚直に”万華胃(ばんかい)()”へ青銅の剣で切り掛かった。

 

「うおぉぉぉぉっつ!!」

 

 全身全霊を込めた斜め振り下ろし。これ以上無いほどの剣線を描き、同じ青銅の剣ならば両断してしまうだろう一刀。”万華胃の咀”は――人差し指で難なく受け止めた。

 わずかも”万華胃の咀”の指は後退すること無く、クズキが振り下ろした青銅の剣は粉々に砕け散った。

 なぜ剣が砕け散るのか、疑問の声が喉からもれる――前に、”万華胃の咀”の蹴りが腹部に直撃し、クズキは大きく後方に吹き飛び、地面を転がる。

 

 激痛が腹部からかけ上がり、クズキは口から血塊を吐き出し、咳き込む。

 ”万華胃の咀”からすればなんとも軽い一撃で、クズキの内蔵は損傷し、死の瀬戸際に追い込まれていた。

 

 痛みに涙があふれる――それでもクズキは”万華胃の咀”を睨みつけた。

 すでに仲間たちは一人もいない。すべて”万華胃の咀”の腹の中へ。悔しさのあまり、奥歯がくだける音がした。

 

 ”万華胃の咀”は憎悪に燃えるクズキの瞳をにやにやと嫌らしく見下ろしながら、音を立ててゆっくりと近寄る。人など及びも着かぬ存在の足音は、そう。最初にクズキが感じた雪崩が襲いくる恐怖を思い出させる。

 ”万華胃の咀”は憎悪と恐怖に彩られたクズキを見て、楽しんでいた。

 

 三歩。

 それが”万華胃の咀”がクズキにとどめを刺すまでの時間だった。

 クズキは動かない。

 もう後長くない体だと悟って、それでも最後まで屈しないと”万華胃の咀”をにらみ続ける。そこに憎悪はあっても恐怖はなかった。

 後二歩。

 ”万華胃の咀”はクズキの顔に慄然とした様がないことに気がついた。

 ”万華胃の咀”にとって人間という生き物は、『紅世の徒』に『存在の力』を搾取される、いわば食料でしかない。それがこうも反抗的な眼で見ていると思うと、ムカムカとした苛立が募る。

 

 後二歩。

 ”万華胃の咀”はわずかな距離をつめることはなく、手を掲げた。そこには薄緑の炎が揺らめいている。

 『存在の力』を練り上げ、顕現させた炎弾だった。さっき喰らったばかりの『存在の力』のわずかばかりをくみ上げて作ったこの炎弾は、これを殺すのにさぞふさわしいだろう。

 ”万華胃の咀”の口元に嗜虐的な笑みが浮かび、彼はその手を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 振り下ろされる手を二人から少しばかり離れた場所で、落穂の巫女はそれを見ていた。クズキに迫る”万華胃の咀”の右手には致死の炎が揺らめいている。

 揺らめく炎が止まるほど加速された時間の中、穂乃美は願った。

 

 ――やめて。

 

 心からの――願いだった。

 あの炎をクズキが受ければ、間違いなく愛する夫は死ぬだろう。

 穂乃美には根拠もなくそれを悟っていた。

 できることならば、クズキを助けたい。

 彼が助かるというのなら、自分の身を捧げてもいい。

 穂乃美は本気でそう思った。

 そして願った。

 

 ――紅世の王”万華胃の咀”から夫を助けてほしい。

 

 一途に、一心不乱に、それだけを願う。

 穂乃美の願いは、他者の追随を許さぬほど純粋だった。

 ゆえに、

 

 

 ――――――もしお前が人のすべてを失うことになろうとも、助けたいと願うのならば、

 

 

 

 ――――――お前に力をやろう。

 

 

 

 ――――――万難を排し、仇敵を穿つ、力を。

 

 

 

 ――――――お前に、やろう。

 

 

 

 穂乃美の願いは隣を歩む者へと――――届いて、しまった。

 

 

 

 

 

 

 


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