トリッパーと雁夜が聖杯戦争で暗躍   作:ウィル・ゲイツ

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第14話 今後の相談(憑依二十一ヶ月後)

 柳洞寺地下の大空洞から自宅へ戻る途中、僕は今回の降霊術について真凛と(ライン経由で)会話をしていた。

 

「悪かったな。

 結局、お前の危惧が正しかった」

「そんなに気にしないでいいわ。

 あの時私は不安を感じていたけど、明白なリスクは説明できなかったしね。

 『特殊な方法であっても、降霊に失敗した場合分霊は英霊の座に戻る可能性が高く、英霊の座に戻らなくても普通の分霊が降霊されるだけ』だと私も考えていたわけだし、……さすがにこの結果は予想できなかったわ。

 ……もっとも、二人の協力が得られた以上、結果論だけどメリットの方が大きくなったのは確かね」

「そうか?」

 

 メリットがあることは否定しないが、デメリットも同じぐらい存在するような気がするんだが。

 例えば、メディアとメドゥーサがどうやっても僕の魂の空間(ソウルスペース)から出られない場合、よく言えば『頼りになる守護霊が死ぬまで守ってくれる』となるが、悪く言えば『いつでもマスターを操り人形にできる技術と力を持った女性英霊(しかも二人)に、死ぬまで取り憑かれる』となるよな、どう考えても。

 本人に聞かれたら怖すぎるので、こんなことはライン経由であっても誰にも話せないけど。

 

「ええ、メディアとメドゥーサというとてつもなく強大な分霊を、自意識を持った状態で降霊したことで、貴方の魂の空間(ソウルスペース)はさらに空きスペースが減ったわ。

 でも、彼女たちの知識や能力をこちらが引き出して理解したりや使いこなす訓練をする必要もなく、彼女自身が活用してくれるわけだから、これはすごいアドバンテージよ。

 貴方も考えているでしょうけど、これで聖杯戦争までの1年間でかなりのことが可能よ。

 それこそ、当初の目標だった『キャスターのクラススキルをもった分霊を降霊してクラススキルを借りる』よりも、現状の方が効果は大きいわ」

「確かにそうだね。

 彼女たちがクラススキルを持っていなかったのは残念だけど、それを言ったらきりがないしね」

 

 そう、現実とは思い通りにはいかないもの。

 理想と現実に折り合いを付けつつ、よりよい未来を目指して進むしかない。

 

「そうですよ。

 結果オーライです。

 マスターの予定通りにはいきませんでしたけど、結果としてよりよい未来を掴んだわけですから、さすがです!」

 

 タマモが誉めてくれるのは嬉しいが、能天気過ぎる台詞に真凛がしっかり注意をしてきた。

 

「あなたねえ、メリットは今説明した通りだけど、デメリットもしっかりあるのよ。

 それをきちんと理解してるのかしら?」

「……もしかして、サーヴァント召喚について、ですか?」

「そうよ。

 確かに『聖杯戦争開始までの準備』という意味では『彼女たちの協力』というメリットは絶大だけど、聖杯戦争が始まっても彼女たちが魂の空間(ソウルスペース)ら出れなかったらどうするのよ?」

「あ~、それはちょっと困りますね」

 

 タマモもやっと、現時点における最大の懸念材料を理解したようだった。

 そうなんだよな。

 そしてその可能性が高いのが、厄介なんだよなぁ。

 

魂の空間(ソウルスペース)閉じ込めてしまったことは、二人とも事故として(一応)認めてくれたわけだし、あとは影の分身やいずれ人形を操ることで、実質的に(僕の)外での活動はできるわけだから、閉じ込めた件で彼女たちの機嫌を損ねる心配は(多分)少ないと思う。

 問題は、聖杯戦争が始まっても二人がサーヴァントとしての体を得られない場合だ。

 二人はすでに聖杯を求めてないから『二人との関係』と言う意味では問題ないけど、僕の最大の目的である『アンリ・マユ復活阻止』という意味では大問題だ。

 ……ああ、時臣師と約束したダブルキャスター召喚ができないという意味でも問題か」

 

 そんなことになると、僕は桜ちゃんの婚約者から外されてしまうだろう。

 

「ダブルキャスター召喚は最悪失敗したことにするとしても、……そうね、それが一番問題よね」

「言われてみれば、……そうですね。

 確かにそんなことになってしまえば、1年掛けて色々準備しても、雁夜さんのサポートぐらいしかできませんね」

「彼女たちをサーヴァントとして再召喚できなかった場合、『すでに二人の英霊を降霊している身で僕がさらにサーヴァント召喚をする』ことになるけど。

 ……今度こそ何が起きるか分からないから、できればやりたくないし」

「そうね。

 新しく召喚したサーヴァントまで貴方の魂の空間(ソウルスペース)に取り込んでしまったら、間違いなく聖杯戦争は滅茶苦茶ね。

 それ以前に、さすがの貴方もサーヴァントを追加で二人も取り込んでおいて、何も問題が起きないなんてことはないでしょうし」

 

 今までの前科から、真凛の言葉を否定できないのが怖すぎる。

 

「それに、ゴルゴンが召喚される可能性も残っているわけだしね」

 

 真凛はご丁寧にも止めを刺してきたため、こっちは精神的にずたぼろだった。

 

「で、そうなった場合、一体どうするつもりなの?」

「今考えているアイデアだと、……タマモと『人形の体を得た真凛』の二人がマスターになって、ダブルキャスターを召喚することかな?

 もちろん、メディアたちが了承したらの話だけど」

 

 僕がサーヴァントを召喚すると何が起きるか想像がつかないけど、タマモと真凛なら召喚に問題はないはずだ、……多分。

 

「彼女たちを『サーヴァントとして再召喚すること』を諦めてもらって、別の英霊を私たちに召喚させる気?」

「その通り。

 幸いにも縁の品にキャスター二人分が残っているからね」

「クー・フーリンとエミヤのこと?」

「他に候補がなければ、その案が有力だね。

 クー・フーリンには『正当防衛を除いて、サーヴァント以外の殺害』だけ禁止して、あとは自由に戦ってもらえばいいし、エミヤも『アンリ・マユ復活阻止』のためなら協力してくれるだろうからね」

 

 二人とも、複数クラスに適性がある英霊だから、キャスターとして召喚されても、十分強いはずだ。

 さすがに、『クー・フーリンが刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルグ)なしで召喚される』ととんでもなく弱体化してしまうけど、さすがにそれはないと思いたい。

 

「確かにそれなら、クー・フーリンは喜んで戦うでしょうし、エミヤが切嗣のことを覚えていたとしても、アンリ・マユ復活阻止に全力を注いでくれるでしょうね」

「アチャ子の召喚にも心惹かれるものがあるけど、縁の品が分からないしなぁ。

 ……ああ、アイリスフィールの髪の毛とかがあれば、アチャ子が召喚できるかもしれないけど、いくら無限に近い数存在する平行世界とはいえ、本当にアチャ子が存在するか分からないのも怖いしね」

「……そうね、それが賢明ね」

「友だちになれそうだったので、ちょっと残念です」

 

 さすがに、二次創作キャラのアチャ子が英霊の座に実在するとしても、『アチャ子が実際にはどんな性格でどんな能力か?』なんて分からないんだから、そんなリスクの大きすぎる賭けは却下である。

 降霊術で降霊できるとしても、確定情報が皆無だし、分霊を解放できないわけだから、……やっぱり降霊する気になれないな。

 プリズマイリヤの魔法少女イリヤの分霊なら召喚できそうな気もするが、……やっぱり聖杯の化身(イリヤ)を召喚するのはトラブルの元にしかならない気がするので、やっぱり止めといた方がいいだろう。

 

「ただし、大聖杯から令呪を貰ったわけじゃない私とタマモが、サーヴァントを召喚できるのかしら?」

 

 ……しまった!

 その問題もあったな。

 

「あ~、その辺は、……後でメディア達と相談しよう。

 できるだけ成功確率が高くて、有効な方法を1年掛けて考えれば、……何とかなるはず。

 

 そんなことを話しつつ家に帰り、眠りについた後、僕は精神世界でメディアとメドゥーサも含めた会議を始めた。

 

 

 まずは、例の『記憶データの流し込み』で、一気に『月姫』『空の境界』『魔法使いの夜』をメディア達に見てもらった。

 二人とも色々と興味を引かれた様子だったが、先に僕の方針を伝えることにした。

 

「研究対象として興味を持った相手もいたでしょうが、聖杯戦争が終わるまでは、私としては人形師の蒼崎橙子以外接触する気はありません。

 もちろん、メディアが自力で人形を作れれば、橙子との接触も必要ないと思っていますが」

「それは無理ね。

 私が生前身に付けた技は魔術と秘薬がメインだから、人形作りは専門外よ。

 もちろん、これから研究を始めても時間と材料さえあれば私一人で作れる自信はあるけど、……さすがに聖杯戦争に間に合うかはわからないわね」

「やっぱりそうですか。

 ……では、やはり?」

「ええ、少しでも早く高度な人形を手に入れたいから、橙子と接触するのは賛成よ。

 それ以外のメンバーとは、余裕ができてからどうするか考えましょう。

 ……聖杯戦争が終わるまでは、人形入手以外は聖杯戦争が最優先で構わないわ」

「私もそれで構いません」

 

 よかった。

 ただでさえ、厄介な状況に関わっているんだから、まずはそれにけりを着けるまでは他に手出ししないのが賢明だよな。

 

「ただし、手出しはしないけど、情報収集だけはさせてもらうわよ」

 

 この時代の魔術や強者の存在を、自分の目で確認したいのだろうか?

 まあ、『遠坂凛に接近戦で敗れる』などという失態を別世界の自分がやってしまった以上、その二の舞を防ぐため情報収集に力を入れるのは当然といえば当然か。

 

「……できるだけ気づかれないようにお願いします。

 万が一、偵察していることがばれても、本来の流れを変えてしまわないように注意してもらえれば構いません。

 ……ああ、偵察の影響を問わず、さっき見た物語と違う展開に気付いたら、すぐに教えていただけると助かります」

 

 そうだった。

 ちょっと忘れていたけど、この世界に僕という『八神遼平』という異物が存在する以上、Fate以外の出来事も原作通り展開する保証はない。

 可能なら、原作通り歴史が進むか調査しておくべきだろう。

 それと、可能なら『月姫がどのルートに進むか?』についても知っておいたほうがいい。

 さっきメディアに注意したように、調査行為自体が原因となり歴史が変わってしまったら本末転倒だけどね。

 

「そうね。

 できるだけ気づかれないように対策して、可能な限り遠くから使い魔で監視するように努めるし、何か異常があればすぐに連絡するわ。

 それでいいかしら?」

「ええ、そうしていただければ問題ありません」

 

 メディアはこの時代の魔術や魔術師を格下と見下しているのだろうが、『魔法使い』や『直死の魔眼の使い手』がこの時代に存在することを知って、メディアもそれなりに警戒しているのだろうか?

 まあ、警戒するに越したことはないか。

 時間を作って、メディアが収集した映像を再構成することで、実写版の『月姫』を作ってもらうのも面白そうだしね。

 

 

 この後、『この世界で僕が覚醒してから今まで何をしてきたか?』について、ダイジェスト版の映像を見てもらいながら説明を行った。

 なお、本人に確認したところ、『分霊が持っていた記憶』はあくまでも『分霊の力をいつ誰が(借りて)使ったか?』とか、『(分霊も一緒にいた)精神世界の会議室で話されたこと』のみだった。

 そのため、『精神世界の会議室で行われたた作戦会議の内容は全部知っているが、外の世界で何をやっていたかについては一切情報がない』という、ごく限られた情報しか持っていなかったらしい。

 ……これは多分本当だろう。

 

 それと、彼女たちの分霊を精神世界の会議室にいさせた理由だが、これは見た目は麗しいので、(分霊を)二人ともずっと部屋に飾っておいたのが原因である。

 ……さすがに、マネキンのように立たせっぱなしは良くないかと思って、ソファーに座らせて凛々しく飾っておいたけど。

 分霊に変なことをしなかったこと、そして首尾一貫してメディアとメドゥーサに協力を求める方針で、無理矢理従わせることなどを一切口に出していなかったのは大正解だった。

 まさか『分霊が見聞きしたことを記憶していて、その情報をメディアたちが受けとる』なんて、ほんとに想定外だったもんな。

 

 

 そんなことを考えつつ、『この型月世界の冬木市で僕がやってきたこと』の説明を無事に終えた。

 

「ある程度は予想できていたけど、……本当に色々やってきたわけね」

 

 メディアの口調は少々呆れ気味だった。

 まあ、『僕に可能な範囲で、思い付く限り色々やってきたこと』は否定しない。

 とどめに、『サーヴァントではない自意識を持った分霊』を二人(事故とはいえ)召喚している時点で、イレギュラーも極まっている状態だろう。

 

「それにしても、普通の使い魔ではないとは思っていたけど、……なるほどね」

「ええ、変化スキルを使えるようになったり、不完全とはいえ令呪を作れるようになったりと、私の想像を越えるすごい使い魔です。

 さすがは、ご先祖様が命を削って、というか命を対価として作り出しただけのことはあります。

 最近では、メドゥーサの分霊からスキルを借りて最低レベルとはいえ『魔眼』を使えるまでになったんですけど、……今後もスキルを借りてもいいですか?」

「私に悪影響が無ければ問題ありません。

 スキルを貸していると言っても、現時点では私への影響は微々たるものです。

 魂の空間(ソウルスペース)にいる限りスキルの使い道もありませんし、自由に使って構いません」

 

 さすがはメドゥーサというべきか、とても寛容な回答だった。

 

「それと、真凛もがんばってメディアの分霊からスキルを借りて、『高速神言』をなんとか使えるまでになったんですが……」

「私の分霊から力を借りたとはいえ、正直この時代にあのスキルの使い手が現れるとは予想していなかったわ。

 ……そうね、私が使っていないときなら、『高速神言』の使用許可を出しましょう。

 それといまさらでしょうけど、マスターが死ねば私たちも英霊の座に戻ることになって、これらのスキルは使えなくなるわ。

 それが嫌なら、全力でマスターを守りなさい」

 

 なるほどね。

 僕の護衛戦力として信頼しているから、スキルを貸すことを認めたのか。

 ……まあ、お互いの利害が一致するわけで、無償で理由も言わずに助けられるよりは納得できるし、……うん、問題ないな。

 もっとも、そんなことを言わなくても、真凛はよほどのことをしない限り僕を見捨てたりはしないと思うけど。

 

「で、私もせめて『石化の魔眼を劣化させた圧力の魔眼』とか、『高速神言を劣化させた高速詠唱』とかを使えるようになりたいと思っているんですけど「却下」

 

 僕の希望は、即座にメディアによって切り捨てられた。

 

「私たちが一番力を発揮できるようになる方法は、『貴方が魔術回路を鍛えて、魔力量と魔力回復量、そして魔力の出力を増やすこと』と『私たちが自由に動けるようにすること』よ。

 私たちのサーヴァントや人形の体の作成は、今後の課題ね。

 そして、聞いた話だとすでにタマモの魔力量と魔力回復量は限界まで伸ばしているようだし、残る可能性は貴方だけよ。

 魔力さえあれば、私とメドゥーサと真凛の3人が影の分身を操作して、さらに魔術を使って戦えるわ。

 それすらもあなたの魔術回路の最大出力と言う制限が存在するから、少しでも魔力量と最大出力を上げるために、他のことは一切目もくれずに死ぬ気で魔術回路を鍛えなさい」

 

 うわ~、『基本を限界まで鍛えることが最強への道』とはよく聞かれる台詞だけど、僕の場合、徹底的に『基礎の基礎である魔術回路を鍛えること』以外してはいけないし、期待もされてないのかよ。

 ……いや、まあ、生き延びることを最優先とした場合、それが当然の結論なんだろうけど。

 なにせ僕が死ねと同時に、メディアとメドゥーサがこの世界から消滅し、タマモもマスターを失ってしまう。

 そんなリスクを負うぐらいなら、僕は『隠れている』か『最後衛で仲間のフォロー』を行って、残りのメンバーが『攻撃』『防御』などを担当したほうが、よっぽど安全かつ効率的だ。

 

 ……ああ、なるほど、僕は将棋の『王将』みたいな存在で、駒としては弱い存在だが、一番重要な存在なわけだ。

 僕の技術を伸ばすことを考えるよりも、魔術回路を鍛えて、供給可能な魔力量を増やし、(僕より強い)仲間(使い魔、分霊)の能力の底上げをしたほうがいいのは言うまでもない。

 僕に魔術を修行する時間があったとしても、逃走、隠蔽、回復、防御系の魔術を中心に身に付けるべきなんだろう。

 後は王将らしく、仲間の行動を指揮……は厳しいから、せめてフォローできるように、戦術の勉強をするべきか?

 

 だが、それでも、唯一かもしれないが僕には降霊術の素質があるんだ。

 これでさらなるパワーアップとかして、僕の戦力化はできないものだろうか?

 

 そんなことを考えていたのが顔に出ていたのか、メディアは冷たい声で止めを刺してきた。

 

「今までの貴方の成果は評価するけど、それは『八神家の魔術刻印』と『タマモという使い魔』のおかげという面が強いわ。

 さらにいえば、貴方自身の成果も、『前世の観測世界の知識』と『二つの魂が融合したことによる魂の空間(ソウルスペース)広さと特性』に依るものが多いことを忘れないように。

 『本当の貴方の成果』といえるものはそれほどないし、魔術刻印無しの貴方は『魔術師見習い』でしかないのよ。

 そのことをしっかり自覚しておかないと、聖杯戦争で痛い目を見るわよ」

 

 ……さ、さすがはメディア様。

 本当に、本っ当~に容赦のないお言葉である。

 そして、メディアに指摘されたことを自覚せずに調子に乗った結果が、『意図しない自意識を持った二人の英霊召喚』だからなぁ。

 ええ、全く反論できません。

 

 

「それから、間桐滴に対してはどう対処するつもりなのですか?」

 

 僕が精神的ショックから立ち直れていない時、今まで黙っていたメドゥーサが発言した。

 やっぱり、原作の桜の立場に該当する少女のことは気になるのか?

 それとも、『本人の責任は全くないのに他者に弄ばれる少女』は誰であろうと放ってはおけないのだろうか?

 

「滴を苦しめている原因は臓硯とはいえ、私の責任もないわけじゃないですからね。

 『臓硯を確実に始末して、滴を助け出せるだけの戦力と準備』が整った時点で実行するつもりです。

 そして、滴の体を治療して、可能な範囲で彼女の希望を叶えたいと思っています」

「可能な範囲で、ですか?」

「ええ、臓硯や鶴野に対する復讐は当然としても、雁夜さんや遠坂家、そして私に対してまで恨みを抱いている可能性も否定できませんから。

 その場合、残念ながら復讐の手伝いはできなし、当然恨みを晴らす行為をさせるわけにはいきません」

 

 そう、可哀想とは思うけど、こっちがサポートできることには限度がある。

 僕は博愛主義者じゃないから、無制限に何でもサポートしてあげると言えるわけがない。

 そう言う意味では、僕にとっても衛宮士郎の生き方には全く共感できない。

 共感はできないが、排除しようとは思わないし、そういう存在だと理解していれば、それなりにうまく付き合えるとは思うけど。

 

「そう。まあ、それが当然ね」

「それは、……仕方ありませんね」

 

 それを理解しているようで、凛とタマモも賛成のようだ。

 

「あと、滴が苦しむことになった要因である私たちでは、何を言っても無視されるか怒らせるだけかもしれないので、貴女たちに滴の対応していただけると助かるんですが」

 

 口に出して言えるはずもないが、悲劇そのものの過去を持つ彼女たちなら、滴と仲良くなれるのではないかとも考えている。

 

「……そうね、その理由もあるけど、男の貴方に人生経験が少ないタマモと真凛じゃ滴のことを理解できそうにないわね。

 いいわ。救出したら、私とメドゥーサで面倒をみましょう」

「よろしくお願いします。」

 

 多分、これがベストの対応のはずだ。

 僕が関与するのは、滴自身か彼女たちが指示した時に限定したほうがいいと思う。

 

 

 その後、改めてメディアたちの状況を説明してもらったところ、今回の降霊術について現状で判明しているのは次のことだった。

 

 僕は、

『八神家流の降霊術に、サーヴァント召喚の魔法陣と呪文を組み合わせて、クラススキルを持った分霊の降霊』

を狙ったが、

『令呪(2画)を消費して大聖杯からサーヴァント召喚システム(サーヴァントに与える日本語や常識の知識を含む)を一部コピーして、大聖杯を通さない大規模な降霊術が発動』

してしまい、

『すでに降霊済みで、魂の空間(ソウルスペース)に存在する分霊のメディアとメドゥーサの影響もあり、自意識を持つ英霊を召喚することに成功した』

らしい。

 

 そのため、二人にはクラススキルはないそうだが、……聞けば聞くほど、あの時恐ろしいことが起きていたようだ。

 もしかしたら、無意識のうちに二人分霊の力まで借りて降霊術を発動していた可能性もある。

 まさに奇跡と言っても、過言ではあるまい。

 ……同じことを再現するのはほとんど不可能じゃないか?

 まあ、頼まれても同じことをするつもりは欠片もないけど。

 

 

 メディアによると、『アンリ・マユを取り込んですでにシステムに異常が発生している大聖杯のすぐ近くで、すでに令呪を持つ存在が、サーヴァント召喚の召喚陣と召喚呪文を使った上で、独自の降霊術を行使したこと』で誤作動が起きた可能性が高いらしい。

 ついでにいえば、『同じ条件で再び降霊術を使っても、同じ結果になる可能性はほとんどない』らしい。

 ああ、なるほど、改めて状況を説明されると、そりゃ誤作動も起きるわ。

 というか、そんなことが起きてよく僕が無事だったものだ。

 くわばら、くわばら。

 

 さらに説明は続き、今回の降霊術は、すでに僕が同じ英霊の分霊を降霊済みだったので、通常の降霊ではなく、『二重降霊による分霊の補完』とでもいうべき状況になったとのこと。

 その結果が、『分霊の能力強化&自意識の追加』になったらしい。

 僕はてっきり同じ分霊が二人存在したので、弱い方が吸収されたのかと思っていたが、それとは比べ物にならないほど凄いことが起きていたらしい。

 

 ついでなので、『サーヴァントとして召喚された場合のフルスペック状態(予想)』について本人に確認したところ、想像以上のデータを教えてくれた。

 

 

<サーヴァントのパラメータ>

クラス    キャスター

真名     メディア

マスター   ?(原作の遠坂凛以上の能力を持つ魔術師)

属性     中立・悪

ステータス  筋力 C  魔力 A++

       耐久 B  幸運 ?(マスターの影響大?)

       敏捷 A  宝具 EX

クラス別能力 【陣地作成】:A

       【道具作成】:A

保有スキル  【高速神言】:A

       【金羊の皮】:EX

       【騎乗】:A+ NEW

宝具     【破戒すべき全ての符】:C

       【降臨せし太陽神の戦車】:A+ NEW

       【天に捧げし魔法の杯】:EX NEW

 

【降臨せし太陽神の戦車】:A+ NEW

 メディアが太陽神ヘリオスに願いを掛けて、天空から降ろしてもらった『竜が牽く戦車(チャリオット)』。

 ギリシャ神話には、『メディアは竜が牽く戦車(チャリオット)に乗って、イアソンの元から去った』という伝説が残っている。

 この宝具を所持している場合、戦車(チャリオット)の操縦のため、メディアは【騎乗】スキルを保有する。

 

【天に捧げし魔法の杯】:EX NEW

 メディアが愛用した薬やお酒を調合するクラーテルと呼ばれる台付の杯。

 若返りの薬など、魔女の秘薬を作成可能。

 ギリシャ神話において『天に上げられコップ座になった』と伝えられている為、宝具のランクが最高ランクになっている。

 

 

<サーヴァントのパラメータ>

クラス    ライダー

真名     メドゥーサ

マスター   ?(原作の遠坂凛以上の能力を持つ魔術師)

属性     混沌・善

ステータス  筋力 B  魔力 A

       耐久 C  幸運 ?(マスターの影響大?)

       敏捷 A  宝具 A+

クラス別能力 【騎乗】:A+

       【対魔力】:B

保有スキル  【魔眼】:A+

       【単独行動】:C

       【怪力】:B

       【神性】:E-

       【海神の加護】:A NEW

       【大地制御】:B NEW

宝具     【騎英の手綱】:A+

       【他者封印・鮮血神殿】:B

       【自己封印・暗黒神殿】:C-

 

【海神の加護】 NEW

 ポセイドンが愛人だったメドゥーサに与えた加護。

 水に関連するあらゆる攻撃を完全に無効化し、水中にいる間は「筋力」「耐久」「敏捷」「魔力」のステータスが1ランク向上する。

 

【大地制御】 NEW

 かつて大地の女神だったメドゥーサが保有する高度な自然干渉能力。

 地脈もある程度操作可能。

 

 

 このステータスは、『原作の遠坂凛以上の魔術師がマスターとなり、現地補正と知名度補正が最高となるそれぞれの故郷でサーヴァントとして召喚されれば、たぶんこれぐらいのステータスになるのではないか?』とのこと。

 

 なんぞこれ?

 メドゥーサに追加されたスキルもすごいけど、メディアに追加された宝具が半端ないぞ。

 さすがは『星座のコップ座になったとまで言われているメディアのクラーテル』と、『太陽神がメディアに下賜した戦車(チャリオット)』というべきか。

 どれも彼女たちの伝説で語られている逸話や伝承に基づくものばかりだから、フルスペックの彼女たちなら持っていてもおかしくはないんだろうけど。

 もっとも、分霊として降霊した彼女は、物質系宝具を持っていないのが残念ではあるが……。

 

 

「って、ちょっと待て!

 降霊した英霊は物質系宝具を持っていないが、魔術系宝具やスキルは分霊も(弱体化はしても)持っている。

 もしかして、現地補正や知名度補正が掛かるのは聖杯戦争で召喚されるサーヴァントであって、八神家の降霊術で降霊した分霊には関係ないのでは?」

「降霊術でも、現地補正や知名度補正が掛かるわ。

 だたし、力業で覆すことが可能よ」

「つまり?」

「ここで『出身地がヨーロッパの英霊を召喚すると、普通は現地補正と知名度補正で弱体化する』のだけど、分霊を弱体化しないように降霊させればいいだけよ」

「それって、もしかして?」

 

 期待を胸に、恐る恐る尋ねるとメディアはすぐに頷いた。

 

「ええ、とてつもない降霊術の技量と莫大な魔力が必要になるわ。

 ……頭の痛いことに、体質と才能と偶然でそれを成し遂げてしまった存在がここにいるわけだけど」

 

 そう言って、メディアは大げさに溜息をついた。

 詳しくメディアから事情を聞いてみると、『二重降霊による分霊の補完』によって、現在の二人ともほぼフルスペックと言っていい状態まで強化されているらしい。

 

「本来降霊術において、分霊を降霊した状態でさらに降霊術を行使する『二重降霊』なんてありえないのよ」

「あっ、そうか!

 普通は分霊を降霊し続けるためには精神集中も必要だし、何より維持するだけで魔力を消費するから、とんでもない集中力と魔力を必要とする降霊術を、分霊を降霊したままの状態でできるわけないのか」

「おまけに、そこまで強力な魂を納めるだけの魂の空間(ソウルスペース)を持っている人は滅多にいないわ。

 ところが貴方は、『規格外の広さを持つ魂の空間(ソウルスペース)と『一度降霊した分霊を解放させないという体質』によって、この二つの問題をクリアしてしまった」

「じゃ、じゃあ?」

「ええ、今の私たちは生前の能力をほぼ完璧に保有しているわ。

 もっとも、体がなく、魂は貴方の中から出られないせいで、そのメリットが全く意味をなしてないけど」

「その通りですね」

 

 メディアは少々呆れ顔で、メドゥーサの声からもそんな感じが伝わってきた。

 これで二人が自由に外に出られたのなら(サーヴァント以外のほとんどの相手には)無双状態だが、それが可能なら『自意識ありでこれほど強力な英霊』を召喚できなかったわけで、ものすごく複雑である。

 まさに矛盾状態だな。

 

「そして依り主である貴方が死ぬようなことがあれば、私たちは強制的に英霊の座に戻されるでしょうね」

「それを防ぎたければ、いやでも貴方の命を守らなければいけない、というわけですね」

 

 嫌味のつもりはないかもしれないが、メドゥーサの台詞に慌てて僕は謝罪した。

 

「本当に申し訳ありません」

「別に貴方を責めたわけじゃないわ。

 ただの現状確認よ。

 とはいえ、貴方が迂闊な行動をとって死ぬようなことがあれば、私たちも道連れになるんだから、絶対に忘れないようにしてほしいわね」

「そうですね。

 桜を見守り続けられるようにするためにも、貴方に死なれては困ります。

 ……そういえば、貴女の魔術か秘薬で彼を死なないようにできませんか?」

 

 あっさりと、メドゥーサはものすごいことをメディアに尋ねてきた。

 

「そうね、吸血鬼化なら少し研究すればできると思うけど「それは勘弁してください。

 ……成長期が終わった後、吸血衝動なしで、水も日光も平気なら考えなくもないですけど」

 

 これは衛宮切嗣の父である衛宮矩賢が研究していたことでもある。

 ここまでデメリットが無くなれば、……後は子供が残せるならば、別に吸血鬼になってもいいとは思う。

 

「冗談よ。

 私も吸血鬼をマスターにするのは嫌だし、何より貴方の魂の空間(ソウルスペース)にいる私たちまで吸血鬼化の影響が及ぶ可能性もあるわけだし」

 

 確か吸血鬼になると魂まで汚染させるから、体を人形に変えたとしてもその体もまた吸血鬼化するんだっけ?

 それなら、魂の空間(ソウルスペース)にいる英霊まで影響を及ぼす可能性は否定できないか。

 

「まあ、その辺はおいおい対策を考えましょう。

 とりあえずは、聖杯戦争中に私たちとは完全に別行動をとって、令呪を完全に隠し通せば、……多分、切嗣と綺礼以外には貴方がマスターだとばれないでしょう」

「いや、誰よりもその二人にばれないようにしたいんですけど」

 

 あの二人に僕の存在がばれるということは、『僕の死亡フラグが立つ』と考えていいだろう。

 

「無理ね。

 姿を現さなくても、この町にいるマスターになる可能性を持っている魔術師として、遠坂家の娘たちと弟子である貴方と雁夜は絶対にマークされるわ」

「となると、ばれること前提で家族には旅行に行ってもらって、私は隠れ家に身を潜めているのが一番安全ってことになるのかな?」

「そういうことね」

 

 ……それが一番いい方法か。

 『マスターの可能性が高いからとりあえず殺しておこう』と雨生龍之介を銃殺するような相手の場合、徹底的に隠れているのが一番か。

 僕もサーヴァントや切嗣、綺礼と戦うなんて絶対に嫌だしな。

 

 

 なお、原作において『魔術を駆使して謀略の限りを尽くしたメディア』にとって、『魔術と科学の両方を使ってあらゆる手段を使った切嗣』はとても興味深い存在らしい。

 たしかに、『切嗣がメディアを召喚して、完全な協力関係を構築』していたら、恐ろしいことになっていただろうな。

 そういうわけで、メディアもまた、切嗣対策と戦術のバリエーション追加を兼ねて、銃などの武器の調査も行うらしい。

 疑問に思って、「魔術師であるメディアが銃などを使うんですか?」と率直に尋ねたところ、「私は使うつもりはないけど、竜牙兵に使わせるつもりよ」という回答が返ってきた。

 なるほど、あいつらなら特攻兵として遠慮なく使えるし、銃で武装されたらケイネス以外のマスターにとっては相当な脅威だな。

 元々、剣や槍などで武装していたわけだし、そこに銃などの武器が加わってもメディアにとっては問題ないわけか。

 しかし、

 

「武器の調達はどうするんですか?

 時臣師はもちろん、雁夜さんでも入手は厳しいと思いますよ」

「あら、切嗣が日本に武器を持ち込んで使っていた以上、同様にこの国へ武器を持ち込んでそれを扱うところが日本にも必ずあるはずでしょう?

 そこで、影を使って購入すればいいわ」

 

 となると、ヤクザである藤村組を頼るか?

 しかし、武器を奪われて出所である藤村組に迷惑をかけるのは避けておきたいな。

 ……藤村組は、原作情報では一般市民には迷惑をかけない暴力団らしいし。

 

「では、影で犯罪者を狩って、ばれない程度に生命力を奪って、さらに武器も没収するというのはどうでしょうか?

 ああ、藤村組への鉄砲玉、じゃ意味が分かりませんよね。

 藤村組へ襲撃しようとする奴がいれば、それも狩ればそれなりの武器が手に入るはずです。

 襲撃者のバックの組織を襲撃して、武器と資金とある程度の生命力を奪った後、警察に通報するのもありですね。

 もちろん、魔術の痕跡は一切残さないで。

 ……できますよね?」

 

 魔術師にばれなければ影でやりたい放題だし、メディアなら魔力の隠蔽も完璧にできるだろうと、かなり大胆な提案をしてみた。

 ちなみに僕のモットーは、『犯罪者に人権はない』である。

 よって、犯罪者を狩って痛い目に合わせるのは願ったり叶ったりである。

 ……いや、前世では力もコネもなかったので、このことを想像(妄想)しただけで、何も行動してはいなかったけど。

 

「当然よ。

 最初から魔力の隠蔽を重視して魔術や使い魔を使えば、この時代の魔術師なら痕跡すら見つけられないわ」

 

 実に頼もしいお言葉である。

 こうして、武器入手と生命力補充と資金集めと近所の治安向上を兼ねて、メディアの影による犯罪者狩りが行われることが決定した。

 

 

「話を戻しますが、貴女たちの宝具はともかくスキルの方は?」

「ええ、さっき説明したフルスペックと同じよ」

 

 おお、すばらしい回答だ。

 となると、次に聞くべきことは、

 

「それでは、そのスキルを借りることは?」

「『スキルを使いこなせるだけの素質を持ち、私が力を貸してもいいと考えた相手』なら構わないわ」

 

 やっぱりそうか。

 これからは、僕たちが使えるかどうか以前に、スキルを借りる為にはメディアたちの許可が必要になるんだよなぁ。

 

「私としては、貴方たちが桜を守っている限り、自由にスキルや宝具を使って構いません。

 ただし、制御できず自滅した場合の責任は取れませんが」

 

 おお、さすがはメドゥーサ。

 最後に物騒なことを言っているけど、寛容だな。

 僕はスキルを使う訓練の時間はとれなさそうだけど、タマモと真凛ならいずれ使いこなしてくれるだろう。

 

「念のため言っておきますが、『海神の加護』はポセイドン様からいただいた加護、そして『大地の制御』は私が大地の女神であった頃の能力の一部です。

 どちらのスキルも、制御するのに失敗すれば何が起きるかわかりませんよ」

 

 メドゥーサはそう言って口元を緩めたが、それはどう考えても脅しですよ。

 

 

「ところで、聖杯戦争開始後にお二人がサーヴァントの体を得られて、ここから外に出れたとしてやっぱりパラメータは弱体化するでしょうか?」

「……そうね。

 改めてサーヴァントとして召喚され直すようなものだから、今の力をサーヴァントの体に継承できるようなシステムを構築していなければ、……まず弱体化するでしょうね」

「では、ヨーロッパ、いえ地中海でそれを実行すれば?」

「地中海の近くにいる限り、現地補正と知名度補正があるでしょうけど、日本に戻れば当然補正が無くなって弱体化するわね」

 

 そう、うまい話はないか。

 まあ、そんなことが可能なら、『マスター達は令呪入手後、サーヴァントの故郷で召喚してから冬木市に来る』ことをマスター全員(特に切嗣)が実行するだろうから、多分無理だとは思っていたけど。

 

「やっぱりそうなりますか?」

「ええ、今回のような裏技でも使わない限り無理でしょうね」

「では、令呪を使えばどうですか?

 と言っても、現時点では一画しか残っていませんけど」

「タマモの解析プログラムで半分まで解析が終わっているようだから、その解析結果を元にして私が令呪を調べれば、それほど時間は掛からずに令呪の完全解析は終わるわ。

 そうなれば、令呪の数は少しは増えるわよ」

 

 さすがは、神代の魔術師。

 キャスターのクラススキルを持っていなくても、技術力は半端ないな。

 

「では?」

「……たぶん、無理ね。

 令呪はマスターとサーヴァントの二人の力で可能なことを実現化させる。

 とはいえ、貴方も知っての通り、長期間効果を発揮させる命令だと令呪の効果はかなり弱体化するわ。

 『サーヴァントに対して、日本でも故郷と同じ補正を与えること』、あるいは『故郷で得た補正を日本に戻った後も継続させること』は、さすがの令呪でも不可能のはずよ。

 一度手に入れた能力ということで、『故郷レベルの補正を短時間だけ与えること』なら可能かもしれないけど」

 

 なるほど、実に理解できる意見だ。

 やっぱりそう簡単にはいかないか。

 

「現地補正は『故郷との地脈との相性』、知名度補正は『英霊が遺した偉業とそれを讃える(現地の)人々の認識』、そういったものがサーヴァントのパラメータに影響を与えるわけだから、遠く離れた場所で同じ効果を持たせるなんて私でもできないわ。

 ……誤魔化せるとすれば、マスター補正だけね」

「えっ?

 できるんですか?」

「何言ってるの。

 すでに貴方がしたことよ。

 貴方とタマモが私たちのダブルマスターになって、私たちのパラメータを上げたように、複数の優秀な魔術師をマスターに設定できれば、生前と同じステータスになるでしょう。

 残念ながらサーヴァントシステムでは、スキルと宝具は現地補正と知名度補正しか影響がないようだけど」

 

 本当にうまく行かないものだ。

 メディアなら時間をかければ何でもできそうなイメージを持っていたが、やはり彼女でもできないことはあったわけだ。

 マスター候補の優秀な魔術師は、……やっぱり『人形の体を得た真凛』が有力候補かな?

 まさか、凛ちゃんや桜ちゃんは巻き込めないしなぁ。

 

 

 メディアたちには令呪とサーヴァントシステムの解析を始めてもらい、タマモと真凛はスキル使用の訓練を、僕は魔術回路を鍛える訓練をしつつ、蒼崎橙子と穏便に接触する方法を考えるとするか。

 

 さーて、これから聖杯戦争が始まるまで、忙しくなりそうだ。

 




【にじファンでの後書き】
 彼女たちのフルスペック状態を考えてみました。
 意見などがありましたら、お知らせください。

 PV54万達成しました。
 どうもありがとうございます。


【備考】
2012.06.07 『にじファン』で掲載


【改訂】
2012.06.09 【海神の加護】の効果を『水中にいる間は「筋力」「耐久」「敏捷」「魔力」のステータスが1ランク向上する』と追記しました。


【設定】

<パラメータ>
 名前 :メディア
 性別 :女
 種族 :分霊
 年齢 :不明(外見は10代半ば)
 職業 :英霊の分霊
 立場 :八神遼平が召喚した分霊
 属性 :風、架空元素・虚数
 ライン:八神遼平
 方針 :喧嘩を売ってきた時臣師を半殺し
     徹底的に苦しませた上で臓硯を殺す
     武器入手と生命力補充と資金集めと近所の治安向上を兼ねて、犯罪者狩りの実行(聖杯戦争開始前まで)
 備考 :分霊だが自意識持ち
     道具系のスキルや宝具なし
     八神遼平の魂の空間(ソウルスペース)から脱出不可

<分霊のパラメータ>
種族     分霊
真名     メディア
マスター   八神遼平&タマモ
属性     中立・悪
ステータス  筋力 D  魔力 A++
       耐久 C  幸運 A
       敏捷 B  宝具 -
保有スキル  【高速神言】:A
       【呪具作成】:B
       【騎乗】:A+ NEW
宝具     なし


<パラメータ>
 名前 :メドゥーサ
 性別 :女
 種族 :分霊
 年齢 :不明(外見は20歳ぐらい)
 職業 :英霊の分霊
 立場 :八神遼平が召喚した分霊
 属性 :土・水
 ライン:八神遼平
 備考 :分霊だが自意識持ち
     道具系のスキルや宝具なし
     八神遼平の魂の空間(ソウルスペース)から脱出不可

<分霊のパラメータ>
種族     分霊
真名     メドゥーサ
マスター   八神遼平&タマモ
属性     混沌・善
ステータス  筋力 B  魔力 B
       耐久 D  幸運 A
       敏捷 A  宝具 B
保有スキル  【魔眼】:A+
       【怪力】:B
       【神性】:E-
       【対魔力】:B
       【騎乗】:A
       【海神の加護】:A NEW
       【大地制御】:B NEW
宝具     【他者封印・鮮血神殿】:B
       【自己封印・暗黒神殿】:C-

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