ラスボスハイスクール 完結   作:ケツアゴ

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次回で最終回ですがやはり出番がありません

 カテレア・レヴィアタンにとって魔王の座を奪われ僻地に送られた事はそれ程苦痛ではなかった。その理由は戦争で死んだ恋人との間に生まれた子供の存在にある。子供の名は『レオナルド』。王族としての暮らしを味あわせてやれないのは心苦しかったが、それでも元気に育つ我が子の姿を見るだけで彼女は幸せだった。

 

 だが、その幸せも突如終わりを告げる。未だ開発しきっていない場所の多い冥界。それも僻地ゆえに安全の為の工事などされていない場所もあり、レオナルドは事故によってあっさりとその生涯に幕を閉じた。

 

「私があの時勝てていれば! この様な場所で暮らしていなければ……」

 

 他の旧魔王と違い彼女の心を染めたのは怒りでも狂気でもなく悲しみ。ただ悲しみに打ちひしがれ、ただ生き続けるだけの日々を送っていたある日、カテレアの前にゲオルクが現れた。

 

「私の目的が達成されれば死者蘇生すら容易い、それも神器による中途半端なものでなく、完全な蘇生だ」

 

 相手が人間という点を除いても俄かには信じられぬ与太話のような誘い。だが、子を失った母(カテレア)は僅かな希望を欲しがり、その手を取った。そして数年前。戦力として集められた神器持ちの孤児の中に息子そっくりの子供がいるのを見つけたカテレアはその子を引き取り、レオナルドと名付けて育てる。その姿はまさに子を思う母親の様であった。しかし、けっして自分の事を母とは呼ばせなかったが……。

 

 

 

 

 

 

 

「おや、もう終了ですか」

 

 ロキが用意したミドガルズオルムのコピー体をあらかた倒したアーサーは信号弾を見るなり何処かへと転移して行き、後にはロスヴァイセだけが残された。

 

「あっ! 折角見つけた英雄候補が……」

 

 どちらにしても恋人が居るのでロスヴァイセは彼氏居ない歴イコール年齢のままである。だがそのような事など忘れ去ってアーサーをどう勧誘しようかと考えていた彼女は見るからに落ち込み、背後の異変に気付かないでいた。

 

 

 

 大地を這うようにスライム状の物体が蠢き、ミドガルズオウムの死体を取り込んでいく。そして合流する為に放置されたハティとスコルの死体にもそのスライム状の何かは忍び寄っていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部長、無事で何よりっす! って、サイラオーグさんっ!?」

 

「ああ、強敵と聞いてな。魔王様達に頼んで救援に来たという訳だ」

 

 それぞれの敵を倒した一誠達は他の仲間に加勢すべく互いを探しあい、行き違いすれ違いを繰り返して漸く合流する事が出来た。何か色々あって心労が重なったリアスは一誠達には無理して笑顔を向け、一誠達は気付いていながらも気付かないふりをする。

 

「甘い! この! ギャスパーに! そのような無理が通じると思った……」

 

「……えい」

 

 訂正。一人空気の読めない馬鹿(ギャスパー)が居たが小猫が実力で黙らせた。それぞれ戦闘で体力を消耗し、フェニックスの涙も使い切っている。だが、一人の死亡者も出す事なく勝利した事で気分は晴れやかで、

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが決定的な油断となった。突如地面から噴き出してくるスライムに一誠、サイラオーグ、小猫が飲み込まれてしまったのだ。そして、スライムの内部から女性の声が聞こえてきた。

 

 

「さて、本来ならこのような不意打ちは好みではありませんが、我が子と再会する為です。我慢すると致しましょう。初めまして偽りの魔王の血縁者とそのお仲間さん達。私の名前はカテレア。取り込まれたお仲間を助けたければ、このスライム内部の私を倒す事ですね」

 

「なら、簡単じゃねぇか!!」

 

 その声が聞こえてくると同時にフリードが動き出す。疲労で限界が来た体を無理に動かしエクスカリバーを振り上げる。だが彼が接近したその瞬間、スライムの体からドス黒い魔力が放出される。それは触れるもの全てを消し飛ばす滅びの魔力であった。フリードの体は止まらずにその魔力の中に突っ込んで行き、ギリギリの所で朱乃に掴まれて距離をとった。

 

「……しっかりして下さい。私を守って下さるのでしょう?」

 

「悪い悪い。油断しただけだ。……さて、どうするか」

 

 フリードは冷や汗を拭いながらも油断なくスライムを見据える。そしてスライムの胴体から無数の触手が一度目掛けて放たれる。とっさに避けるフリード達だったがイリナが微かに触れてしまう。といっても掠った程度で吹き飛ばされた訳でもない。

 

「ごふっ!?」

 

「イリナ!」

 

 にも関わらずイリナは血を吐いて意識を手放す。咄嗟に体を支えたリアスの腕の中でイリナはグッタリとしていた。その症状にリアスは見覚えが有る。取り込まれた小猫が得意とする仙術によるダメージであった。この時、リアス達の頭にとある事が過る。

 

 

「おや、理解したようですね。このスライムは取り込んだ相手の特性や技を使えるのです。バアルの出来損ないも魔力はゼロですが、私がそれを補えば滅びの魔力は使えます。さて、其方は既に満身創痍。どの様に勝つおつもりですか?」

 

 カテレアが言った通りに全員力を使い果たしており、少なく見積もても魔王級の強さを持つスライムに勝つ手段が浮かばない。リアスの頭に諦めが過ぎったその時、スライムの中からハート型の魔力が吹き出した。

 

 

「ラブリィィィィィアタァァァァァァァックッ!!」

 

 出てきたのは例のバトンを構えたサイラオーグ。バトンからは無数のハートが飛び出し非常に見苦しい。筋肉ダルマが使って良い技ではなかった。次の瞬間、別の場所の一部が内部より膨らんでいく。其処からは小猫の声が聞こえていた。

 

「三倍。五倍、十倍……百倍ビックバン猫々波ぁぁぁっ!!!」

 

 小猫は両手を組み合わせ、人差し指と中指でピストルのような形を作り、其処から膨大な量の気弾を放つ。スライムの肉片を吹き飛ばした小猫はサイラオーグと同時に脱出した。だが、今だ一誠は出てこない。

 

「あとはお前だけだ、赤龍帝! イリナ(惚れた女)を傷付けられて黙っているつもりかっ!!」

 

 イリナと一誠の医務室でのイチャつきをバッチリ目撃していたヴァーリはスライム目掛けて怒鳴る。だが反応は返ってこなかった。

 

 

 

「甘いですよ、ヴァーリ。奴は最深部に閉じ込めています。それこそ覇龍でも使わねばなりませんが、あの程度の者が使いこなせるはずがないでしょう?」

 

 一誠を侮り侮辱するカテレア。だが、その言葉にヴァーリは口角を釣り上げた。

 

「甘いな。アイツを、俺の弟子を舐めるなよ。そのような弱点、奴はとっくに克服している。……さあ、貴様が目覚めさしてやれ、イリナ!」

 

「起きて、イッセー君!!!」

 

 意識が戻ったイリナはスライムの中の一誠目掛けて叫ぶ。その瞬間、スライムが内側から吹き飛び一誠が飛び出した。

 

「待たせたな、皆!」

 

「ば、馬鹿なっ!? なんで……」

 

「教えてやるよ! 俺の新しい力『赤覇龍の籠手(ウェルシュ・ジャガーノート・ギア)』は一瞬だけ覇龍を発動する事で負担を抑え、更にヴァーリ(先生)から貰ったアルビオンの力によって負担を更に半減させる、赤と白の力を合わせた力だっ!! だから、テメェなんかに負ける訳がないんだぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

(此処までね……)

 

 一誠の言葉を聞き、負けを確信したカテレアはスライムの内部で転移用の札を取り出す。そしてそれを迷いなく隣に居たレオナルドに渡した。

 

「レオナルド。貴方はこれで逃げなさい。そして普通の幸せを手に入れるの。絶対に復讐しようなんて思っちゃ駄目よ?」

 

「なんで……? 僕はただの部下だってカテレア様は何時も……」

 

 其処まで言った所でレオナルドの言葉は途切れる。カテレアは彼の体を強く抱きしめていた。

 

「それはね。私が貴方の……お母さんだからよ。たとえ血が繋がっていなくても、貴方はもう私の子供なの。だから、私の事を”お母さん”って呼んで頂戴」

 

「……お母さん? お母さんっ!」

 

「有難う。もう思い残す事はないわ。私には魔王の末裔としての義務がある。でも、貴方は生きなさいレオナルド!」

 

 カテレアはレオナルドが抵抗する前に転移を発動させ、自分はスライムから飛び出していった。

 

 

 

 

 

「さあ! 掛かって来なさい!! 私は偉大なるレヴィアタンの真の後継者カテレア・レヴィアタン! 犠牲になって死んだ臣下の為にも私は決して逃げはしないわっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……最後まで一緒に居られなくてゴメンネ、レオナルド)

 

 




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