滴ちゃんの記憶の封印が終わってから一ヶ月が経った。
その間、臓硯は冬木市において目撃されず、女性が行方不明になる事件も発生しなかった。
となると、普通に考えれば、『臓硯は死んだ』『臓硯は冬木市から逃げ出した』『臓硯は冬眠している』のどれかが正解のはずだ。
……いや、いくら蟲の体でも冬眠はないかな?
傷を癒すためや魔力を増やすためなら、餌となる人を襲う方が早くて効率がいいだろうし。
そんな風に、臓硯対策に色々考えている日々を過ごしていると、やっと滴ちゃんが言葉を発したとの連絡があった。
「……ここは、どこ?
貴女は誰?
私は、……確か間桐家に引き取られたはず」
滴ちゃんの第一声は、これだったらしい。
どうも、『壊れた自我が甦った』というよりは、『記憶喪失だった人が記憶を取り戻した感じ』だったらしい。
滴ちゃんの介護をしていた真桜は、僕たちに連絡を入れながら、滴ちゃんへの説明を始めた。
いきなり会っても警戒されるだろうから、とりあえず僕は真桜のライン経由で状況を見守ることにしたが、メディアだけはすぐに影の分身を飛ばした。
「ここは、冬木市の隣の市にあるビルの中よ。
私の名は、八神真桜。
安心して私は貴女の味方よ。
貴女の世話係を任されているからここにいるのよ」
そう言って、真桜は優しく微笑んだ。
しかし、滴ちゃんは信用していないのか、それとも警戒しているのか、表情は変わらなかった。
「貴女が私の味方なら事情を教えて」
滴ちゃんが真桜に質問したときに、ちょうどメディア(当然影の分身)がその部屋に入ってきた。
「あなたは?」
すぐに気づいて質問する滴ちゃんに対して、メディアはベッドに近づきながら答えた。
「私の名前は、……今はプリンセスと呼ばれているわ。
それと、私が貴女の治療を担当しているから、ドクターでも先生でも好きに呼んでいいわよ」
「……それでは、今はドクターと呼ぶ。
ドクター、貴女は間桐とはどんな関係?」
「貴女を引き取った間桐臓硯とは一切関係無いわ。
そして、間桐家から間桐臓硯も現当主の間桐鶴野もいなくなったから、唯一残った間桐雁夜が貴女の保護者になったのよ。
で、私は彼に頼まれて貴女を看護していたの」
最初は素直に話を聞いていたが、『看護』という言葉を聞いて滴ちゃんは不審そうに顔をしかめた。
「私は病気などになった記憶はない。
私が覚えているのは、間桐鶴野が私を引き取り、家に入ったところまで。
それ以降、何が起きたのか教えて」
うん?
僕たちと同年代のはずだが、思考や対応が妙に大人びている。
僕は転生者だから例外だとしても、精神の成長が早い凛ちゃんよりも精神年齢が上に見える。
……まさか、『実は滴ちゃんもトリッパーだった』なんてオチはないよなぁ。
その予想が正しいと、すっごく面倒なことになりそうな気がする。
特に事情を知っていながら助けてくれなかった僕への恨みとか憎しみとかが。
僕という例が存在する以上、僕以外にもこの世界に転生者やトリッパーがいてもおかしくはないんだろうけど。
……とりあえず、時期を見て、『Fate』とか『月姫』とか原作知識を持つ人しか知らないであろう単語を伝え、反応を確認してみるか。
「貴女の身に起きたのは、よくある話よ。
貴方は引き取られた間桐家で虐待されて、保護と治療のためここに連れてきたのよ。
ここに来た時、貴方の体はぼろぼろで、心は完全に閉ざしていたわ。
記憶がないのもそのせいよ」
「……そう。
それが事実なら、……感謝する」
「事実なら、ね」
滴ちゃんの結構失礼な返答に対してもメディアは怒りを見せることなく、面白そうに反応を見ていた。
「ええ、何も覚えていないから今の私では、事実かどうか判断するための材料が少なすぎる。
ただ、貴女の話が全て事実なら、これ以上ないほど恩知らずな台詞だとは自覚している」
「全くその通りね。
安心なさい。
これから、事実と判断できるだけの情報を提供するし、可能な限り質問にも答えるわ」
そう言ってメディアは滴に対して親切に対応し、時々あった滴の質問に答えながら以下の事情説明を行った。
・ドクター(メディア)が滴を保護した時には、体はぼろぼろで、心を完全に閉ざしていた。
・ドクター(メディア)の治療によって、体はほぼ完治している。
・ドクター(メディア)の催眠療法(実は魔術)によって、滴が間桐家で過ごした日々の記憶を封じている。
・記憶を封じた結果、滴の精神状態は改善した。
・滴が記憶を取り戻したいと望み、記憶を取り戻しても大丈夫だとドクター(メディア)が判断した時に、記憶の封印を解除する。
・現在は実質的な保護者はドクター(メディア)が担当する。
・将来、戸籍上の保護者は、間桐鶴野から間桐雁夜に変更する予定。
・間桐雁夜は、間桐家とは数年前から絶縁状態であり、『滴に対する虐待』については一切関わっていない。
・間桐雁夜はまともな大人であり、滴に対して虐待する恐れは少ない。滴が会うことを望んだ後、都合がつき次第雁夜が会いに来る。
上記のように、魔術のことは全て隠して説明したが、滴ちゃんはまだ警戒しているようだった。
まあ、無理もないか。
滴ちゃんにとって都合のいいことを言われても、記憶もなくそれを証明するものは何も無い状態では信じられるはずもない。
だがそれは予想通りであり、今後少しずつ信頼してもらっていく予定である。
そんなことを考えていると、メディアが滴ちゃんに対して突っ込んだ質問をしてきた。
「一応、現在の状況を理解してくれたようだけど、……私からも質問していいかしら?」
「構わない」
「貴女の対応や理解度、それに精神年齢はとても6歳児には見えないわ。
それには何か理由があるのかしら?」
本命が『そういう風に育てられてきたから』、対抗が『天才だから』、大穴が『前世の知識があるから(トリッパーだから)』と言ったところか?
他にも『無回答』や『回答拒否』、『わからない』という答えもあり得るとは思うけど。
「その理由は簡単。
私の父は魔術を使って、魔術関連のあらゆる情報を私の頭に入力した。
そのせいで、私の精神年齢は本来のものよりかなり高くなっている」
まじかい?
っていうか、そこまではっきりと『魔術』って言ったってことは、メディア達が魔術関係者だと見抜いていたわけか。
それはそれで衝撃的な事実だけど、トリッパーじゃなくてよかった。
それから、……この説明は嘘じゃないよな?
この説明が事実なら、『自分で身に着けたわけではない多くの知識を持っている頭でっかちの聡明な(天才な?)幼女』ということになる。
僕の知っている中で、この条件に近しいキャラクターというと、……機動戦艦ナデシコのルリちゃん?
滴ちゃんの記憶は封印されている為、ひねくれ度合はルリちゃんの方が上かもしれないが、……確かに境遇は近いかもしれない。
「そう、それだけの情報を貴女は持っているわけね。
その情報量で、精神年齢が引き上げられたのなら分からなくもないけど、……ならどうして、間桐家に引き取られることになったのかしら?
それだけの情報を持っているのなら、調査が終わるまでは魔術協会が手放さないはず。
……いえ、それ以前になぜ貴女は後継者でもないのに、それほどの情報を入力されたのかしら?」
「やっぱり、貴方も魔術関係者だったの。
……その理由は簡単。
あくまでも父の後継者は姉で、私は非常時用のバックアップ。
そのため、魔術関連の記憶についても、状況に応じて封印や封印を解除する仕掛けが施されていた。
実際、父が死に、私と姉が魔術協会に捕えられた時点で、私の記憶から魔術に関することは自動的に全て封印された」
……うちのご先祖様もそうだけど、本当にハイレベルな魔術師って、いざというときの対応に余念がないよな。
対照的に、『泥縄的に対応して遠坂家の悲願(聖杯を使って根源への到達)を凛へ伝えられなかった』という大ポカをした原作の時臣の準備不足が際立ってしまう。
さすがにこの世界では、遠坂家に関わる全てのことを本に書き残しているから、時臣師が死ぬことがあっても、原作の凛みたいに失伝情報のオンパレードってことにはならないだろうけど。
「それは大したものだけど、……魔術協会も無能ではないらしいから、一通り貴女の記憶をチェックしたんじゃないの?」
「多分、父の技量が優れていたのと、後継者が姉だと明白だったので、私への調査はおざなりだったので気づかれなかったと思う。
魔術協会でも、精神操作、記憶読み取りなどを得意とする魔術師は少ないという情報がある。
そのため、私の聞き取り調査をする際にそういった人材は呼ばれなかった可能性が高い」
まあ、確かにその通りか。
封印指定の魔術師はすでに狩られて、彼の遺産やら魔術刻印やらは押収済みだろうし、後継者たる長女も確保済み。
その状態で、魔術を受け継いでいない可能性が高く、実際魔術について何も知らない(ように見えた)次女の調査に時間をかけるなんて、効率の悪いことは普通しないだろう。
……多分、そこまで考えて、狩られた封印指定の魔術師は滴ちゃんをバックアップにしたんだろうなぁ。
で、隠し通せたからこそ、衰退しきった家系である間桐家が滴ちゃんを引き取ることができたわけか。
「それと、その記憶の封印が解かれたのは魔術協会から解放され、間桐鶴野に引き取られた後」
「つまり?」
「ええ、引き取られてすぐに魔術の記憶が蘇り、この記憶を元に今後どうやって間桐家を利用、あるいは乗っ取って、姉の救出をするか考えながら間桐家へ向かったのは覚えている。
でも、……」
「それ以降の記憶は、私が封印済みだから思い出せるはずがないわね」
「そうみたい。
……あなたは、私が何を考えていたかまで読み取った?」
「信じるかどうかは貴女の自由だけど、私が読みとったのは記憶にある映像と音声だけよ。
その時、貴女が何を考えていたかまでは知らないわ」
そうだったんだ。
……確かに時間に余裕があるとか、思考内容を読み取る必要性があるとかならともかく、治療の為被害者の数ヶ月分の記憶を読み取る必要があるなら、読み取る情報を最小限の情報にするのは当然といえば当然か。
メディアも滴ちゃんの治療を急いでいたしな。
それにしても、大量の記憶を強制的に入力されたとはいえ、精神年齢の成長と精神力の強さが半端ないな。
養子になってすぐに考えたことが、養子先の利用とか乗っ取りとか、とんでもなくアグレッシブすぎる。
……まあ、所詮子供の考えで、間桐家を利用するどころか、何もできないうちに臓硯によって蟲地獄に放り込まれて精神崩壊寸前まで行ってしまったんだろうけど。
「そう。
……別に構わない。
今言った通り、私の望みは姉を助けるのに必要なあらゆる力を手に入れること。
その手助けをお願いしたい」
「あら、私の言うことを事実かどうか判断できないんじゃなかったかしら?」
「それはさっきの話。
説明を聞いて、自分の置かれた環境を理解した今は、貴女に頼る以外の選択肢はない。
……それが例え悪魔との契約であろうとも、私の目的を適えられる可能性がそれしかない以上、その可能性に賭けるだけ」
メディアが興味を牽かれる様子を見せる中、滴ちゃんは冷静なまま、しかし強い意志を込めてそう答えた。
しかし、メディアを目の前にして『悪魔との契約であろうとも』とまで言うとは、度胸あるよな。
今のメディアは十代半ばの王女時代外見だけど、気配というかオーラはまさしく魔女、……じゃなかった神代の魔術師。
普通は怖くてそこまで言えない。
「ふふふふ、いいわ。
その年齢で、これだけの強い意志、そして冷静かつ的確な判断力。
十分見込みがあるわね」
あらら、どうやら滴ちゃんの反応はメディアの琴線に触れたらしい。
まあ確かに、魔術師としての素質はともかく、これだけの逸材ならば弟子に取ろうと思っても不思議ではない。
実際、原作のメディアも、凛のことを『弟子にしてもよかった』ような発言をしていたし。
しかし、『家族を助ける為に力を求める幼女』ということは、『機動戦艦のルリちゃん』というよりは、『ゼロの使い魔のタバサ』に近いか?
タバサも、魔術の技量があり、戦闘経験は豊富でも、人間づきあいというか社会経験は乏しかったし。
「では?」
「ただし、今は優先順位が高いことがあるから、それが終わるまでは魔術を教えることぐらいしかできないわよ」
「構わない。
魔術協会に捕らわれた姉の救出が、短期間で実現できるとは思わない」
「ますます見込みがあるわね。
でも、まだ一つだけ足りないことがあるわ」
「……手助けの対価?」
「ええ、知っての通り魔術の原則は「等価交換」
メディアの言葉に、滴ちゃんは即答した。
いくら見込みがあるとはいえ、ただで手助けするほどメディアは甘くないようだ。
……あるいは、まだ滴ちゃんを試しているのかもしれないけど。
「今の私には渡せるものは何もない。
力と知識と技術を身に付けたら労働で返す、と約束することしかできない。
それでは駄目?」
「いいえ、身の程を理解しているのはいいことよ。
……それと、ちょうど私たちは少しでも多くの魔力を必要としているの。
将来の労働と、1年後まで貴女のほとんどの魔力を提供することを了承するのなら、その条件で契約してもいいわ。
そして魔力の対価として、魔術について教えるわ。
もちろん、貴女の体に悪影響を及ぼさないレベルに抑えるわ」
「わかった。
それでいい」
こうして、滴ちゃんは『魔術協会から姉を奪還する』というとんでもなく困難な目標を達成するため、メディアに弟子入りした。
……多分、優秀な魔術師になるだろうから魔力の供給源として頼りになるとは思うけど、……滴ちゃんが令呪を手に入れる可能性はないか?
例えば、ウェイバーの分の令呪を奪ってしまうとか。
……ウェイバーって、この時点では確か三流魔術師だから、滴ちゃんにそれなりの才能が会った場合、1年後にはウェイバー以上になっている可能性は否定できない。
ま、まあ、魔術刻印もないし、わずか7歳だし、聖杯を求める理由はないし、それ以前に聖杯戦争について教えるつもりもないけど。
……いや、違うか。
『魔術協会から姉を奪還することが可能な強力な使い魔を得る』という理由なら、(聖杯戦争のことを知れば)サーヴァントを召喚することを望む可能性は十分にあるか。
『戦うことを拒絶し、魔力を極限まで奪われている魔術師』でも令呪を授かってしまうことがあるのは、原作の桜が証明しているから、……聖杯戦争が終わるまで滴ちゃんは冬木市に立ち入らせないようにすれば大丈夫か?
(アインツベルンが裏技でドイツにいたまま令呪を授かるようにしたらしい)例外の切嗣を除いた全員が、冬木市内で令呪を得たはずだから、冬木市内に入らなければ、才能がある魔術師でも令呪は与えられないはずだ。
念のため、魔術師はもちろん、大聖杯にも滴が魔術師だと感知できないような特性の隠蔽用の魔術具をメディアに作ってもらうのもありだな。
そこまでしても令呪を授かってしまったら、すぐに僕に令呪を移植してもらえばいいか。
あとは可能な限り、聖杯戦争については内緒にしておくべきだな。
そういうわけで、メディアと真桜(の影)と一緒に、滴ちゃんは冬木市外に用意した隠れ家で暮らすことになった。
可能性は低いと思うが、裏切って情報漏洩が起きることを防ぐため、僕たちは聖杯戦争が終わるまでは会う予定はない。
保護者となる雁夜さんだけは滴ちゃんが望めば会いに行くことになったが、滴ちゃんの方は今のところ会うつもりはなさそうだ。
まあこれは当然の対応だろうし、メディアと真桜を通してメッセージを伝えて少しずつでも信頼してもらうしかないだろう。
僕としては、聖杯戦争が終わる前大きなトラブルにならなければそれでいのだが、……さてどうなるやら。
最近の一番の課題だった『滴ちゃんの救出&治療&保護』が一段落したので、後は開始まで一年を切った聖杯戦争の準備を本格的に開始することになった。
聖杯戦争の準備でやるべきことは、優先順位で並べると次のようになる。
<聖杯戦争の準備項目>
1.聖杯戦争のシステム解析
(担当:メディア、メドゥーサ)
大聖杯のシステム解析とユスティーツァの記憶から、聖杯戦争のシステム(サーヴァント召喚、令呪)について解析する。
2.メディアとメドゥーサのサーヴァントとしての再召喚の準備
(担当:メディア、メドゥーサ)
メディアとメドゥーサが
3.真凛と真桜のホムンクルス作成
(担当:メディア、メドゥーサ)
ユスティーツァの記憶にアクセスした得たアインツベルンの技術を盗用し、凛ちゃんと桜ちゃんの髪の毛を元にして作成する。
これにより、真凛と真桜による魔力供給が可能となり、己の魔術回路を使って魔術行使が可能となる。
4.聖杯戦争用の陣地作成(柳洞寺地下の大空洞、柳洞寺、予備)
(担当:メディア、メドゥーサ)
大空洞と予備の陣地は徹底的に隠蔽して作成し、柳洞寺に作るダミー用の陣地は陣地構築準備のみ実施する。
キャスターのクラススキル【陣地作成】スキル入手後に強化予定。
5.大聖杯からの魔力供給
(担当:メディア、メドゥーサ)
大聖杯に潜むアンリ・マユの毒を取り除いたうえで、聖杯戦争のシステムとは別に、大聖杯から魔力供給を可能にさせる。
これが実現すれば、大聖杯に魔力がある限り、事実上魔力不足が起きなくなる。
6.(藤村組を除く)ヤクザ(犯罪者を含む)を襲撃して、武器&資金&魔力(生命力)調達
(担当:八神遼平、メディア、メドゥーサ、真凛、真桜)
魔術師の仕業だとばれないように、証拠隠滅と魔力隠蔽を徹底する。
7.盗聴器や監視カメラ、監視用使い魔の設置
(担当:八神遼平、真凛、真桜)
・遠坂邸 アサシンが防諜するため、設置断念
・教会 アサシンが防諜するため、設置断念
・アインツベルン城 切嗣が防諜するため、設置断念
・ハイアットホテル 最上階を外部から監視できるように監視カメラと使い魔を設置
最上階のあちこちに盗聴器を設置
・廃工場 冬木市内に存在する廃工場のリストアップのみ実施
・マッケンジー邸 家を外部から監視できるように監視カメラと使い魔を設置
ウェイバーが使う予定の部屋に盗聴器を設置
・青髭の拠点 予備の陣地の防犯用に監視カメラと盗聴器と使い魔を設置
・柳洞寺 ダミー用の陣地の防犯用に監視カメラと盗聴器と使い魔を設置
・大空洞 本命の陣地の防犯用に監視カメラと盗聴器と使い魔を設置
8.八神版令呪のサーヴァントへの絶対命令権追加
(担当:メディア、メドゥーサ、タマモ)
令呪の解析実施&大聖杯のシステム解析により、八神版令呪にサーヴァントへの絶対命令権を追加して、本物の令呪と同じ機能を持たせる。
9.八神版令呪の作成
(担当:タマモ)
令呪作成に必要な魔力を貯めて、八神版令呪を量産する。
10.竜牙兵の作成
(担当:メディア)
メディアの【呪具作成】スキルで竜牙兵を作成する。
銃器や手榴弾を扱う竜牙兵も作成予定。
11.蒼崎橙子との接触
(担当:八神遼平、タマモ、真凛、真桜)
蒼崎橙子と接触し、可能なら人形作成を依頼。
秘伝である人形作成技術は渡さないのは分かり切っている為、橙子が作った『魔術回路を持つ人形』を譲ってもらい、それを解析して人形作成技術を入手する。
12.八神遼平の修行
(担当:八神遼平)
魔術回路を徹底的に鍛えて、魔力発生量と魔力出力の向上
実戦経験を積む(ヤクザ狩りに参加?)
13.幻想魔術具の作成
(担当:八神遼平、タマモ、メディア、メドゥーサ)
八神家の技術で、宝具の力を一時的に借りることが可能な幻想魔術具を作成する。
14.ネタアイテムの作成
(担当:八神遼平、タマモ、メディア、メドゥーサ)
・クラスカード(元ネタ:プリズマイリヤ)
・オーバーソウル用媒介(元ネタ:シャーマンキング)
改めてリストアップすると、……本当にやることが多い上、メディアとメドゥーサに頼ることがあまりにも多い。
ど~考えても優先順位が低い作業は、メディアとメドゥーサ抜きでやるしかないな。
それから、メディア達抜きでも対応可能な作業は、極力僕たちだけでやっとく必要もありそうだ。
いくら技術チートのメディアがいても、時間と言う壁は超えられない。
原作でも、メディアは『一ヶ月寝ないで聖杯戦争の準備をした』とか言っていたし。
滴ちゃんを見捨てるという選択肢はないが、……滴ちゃんの治療に取られた時間が結構高くついたな。
あの時は、『陣地作成』『龍脈操作』『魔力(生命力)搾取』『竜牙兵作成』『アサシン召喚』をするだけでも『睡眠なしの一ヶ月』が必要だったわけだからなぁ。
あの世界のメディアはマスターである葛木にべた惚れだったので、聖杯戦争を勝つためにメディアは自主的に手段を選ばず、努力を惜しまず戦争の準備を行っていた。
『この世界で同じことをしてくれ』なんて言ったら、良くて無視、下手すれば逆鱗に触れる事態になりかねない。
……サーヴァントや分霊は寝る必要がないとはいえ、作業をすれば精神的に消耗する。
この世界におけるメディアとメドゥーサの共同作業による処理能力は、……多分あの世界でのメディアの処理能力と比べると、甘く見ても半分、いや三分の一以下ってところか?
二人に頼みたい仕事は、あの世界のメディアよりも多いことを考えると、……やっぱり優先順位が下位の作業はこっちでやるしかないか。
となると、幻想魔術具やクラスカードの作成は諦めるか、メディアとメドゥーサ以外のメンバーで作るしかないわけか。
といっても、真桜は滴ちゃんの世話で忙しいだろうから、参加できるメンバーは僕、タマモ、真凛の三人だけか。
……雁夜さんとは接触できないし、時臣師との接触も今後はできるだけ少なくした方がいいしなぁ。
しかし、僕は『聖杯戦争が始まるまで最優先で魔術回路を鍛えること』をメディアに指示されているから、さぼるわけいかない。
ってことは、幻想魔術具やクラスカードの作成は、タマモと真凛に任せたほうがいいのか?
……この二人なら時間に余裕はあるだろうけど、……聖杯戦争までに作ることができるのだろうか?
期待しないで、駄目元で頼んでおくか。
もっとも、僕が参加したからといって、どれだけ戦力になったかはわからないけど。
僕はメディアとメドゥーサが少しでも本来の力を発揮できるように、ただ魔術回路を鍛えることに専念しよう。
それが、僕たちに力を貸してくれる彼女たちへのせめてもの恩返しになるし、誠意を見せることになるだろう。
さて、後は聖杯戦争までにどこまでこれらの準備が間に合うか、だな。
おかげさまで、稼働を開始した累計ランキングで12位を取ることができました。
評価していただき、ありがとうございます。
ずいぶんお待たせしましたが、聖杯戦争前の出来事はほぼ書き終えましたので、次回はいよいよサーヴァント召喚が始まる予定です。
楽しみに待っていてください。
それと、<聖杯戦争の準備項目>に色々書きましたが、何か抜けていましたらお知らせください。
それでは。